(関連目次)→産科医療の現実 目次 産科崩壊特集!
(投稿:by 僻地の産科医)
かなりまともな論評が出てきました。
評価できるものだと思います(>▽<)!!!
ただ、現場の意見としては、
もう臨界点はすでに超えていると思います。
努力で支えられるものはもう何もありません。
【参考】
医療クライシス:妊婦死亡が問うもの/上 少なすぎる医師数
毎日新聞 2008年12月9日
http://mainichi.jp/select/science/news/20081209ddm041040075000c.html
医療クライシス:妊婦死亡が問うもの/中 見つからぬ搬送先
毎日新聞 2008年12月10日
http://mainichi.jp/life/edu/child/news/20081210ddm041040077000c.html
医療クライシス:妊婦死亡が問うもの/下 産科救急
毎日新聞 2008年12月11日
http://mainichi.jp/select/science/news/20081211ddm041040051000c.html
記者の目:東京の妊婦死亡で医療界と行政に望む
清水健二
毎日新聞 2008年12月18日
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20081218k0000m070149000c.html
「妻が死をもって浮き彫りにした問題を、力を合わせて改善してほしい」。脳出血を起こした36歳の妊婦が10月、東京都内の8病院に受け入れを断られた末に死亡した問題で、涙をこらえて気丈に語った夫(36)の姿が忘れられない。その言葉にどう応えればいいのか、厚生労働省の担当記者として自分なりに考えてきた。
いくつかの問題点と解決策は朝刊の連載「医療クライシス」(12月9日から3回、東京、大阪、中部本社版)で示したつもりだが、取材して強く感じるのは、産科救急医療の危機的状況が、現場の医療関係者以外に十分に伝わっていないことだ。不祥事を隠すな、という意味ではなく、再発防止策を皆で考えるために、一定の「受け入れ拒否」事案を報告・開示する制度の創設を求めたい。
私は今回のケースに、現在の産科救急医療体制の限界を感じている。
日本の乳児死亡率は1000人当たり2・6人(06年)と世界一低い。経済協力開発機構(OECD)加盟国中最低レベルの医師数でそれを成し遂げたのは、産科医同士が緊密な連携を取り、独自の救急ネットワークを作ってきた努力のたまものと言っていい。
仕組みは地域で異なるが、東京では都内を8ブロックに分け、命の危険がある患者は各ブロックの総合周産期母子医療センターが受け入れ、無理な場合はセンターが別ブロックの病院を探す取り決めだった。「最後のとりで」の総合センターが受け入れを断ってもいいことになるが、「満床で無理に受け入れるより、空いている施設を使った方が安全」という考え方は、それなりの合理性がある。
ただし、このネットワークは、医師や病院に余裕があってこそ成り立つ。リスクの高い低体重児が生まれる率は30年間で倍増したのに、産科医数は最近10年で1割以上減った。病床が満杯で受け入れ不能が多くなる一方、救急隊が受け入れ先を探す一般救急と違い、通常はかかりつけ医がいる産科の救急では基本的に医師個人が病院を探すため、産科は患者を診ながら病院探しもしなければならない。過酷な勤務で産科医が減り、残った産科医の負担がさらに増す悪循環。都内の総合センターは、母体搬送の5~7割を断っている状態だった。今回のような悲劇はいつでも起こり得た。
問題の根本が、医師数の絶対的な不足にあるのは間違いない。だが、ネットワークが破綻(はたん)しないよう、できる工夫もある。開業医の活用、救急など他診療科との連携、搬送先を速やかに決めるための調整役の配置などだ。しかし、都も厚生労働省も、結果的に有効な手を打ってこなかった。
