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(投稿:by 僻地の産科医)
臨床婦人科産科2008年11月号からですo(^-^)o ..。*♡
特集は 子宮内膜症治療の最前線−症状に応じた治療戦略
子宮内膜症の痛みとQOL
愛育病院産婦人科
安達知子
(臨床婦人科産科 2008年11月号 Vol.62 No.11 p1417-1421)
はじめに
子宮内膜症は近年増加傾向にあり,無症状から急性腹症に至るまで多彩な症状を示す.月経痛をはじめとする種々の痛み,不妊,卵巣嚢胞形成やその悪性化の可能性など,生殖年齢の女性に心身ともに著しくQOLを低下させやすい疾患である.治療は,鎮痛剤,ホルモン治療,手術治療,不妊治療が中心となるが,本症を完治させることは困難であり,上手に症状に対処しながら,本症の進行を抑制していくことが重要である.本橋では特に痛みとQOLについて解説する.
子宮内服症の症状
子宮内膜症患者の自覚症状については,日本子宮内膜症協会(JEMA)が定期的に患者に対してアンケート調査を行っている.2006年の子宮内膜症と確定診断された女性413名に対する過去5年間の経験のデータで,月経痛は約90%に認められており,ほかに月経時以外の下腹部痛69%,その他,腰痛,排便痛,性交痛などの痛みも,それぞれ64%,62%,46%と頻度が高い.また,消化器系症状や不妊の訴えも多く,しばしば子宮腺筋症や子宮筋腫を合併するため,過多月経,不正出血,貧血なども認められやすい(図1).
月経痛の程度と期間および治療後の再発
女性労働協会が2004年に行った働く女性の健康に関する実態調査によると,月経痛は生殖年齢の女性の75%に認められ,さらに鎮痛剤を服用して日常生活ができる,あるいは鎮痛剤を服用しても会社を休むくらいの月経困難症の女性は25%以上に認められていた.一般的に月経痛の持続期間は月経の始まる直前ないしは始まってから2~3日くらいの短期間である.しかし,子宮内膜症の場合は図2に示すごとく,毎日下腹部痛のあるものが5~7%,2週間から3週間の持続が32~36%と,約40%の女性が1か月の半分以上の期間,痛みに苦しんでいる.
患者自身に対する影響
症状が及ぼす影響からは,約60%の女性が普段通りの家事ができない日がある,寝込む日があるなどと回答しており,落ち込んだり無気力になることが多い,人生の可能性が狭まったような気がする,人との付き合いに支障が出る,感情の起伏が大きくなった,女性としての価値が下がったような気がする,などのネガティブな項目も25~50%の女性に認められ,対人関係の支障やこれを避けるために行動などを控えてしまう様子がうかがわれる.また,セックスが痛くてつらいという女性も20%に認められ,子宮内膜症による症状が女性のQOLを大きく障害していることが考えられる(図3).
月経痛・月経困難症への対応
軽症例では,表1に示すような原発性月経困難症への対応と同じく,鎮痛剤,運動療法,生活指導などで軽減するものもあるが,これらの対応で十分な除痛が得られないものも多い.治療法としては,大きく薬物療法と手術療法に分かれる.しかし よく患者の話を聞き,特に痛みについては,治療によって軽快する時期があっても再燃しやすく,各種治療法にはメリットもあるが,副作用や長期的にみた合併症などのデメリットもあること,デメリットによってさらにQOLが低下する可能性もあることなどを情報提供する必要がある.医療者も,患者個人に適した治療法を一緒によく考えて選択し,長期にわたって上手に対処できるようサポートする姿勢が大切である.また,必要に応じて,メンタルケアのために心療内科や精神科医などと協力したカウンセリングも有効である.
薬物療法は,
①NSAIDを中心とするPG産生抑制を目的とした対症療法
②内膜症の発育・進行を抑制する作用も持つホルモン療法:低用量経口避妊薬(ルナベルO,黄体ホルモン製剤であるジエノゲスト(ディナゲスト,GnRHアゴニスト,ダナゾール(痛みの抑制を主目的とするのなら低用量ダナゾール療法6つ,黄体ホルモン(レボノルゲストレル)放出型子宮内避妊システム(ミレーナ(保険収載はないものの月経痛の軽減は著明で,手術療法との組み合わせも有効
③漢方薬などがある.
手術療法は,腹腔鏡を中心とした手術であるが,上記の3つの治療を組み合わせることも必要である.
治療中止後の痛みの再発について,図4に子宮内膜症協会の行った2001年の確定診断した子宮内膜症355名の調査データを示した.手術・薬物治療全体で治療終了の初回月経から再発したものは25%に及び,このほか6か月以内の再発は33%と高率であった.すなわち,全体で6か月以内に痛みの再発したものは約60%であった.なお,最も有効な治療法は腹腔鏡手術であるが,それでも再発率は高く,初回月経からは15%くらい,半年以内は合わせて約45%に認められた.
若年女性に対する対応
本疾患はエストロゲン依存性で進行性であることから,若年女性では,月経痛を抑制するばかりでなく,今後の子宮内膜症の進展を抑制し,かつ本症の進行から将来妊孕性が障害されることを極力抑えることが大切である.そのため,副作用がほとんどなく,長期にわたって使用できる低用量経口避妊薬(OC)を第一選択とする対応が奨励されている.2005年に米国産婦人科学会(ACOG)がCommittee Opinionとして示した思春期の子宮内膜症とpelvic painに対するガイドラインの日本語訳を図5に示した.
ACOGのCommittee Opinionによれば,pelvic painを有する思春期女子の子宮内膜症の頻度は予想よりかなり高く,これらの女子すべてに腹腔鏡検査を行ったところ,19~73%に子宮内膜症を認めたとする多くの報告があった.ほとんどが初期(stage Ⅰ )で,チョコレート嚢胞や仙骨子官報帯の結節はほとんど認められないが,プロスタグランディン(PG)産生が活発であると考えられているclear,red,white lesionの腹膜病変が多く認められるとのことであった.
おわりに
子宮内膜症の特に痛みに対して,QOLを考慮した治療の選択肢が広がっている.個人の背景や治療歴などを参考に患者個人に適した種々の治療法を選択しあるいは組み合わせて,上手に対応することが必要である.
保険がきくOCが出来ましたけど、苦戦しているみたいです。長期投与が出来ないので、(新薬扱いだから本来2週間。懇願して1ヶ月分になったのだそう)自費診療のピルから乗り換えるところがあまりないみたい。実は当院もですが。
薬価が下がることを期待していたのに、自己負担がほとんど自費のピルと変わらないのも痛い。
投稿情報: 山口(産婦人科) | 2008年12 月13日 (土) 20:56
そうなんです。
あとなんだったっけ?えっとえっと。
忘れちゃったけど、持田からでてる新しい新薬ディナゲストも高いんですよね。あと不正出血が起こるし。
内膜症治療は難しいです~。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年12 月13日 (土) 23:06