とりあえず、日本産科婦人科学会、特別講演の報告です。
余談ですが、その席で、おそらく加藤先生と思われる方を見かけました。
講演内で「大野事件のような刑事訴追は許してはならない!」とおっしゃる一方、「刑事事件になるのはあまり件数としてなく、安心して医療に打ち込んで欲しい」というような発言もあり、
その加藤先生と思われる方は、講演の終わった後に何かおっしゃりたい感じでじっとじっと何度も何度も木下先生の方をみておられたのですが、木下先生は気がつかれませんでした。 (私は木下先生の2列ほど後ろに坐っていました。)
あれが加藤先生であったなら、きっと悲しかっただろうな、と思います。お声をかけようか迷いましたが、何もおかけする言葉はないことに気付き、そのまま会場を後にしました。
では、どうぞ!
「わが国の周産期医療の崩壊を防ごう!」
日本医師会常任理事/日本産婦人科医会副会長 木下勝之先生 概略
(尚、グラフは数値のみその場で書取ったもので、私が作り直したものです。
木下先生のグラフの20分の一以下の情報量しかありませんが。
なお、この講演については後ほど日本産科婦人科学会誌に要約がでると思われます。
そちらの方を参考にしてください。また抄録(p288)もご覧下さい。
私の脳内変換を経て文字化されていますので、(録音・写真などとっていませんので)
各所に間違いはあると思いますが、申し訳ありません。)
グラフに示すように、産科取扱施設は年々減少し、産科従事医師数も減少の一途をたどっている。
また出生数に関してはほぼさげどまり、この数年はそれほど変化していない。
一方、産婦人科入局者の推移を示す。
新臨床研修制度のせいで入局者数は激減したが、近年の産科医療をとりまく環境のキビシさにより、もう入局者が200人とか150人などになっても全くおかしくないと思っていたが、
なんと!!今年の春の各大学入局者数の合計は304人(女性が60%!)もいる。これは大変喜ばしい事だ!
彼らは産婦人科の現在の状況を知っていても入ってきてくれるやる気あふれる若者たちでなのである。将来に希望が持てる出来事ですっ!!
という訳で、
周産期医療の将来のために、
・不妊や腫瘍学だけでなく周産期をやっていただけるよう勧めていく。
・女性医師が働きやすい環境を作っていきたい。
・法的整備・労働環境の整備。
などを将来のプランとして考えている。
労働条件については、
全国の病院に調査をしてみたところ、交代制を導入している病院や、ワークシェアリングを導入している病院は2%程度で、まったく我々の言っている労働環境なんてものは相手にされていない事がわかる。
また産科などの診療科による給与の差をつけているかどうか調査もしたが、我々の言い分はこれまた全く相手にされていない。
分娩料を上げるなどして、なんとか反映されるようにしていきたい。
とにかく医師が充足されるまでは、ゆとりある勤務条件になるまで待って欲しい。いまは頑張って働いて欲しい。
また女性医師が産婦人科にはとても多く、68・1%が女性医師。
他科と比較してもこの数字はかなり高い(←これもちゃんとデータありましたが、とてもおっつかず)
女性医師とともに働いていかなければならない。
育休後の女性医師再研修システムを整備していきたいと思っている。(岡山大学、横浜市立大学、群馬大学、岩手県などで行われている)
また医師の地域からの流出も防いでいかねばならない。検討されている方法としては、
2.初期研修後の3年間は各出身大学地域で行う
3.院内産科診療所の設置など
を考えている。
また診療科については将来的に、各科での制限をも視野に入れて考えている。
これは足りずに困っている科のみならず、増えすぎて食べていけなくなる過剰な科にとってもメリットのある話で、実現性はあると考えている。
制度としては、
1.すでに各地で始まりつつある、産科奨学金制度。
2.医学会による研修後の人数調整(↑)。
3.最終的にそれでもどうにもならなければ、入学時に診療科枠を決める。
安心して診療にのぞめる法的問題の整備について。
これについては、
・訴訟が多い→民事訴訟・刑事訴訟・行政処分
・保助看法違反
などがあげられる。
地裁での民事一審訴訟受理件数(一般)はほぼこの10年ほど横ばいで推移しているが、医療訴訟についてはうなぎのぼりに上昇している。
産婦人科全体の訴訟数はたしかに内科・外科とともに多い。
(ここもデータを話していますが、メモ取れませんでした(涙)。早いよ。)
また産婦人科の訴訟のなかで分娩周辺にかかわるものは7割である。
脳性麻痺など訴訟額もおおきく、また分娩時の過失がないにもかかわらずトラブルになることは多い。
そこで無過失補償についての法整備を進めている。
自民党の武見敬三参議院議員が動いてくれている。
政治家に働きかけ、担当省庁である厚労省が法案の案をもってくるが、とてもこんなんではまったく意味がないというような摩訶不思議なモノにすっかり形をかえており、叩き返すと、やはりまた意味のすっかり変容したモノになって戻ってくる。
もう全然ダメでぽしゃりかけたが、どうにかこうにか交渉している。
なんとか形にはなりそうになってきたが。。。ふへほ。(というような事)
で。