その背景には、行政の認識と情報の不足があると思う。例えば医療事故は、厚労省所管の財団法人「日本医療機能評価機構」への報告が、大学病院などに義務付けられている。報告が少な過ぎるとの指摘もあるが、機構は事故情報を整理して医療機関に伝え、再発防止に役立てるという形はできている。だが、急患の受け入れを断ることは医療事故に当たらないため、行政にも機構にも情報は上がってこない。しかも、一般救急なら救急隊を持つ消防本部がある程度全体像を把握できるのに対し、医師個人が病院を探す産科救急では全体像が見えにくい。表面化するのは事例の一部に過ぎない。
「急患受け入れ拒否」が報道されると、医療界の一部から「医療崩壊を助長する」といったメディア批判が必ず出る。それは筋違いだと思う。誰かに強引に責任を押しつけるような報道は慎むべきだが、報道がなければ関係者は危機感を共有できず、再発防止策も立てられないからだ。また、医療を受ける側に、地域の産科を守る自覚と配慮を促すためにも、現状を積極的に知らせる必要がある。
厚労省は、受け入れ先が決まらなかった患者が死亡したり重い後遺症が残ったケースについて、医療機関に自治体への報告を義務付ける法整備や行政指導に乗り出すべきだ。「搬送に1時間以上」「拒否が5病院以上」のような線を引いても構わない。報告があった事案は、各都道府県に設けられている周産期医療協議会で検証し、結果を遺族や患者本人に伝える。国民にも匿名の形で開示するのが望ましい。都内のある救命救急センター長は、産科医療を「閉じた世界」と表現した。現場の産科医に任せるだけでは、今後、ネットワークの維持はますます難しくなる。体制立て直しの第一歩として、行政と医療界全体で情報の共有化を進めてほしい。
10リットルまでの水しか入らないバケツには、11リットルの水は入りきれません。
1リットルの水がこぼれてしまった事で、周囲の人間が「なんだこのクソバケツ!」と足蹴にしたら、
バケツが凹んで、10リットル入れられたはずの物が、9リットルまでしか入らなくなりました。
…っていうのが、今の日本の医療崩壊(ていうか、マスコミによる医療破壊)の現状。
教訓とかそういう以前の問題。
…。
……。
………。
…マスコミの医療破壊は大成功ですね。
http://punigo.jugem.jp/?eid=500
http://punigo.jugem.jp/?eid=495
http://punigo.jugem.jp/?eid=491
投稿情報: 都筑てんが | 2008年12 月21日 (日) 08:18
自分としては、
「お前が言うな」
「何このマッチポンプ」
って感じなんですけどね…。
したり顔でマトモそうな事を言う前に、福島や奈良の医療を破壊した事を詫びるのが先だろう、と。
これだからマスコミはマスゴミと呼ばれるんですよ。
投稿情報: 都筑てんが | 2008年12 月21日 (日) 08:20
先生は偉いですね(>▽<)!!!
私は怒りを溜めたままでいることができないんです。前向き、と言われる所以ですが、すくなくともこの文章に関してのみは間違っているところはないかな~と思います。
ただね、みんなやりすぎたんですよね。
最近、思うのですけれど、
「自分の意見を他人に数多く伝えられる立場、ある程度の信頼性がありそうだと思われている」というのは権力なんだなぁと思います。
(自分のブログも含めてですが。)
だから、ちょっとイヤになってしまいますけれど(笑)。私はしがないただの産科医で、オピニオンリーダーなんかじゃないし、自分の意見なんて自分の体験した中でのことしかいえないので。
いろいろご意見いただきますが、「間違っている」とか「間違っていない」とか批判されたりするのもちょっと、もうイヤ。たくさんです。
私は自分の興味のあるものだけ書いていたい、ただの記事スクラップブックブログを作っているだけなのに。
本題に戻りますが、現場の記者さんたちはやっぱり、他人事なんですよね。
だから 「思いつきでものをいう」訳ですが(更に、思い込みで事実まで曲解する方々もいますけれど)この記者さんがどうとか、そこまで調べる気力もないし、青木絵美さんに関してだって、「報道は間違っていた」けれど、20台ペーペーの女の子が、記者として大局的に間違ったことを書いてしまったことで、ご本人を責める気にはなれないんです。
「おまえがゆーな」
確かにそのとおりかも。
でも彼らも確かに、訴訟におびえながら書いている人たちでもあるんですよ。知っていましたか?
