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勤務医なんてやってられない! 地域医療をまもる取組み 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
日本医師会勤務医部会の報告です(>▽<)♪
ちょっとまぁ、何年も言われ続けていることばかりで、
全然実行されていないんじゃないの???
と言う感も無きにしも非ずというか、
そもそも勤務医の中で「日本医師会」を意識している人
そんなにいないし、入っている人も必要がある
(なんかの資格を得るのに必要だったり)
から加入しているだけの人が多いです。
一応、報告をどうぞ..。*♡
あと二日分くらいありますが、シンポが一番楽だったので。
そのうちにあげます。
平成22年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会報告
岐阜県医師会勤務医部会担当理事臼井正明
メインテーマ「地域医療再生~地域の力、医師の団結~」
日時:平成22年10月9日(土)会場:ホテル東日本宇都宮
平成22年度全国医師会勤務医部会連絡協議会は、皇室、皇太子ご一家が毎年避暑地として静養される那須御用邸のある栃木県で開催された。特別講演2題、勤務医委員会報告、ランチョンセミナー、シンポジウム2題4盛り沢山の内容で、岐阜県からは小林会長、山村副部会長、浅野運営役員、担当の臼井、事務局が参加した。
特別講演
原中日本医師会長が勤務医の医師会活動への積極的な参加を求め、医師会ごとに、勤務医と診療所医師との連携を図るよう促し、勤務医とりわけ女性医師を含む病院勤務医の労働環境の改善に最善の努力をすると強調した。2001年を100とした賃金、物価の動向と診療報酬の比較では全体として下落しているが、特に診療報酬の下落幅が大きく、医療費の国庫負担も20年間で5%引き下げられた現状から、少なくとも経済指標と大きく乖離しない医療費増加の必要性を主張された。医師不足と偏在の解消に関しては、日本医師会は中長期的に医師数を1. 1倍~1. 2倍にすることが妥当としている。特に、人口減少社会にあっては、人口減少と医師養成数増加のバランスをとることが重要で、医学部の新設の必然性はないとした。市場原理主義の医療への参入に関しては、現政権下において、混合診療の全面解禁、医療ツーリズム(国際医療交流)などの考え方が出ているが、一部のチェーン店の医療機関のみ営利の追求となる医療ツーリズムは、混合診療の全面解禁につながる可能性が大きく容認できないとの見解を示した。最後に、医師は日本医師会には入らなくても良いが、都道府県医師会には必ず入り、県行政と一体化して活動することが大切であるとの持論を述べられた。
日本医師会の勤務医委員会の報告
泉良平委員長から答申の概要の説明があった
(I)医療不足問題概要:OECD加盟国医師数人口千人当たり平均3.1人に対して日本は2.1人とOECD加盟国平均より13万人不足している。
(II)医師不足の現状は病院全体で医師不足を感じている比率は71. 5%。
(Ⅲ)医師の偏在については、地域の偏在として都道府県格差は、2. 12倍、診療所の偏在では、10年間で精神科、泌尿器科、皮フ科では医師数が増加したが、内科、外科、産婦人科では減少。偏在是正の方策として、専門医定数を決めるアメリカ、地域・診療科ごとに医師数を調整し研修医を決めるフランス、州医療圏で医師定数を定めるドイツなど諸外国の医師偏在解消の制度の工夫から、日本独自の制度確立が望まれる。
(IV)勤務医の労働環境について、多様な勤務形態、育児・介護・復職支援、人事管理、職域の明確化などの改善策の提言、等々。
女性医師問題に関するアンケート調査報告
栃木県医師会望月善子勤務医部会理事より、平成21年度に行われた栃木県における勤務医の労働環境調査並びに女性医師の勤務状況に関するアンケート調査の報告があった。調査対象病院110(74施設から回答、回答率67.3%)、女性医師706 (299名から回答、回答率42.4%)。
結果:院内保育施設の設置は、41.9%、24時間保育をしている施設16.2%と3年前の調査と著変ないが、病児保育を施行している施設は若干増え、育児期間中の当直免除や、女性医師のフレックスタイム制、短時間正職員制度の導入を検討している施設は増加していた。行政の医師労働環境に対する様々な支援事業を享受している施設は24.3%と少な<、施策事業に対する認識不足、情報不足が明らかになった。
女性医師の1割が常勤ではなく、その理由として子育てが最多であった。この中で将来的にも常勤を希望しないと回答した者が25.6%に及んでいる。今回の調査は、厚労省でさえ把握していない女性医師の実態を調べる目的もあったが、回答者299名の内、13名(4.3%)が離職し、その理由として出産、子育てが多数を占めた。
