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(投稿:by 僻地の産科医)
これみてると、
多胎妊娠はやっぱり危ないな~とおもいますo(^-^)o ..。*♡
多胎に関してみんなの憧れがあるけれど、
でもやっぱり甘くないです。
あ、大野のニュースはこちら→大野事件 第10回公判!
周産期医療に発生している多胎妊娠の問題点 末原則幸 (産婦人科の実際 Vol.56 No.12 2007 p1951-1967) 不妊治療の普及に伴って多胎が増加した。 1974年には出産の0.62%であったが,2005年には出産の約1.2%を占めるようになった。多胎では死産,新生児死亡も多い。また障害の割合が高いことが報告されている。母体の合併症も多く,切迫早産やTTTS(双胎間輸血症候群)など多胎特有の合併症もあり,分娩時の異常,合併症も多いため,妊娠,分娩経過中に母体搬送の必要性が生じることが多い。しかし,母体搬送依頼があっても,母体と複数の児の受け入れ体制が整わないと受け入れすることができないため,母体搬送の受け入れ病院探しに難渋することが多い。最近ではDD双胎をも含め,総合同座期母子医療センターに集中する傾向があり,システム運営上大きな問題となっている。 わが国における多胎の出産率は従来0.6%といわれてきた。 1974年までは出産の0.62%であったが,2005年には出産の約1.2%を占めるようになった。 1974年での双胎の全出生に対する割合を1とすると,2002年には1.8倍となった。 2002~2004年の3年間について多胎の胎児数別の出生死産の割合をみた。単胎で妊娠22週以後の死産率は分娩1,000に対し3.8であったが,多胎では15.7と約4.1倍となっていた。同様に周産期死亡率は単胎4.8に対し,多胎では22.2と4.6倍であった(表2)。 |||.多胎と新生児死亡 多胎では単胎に比べ新生児死亡率が高いことが知られている。 2000~2003年の4年間の人口動態統計によると多胎の早期新生児死亡率は出生1,000に対し7.27で,単胎の0.79に比べ9.18倍であった。しかし,出生週数別に早期新生児死亡率の多胎/単胎比をみると,妊娠36週以前は1.45~0.42であり,少なくとも妊娠28~35週は単胎より多胎のほうが早期新生児死亡率は低いという結果が得られている。しかし妊娠36~39週の早期新生児死亡率の多胎/単胎比は2.4、40週以後では6倍となっていた(表3)。 IV.多胎と障害児 多胎児は単胎児に比べ,障害の割合が高いことが報告されている。横山らは,双胎の3.7%,三つ子の8.7%、四つ子の11.1%が何らかの障害を有していると報告している。脳性麻疹の頻度は双胎で0.8%,三つ子で3.1%,四つ子で11.1%であった。 V.多胎と早産 2000~2003年の単胎での早産率は4.4%であるのに対し,多胎では52%と約12倍以上となっている。妊娠32週未満の早産,および妊娠28週未満の早産をみても多胎は単胎の12倍を超えている(表4)。 VI.多胎が地域同座期医療に及ぼす影響 多胎は, 一方,受け入れ側である地域における総合周産期母子医療センターの立場からすると,多胎では, VII.死産率や早期新生児死亡率からみた,地域周産期医療システムにおける多胎の適正な管理に関する提案 多胎妊娠は死産率,新生児死亡率が高くハイリスクであることが知られているが,さらに多胎の各病態ごとにもう少し詳しく死産率,新生児死亡率を検討することによって,地域における限りある周産期医療資源をより効率的に運用できないか検討してみた。 VIII.多胎に関連した大阪での取り組み
|.多胎の疫学
三胎の出産数は1990年頃より急速な増加がみられる。三胎の全出産に占める割合は、1974年には出生1万に対しO.61であったが,年々増加し2005年には22.7になった。1974年での三胎の全出生に対する割合を1とすると,2002年には4.5倍となった。四つ子以上の出産数は,1974年に出生10万に対し0.37であったが,1985年頃より急速な増加がみられ,1994年には3.07となった。 1996年日本産科婦人科学会の公告以後,急速に減少した(表1)。
早産すると,出生する週数に応じて,NICUに入院する割合が高くなり,呼吸管理などの治療を要する期間も長くなる(図1)。
さて,このような早産率の年次推移をみると,1980年の単胎の早産率は3.8%であったが2005年には4.5%となった。一方,多胎の早産率は1980年には29.4%であったが2005年には55.5%と倍増している。妊娠32週未満の早産も1980年には4.3%であったが2005年には7.4%に増加し,妊娠28週未満の早産も1980年には0.9%であったが2005年には2.2%と,週数が早い早産ほど増加している(表5)。
①死産,新生児死亡が多い,
②障害を有する児が多い,
③母体および胎児,新生児合併症が多く,なかでも早産する割合が高い,
④分娩時の異常,合併症も多い。その結果,妊娠,分娩経過中に母体搬送,ことに緊急母体搬送の必要性が生じることが多い。しかし、母体搬送依頼があっても,母体と複数の児の受け入れ体制が整わないと受け入れすることができないため,母体搬送の受け入れ病院探しに難渋することが多い。時に 出生した兄が母親と別の病院に搬送されたり,複数の児が別々の病院に収容されることもある。
①早産が多く,その結果,出生するとNICUに収容される割合が高い,
②多胎特有の合併症(TTTSなど)の児は,重症で,長期間NTCUに入院することが多く,かつ,障害等合併症を残すことも少なくない。また,
