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(投稿:by 僻地の産科医)
ザ厚労省 第2部 変わらぬ予感③
大医の志生かせぬ構造
日本経済新聞 2008年10月10日
壁のポスターから医学生に呼びかける男の名は後藤新平。二十三歳で愛知県病院長となり、二十六歳で行政の道に入った「医系技官」だ。医師の視点で衛生行政を導き、逓信大臣、東京市長を歴任。日本の礎を築いた。
「医師増やさず」
中国・唐時代の医学全書にこんな言葉がある。
「小医は病を癒やし、中医は人を癒やし、大医は国を癒やす」
今春、医系技官として厚生労働省に入った坂上祐衝(27)が技官を志したのは長崎大学医学部の時。世界保健機関(WHO)に勤めためた経験がある歓授に出会い、公衆衛生政策を通じ多くの命を救う道があることを教わった。離島育ちの坂上は「へき地医療の充実に尽くしたい」と考え、目の前の一人の治療より、万人を救う道を志した。
技術官僚。略して技官。常勤の国家公務員だが、事務官僚とは別の採用体系を持つ。厚労省には医系、獣医系、看護系など五百五十人の技官がひしめく。現場感覚のなさが常ににじむ厚労省にとって、政策づくりのための貴重な戦力だ。ところが現在の厚労省からは、技官との二人三脚ぶりは伝わってこない。
今年六月。救急医療の不備といった問題が相次ぎ、厚労相の舛添要一(59)は医師不足の解決策づくりに悩んでいた。そんなさなか――。「こんなことをもう一度やったら、絶対に許さない」。舛添が医政局長の外口崇(56)を大臣室に呼び叱責した。
医師不足解消を主導しようとした舛添に先回りする形で、文部科学省に出向中だった医学教育課長、三浦公嗣(51)らから東大など主要大孚の医学部にかけた電話はこんな内容だった。「医師はなるべく増やさない方向で頼みます」
技官にも言い分はある。一つは医師が増えると医療費が増えるという「医師誘発需要説」。もろ一つが膨大な医療費が財政を圧迫するという「医療費亡国論」。医系技官らの間で守られてきた通説だ。医原費の抑制に手をうつ政策論で、政治もそれを利用して一九九七年には医学部定員削減を閣議決定している。
医療費を抑える知恵と工夫は極めて重要だ。ただ医師のの増加に蓋をするといろ選択だけでは医療の空白を埋める活路は開けない。描いた数値分析は筋が通っていても、慟く人の心まで読み込めてはいない。
産科、小児科、救急、へき地……。労働環境が厳しい地方の公立病院などから次々と`医師が去っている。厚労相は勤務医の診療報酬を手厚くするといった工夫で医師の再配置を促すべきだったが開業医の影響の強い日本医師会を前に自らの手足を縛った。改革に向けて技官が積極的に動いた形跡も見当たらない。
人事不干渉の壁
技官問題の一つはその閉鎖性にある。「コピー厳禁」。医系技官の机の中には対外厳秘の名簿が眠る。トップの医政局長から幹部、主査、出向表、海外留学組まで二百人以上を網羅。私用のメールアドレスも書いてある。ここに記される人事。実は医政局長、技術総括審議官、厚生科学課長の3人だけで決める。異動や昇格に大臣や次官も口をはさめない。
技官ワールドは閉じているともいえるし'閉ざされているともいえる。厚労省の主流は法律系の事務官。彼らは昔ながらのすみ分けにメスを入れるつもりはない。技官の最高ポストは医政局長、医系技官は審議官どまり。事務官は専門官僚を技官と呼び、技官は事務官を「ホウレイ(法令)」と呼ぶ。人事の不干渉まで決め込んだ二つの王国の間の壁は高く厚い。
それを決定づけたとされるのが、薬害エイズ事件件だ。今春の最高裁で技官だった元生物製剤課長の禁固刑が確定したが、上司である事務官の薬務局長は「技官の判断を信じた」と証言し、無罪になった。判断能力のない人がなぜ局長になるのか。技官の間にはそな不満が今もくすぶる。
セクショナリズムの弊害は営民問わず、どこの組織にもある。だが厚労行政の迷走は国民の安心と命にかかわる。キャリアとノンキャリア、本省と地方といった複雑構造とは別のもうひとつの断層が、ときに機動力も判断力も調整力も欠くコウロウ行政の構造疾患だ。
大医を思い描く若者はいる。その志を生かす舞台が痛み、国民の非難を浴ぴている。十月初め、来春入省の医系技官の一次面接が始まった。毎年十人ほどを採用しているが、今年の希望者は例年を大幅に下回っているという。
もうひとつ!(>▽<)!!!