一番問題なのは財源で、分娩一時金を3万円ひきあげてそこから保険料を出すようにいま頑張っている。
ところが一度妊婦さんにこのお金が渡ってしまうと、払わない人(←未収金は全国で問題になっていますしね!)が出るので、みなさまには妊婦さんに代理受領をすすめるよう話をして欲しい。
産科医に過失がないような補償に対して、産科医が保険料をだすのはおかしい話だからなんとかしたいが、なかなか障碍が多い。
(↑法律とかの関係でこういう形になることにこだわる厚労省の雰囲気はわかるけど、実際問題、保険料の問題は後からアレコレ問題になると思う。医師会としても大変そうなのはわかるし、厚労省もゆずらなさそうなのはわかるけど。。。)
内診問題について。
昭和23年に保助看法が制定され、それ以来普通に診療所では看護師が内診を行って、普通に内診をおこなってきた。
しかし突然、厚労省看護課長通知によって、違法な事にされてしまった。
平成14年の通知:内診は助産の一部である。
平成16年の通知:内診は診療の補助にはあたらない。
というわけで産科現場は大混乱。
しかも平成18年6月、堀病院にとつぜん捜査員60人による強制捜査が行われて全国の産科医が驚いた。
なにせ現在でも47%の分娩が診療所で行われており、
18.6%の診療所には助産師がいない。
50%の診療所には2-3人しか助産師がいないのです。
「助産師充足状況緊急実態調査」の実施結果について報告
H18.6月 堀病院の捜査
H18.12月 豊橋の病院 起訴猶予
H18.12月 青森の病院 不起訴
H19.2月1日 堀病院の起訴猶予
ところで昨年10月、内診問題について事態を悪化させる決定的通知を厚労省が出そうとした。
えええええっ!!!という状態で、医会の誰一人として何も知らない。武見代議士にきいてみたが何も知らないと言う。
どういうことだっ!!!と現状についての申立てを行いこの通知は断固拒否した。この後いろいろ調査して、どうすべきか検討を行ってきた。
H19.2.13 厚労省で相談が行われた。
参加者は以下のとおり。
日本産婦人科医会 寺尾会長 同医会 神谷常任理事
日本医師会 木下常任理事 平岩弁護士
H19.3.30 厚労省より通知。
この中の、
「分娩期においては、自らの判断で分娩の進行管理を行う事が出来ず、医師又は助産師の指示監督の下診療又は助産の補助を担い、産後の看護を行う。」
「自らの判断で分娩の進行管理を行う事が出来ず」なんて当ったり前の事ですが、
この文面どおり先生方には安心して業務を遂行してください。
あまり多くは語りませんが、この文面はこの文面どおりに行っていただきたい、ということをしっかりとここに申し上げます。
いろいろな解釈がありますが、 文章をそのまま読んでくださればいい、と申し上げるとともに、
安心して医療に取組んでほしいということです。
刑事事件にしないために。介入の阻止。
まず医師法21条の異状死の届出について解説します。
1981年の法的解釈では、
「異状死体の届出は、異状とは病理学的なものは意味せず、法医学的なモノだけの届出でよい」という解釈でした。
しかし
1999年1月 横浜市立大学での患者取違事件
1999年2月 広尾病院看護師点滴間違事件がおこり
医療現場における異状死についても届出をという解釈にかわりました。
現在、200件程度の届出がなされているが、年に起訴されるのは悪質と思われるような年10件程度であり、我々が思うほどすぐに起訴されるわけではない。安心していただいてもいい。
しかし東京女子医大事件や青戸病院事件、そして大野病院事件のような事件も起こっている。
刑事事件とされた場合の問題点は、
刑事事件は個人の責任を問うために、
・再発予防の役にはたたないし、たっていない。
・訴追された個人が医療現場の中で孤立を深めてしまう。
・素人に訴追の判断をゆだねるために、トンでもない事件が含まれる。
・よほど悪質なものでなくては刑事罰に問えない。
などの問題点がある。 刑事罰には意味がない。
検事総長の訓示で最近、医療事故関連の訴追は慎重に行うようにと出た。
異状死の届け出に関しても、医療関係のものは保健所に届出をすればいいというようにかわった(?このへん、メモが不明。H19.3月と書いてあるが。。。)
こうして、
脳性麻痺などの問題→無過失補償導入
異状死届出
保助看法
などこの一年でいろんなことが解決しつつある。
だから大丈夫だよん!どんどんみなさん、産婦人科へどうぞ!と胸を張ってもらっていい。
【結語】
常に明るく希望をもって頑張ることで、頑張りぬこう!
先は見えぬが、先はあると信じ、勇気を持とう!
あ、ついでのようですが、助産所の嘱託は受けてやって欲しい、とか、
24時間緊急を断るなとか、そんなこともおっしゃっていましたね。
あ、しかもケネディ大統領の言葉というのをひいていましたね。そういえば。
今年の冒頭の医会報にも載っていましたが、あとでみてみます。
という感動的な講演でした(感涙←言ってみただけですけど)。
なお、質疑応答は許されない雰囲気でさくさくっと終わり、事実質問はありませんでした。
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