(関連目次)→女性勤務医の労働条件 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
これを読んで、ああ、看護職も医師と同じだな!
と感じました。
病院ではバーンアウトして、
診療所の方が長続きする。
それはよく判るような気がします。
そしてその理由も、ほぼ同じです。
つまり、「どれだけ休みたい時に融通が利くか」ということは、
人間らしい生活を指しますし、「看護職の尊重」を
「医師専門性の尊重」と置き換えれば同じですo(^-^)o ..。*♡
看護職と医師の尊重のしあい。
当たり前のようですが、それが忙しすぎる病院では難しい。
だから人間関係がギスギスしてボロボロ抜けていくのでしょう。
産婦人科も同じような研究をするといいのではないかと思います!
特に若手には女医さんが増えてきているのですし、
これからの時代、参考になるのでは?
家庭との両立は大事です。
過去の研究も併せてどうぞ(>▽<)!!!!
【参考】
日本における病院勤務助産師のバーンアウトに関する研究
日本助産学会誌 Vol. 21, No. 1, 30-39, 2007
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjam/21/1/1_30/_pdf/-char/ja/
産科診療所に勤務する看護職の
就業継続意志に影響を与える要因
慶応義塾大学看護医療学部
田所 由利子
(日本助産学会誌 Vol. 22, No. 2, 198-207, 2008)
抄 録
目 的
本研究の目的は産科診療所に勤務する助産師,看護師,准看護師が就業を継続できる要因を明らかにすることである。
対象と方法
郵送法による自己記入式質問紙を用いた横断的記述研究である。対象は分娩の取り扱いのある136の産科有床診療所に勤務する看護職1,632人である。就業継続意志と職務満足、職場の要因についてのデータを収集し就業継続意志との関連について検討した。
結 果
有効回答は122の診療所に勤務する看護職1,037人(有効回収率63.5%、助産師334人,看護師282人,准看護師421人)であった。就業継続意志のある者の割合は各職種とも80%以上と高率であった。職務満足度尺度の合計点数は各職種とも就業継続意志ありの者は就業意志なしの者と比べて合計点数が有意に高かった。各職種において,就業継続意志があることと「生活との両立」に満足していることとの有意な関連が認められ,そのオッズ比は2.2~2.7倍であった。助産師、准看護師においては医師と看護職の関係・専門職としての自律・看護管理の内容から構成されている「看護職の尊重」に満足していることと就業継続意志があることとの有意な関連が認められ,そのオッズ比は助産師4.5倍,准看護師3.8倍と,特に助産師において高値であった。看護職全体では他に「助産師複数いる診療所」に勤務していること,「仕事の意義」に満足していることと就業継続医師があることとの有意な関連が認められた。
結 論
産科診療所に勤務する看護職の就業継続意志に関連する職場要因として、「生活との両立」が行え,「看護職が尊重」され,「仕事の意義」を感じられる職場,助産師が複数いる職場であること,助産師においては特に「看護識の尊重」が重要であることが示された。
Ⅰ.緒 言
女性にとって妊娠・出産はかけがえのない体験である。平成17年度の合計特殊出生率は過去最低の1.26となり(厚生労働省,2006),出産体験はより貴重なものとなっている。妊娠・出産の体験が貴重となればなる程,知識や理解不足,それらに伴う不安が増し質の高いケアがより必要とされる。そのため,妊娠・出産する女性の援助を自律して行う専門職である助産師のケアがより求められる。しかしながら就業助産師の不足・偏在により助産師のケアが必要な助成へ,ケアを十分に提供できていない現状がある。
2005年度の日本の出産場所は施設内99.8%であり,その内訳は病院51.4%、診療所47.4%(厚生労働省、2007)である。つまり出産する女性の半数は診療所を出産の場として選択している。しかし就業助産師の就業先は病院69.4%,診療所16.3%であり(厚生統計協会,2007)、診療所に就業する助産師は病院に就業する助産師の4分の1と病院に偏在している。そのため病院と比べて診療所に勤務する助産師が少なく、安達&安積他(2004)の兵庫県における調査において、病院と診療所では1ケ月の分娩件数が同程度であっても診療所の方が助産師の雇用数が少なかった。妊娠・出産する女性に1人の介助者や少数の助産師がグループを組み,継続して支援することは分娩時の医療的介入の減少や妊娠・分娩体験の満足感を高めることが明らかにされている(Biro&Waldenstrom et al, 2003; Biro&Waldenstrom et al, 2000; Hodnett &Gates et al, 2003;Homer&Davis et al, 2002; Page &McCourt et al, 1999;Waldenstrom&Brown et a1, 2000; Waldenstrom &McLachlan et al, 2001; Waldenstrom &Turnbull,1998)。したがって診療所の助産師不足は女性へのケアの質・量,女性の心身に影響をもたらすと言える。