(やはり名誉毀損とか、自殺されるとかそういうのは多いそうなんです)
共感してもらえる所、実はあるんですよね。記者さんも人間です。
医師にも結果的に見て間違いがある。
報道にも結果的に見て間違いがあります。
でもそれをいがみ合っていても始まらない。
いい記事は認めようと思っています。
> 誰かに強引に責任を押しつけるような報道は慎むべき
確かにその通りです。
たらいまわしと言われるのは心外でも、事実の報道はもう、そのまま読者が飽きて「そういうものだ」と受け入れるまでガンガン報道していただきたいくらいです。今となってはね。
それで、もう諦めてほしいんです。
救急で助からないのは当たり前だと。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年12 月21日 (日) 21:31
もうね、私も諦めたいくらいなんですよ。
産科医師、みんなの気分じゃないかな。
諦めて、
「運のいい人だけが助かりますよ」
という風潮になってほしい。
「私達が抱えられる人数だけの人間だけ保証します」
としてほしい。もうそれで許して欲しいんです。
それでないと、もう続けられないんです。
泣き言だと思っていただいて構いません。
もう続けられないから、本当に心から国民のみなさま全員に「どうこうしよう」なんて“自称 改善策”なんて、意味のある時には見もしてくれなかったくせに。もういわないでほしい。心から諦めてほしいです。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年12 月21日 (日) 21:35
産科や周産期に携わる先生方、労働条件については、言葉は悪いですが、“自業自得”の部分もあるんですよ。他科医からみたら、あの労働強度・当直回数はあり得ないですから。さらに、当直でない日も、たいていはon callですし。あれだけ病院にかかわったら、365日24時間拘束でもいいのかな、とアホな病院管理者は妄想をいだいちゃうでしょうね(W。
だから、おっしゃるとおり、できないものはできない とするしかないと思います。でないと、先生方ご自身が、肉体ないし精神を、本当に病んでしまいます。そこまで自己犠牲をはらっても国公立病院では、ビビたる金銭的評価すらされません。社会も評価しません。だって、何かあれば、マスコミによるメディアあげての袋叩きと、民事・刑事訴訟がまっています。
ただ、公的医療費と医師を増やせば解決するとは思えません。生命という究極の要求ですから、皆保険制度(あるいはいちおう自由診療の出産ですが、保険が決めてる出産一時金)でコストを固定した状態では、相手からは、いくらでも要求されます。コスト、特に自己負担が同じなら、普通に考えれば、要求しないだけ損 じゃないですか。。。 普通の社会行為は、要求すれば自己負担が応分に増えるので、どこかで要求にストップがかかるものです。吉牛の支払いで、フランス料理を食べさせろ という人はいません(いても、相手にされません)。
先生方も、がんばったところで、やればできるじゃん ということで、さらにもっともっとと要求をされる あるいは できるんならこれだけお金をかけるのはもったいないとコストを切り下げられるだけでしょう。平成の歴史がそれを証明してきました。
ツライ言い方ですが、世界の大多数では、公的医療は最低限ココまでは国で面倒見ます という内容を保障しているに過ぎません。ヨーロッパは確かに受けられる医療内容は最後は高度で、自己負担は安価ですが、そこまでたどり着くには、莫大な待ち時間をかけて、マジノ線ないし太閤築城当時の大坂城に匹敵する、果てしなく強固なアクセス制限を突破しないとなりません。それがイヤなら、自由診療の病院に行くしかありません。そういう並立システムを大多数の国民が容認しているようです。でも、マスコミはそういうの絶対報道しませんよね。
いい加減、できないものはできない と明言し、それならば、何をどう選択してもらうか? と社会に問いたださないとダメでしょう。回答は、とどのつまり、社会体制、つまり行政・司法と(行政を選挙で選んだ)国民の問題です。
ちなみに、歯科は一足はやくシステムの変貌をとげつつあります。保険適応がない審美矯正やインプラントばかり注目されていますが、保険適応がある治療行為であっても、大きな変化が生じています。たとえば、もっとも技術差が反映される根管治療の場合、診断・治療技術に自信のある先生方は、歯科用マイクロスコープを使いラバーダム防湿下に治療を行われますが、とても保険の診療報酬ではそんな手間隙・時間のかかる治療は不可能ですから(赤字でクリニックがつぶれます)、保険医の指定をうけず、自由診療にすでに移行されていますね。三大都市だけでなく、地方でも、そこそこの規模の都市には、そういう先生方がすでに何人かおられ、収支面でもクリニックの運営がなりたっているようです。
投稿情報: 冬の嵐 | 2008年12 月22日 (月) 01:38
僻地の産科医先生のコメント読んだら、やるせない気持ちになります。
産科医がそこまで追い込まれているのかと・・・善人ずらして、いまさら何よ!とおっしゃる気持ちは理解できます。
産科医療のお手つだいができないのが、残念ですが。
話は変わりますが、心臓移植女性の妊娠・出産・家庭生活・・・スタンフォード大学心臓移植ユニットのベテラン循環器内科女医のDr.シャロン・ハントが論文を出しています。
絶対に子供を生むことなんてあきらめていた女性が免疫抑制剤を飲みながら出産する内容の論文です。
患者の女性は、大変に感謝しています。
循環器内科医だけでなく、産科医も患者からたいへんに感謝されます。
患者から感謝され、産科医もやりがいを感じて仕事を続けられる、当たり前の環境が日本の産科医療にも継続されることを祈ります。
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年12 月22日 (月) 11:25