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(投稿:by 僻地の産科医)
今週号の女性自身からですo(^-^)o ..。*♡
このまま独立行政法人化したら“倒産”もあり……
築地「国立がんセンター」借金600億円!
(女性自身 2008年12月2日号 p194-195)
がん難民大量発生の危機!?
高度専門医療が受けられなくなる!
そこでしか受けられない高度な治療を求めて、日本中から患者が集まる専門病院。その病院が借金で立ち行かなくなるかもしれないというのだ。いったいなぜ?
東京・築地。銀座中心部から徒歩で10分とかからない一等地に、『国立がんセンター中央病院』(以下がんセンター)がそびえたつ。
平成10年に竣工したばかりの新棟は、空から眺めると羽を広げた蝶々のような個性的な建造物になっている。がん治療の最新鋭の臨床と研究の拠点となっているこのがんセンターが、今、存続を危ぶまれているという。
厚生労働省関係者が語る。
「がんセンターには500億円とも600億円ともいわれる借金があると言われています。本省(厚労省)内では多くの職員の共通した認識です」
これまでは国立病院のため、赤字が出ても税金で補てんすることができた。だが、11月21日にがんセンターを含めた計6つの国立病院が、平成22年に独立行政法人化(以下独法化)される法案が、衆議院を通過したばかりだ。事情に詳しい医療関係者もこう危惧する。
「独法化されると、独立採算をとらなければなりません。診療報酬が200億円ほどの病院に600億円の借金が加われば、破綻し、がん難民が大量に発生する可能性もあります」
がんセンダーの存続を揺るがす、この600億円もの借金は、いったいどのようにして生じたのだろうか。
通常、病院を建てるには1床3千万円が相場といわれる。100床規模の病院なら30億円の建設費用がかかるというわけだ。ところが―。
「がんセンターは1床7千万~8千万円という破格の金額だと思われます。そもそも建てた時点で無理があったんです」(厚労省関係者)
公共事業は民間に比べると3割から4割も高いといわれ、ゼネコンも民間と官庁を担当する部署が分かれている。
「薬もベッドも、同じものを買うにしても、圧倒的に官庁のほうが高く、国としてボラれています」
この額をどのように受け止めているのか。中央病院長の土屋了介氏(62)が答える。
「相当な負担です。その多くは新棟建設費です」
病院建設に関しては、病院長はほとんど関与していない。がんセンターは総長のもと、運営局、病院、研究所と大きく3つの柱に分かれている。病院は診療部門、研究所は研究部門を統括し、会計や庶務、医事は運営局の仕事となる。
運営局は厚生労働省から出向してきた役人で構成されている。つまり彼らが作った借金が、最終的に病院が負わされるわけである。
「国立病院ということで、先端の機関として造った病院。全室に窓があって光か入るだとか、そのために蝶々の形をした造りになっているだとか、新しい試みがあります。それ自体は便利でありがたいのですか、採算を考えると『あんな建物を造るんじゃなかった』ということになる。600億円の借金も、もっと切り詰めていれば400億、300億ですんでいたかもしれません。できれば借金をゼロにして(独立行政法人として)スタートしたいのですが、それが無理としても、現実的な数値を考えてほしい」
過大な借金を背負うと、不採算部門の縮小や廃止という問題も起きる。
「がんセンターは、がんの最先端の臨床をすることは当然のことですが、がん治療の研究、開発、新しいアイデアを生み出すことも大きな役割です」
ところが病院の収入は診療報酬が大部分を占め、研究での収入はほとんど見込めない。
「診療報酬や差額ベッド代だけで研究所を維持するのは難しい。研究への交付金や、それを動かす人やスペースなどの基盤づくりを、国にお願いしなければなりません」
利益だけを追求し、がんの先端医療の研究、開発の機能を失ったら“普通の病院”になってしまう。
利息だけでも年間20億円に
「あまり過大な荷物(借金)を背負わせて、本来の機能が発揮できなくなってしまえば、独法化する意味かない」
と語るのは、民主党衆議院議員の仙谷由人氏。役人の作った600億円の借金は「利子を返すだけでやっと」(土屋病院長)という状況のようだが、健全な経営はできるのか。
「長い年月をかければ経営できるという計算書が厚労省で作られていますが、専門的に分析、検討していかないといけません。それに利子は4%ほどで高い。今の適性の金利に借り換えさせて、さらに独法化後、背負わせる借金をどのくらいにするのか検討しないといけない。現在、運営交付金として100億円近くが注がれていますが、借金の利息だけで20億円の計算になります」
つまり医師やスタッフが稼いだお金や国民の税金の一部が、高い金利のために消えているのだ。
これらの問題が起こるのも、厚労省から出向してきた運営局が、病院でなく、霞が関ばかりに向いていることが問題だと指摘する声は多い。
運営局は本省のキャリア官僚が局長、ノンキャリのボスが次長に付き、その下に課長ポストがある。上下関係は歴然としており、「次長を前にした課長はカチンコチンになって声が上ずる、そんな世界です」(厚労省関係者)。
いっぽう、現場の医師は約半数が非常勤で、残業代がつかない。医療関係者が憤る。
「20代、30代の非常勤の医師は朝から晩まで働き、手取りは月20万円くらい。臨床で患者を持っていればなかなかバイトもできません。それなのに先日は会計検査院のチェックが入って、運営局の事務職員か3千万円の不明金を出したことが報道されました」
がんセンターの局長、次長となれば、退官間近の最終ポストとしてあてがわれる、ステータスのあるポジション。
「独法後も厚労省は予算をちらつかせて、理事として何人ポストを確保するかに心血を注いでいます」(厚労省関係者)
同様のケースでの影響は、国立の大学病院ですでに出はじめている。東大病院も独法化後、交付金が削られ苦境に立たされている。
「国立大学ではやらなかった人間ドックを始めたり、最新機器が買えなかったり、人が辞めたり、医療レベルが下がっています」(大学関係者)
そのためにも交付金はのどから手が出るほど欲しい。それが官僚の作戦なのだという。
「国立大学が独法化されて、やはり予算を持ってくる文部科学省の役人が天下るようになりました。『国立大学は文科省のポチになった』と陰で言われているくらい」(大学関係者)
土屋病院長は、独法化後、役人が理事のポストに座ることをどう考えているのだろうか。
「誰のための病院か、患者のほうを向いてくれればいいのですか・・・・・・。本省のほうばかり向いていたら病院経営はやりにくくなります。役人は2年で本省に帰ります。すると自分の問題ではなくなります。しかし600億円の借金が国民に知らされずに処理されるのはよくない。これを機会にオープンにして、議論されるべきです」
厚労省は、今後どのように処理するつもりなのか。取材の電話をすると、10分ほど待たされて、医政局国立病院課監査指導室の担当者とつながったが、
「その資料を我々は持っていないですし、そんな資料を少なくとも我々のなかで把握していないのでお答えしようがない」と借金額については否定。
がん難民か出ないよう、しっかりとした対策を、早急に立ててほしいものだ。
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