一方,診療所において助産師を雇用する意向がないわけではない。意向があっても助産師の応募がなく雇用できない現状がある(安達&女積他,2004 ; 滋賀県,2005 ;下敷領&井上他,2005)。 この背景には助産師の就業先の偏在だけではなく,就業助産師の不足(茅島&島田,2004)や2万人程いるとされている潜在助産師(高田,2001)の問題がある。そこで助産師養成数の増加や潜在助産師の活用・産科診療所への就業サポート事業などの調査・研究や対策,提言がされている(遠藤&葛西他,2006 ; 加藤&片桐他,2005 ; 茅島&島田、2004 ; 日本看護協会,2006a・b ; 滋賀県,2005下敷領&井上他,2005)。
ところで,産科診療所において奸産回帰のケアを行っているのは助産師だけではない。滋賀県(2005)によると,産科を標榜する有床診療所における常勤の看護職平均数8.2人に対し,常勤の助産師は1.2人であった。つまり産科診療所のケアは助産師,看護師,准看護師により支えられていた。
日本看護協会(2003)の調査によると診療所に勤務している看護職は病院に勤務している者と比べて臨床経験年数が長く,転職経験のある者・子どものいる者の割合が高いことが明らかになっている。つまり診療所に勤務している看汚職は臨床経験けかな者が多く,かつ,家庭を持ちながら就業を継続できていると考えられた。
日本の出産の半数を支える産科診療所においてケアを支えているのは助産師,看護師,准看護師である。今後も産科診療所のケアの質を維持するためには,助産師の確保と助産師,看護師,准看護師が就業を継続できる環境が整えられる必要かおる。産科診療所に勤務する助産師の不足に対しては,調査・研究がされていた。しかし産科診療所に勤務する看護職の就業継続に関する調査・研究は見当たらなかった。産科に限らない診療所の調査・研究も,病院に勤務する看護職のデータに統合されているものが殆どであり,診療所に焦点を当てたものは見当たらなかった。診療所に勤務する看護職は病院に勤務する看護職と比べ,臨床経験年数が長く,家庭を持っている者が多いという違いがあり,病院に勤務している看護職とは異なる要因で就業を継続できていることが考えられた。そこで,産科診療所に勤務する助産師,看護師,准看護師の就業継続に関連する職場要因を明らかにすることを目的に研究を行った。
用語の定義(略)
Ⅱ.研究方法 (略)
Ⅲ.結 果
1.質問紙の回収率
研究協力の了承を得られた診療所に勤務する看護職1,632人と各施設の看護管理職へ看護職用と管理職用の質問紙を配布した結果,返信があったのは122施設に勤務する看護職1,064人,管理職113施設であった。分析に使用したデータは回答に不備のない看護職1,037人(有効回収率63.5%,助産師334人,看護師282人,池谷良師421人),管理職113施設(有効回収率83.1%)である。
2.診療所の概要
標榜している診療科は,産科以外では婦人科が106施設(93.8%)と最多であり,他に多かったのは小児科19施設(16.8%),内科16施設(14.2(柘)であった。産科のみの標榜は6施設(5.3%)と少数であった。病棟を構成している診療科は,産婦人科病棟が65施設(57.5%),産科単独病棟は46雁股(40.7%)であった。病床数の平均は14.3±4.4床,この内座付病床にあてているのは平均13.6±4.5床であった。
助産師外来の設置に関する考えでは,「設置の予定がない」のは57施設(50.4%),「既に設置している」28施設(24.8%),「設置したい」25施設(22.1%)であった。
年間の分娩件数は,300~399件が25施設(22.1%)と最多で,次いで400~499件と200~299件が共に18施設(15.9%)であり,300~399件前後の診療所が多かった。600件以上も20施設(17.7%)あった.推進している分娩方針は,自然分娩のみ推進しているのが93施設(82.3%)と多くを占めていた。年間の帝王切開率は11.6±7.5%であり,18%未満が98施設(86.7%)と多くを占めていた。
勤務している看護職員数の平均は15.3人であった。職種別では助産師5.1人,看護師3.8人,准看護師6.3人であった。助産師が2人員|こ勤務している施設は89施設(78.8%)あった。各勤務帯における助産師の配置人数については,考慮していないのが49施設(43.4%),助産師が「1人」はいるようにしているのは48施設(42.5%),「2人以上」は7施設(6.2%)であった。
