(関連目次)→病院の赤字・倒産 目次 医師のモチベーションの問題
(投稿:by 僻地の産科医)
今月の愛知医報からですo(^-^)o ..。*♡
情報ありがとうございます!
本当に表題のとおりだと心から思います。
「赤ちやんにやさしい病院」は
職員にもやさしくなければならない
名古屋市立西部医療センター城北病院
愛知県医師会 勤務医部会幹事
勝見 康平
(愛知医報 平成20年10月1日号(第1839号)p30)
冒頭から突飛な表題で恐縮ですが、当院はこの4月に「赤ちゃんにやさしい病院」の二次審査を受けて合格し先日大阪で行われた認定証授与式に出席してきました。「赤ちゃんにやさしい病院(Baby Friendly Hospital)」とは、WHO、ユニセフが提唱する「母乳育児を成功させるための10か条」を遵守し実践する産科施設を日本母乳の会が認定申請するもので、これまでに全国で58施設が認定されています。
当院は愛知県下で3番目、名古屋市内では2番目の取得でしたが、とかく市立病院の経営不振など暗い話題の多かった当院にとって久々の明るいニュースでした。これまで、長年にわたり懸命に準備を進めてきた関係職員の努力に敬意を表する次第です。
さて、赤ちゃんにやさしい病院ということは母親にもやさしいということに繋がるわけですが、これが職員にもやさしいかとなるといささか疑問が残ります。病院が職員にやさしい、言い換えれば職員にとって働きやすい、やりがいのある職場となることは、病院が活性化するためにきわめて重要であると思います。私は常々「自分たちのやりたい医療のできる病院、熟度の高い医療のできる病院をめがしましょう」といっていますが、そのためには職員の医療技術が水準以上であることはもとより、職員相互の尊敬と信頼からなるチーム医療が機能していること、職員数が充足されていること、医療施設や機器が整備されていること、職員の勤務体制や給与などの処遇面が許容範囲内であること等々、多くの条件が整っている必要があります。しかし、現状はこれらを満たすための人、物、金とも不足しており、解決すべき課題が山積していることも事実です。
ところで、本市では現在、北区志賀公園の隣地において「クオリティライフ21城北」と銘打ったプロジェクトを推進中です。これは、西部医療センター中央病院(仮称)、重症心身障害児者施設、健康増進支援施設などを整備して保健医療福祉の総合拠点となるぼか、最先端の放射線治療である陽子線がん治療装置を導入するものです。当院は3年後には中央病院へ移転の予定ですが、新病院では周産期医療センター、小児医療センターを中心とした成育医療や小児科、産婦人科の全日二次救急を行うほか、消化器肺癌センターの設置、眼科の平日夜間二次救急の実施など、高度化・多様化する市民の医療ニーズに応える体制整備を図ることとしています。現在、新病院開設に向けた種々の準備委員会を設け、職員たちがやりたい医療のできる病院をめざしています。
これまで、本市の病院経営は、医師・看護師不足や診療報酬改定などの影響もあり、院のスパイラルに陥ってきました。そこで、抜本的な病院改革をめざすため、今年度から地方公営企業法全部適用を導入して新たに病院局を設置し病院管理者として名古屋市立大学から上田龍三教授を病院局長に迎えました。これにより、市立病院の経営責任が明確となり、従来よりも病院運営に柔軟性・迅速性をもたせることが可能となりました。今年度からは、これまで課題であった医師の処遇改善策として成果主義を導入し、職員のモチベーションをあげることを計画しています。
一方で、われわれは給与の多寡のみを充足感の指標としているわけではありません。患者さんや家族の方の笑顔や感謝の言葉にそれまでの苦労がいっぺんに吹き飛ぶことも多々経験しています。私たちはこの一瞬のためにこそ頑張っているんだとの思いもあります。しかし最近の救急医療におけるコンビニ受診、いわゆるクレーマーの増加、はては暴言・暴力まで、職員のモチベーションを下げる要素はあとを絶ちません。病院幹部は職員ひとりひとりの声に耳を傾け、これらの課題に対応して職場の環境や処遇改善に取り組まなければなりません。
全部適用の導入や病院局の発足によって、市立病院のもつ課題が即座に解決するわけではありませんが、私たちはこの新制度を大いに活用して病院改革に収り組み、職員にもやさしい病院作りに努力していきたいと考えています。
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