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任意捜査への積極果敢な対応が鍵の記事から孫引きですo(^-^)o ..。*♡
小松先生の記事~(>_<)!!!と思って探していました。
というわけでお伝えします。どちらかというと第三者機関のカテゴリーに
入るかな?とおもって入れてみました。どうぞ!!
医療版「事故調」の目的
虎の門病院泌尿器科部長 小松秀樹
(日本医事新報 No.4338 (2007年6月16日) p1)
大野病院事件では、多くの医師の団体が産科医の逮捕・起訴に対し抗議した。医師からみると、検察は、医療の全体像を科学的に認識することなく、個別例について、予見義務、結果回避義務違反を言い募ることで犯罪を立証しようとする。しかも、司法の言語と論理は、科学的な情報の収集と分析を苦手とする。さらに司法は、社会通念、すなわち大衆の情動を基盤とした倫理規範に判断が引きずられることを是とする。このため、多数決で科学的真理を抑圧しかねないような危うさがある。医師は、司法の言語と論理が医療を裁くのにふさわしいものか疑問を持ちはじめた。
医療を含めて、経済、学術、テクノロジーなど専門領域といわれる分野は、内向きのシステムとして世界規模で自律的に発展し、分野毎に合理性が形成されている。このような専門領域をニクラス・ルーマンは認知的予期類型として、政治、法、道徳などの規範的予期類型と区別した。医療分野で国際的に形成されている正しさと、国内司法の相性の悪さが、医療問題解決の障害になっている。認知と規範のは今に始まったことではない。地動説に対する宗教裁判はこの齟齬を象徴する。
医療版「事故調査委員会」設置の検討が4月に始まった。
ところが肝心の目的が明確になっていない。第1回検討会で、過去の事故の責任を扱うのか、あるいは将来の医療の安全のためなのかという二つの目的をめぐって議論が行われた。私は、紛争解決と公平な救済に目的を絞るべきだと思う。第三者が科学的な調査と評価を行い、それを患者に説明して納得を得る。また、調査結果を公平な救済のために使用する。現在、医療をめぐる患者と医師の認識の違いは、医療制度そのものを壊しかねない状況にある。これを解消して医療を保全しなければ将来の日本人が不幸になる。安全については、すでに医療機能評価機構の医療事故防止センターが事故情報を収集し、安全情報を発信している。航空機事故と異なり、医療事故は多数発生する。防ぎようのないものも多い。しかも、日本の医療費は先進国で最低であり、人手が足りていない。医療提供者の能力にも限界がある。安全対策を実施するには、全体のバランスの中で効率を考えなければならない。個別の事故にその都度引きずられるべきではない。
規範(実体法)と対立(手続法)の枠の中に強引に実状を押し込める司法の論理は医療になじまない。司法とは別の言語論理体系での解決が望まれる。認知を規範で押し切ることは、司法の正当性を傷つける。福島県立大野病院事件は、医療の危機というより司法の危機ととらえる。
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