3.基本属性
看護職の平均年齢は38.6土10.5歳であった。婚姻状態は既婚664人(65.0%),未婚358人(35.0%)であり,既婚者が半数以上を占めていた。 fどもの有無は,子どもがいる623人(60.9%),いない400人(39.1%)であった。健康状態は健康747人(73.2%)),「何らかの症状はあるが治療はしていない」136人(13.3%),治療中137人(13.4%)であった。通勤時間は,30分未満が788人(76.7%),30分以上1時間未満210人(20.4%),1時間以上30人(2.9%)であり,自宅から近い診療所で働いている者が多かった。
臨床での平均経験年数は14.1±9.0年であった。転職の経験は,経験あり819人(79.9%),経験なし206人(20.1%)であり,多くの者に転職経験があった。
基本属性は職種による差は小さいものであった。
4.就業継続意志(表2)
看護職の内,勤務している診療所において今後も働き続ける意志がおる(以下継続意志あり)のは827人(83.0%),働き続ける意志がない(以下継続意志なし)のは169人(17.0%)であった。これは職種による差は認められなかった。
職務満足度尺度の合計点数の平均は,継続意志ありの者は129.0上回6点,継続意志なしの者は106.9±18.2点であった。継続意志意ありの者は,継続意志なしの者と比べて合計点数が有意に高かった(t=13.876 p=.000)。各職種においても同様に,継続意志ありの者は継続意志なしの者と比べて有意に合計点数が高かった(助産師t=8.484 p=.000,看護師t=6.543 p=.000,准看護師t=8.819 p=.000)。継続意志と各期のケアにおいて自分自身が判断に関わる割合との関連は認められなかった。
継続意志との開運を変数間の影響を除いて検討するために2項ロジスティック回帰分析を変数強制投入法により行った。反応変数を継続意志とし,説明変数を分娩方針,助産師の複数雇用の有無,各勤務帯の助産師の配置人数,助産師外来の設置に関する考え,継続教育を活用できる体制,妊娠期~産褥・新生児期において行っているケア数,職務満足度尺度の各下位尺度得点,役職の付加,夜勤の有無とした。助産師の複数雇用の有無に開しては助産師が複数雇用されていない診療所は113施設中24施設であり,助産師が複数雇用されていない診療所に勤務している助産師は303人中7人のみであったが,他職種・看護職全体の傾向を見るために投入することとした。
結果,有意であった変数について述べる。助産師では「看護職の尊重」(オッズ比4.465倍p=.001)と「生活との両立」(オッズ比2.653倍p=.009)に,看護師では「生活との両立」(オッズ比2.735倍p=.009)に,准看護師では「看護職の尊重」(オッズ比3.779倍p=.001)と「生活との両立」(オッズ比2.249倍p=.004)に満足していることであった。看護職全体では他に,「助産師が複数雇用されている診療所」に勤務していること(オッズ比2.223倍p=.016),「仕事の意義」に満足していること(オッズ比1.671倍p=.022)についても,継続意志があることとの関連が認められた。
上記より,各職種とも「生活との両立」に満足している者,助産師と准看護師では「看護職の尊重」に満足している者において有意に継続意志があることが認められた。特に助産師は「看護職の尊重」が4.5倍と高値であった。
5.実施しているケア,職務満足度,勤務状況
1)実施しているケア
看護職の内,妊娠期~産褥・新生児期の各種ケアを行っている者の割合は,妊娠期では妊婦健診67.7%,妊婦指導48.0%であった。分娩期では分娩第1期74.3%,分娩第2・3期69.1%,分娩第4期71.9%であった。産褥・新生児期では褥婦のケア89.3%,新生児のケア91.3%,入院中の母乳育児の援肋86.1%,退院後の外来での母乳育児の援助48.4%であった。
褥婦のケアや新生児のケア,入院中の母乳育児の援助は,診旅所に勤務する看護職の約9割と殆どの者が実施していた。各期9つのケアを種類数として換算した結果,平均6.5±2.4種類のケアを行っていた。
2)職務満足度
職務満足度尺度の各項目は逆転項目の処理後1~5点の配点て,職務満足が高いほど点数が高くなるように配点されている。尺度を合計した点数の取り得る範囲は38~190点である。尺度の合計点数の平均は124.7±19.7点であった。
各下位尺度の得点は「看護職の尊重」45.3±9.6点,「生活との出立」18.9土4.9点,「看護股間の関係」22.2±3.8点,「給与」10.0±3.6点,「業務は」10.5±3.0点,「仕事の意義」17.7±2.1点であった。
3)勤務状況
