Medical ASAHI 4月号シリーズです。
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医局に転がっているかも!
特集は医療紛争 転ばぬ先の杖
じゃ、いってみます(^^)♪
(関連目次)→ADRと第三者機関 目次
【提言】医療過誤における民事・行政・刑事責任の線引きはどのように行われるべきか
東京大学医療政策人材養成講座・研究班が分析
刑事の立件は双方を不幸にする
(Medical ASAHI 4月号 p62)
医療事故について刑事事件(業務上過失致死)化して責任を追及することは、果たして妥当だろうか――。
東京大学医療政策人材養成講座の研究班(筆頭研究者・神谷恵子弁護士)では、2000~06年に刑事判決の出された事件のうち、ほぼ9割18件の判決文を入手、医療提供者、政策立案者、患者支援者、ジャーナリストという立場を異にするメンバーの参加により、その妥当性を検討した。
評価は、
①事件の非難可能性
②処罰の適切さ
③事件の原因分析
④再発防止
の教育的効果
⑤医療人としての資質・組織としての体質
の5指標、12項目について4段階で評価・分析した。
結果は、18件のうち1/3ほどは刑事訴追が妥当でないか、妥当性が疑わしく、むしろ、医療安全システムに帰因するものであったという。研究班では・医療過誤における「民事」「行政」「刑事」各々の責任の目的・機能に応じた適用を提案、刑事事件を絞り込むこと、医療安全や再発防止を目的としながら、十分機能していない「行政」責任についての改善を提言書としてまとめた。
医療事故、特に刑事事件では双方が不幸な状況になっていることが多いと感じた。患者は民事、刑事裁判を通じ、10年戦争をしてはみたものの、事件が風化し病院では何一つ改まっていない。医師側は事故をきっかけに犯人扱いされ、病院を追われ、家庭崩壊に至るというようなケースもある。
刑法は、「これをしてはいけないから、こうしなさい」という行為規範のうえに成り立つが、もともと医療には不確実な面があり、個人差もあって「何をしなさい」というのは見えてこない。そこに刑法が入っていけは現場の萎縮を招く。
医療の仮面を被っているものの医療とは言えない違法性の高いもの、明らかに個人の責任に帰するものなどは、刑事事件として取り扱うのは相当であろう。しかし、現代の医療は、複雑で多くの人の関与の下、チーム医療として行われている。刑事事件は個人の責任追及を目的とするもので、医療安全システムに問題がある時には、基本的には刑事事件に馴染まない。むしろ原因を明らかにして、再発防止に努めなければ、同様の事故が繰り返される。
刑事責任追及は厳格にしていく代わりに、安全管理やリピーター医師の教育を放置している管理面の問題など、現状で不十分な対応を進めていく必要がある。05年の医師法改正で処分医師の再教育が義務化されたが、医療安全面に原因があった場合にそれが改善されたかどうかに対処する規定はない。早期の対応を要するところである。
病院の自浄作用に期待
ひるがえって考えてみると、医療は診療契約という私的自治の適用される領域でもある。病院の自浄乍用をもっと発揮すべきで、きちんと事故原因を究明して改善すれば、過剰な行政処分や刑事処罰などの介入はいらないはずだ。事故原因の究明のために、外部の人も加えて委員会を設け、院内ADRを実施するということを推進していくべきであろう。日常から信頼関係を積み重ねておくこと、患者の主体的参加、インフォームドコンセントの充実は、民事事件を裁判化しないという意味でも重要である。
事故原因についても本来は、その病院および担当医師が一番知りうる立場にある。日々の医療安全体制の構築と、事故時における病院による事故原因調査システムの確立、解決のためのメディエーターの育成が望まれるところである。(談)
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