日経ビジネスプラスから!!!ザ厚労省です!
日本医師会・中川理事「厚労省はずさんすぎる」
日経ビジネスPlus 2008-10-10
http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/mhlw/second/sec081008.html
日本医師会の中川俊男常任理事は朝刊連載「ザ厚労省」取材班とのインタビューで、「厚労省はずさんすぎる。年金にしても、保養施設グリーンピアの問題とか天下りの問題とか、丼勘定」と批判。医師不足については、医師養成数の増員だけでなく「医療費の引き上げとセットにしないともっとひどいことになる」と指摘した。
なかがわ・としお 77年(昭52年)札幌医大卒、脳神経外科医に。06年4月、日医常任理事。新さっぽろ脳神経外科病院の院長。57歳。北海道出身。
——厚労省は業界と対立する場面が目立つ。
「厚労省は担当業界を抑制する唯一の省庁だ。発想が財務省的。財務省に財源を抑制的に握られていて、その中で奮闘している。不十分な財源で官僚が実績を残そうとするから無理をしだす。本来、医療界と厚労省は一緒にがんばらなくてはならないのに対立の構図。まったく変な話だ」
——財務省に財源を握られているのは他省庁も同じではないか。
「社会保障は政治的な基盤が弱いからでしょう。社会保障は票にならず、相対的な政治圧力が弱いんだと思う。(政治家は)厚労省を守ってあげられないんじゃないか」
——財務官僚と厚労官僚の違いを感じるのはどんなところ。
「厚労省はずさんすぎる。年金にしても、保養施設グリーンピアの問題とか天下りの問題とか、丼勘定。身から出たさびという面があるんじゃないか。いってみれば指揮命令系統がちゃんとしない。2年そこそこで(担当が)代わるわけでしょう。拙速もあるしスタンドプレーもある」
——厚労族議員についてはどのように考えている。
「基本的に国会議員は厚労族に限らないが、役所のいうことは正しいと思っている。日本医師会と厚労省が対峙(たいじ)する場合でも、日本医師会の立場になってくれるが、どっかで厚労省のいうことも正しいんだろうなと思っている」
——厚労省の医系技官は現場知らずと批判されています。
「医系技官は立場が苦しすぎる。医者だから医療をわかっているかというとそうではない。医療側に立ってくれると思うと間違いだ。立ってくれるふりをする人もいるが、基本的には抑制だ」
「医系技官はつぶしがきかない。10-30年も臨床をやっていないので医療現場に戻れない。ところが文系キャリアはなんでもいける。省庁をクビになっても、民間に行ける。政治家との付き合いも上手だ。そういう意味では文系キャリアの世渡りには絶対にかなわない」
——厚労省は医師が不足していると見解を変えたが医師は本当に不足しているのか。
「医師の仕事量が急増している。ただ、医師養成数の増員は医療費の引き上げとセットにしないともっとひどいことになる。就労環境の改善につながらない」
日経の記事を読んで、なにが大医だってと思わずつっこんでしまった。大学を出て、公衆衛生にしろなんにしろやるべきことを現場でやったことがない人間が大医を志すだって?じゃ、プロ野球ファンは誰でも監督ができるってのか?実戦をしる児玉源一郎は日露戦争をうまく講和に持ち込んだが、戦場を知らぬ連中ばかりになったら、軍部が、国を滅ぼしたという歴史の現実からなぜ目をそらすのだろうか?
投稿情報: タカ派の麻酔科医 | 2008年10 月15日 (水) 18:23
そんな、先生!実も蓋もない。。。
穏便に激しく非難しているってのに(>▽<)!!!
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年10 月15日 (水) 19:53