夜勤の有無は,夜勤あり759人(74.0%),夜勤なし267人(26.0%)であった。外来での勤務をしているのは670人(65.0%),していないのは360人(35.0%)であった。病棟での勤務をしているのは886人(86.0%),していないのは144人(14.0%)であった。外来と病棟の両部署に勤務しているのは525人(51.0%),外来,病棟のどちらかのみに勤務しているのは505人(49.0%)であった。診療所では,単数の看浅識は外来と病棟を行き来しながらケアにあたっていた。役職については,師長・副責任者110人(10.7%),スタッフナース922人(89.3%)であった。継続教育を活用できる体制であるか「全くそうではない」1点~「全くそうだ」5点の5段階尺度で尋ねたところ,その平均は3.3±1.3点てあった。
これらは職種による差は小さいものであった。
Ⅳ.考 察
1.就業継続意志
本研究において継続意志のある者の割合は職種による差は認められず,全職種の内83.0%に継続意志があることが認められた。300床以上の総合病院に勤務する看護識501人を対象にした塚本&野村(2007)では,近い将来(1~2年)における継続意志を尋ね,勤務している病棟での継続意志がある者は44.1%勤務している病院での継続意志がある者は21.8%と半数を切っていた。したがって診療所に勤務している看護職は病院に勤務している看護識と比べ,働き続けたいと考えている者が高率であった。
2.就業を継続できる要因
既存研究において離職・離職意志は個人的要因よりも職場環境に影響を受けると指摘されている(Coomber&Louise,2007; lrvine &Evans,1995; Muel-ler&Price,1990; Strachota &Normandin et al, 2003)。つまり診療所に勤務する看護職が就業を継続できる要因を考える時,以下で述べる継続意志と関連が認められた職場の要因が重要と言える。
1)生活との両立
本結果において継続意志がある者は「生活との両立」に満足している者であることが認められた。これは本結果における看護識の内,子どものいる者が60.9%と,病院に勤務している看護職の50.9%川本看護協会,2003)と比べても高いことが影響していると考えられる。なぜなら「生活との両立」は,休暇のとりやすさや労働時開か適切か否かといった項目から構成されている。これらは子育てをしている者にとって,子どもの急な発熱や学校行事などによる休み,子育てに費やす時間を確保できるかどうかであり,仕事を続けられるか判断する上での重要な要因だからである。
ところで生活と両立する上で夜勤との兼ね合いは重要な課題である。本結果において夜勤を行っている者は74.0%と高率であったが継続意志がある者は83.0%と高率であった。つまり診療所に勤務する看護職の継続意志は夜勤の影響を受けていないと推察される。
上記より,看護職が就業を継続できる要因は子どもを育てながらでも働くことのできる,「生活との両立」ができる職場,適切な労働時間であり,希望の休みが確保される職場と言える。
2)看護職の尊重・仕事の意義
本結果において継続意志がある者は「看護職の尊重」に満足している者であることが認められた.中川&林(2004)は,Stamps&Piedmont et al (1978)の「看護婦の職務満足度尺度」尾崎日本語版(1988)を使用した96の文献レビューを行っている。 この際レビューされた文献の研究対象は病院に勤務する看護職が殆どである。それによると,継続意志がある者は特に「医師・看護婦間の関係」,「看護婦相互の影響」に満足している者であった。「医師・看護婦間の関係」を構成する質問項目は,本研究で使用した尺度においては「看護戦の尊重」に含まれている。 したがって診療所に勤務する助産師,准看護師は病院に勤務する看護職と同様に,就業継続を判断する際に医師との関係が影響していると言える。
また,看護職全体の分析において「仕事の意義」に満足している者は継続意志かおることも認められた。つまり,診療所に勤務する看護戦が働き続けられる要因は,生活と両立できるだけではなく仕事の大切さや求められていることを感じられるかといった点も重要であると推察される。
「看護職の尊重」は他に,看護職の判断や意見が尊重される,ケアの意志決定を行えるといった「専門職としての自律」,上司の支援があるといった「看護管理」に関する質問項目を含んでいる。そして特に助産師において「看護職の尊重」への満足と継続意志とのオッズ比が4.5倍と大きかった。このような結果となったのは,助産師においては医師と看護職の関係以外に専門職としての自律が影響したためと考えられる。
Lake&Friese(2006)は,専門性が活かせる職場では看護職の定着が促されると指摘している。遠藤&葛西他(2006)の調査では,初位に勤務している助産業務経験5年以上と想定される助産師800人の内,「助産師と医師とのチームワーク」,「助産師の専門職としての判断や意見の尊重」に満足しているのは,それぞれ60%,70%であった。つまり,病院で就業を継続している助産師の多くが,助産師と医師は良好な関係を築けており,助産の専門性を発揮できていると捉えていた。これは,診療所に勤務している助産師において,医師との関係,専門職としての自律の内容を含む下位尺度「看護職の尊重」が就業継続意志と関連していたことと合致している。
