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医療安全 No.12 4/2 2007年6月号の特集が
「診療関連死の死因究明等」の問題を読み解くでした!!結構いろいろなバリエーションがあって読みやすいのですが、とりあえず気に入ったのからあげていきます。
こちらもよろしくお願いしますo(^-^)o ..。*♡
死因究明検討会6 ロハス・メディカルブログ 2007年07月26日
http://lohasmedical.jp/blog/2007/07/post_765.php#more
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患者側の「納得」の得られる調査報告・情報開示が制度のカギを握る
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長 辻本好子氏
(医療安全 No.12 JUNE 2007 p34-35)
辻本好子氏は,いわゆる患者側代表として「医療安全対策検討会議」委員をはじめ,厚労省関係のさまざまな検討会等に名を連ねてきた.今回は,繁1回「診療行為に関違した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(4/20)に委員として出席された氏に,初会合の直後にお話をうかがった. 「納得」するということ COMLの活動から見えてきた患者と医療者の関係 検討会のあり方と新しい制廣づくりに向けて
――検討会のなかでも,患者の「納得」ということを強調されていましたが….
3月に起きた高知空港での全日空ボンバル機の胴体着陸の様子をニュースで見ていて,機内から無事に降りてきた乗客たちの表情がすごくよかったのが印象的でした.考えてみれば「危険な目に遭わされた」わけですから,不信感や怒りを抱いても当然です.表情を見た瞬間,この乗客たちは「納得できていたんだ」と感じました.
前輪が出ないまま「無事に」着陸できたとき,拍手が湧いたと聞いています.それは36歳の機長が「十分に訓練を受けているので,安心して乗務員の指示に従ってほしい」と繰り返し乗客に伝え,ことごとく情報を共有していったことが大きかったと思います.機長が肉声をもって気持ちを伝えたことで,乗客と心を一つにできたのではないかと思いますが,それが「納得」への働きかけのありかたではないでしょうか。困難な状況をともに戦ってきた,という同志なんですね.乗客たちのインタビューでは,ある種の高揚感さえ感じられました.やはり,患者・家族にも同様の「納得」が必要なのです.
―これまでのCOMLの活動とそこから見えてきたものは?
COMLは,1990年9月から患者向けの電話医療相談を開始し,「賢い患者になりましょう」を合い言葉に,患者の主体的な医療への参加を呼びかけてきました.また,この4月からは,私たちの情報誌のなかに「医療者のホンネと悩み」というコーナーを設け,「こんな患者さんに困っています」という記事を掲載しています.もちろん,患者からの相談のほうがより大きなスペースを割いてはいますが,患者側のわがままな言動を冷静に見つめることで,私たちの患者側の行動に変化を生むきっかけが生まれることを期待する,そんな取り組みを始めています.
電話相談の件数は急激な右肩上がりをたどっています.興味深いのは,医療費の自己負担増や医療事故報道が過熱した時期と相談件数のカープがきれいに連動している点です.背景には患者の権利意識の高まりがあると思いますが,「コスト意識」が生まれたことで,
支払った分に見合うだけの安心と納得を手に入れたい,と思うのは当然です.また,相談内容で飛び抜けて多いのが「説明不足」などを含めた医師への苦情です.そこに見えるのは医師に何もかにも期待するような「依存」が相変わらずあって,しかも,過剰な期待が裏切られたときの「不信」と背中合わせなのだと思います.つまり,相談者の姿勢は大きく「徹底追及」と「遠慮・我慢」とに二極化していると言えるのではないでしょうか.
「モデル事業」は誰のため
―モデル事業にもかかわられたとお聞きしましたが,どう評価されますか?
モデル事業では,スタートの経緯もあってか,報告書をまとめる過程で「医療者を守るための結論を導くため?」と感じるようなことがなかったわけではありません.
ただ,やはり大きな問題は遺族への説明の内容です.専門用語ばかり並べた報告書では理解できるはずがないのです.私たち医療者以外の委員はことごとく「わかりやすい解説をつけてください」とお願いしましたが,ギャップはまだまだ大きいのです.これについては医療者側の意識改革ももっと必要だと思います.
また,報告書が作成され,遺族への説明会が開催されるまでに数か月,あるいはそれ以上の時間が経過しているわけです.ですから,待たされたあげくに難しい言葉ばかりの報告書では「納得」できるはずがあワません.遺族が求めているのはりっぱな報告書ではなく,「納得」できる説明なのです.調整看護師の果たすべき役割につい
ても,改善が必要だと感じました.高名な医師たちとの「調整」が優先され,それに疲れ果ててしまうような状況がみられました.本来あるべき遺族の精神的ケアが十分にできるような環境整勺が必要だと思います.
―モデル事業をふまえて,検討会や新しい制度に何を望みますか?
モデル事業にかかわって、正直「人とモノと金」が必要だと痛感しました。また,制度をつくるにしても,国民の納得を得られるものにするのは,やはり同様に大変なことだと思います.
そして,それ相応の資源を投入してやってきたモデル事業ですから,検討会ではその評価を十分にふまえた制度を模索していかなければなりません.その義務がある,といったほうがよいかもしれません.
検討会でも,患者遺族の「納得」とそのための「情報開示」の重要性を強調しました.議論すべきことは山ほどありますが,「患者にとって納得のいく安全・安心な医療の確保や不幸な事例の発生予防・再発防止等に資する」というのが目的として掲げられています.
私たちCOMLはこれまでの活動をとおして,患者は「安全と安心」はむしろ当たり前のこととして,真の「納得」を欲していると考えています.そのために何が必要かといえば,いかに情報の共有をするか,そして人間関係をどのように築いていくか,ということにな
ります.その象徴的な事例が冒頭の「胴体着陸事故」だと思うのです.小児科領域では,チャイルド・ライフ・スペシャリストという役割が日本の臨床にも少しずつ浸透してきています.その活動である「ブレパレーション(=心の準備)」では子どもたちに検査・処置のわかりやすい説明をして,子どもたち自身が治療に主体的に参加できるよう促すわけです.これと同じような支援システムが患者の「納得」へのかかわりに必要ではないかと感じています.だから,検討会で議論しようとしている第三者的な調査組織には,そういった役割をも期待しています.
COMLは「患者=弱者」というスタンスではなく,「患者も医療の結果の半分の責任は持っている」という意識が必要だと考えて活動してきました.その意味では,患者・家族にとって厳しい側面を含んでいます.一方で,医師会等からはいまも「患者団体」と敵対視されます.むしろCOMLはADR的な立場でものを言わなければならないと思っています.以前は医療のなかでものも言えない「幼子」だった患者が,思春期・反抗期という今を経て,自立して成熟した判断のできる「大人」に成長していくことで,医療者側も萎縮して腰の引けたような態度から「ともに信頼関係をつくりあげていく」協働関係に変化していくことを目指しているのです.
そういうブロセスを推し進めるためにも,この制度化の動きは重要だと考えています.医療事故はゼロにはなりません.起きたときにその問題をどう解決していくか,患者・家族と医療者がどう向き合って話し合いをして,折り合っていくか,そこに変化をもたらすものだと思うからです.患者たちが,医療のなかで「大人」への道を歩み始めることのできる社会の仕組みになるよう,この検討会に働きかけていきたいと思います.
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