特別講演2
「すぐに役立つ勤務医のための医療と経済の基礎知識」をテーマとして愛媛大学医療情報学教授石原謙氏より、日本医療の分析並びに公的医療保険の充実こそが日本経済の繁栄と国民の安心に寄与している事を、経済人や政治家が医療について積極的に発言していると同様に、医療人も経済や政策に関して積極的に関わり発言し、行動すべきだと主張された。
日本の医療は、呼吸器疾患の治療にやや劣る以外は全て最高ランク(OECD health data2009)の治療成績で、治療成績はトップなのに、日本人の健康満足度は最低ランク(=不安)。恵まれているのに不安で、過剰な鵬険加入という消費行動に表れ、私企業である民間保険会社が集める保険料は、毎年50兆円にも及んでいる。(その内、生命保険や医療保険など人保険と分類される保険が9割を占めている)世界の生命保険の半分を日本人が占める程で、諸外国に比して異常に高い。多<の保険会社が「公的医療保険が崩壊するので我が社の医療保険に!」「高度先進医療は私的医療保険で!」と宣伝するが、私的保険が公的保険より効率的という神話に編されては駄目、高額医療費制度を知っていれば私的医療保険はまず必要ない。
DPCに関しても、萎縮医療の張本人であり、DPCなら経済分析ができるというのは、大量のデータを出させているからに過ぎず、本当は経済バイアスの無い出来高制度で行う方が、データの精度・信頼度ともに高いのが真実である。医師が公的保険から逃げ出せば、多くの一般国民が苦しむこととなる。我々勤務医の責務は、開業医とも協力し、公的医療への税投入とDPC撤廃を主張し行動すべき、と主張された。
シンポジウム1「医療再生の新しい取り組み」
「地域医療を守る会」の石本知恵子氏より、徳島県立海部病院の医療体制の存続の署名活動(全人口約27,000人の31%。8,400名の署名)を契機に、地域住民の地域医療を守る会の活動がスタートし、医師が働きやすい環境作りの取り組み活動報告があった。その内容は
(1)地域住民と病院職員との相互の理解促進のためのメッセージボードの設置、
(2)医師の応援派遣の実現に向けての直談判、
(3)活動資金を集めるためのバザー開催、収益金の一部で勤務医への健康枕の進呈、
(4)応援医師の長距離通勤の負担軽減を図るためJR特急電車の停車、臨時増発など、JR四国にダイヤ改正を求めた(ダイヤ改正を求める署名12,457人)、
(5)女性医師の子育て支援として、行政の協力を得て「親子サポートセンター」の発足、
(6)郷土料理などの差し入れ、
(7)コンビニ受診を止めさせる寸劇など住民の意識改革への取り組み等々。
「NPO法人のべおか市民力市場」の福田政憲氏からは、平成21年1月県立病院6名の医師退職を切っ掛けに、市民と行政の「協働」による地域医療を守る会の活動報告があった。県立病院の医師退職問題を取り上げ、周辺住民も含めた人々に医師派遣要望の署名活動を展開し、コンビニ受診と言われる時間外の不当な受診自粛や医師への感謝の心を持とうというキャンペーンの実施。要望するだけの活動では、何ら地域医療問題の解決にはならないことに気づき、市民営による「延岡市民協働まちづくりセンター」の整備、行政、医療機関、市民の責務を明記した全国の市町村では初の「地域医療を守る条例」を制定。
自治医科大学地域医療学センター助教小松憲一氏からは、地域医療を守るために立ち上がった住民と同じ思いを抱いている地域住民との交流を図るための「地域医療を守り育てる住民活動、全国シンポジウム2009」と地域医療を守り育てるためには、住民だけでなく、地域医療の一方の担い手である行政との協働も不可欠との観点からの「全国シンポジウム2010」の活動報告があり、地域医療を守るためには「医師が住みたいと思う町作り」が必要とした。また国の補助事業「患者家族との対話(補助)事業」234万円(国1/2、市町村1/2負担)の情報提供があった。
読売新聞東京本社編集委員前野一雄氏からは、社会が求める医療のあり方として、「読売提言、医療改革」に関しての解説があった。茨城県立中央病院長永井秀雄氏は、日本の医療の窮状は、もはや医療提供サイドだけの改善は無理であり、医療を受ける患者側への対策も不可欠であり、国民全員が義務として医療を継続的に学ぶ必要があると主張し、その狙いとモデル事業についての報告があった。
小学校5年生には「命の授業」として、救急処置、基本診察、妊娠と出産、一般看護の4分野を、中学生には「救急医療ABC」を中心に、喫煙と健康、思春期の心と体の3つをテーマとして医療教育モデル授業を年1回2年間試みたところ、医療学の義務教育導入について実現可能との感触が得られ、新教育指導要領の変更を強く主張された。
シンポジウム2「今、勤務医に求められる“医療連携"とは」
