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(投稿: by 僻地の産科医)
読売ウィークリー 2007年10月14日号
http://info.yomiuri.co.jp/mag/yw/
新シリーズ「医療砂漠」を行く
第1部・産科 第2弾!! 全国版「産院空白」マップ
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ワースト25自治体名公表
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ルポ 「神奈川県分の面積」を1人で
担当する産婦人科医
ということで、読売ウィークリーですo(^-^)o
昨日の続きですo(^-^)o!!!!
全国版「産院空白」マップ
ワースト25自治体名公表
産婦人科医不足は、どの都道府県でも深刻だ!
全国の二次医療圏別産婦人科医偏在マップ
(読売ウィークリー2007年10月14日号 p82-87)
(昨日の記事はこちら!) ニッポンを襲う「産科崩壊ドミノ」
還暦副院長も当直勤務
金曜日の夕方5時過ぎ、外来診療を終えて一息ついた栃木武一副院長(60)は、つぶやいた。
「今夜は、患者搬送が多そうな予感がする」
医療体制が手薄になる週末を控え、圏内の他の医療施設の医師が「切迫早産や異常妊娠など高リスクの妊婦を早く手放したがる」からだという。10分後、携帯電話が鳴った。
「救急車で15分で着く!?わかりました」
開業医から搬送されてくる患者は子宮筋腫で出血が多いという。産婦人科医は、もちろん妊婦だけでなく、婦人科の急患にも対応しなくてはならない。その後も急患受け入れ要請は続く。妊婦の緊急手術も行った。「予感」は当たったようだ。
栃木副院長の首には2本の携帯電話がぶら下がっていた。着信した電話を切らず、もう一本の電話で小児科の担当医らと相談して返事する。「時間のロス」を防ぐためだ。
還暦を迎えた栃木副院長は、若い医師と同様に月5,6回の当直をこなす。当直がない日でも、帰宅は毎晩、終電かタクシー。9月15日からの3連休中、初日の15日は緊急手術のため病院から呼び出された。16,17両日は自宅で受け持ち患者の症例検討など山積する病院雑務に取り組んだ。22日からの3連休も当直などで病院に詰めっぱなしだった。気晴らしは時々行く歌舞伎の観劇くらい。
「家内から『過労死しても知らないから』と言われています」と苦笑いした。
過労勤務、過労死ラインの倍
産婦人科医の激務ぶりをデータで見てみよう。円グラフは、日本医療労働組合連合会(医労連)と自治労連が昨年11月から今年4月にかけて行った勤務医の労働実態調査だ。産婦人科医の過酷な勤務実態がありありと見てとれる。
産婦人科医の宿直(午後5時~翌朝9時)回数は月平均5・5回で、全診療科平均3回を大きく上回る。日曜・祝日勤務の「日直」(午前9時~午後5時)も月平均1・8回。産婦人科医は月平均7・3回宿直や日直を担当する計算だ。一日の残業時間も平均2・4時間で、宿直明けに引き続いての勤務も85%が「ある」と回答している。
池田寛・医労連中央副執行委員長は言う。
「宿直といっても、産婦人科医の場合、お産や急患などで仮眠できないことが多く、実質的な時間外労働。これを含め、残業時間は月160~170時間に上り、過労死の労災認定基準(過労死直前の時間外労働が月80~100時間)の倍。『お産』は医師の犠牲の上に成り立っています」
過労状態の医師が厳しい臨床現場に立ち続けることは、医療安全上も問題がある。早急に改善を図らなければ、医療事故につながりかねないのだ。
医師偏在の格差数十倍
全国マップを見てほしい。本誌が独自に作製したもので、産婦人科医の偏在を示している。
都道府県の二次医療圏別に2004年の出生1000人当たりの産婦人科医数を5分類し、色分けしてみた。この二次医療圏マップから、どの都道府県にも産婦人科医の分布が偏っていることがわかる。医師数が平均以上の二次医療圏(青、水色)は、大学付属病院や総合病院が集まる政令市や県庁所在地に集中している。平均未満の医療圏(黄、オレンジ、赤色)は計252か所で、青と水色の計105か所の約2・5倍に上る。このマップを見た佐藤敏信厚労省医政局指導課長は、
「西高東低などといった地方間格差は見られないが、都道府県内の偏在は著しい。地域内で医師不足対策を練り直す余地もあるのではないか」と話す。
二次医療圏別でダントツだったのは、大規模な民間病院や、大学付属病院などを擁する東京都の「区中央部」。出生1000人当たりの医師数はなんと60・1人。
ワースト部門では、北海道や九州が比較的目立ち、上位グループとの格差は数十倍に及ぶ。医師がゼロという二次医療圏も3か所あった。これについて、石川睦男・前旭川医大病院長は言う。
「行政は実態を国民に情報公開しないうえ、私たち産婦人科医の警鐘にもかかわらず有効な医師確保政策を取ってきませんでした。その結果がこれです」
しかも、実際にお産を扱う産婦人科医は、このマップの産婦人科医数よりさらに少ない。青や水色の二次医療圏でも、必ずしも妊婦の「安全・安心」が保証されているわけではない。
激務とストレスに苦しむ勤務医と開業医が立ち去り、地域の中核的存在の総合病院の産婦人科まで次々と閉鎖、そんな悪循環にどう歯止めをかけるか。石渡勇・茨城県産婦人科医会長は、
「各都道府県の医療行政の担当者は、隣接する都道府県の状況に、お互いもっと関心を持ち、広域的な周産期医療ネットワークの構築を考えるべきでは」と提言している。
今回、取材した医師たちからは、「医師不足や超過勤務、劣悪な待遇にはこれ以上耐えられない」「急増する医療事故訴訟への対策を」「国や県は早急な医師確保策を……」など、数多くの悲痛な声を聞いた。
それらをどう生かしていくか。日本国民みんなが耳を傾け、考えなければならない。
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