したがって助産師は,病院に就業している者と同様に,医師との関係が良好で,助産の専門性を発揮できる,ケアに関して自律して意志決定できる職場においては,働き続ける意志をより強く持つことが示された。これは日本看護協会(2006a)の調査において助産師が診療所を離職した理由として,経営(看護)理念や方針が多く挙がっていることからも納得できる結果である。更に診療所は小規模の組織であるがゆえに院長である医師の方針によって医師と看護職の関係,助産の専門性を発揮できる職場であるかが決まってくる。この背景も本結果の助産師において,「看護職の尊重」と継続意志との関連が強く出た仰山の1つと考えられる。上記より,看護職が就業を継続できる要因は医師との関係が良好な職場,特に助産師については助産の専門性を発揮できるような自律してケアを行える職場と推察される。
3)助産師の複数雇用
本結果では助産師が複数雇用されている診療所に勤務する助産師が少なかったことから「助産師の複数雇用」に関する分析には限界がある。しかし看護職全体の分析において,継続意志があることと「助産師が複数雇用されている診療所」に勤務していることでは有意な関連が認められた。遠藤&葛西他(2006);日本看護協会(2006a)において,助産師が診療所に勤務する場合の希望条件として助産節の複数雇用が挙がっている。つまり「助産師が複数いること」は助産師が診療所に就業する場合の希望条件のみではなく,看護職全体において就業を継続できる要因であることが示された。
3.基本属性・勤務状況
継続意志や職務満足との関連が指摘されている,役職の有無や夜勤の有無,年齢などの基本属性・勤務状況(竹本&拝観,2004 ; 中川&林,2004)については,職種による差は小さいものであった。したがって,先に述べた継続意志,継続意志と関連のあった変数に対して職種間の差は影響していないと言える。
4.今後の課題
本研究では就業継続意志と診療所に勤務する看護師,看護師,准看護師の3職種の総務満足度等を検討した。今後,診療所の病床数や分娩件数,病棟の診療科など診療所の概要から検討していく必要がある。
V.結 論
1.分娩の取り扱いのある産科診療所に勤務する看護職の内,現在勤務している診療所での就業を継続する意志がある者は83.0%と高率であった。
2.職務満足度尺度の下位尺度「生活との両立」と就業継続意ぶとのオッズ比は,助産師2.653倍(p=.009),看護師2.735倍(p=.009),准看護師2.249倍(p=.004)であり,「生活との両立」に満足していることと就業継続意志があることとの関連が認められた。
3.職務満足度尺度の下位尺度「看護職の尊重」と就業継続意志とのオッズ比は,助産師4.465倍(p=.001),准看護師3.779倍(p=.001)であり,「看護職の尊重」に満足していることと就業継続意志があることとの関連が認められた。
4.各職種において就業継続意志と有意であった変数以外に看護職全体において,就業継続意志と「助産師が複数いること」とのオッズ比2.223倍(p=.016),職務満足度尺度の下位尺度「仕事の意義」とのオッズ比1.671倍(p=.022)であり,「助産師が複数いる診療所」に勤務していること,「仕事の意義」に満足していることと就業継続意志があることとの関連が認められた。
いつもいろいろな視点での記事のアップをありがとうございます。
診療所に勤めて良かったと思っている一人ですが、私自身の理由としては「適正な人数の看護ができる」ことです。
8床を一人夜勤(分娩時には看護師さんをコール)体制で忙しい時は本当に休む暇なしですが、数組のお母さん赤ちゃんというのが夜間の世話、授乳や赤ちゃんのあやし方などを一緒に見るのには最適だと思いました。
(今の診療報酬では病院の看護数の増加は難しいと思いますが、少なくとも新生児数を患者数にカウントして夜勤者数を増やしていけると良いのではないかと思います。)
また、病院勤務だと中堅になると役職や委員会など病棟外の仕事が増えます。本当はその年代が一番、分娩や産後のケアーの自身の経験を深めたいのではないかと思いますが、その葛藤も病院での仕事を続けるかどうかに影響していると思います。
「生活との両立」に関しては、診療所でもいろいろだと思います。ぎりぎりの人数なので、30時間ぐらいの連続勤務や突然の呼び出し・応援もあります。子育てが終わったスタッフが多いです。
大規模な病院に比べ、「自分が必要とされている」実感もあるのではないかと思います。
投稿情報: ふぃっしゅ | 2009年2 月25日 (水) 13:20