①地域医療を守るための取り組み-地域における救急医療-
大田原赤十字病院長 宮原保之
大田原赤十字病院は、平成16年臨床研修医制度の影響で医師不足となり、一般外来、入院、1次からの救急対応が困難となったが、地元医師会、行政、2次救急輪番病院と協議を重ね、平成17年より2次、3次救急に特化した。地元医師会による夜間診療所365日オープン、院内ベテラン看護師による24時間365日受付の電話相談、救急隊が疾患別、重症度別に搬送先を判断(救急トリアージ)、2次3次救急病院では看護師が来院患者を選別する(看護師トリアージ)。軽症患者の減少により捻出した余力は、平成22年度からのドクターカー稼働に回っている。救命センターの患者数は約7割減少したが、入院収益が上がっているため、収益は約1割減少に止まっている。救急医療の人口の整備は整いつつあるが、退院待機患者調査では、2週間待ちが73%と出口の整備に課題が残る。待機理由は後方病院の空き待ちであり、医療連携による、点ではな<面での医療機能分担が重要である。
②院内連携:男性医師一女性医師のチーム連携
大阪厚生年金病院産婦人科部長小川晴幾
「女性の働きやすい制度を作りさえすれば、女性は元気に働き、病院も元気になれる」という安易な発想や「どうして子育て女医だけが得をする制度に付きあわなければいけないのか。負担は我々に回ってくるだけじゃないか」という声もよく聞かれる。現場では、男性医師、子育てをしていない女性医師だけでなく、子育て中の女性医師も意識改革が必要である。全スタッフが各自のワークライフバランス(WLB)をお互いに理解し、助け合うチーム医療が必要となる。
検診は診療所で。分娩は病院でと役割分担し、診療所の医師に産科当直の応援や手術の応援を受けながら、救急母胎搬送を引き受ける「産科オープンシステム」の紹介があった。
③男女共同参画という連携から始まる病院環境の整備
自治医科大学腎臓内科教授 湯村和子
女性の医師国家試験合格者は、佐賀医大48%、高知医大47%、島根医大46%…東大・京大18%、東北大14%、平均すると30% 以上を女性が占めている。
女性医師の70%が男性医師と結婚するため、病院での女性医師支援は必然的に男女共同参画が必要となる。女性研修医が都会に集中してきている現状をみると、女性医師に好まれる大学が大切であり、復職支援ではなく、勤務医を継続する短時間勤務支援が良い。
常勤医が条件となっている院内保育所を短時間勤務も常勤扱いとする勤務環境の改善が必要である。朝日新聞に掲載された「日本再生には、女性の活用が成長の鍵」が、今、医療界にこそ必要との認識を示された。
④離島診療所が必要とする医療連携
沖縄県立中部病院プライマリケア・総合内科 本村和久
沖縄県には16の県立離島診療所があり、職員は医師、看護師、事務員各1人が通常で、沖縄県立病院出身者が離島医師となる。離島医師確保のキーワードは「教育」で、県立中部病院では、独自の研修システム(島医師養成コース)を持ち、現在まで700名余りの医師を育成している。離島医師の本音のアンケート調査では、休暇が取れない、研修の機会が少ないことに不満があるが。子弟の教育には心配していない。このアンケート結果を受けて、
(1)インターネットを用いた医療相談(静止画像を用いた遠隔医療)、
(2)離島診療所一基幹病院、保健所を結んだテレビ会議システム(2000年より運用)、
(3)3年間研修後、離島診療所に赴任する「島医師養成コース」研修プログラムの充実、
(4)研修のための代診医師派遣システムなど環境の整備など、沖縄の離島医療を支える人と人との医療連携の紹介があった。
⑤がん診療における在宅医療連携
要町ホームケアクリニック院長 吉澤明孝
がん治療の在宅医療の要点は、(1)傾聴、(2)共感、(3)手当て、(4)ユーモア、(5)緩和ケア(チーム医療)、(6)連携に集約される。在宅ケアとは、家族と楽しく生きるための「支える医療」で救急対応に医療連携が重要である。「顔の見える連携が取れなければ、患者のための連携は難しい」と病診・病病連携のそれぞれの問題点を指摘し、拠点病院と在宅医療との「併診」の必要性を強調された。
コメンテーターとして三上裕司日医常任理事から各シンポジストのまとめがあった。地域医療の最大の関心事は救急医療だが、入口だけではなく出口の問題も大切で、慢性期医療への取り組みも必要。院内連携では。女性医師も含めた現場全体の意識改革(お互いの思いやり)が大切。子育てには男性医師の参加・理解が必要で、主治医制よりチーム医療の方が良い。「島医師養成コース」など沖縄では中核病院の良好なバックアップがある。在宅医療は、尾道方式と言われる病院と診療所の連携が大事であるが、勤務医は介護保険、在宅医療への理解が乏しいのが問題。
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