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(投稿:by 僻地の産科医)
9月28日に行われたシンポジウムの資料をいただきましたので、
ご紹介したいと思いますo(^-^)o ..。*♡
産科医療の明日を考える―お産するところありますか?
日 時: 9月28日(日)午後2時~4時30分
会 場: 保険医協会・伏見会議室
シンポジスト 前田 津紀夫氏
(前田産婦人科医院・院長、静岡県焼津市)
山口千穂 氏
(みなと医療生協協立総合病院・産婦人科医長)
野々垣 滋子氏(安心して守山市民病院でお産をしたいママの会)
加藤 智代子氏(堀尾安城病院・助産師)
斉藤 みち子氏
(愛知県保険医協会副理事長、産婦人科医師)
司会者 安井美絵氏
(産婦人科医師愛知県保険医協会母性問題部副部長)
〔進 行〕
1.シンポジストの発言(2:05~3:35)
1)斉藤みち子氏
2)山ロ千穂氏
3)加藤智代子氏
4)野々垣滋子氏
5)前田津紀夫氏
<休 憩>
2.ディスカッション(3:45~4:15)
3.シンポジストのコメント(3:15~4:30)
4.まとめ(4:30~4:35)
今日は1の斉藤先生からo(^-^)o ..。*♡
2008.9.28 シンポジウム「産科医療の明日を考える」
産科医療の現状
愛知県保険医協会
斉藤みち子
1. 日本の産科医療の到達点 周産期死亡・妊産婦死亡の減少
周産期死亡 出生1000対 1950年 46.6 2004年 3.3
妊産婦死亡 出産10万対 161.2 4.3
1950年と2004年の違い 自宅分娩から医療施設での分娩に
2004年出産施設 肋産所 1% 診療所47% 病院52%
2000年 UNICEF 妊産婦死亡統計 出生10万対
世界平均 400人 オセアニア 240人
アフリカ 830人 ヨーロッパ 24人
アジア 330人 アフガニスタン 1900人(1 /53 人)
医学の進歩、医療従事者
とりわけ一次医療機関(開業産婦人科医)の努力の結実
2.分娩取扱施設の減少の実態
2)日本産科婦人科学会調査
2005年の分娩取扱施設 病院 1273 診療所 1783 合計 3056
2006年4月以降の分娩取扱中止病院 111病院(海野信也、学会調査)
2008年に分娩中止 18病院
3)現在も減少中
厚労省調査 2008年1月以降 分娩休止 45施設
分娩制限 32施設
3.産科医の減少の実態
1)産婦人科医の減少
総医師数は増加しているが、産婦人科医は減少している。
医師総数 7.7%増 産科医は2%減
実際に分娩を扱っている医師は産婦人科標榜医のおよそ半数と思われる。
2)女性医師の増加
女性医師は全医師の17.16%
今年度国試験合格女性が 34.5%
産婦人科医は 全医師の約4%
女性産婦人科医師は 全産婦人科医師の24%
(女性医師の比率が高い科 皮膚科39% 眼科37%
小児科31% 麻酔科30% 形成外科22%)
産婦人科では若い医師の女性の比率の上昇が著明
20歳代 70% 30歳代 50%
卒後10年頃になると
女性産婦人科医はほぼ50%が分娩から離脱。
内、約1/2が産婦人科離脱*)
男性産婦人科医は 約20%が分娩から離脱
内、1/2が産婦人科離脱
*)「女性医師全体では25%が医療から離脱していること」と一致。
4.なぜ分娩取扱施設・産科医師は減少しているのか
・若い層、とりわけ男性が産婦人科を選びたがらない
開業医の高齢化、後継しない、新規開業困難
・少ない総志望者のなかで、産婦人科志望女性医師増加(70%)
・10年目の働き盛りの女性医師の産科からの離脱
・周産期医療拡充の遅れ NエCUベット、専門医師不足
・医療・医療の高度化 ハイリスク例の増加
・過酷な勤務 立ち去り方サボタージュ
・過酷なまでの医療費抑制策
骨太方針 毎年2200億円の医療費削減
・過剰なほどの事故責任追及
裁判は医療事故防止に寄与するか?
国民の思い
「お産は病気ではなく、正常に、自然に生まれるものである」
産科医の思い
「一定の確率で異常は起こるものである」
「周産期死亡、妊産婦死亡はゼロにはならない、できない」
5.今後の課題 「お産難民」を出さないために
1)医師(医療従事者)の増員を一産科医療体制をたてなおすために
(1)崩壊した産科医療体制の再構築を
一次医療機関(開業産科医院を中心とした地域分娩施設群)の充実
看護師内診問題の真の解決
二次医療機関(地域周産期母子医療センターセンター)の充実
三次医療機関(総金屑屋期母子医療センター)の充実
医師はじめ医療従事者の増員が必須
(2)女性医師が働きやすい環境作りを
新しい医師養成は10年以上かかる
男性の家事育児への参加一仕事の軽減が必須 男女共同参画の思想
保育施設の拡充 24時間保育、病児保育 再就職支援
女性医師・歯科医師が働きやすい職場の実現
→男性医師も働きやすい
→国民の医療を守ることが出来る。
2)医療にお金を一医師が働きやすい環境を作るために
(1)診療報酬の引き下げをやめる
(2)患者負担の増額をやめる
(3)保険で良い医療が受けられること
(4)財政中立ではなく、予算の配分の見直しを
(5)国と企業の負担による社会保障費の増額を
法人税減額の解除 保険料企業負担の増額(零細企業の除外)
3)医療安全対策の拡充を
訴訟は、原告にも被告にも不満が残り、真の解決にはならない。
司法の介入は患者・遺族救済や医療事故再発防止の対策にはほとんど
寄与しない。
福島県大野病院事件→勤務医のモチベーションの低下
産科の統廃合(1人医長の産科の閉鎖)
堀病院事件→産科開業医のモチベーション低下、厚労省不信、
開業医の分娩からの離脱、二次病院の負担の増加
医療を受ける側、医療を行う側、
相互の理解を深めることが必須。
(1)無過失補償制度の充実
(2)真に再発防止につながる第三者による医療事故調査機関の創設
(3)裁判外紛争解決法の充実
医療メディエーターの拡充が必須
(4)各地の相談所の充実
愛知県医師会:医療に関する苦情相談センター
国民生活相談センター
NPO法人等
(5)患者会との連携の強化
病院・診療所内の患者会
全国的な組織
(6)「県立柏原病院の小児科を守る会」等の取組の拡大
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