③多胎の母体搬送を受ける場合は,複数のNICUベッドを準備しなければならない,などの問題点がある。さらにNICU退院に際して同時退院をさせる傾向になること,退院後も子育てに関連して様々な問題があることも指摘されている。
最近ではこのような多胎のリスクが強調されるあまり,多くの多胎妊婦が地域にある総合周産期母子医療センターに集中する傾向がある。TTTSや一児死亡の危険を有する一絨毛膜双胎(MD双胎)はともかく,特に合併症を有しないDD双胎までもが総合周産期母子医療センターに集中する傾向があり、総合周産期母子医療センターの機能を偏ったものにしている傾向がある。
例えば,
①わが国の平均的な死産率(千出生対6),新生児死亡率(子出生対1.7)に相当する疾患や合併症であれば,一般の産科医療機関で取り扱い
②わが国の平均的な死産率,新生児死亡率の数倍~数十倍の疾患が合併症は,地域にある地域周産期母子医療センター(二次センター)で管理し
③平均的な死産率,新生児死亡率の数十倍以上の疾患,合併症であれば,地域にある総合周産期母子医療センター(三次センター)で扱うことにより,それぞれの医療機関の能力に応じた機能を果たすことができると考える(図2)。
これを,もう少し具体的に新生児死亡率から考えてみると,
①わが国の平均的な新生児死亡率(1.5)以下のもの,すなわち,単胎で妊娠36~39週(0.7),2,500~3,500 g (0.5)の出産は,一般医療機関で取り扱う
②わが国の平均的な新生児死亡率の10倍程度(数倍~数十倍),例えば,妊娠28~31週(38.9),32~35週(13.3),1,000~1,500 g (47),1,500~2,000 g (21.6),2,000~2,500 g (3.4),多胎であれば,体重差のないDD双胎(21)などは地域にある地域周産期母子医療センター(二次センター)で管理し,
③わが国の平均的な新生児死亡率の数十倍以上の疾患,例えば,妊娠24~27週(128)以前,1,000~1,500 g (47)未満,多胎であれば,Discordant DD twins (36),TTTS(133),MD双胎一児死亡(46O)などは地域にある総合同産期母子医療センター(三次センター)で扱うことにより,地域で限りある周産期医療資源をより効率的に運用できる可能性がある。今回は,単なる新生児死亡率で考えているが,母体管理にかかわるリスク度や入院期間,分娩時のリスク度,新生児の入院期間や新生児合併症の頻度等も考慮する必要がある(図3)。
このようにして,地域の周産期医療ニーズと周産期医療資源を勘案して,より良きシステム運用が望まれる。
大阪では1977年にNMCS,1987年にOGCSという病院のネットワークが発足し,また,大阪府医師会周産期医療委員会や大阪府周産期医療対策協議会などが設置され,様々な取り組みが行われてきた。
そのようななかで、多胎の増加に関連しては,周産期関連者が不妊治療の現状を理解しつつ,様々な多胎妊娠出産のリスクや多胎妊娠,出産、子育ての実態を不妊治療関係者にも知ってもらうことが必要であるといわれていた。
2002年6月,青野敏博現徳島大学長が世話人となり,周産期医療関係者が不妊治療の現状を理解しつつ,多胎の妊娠・出産・子育てにまつわる様々な問題点を不妊治療関係者に理解してもらうことを目的として大阪不妊・周産期懇談会が発足した。その到達目標は
①多胎を増やさない不妊治療の確立,
②不妊治療に先立って多胎妊娠の情報提供をする
③多胎妊娠したとき,多胎妊娠・出産・子育ての情報を提供する,
④多胎妊婦レジストリーシステムの確立であった。大阪不妊・周産期懇談会の精力的な活動の結果,いくつかの成果が得られてきた。
2005年12月に大阪府医師会周産期委員会内に「多胎に関する検討小委員会」が設置され,大阪不妊・周産期懇談会の活動の成果は継続された。その結果 2006年12月には可能な限り単一胚移植を目指すという「多胎妊娠防止のための胚移植数に関する提言」をまとめ,日本医師会や日本産婦人科学会などに配布した。また2007年・1月には,①不妊治療者側からみた防止策 ②多胎妊娠の危険性とその防止策についての説明書、③多胎妊娠の両親への説明書を印刷し,関係機関および大阪の産婦人科医に配布した。
このような活動を通して,少しでも多胎の増加を抑え,また多胎妊婦および多胎の親となるかもしれない夫婦への,より良き情報提供ができ,その結果,地域の周産期医療に貢献できるものと期待している。
この問題すごく重要です。
不妊治療を行っている医療機関は、最後まで責任をもっていただきたいですね。
マスコミは「40代でも産める」というよな記事を書くけれど、陰の部分はならなか取り上げません。
今回のアエラの特集なんてどうなんでしょう。
私の知り合いに、三つ子を出産した方がいらっしゃいます。
三人ともなんらかの「しょうがい」があります。
最初からリスクを知っていたら、治療を行っていたのでしょうか。
人生がすっかり変わってしまいました。
投稿情報: せんせい ありがとう♥ | 2007年12 月 3日 (月) 11:40
ついこの間、最初に見たときは単胎だと思ったのに、予定日確定のとき見たら一卵性双生児であわてたのでした。ある程度当院で見て、発育差がひどかったり、羊水量がおかしくなったりしたら速攻で転院しかないと思っています。
防衛医療的にいえば、一卵性を発見した時点で紹介するべきなんでしょうけどね。
投稿情報: 山口(産婦人科) | 2007年12 月 8日 (土) 22:06