(関連目次)→地方医療の崩壊 実例報告 目次 産科医療の現実
(投稿:by 僻地の産科医)
全国の周産期救急の状況についてo(^-^)o ..。*♡
段々とあがってきている範囲で集めてみました。
どこもあまり芳しくない様子。。。あたりまえか。
昨日までのニュースまでに収められているものも数点ありますが、
せっかくなので集めてみました!
こちらもどうぞ!
周産期母子医療センター、指定後点検なし 厚労省
日本経済新聞 2008年10月24日
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081024AT1G2400V24102008.html
脳内出血を起こした東京都内の妊婦(36)が8つの病院に診療を断られ、出産後に死亡した問題に絡み、都道府県が指定する「総合周産期母子医療センター」の運営実態について、厚生労働省が指定後のチェックを行っていなかったことが24日、分かった。今回の問題ではセンターの指定を受けた病院が十分機能していない実態が浮き彫りになっており、国と都道府県の情報共有のあり方が問われそうだ。
総合周産期母子医療センターは、リスクを伴う妊娠、出産に対応できる医療機関として、厚労省が1996年から都道府県に整備を促してきた。都道府県から指定を受けると、国の税金から補助金が支給される。
15病院が常勤医5人以下 全国の産科救急拠点
毎日新聞 2008年10月24日
http://mainichi.jp/select/today/news/20081025k0000m040044000c.html
脳内出血を起こした東京都内の女性(36)が8病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、厚生労働省は24日、産科救急の拠点になる全国の「総合周産期母子医療センター」の医師数を公表した。産科の常勤医が、搬送拒否で問題になった都立墨東病院(墨田区)の3人と同数以下の病院はほかに5施設、5人以下は14施設あり、複数人の24時間対応が望ましいとする国の指針を守るのが難しい実態が浮かぶ。
民主党の厚労部門会議で示された資料によると、4月1日現在で、5月に開設した奈良県立医大病院を除く全国73カ所の総合周産期母子医療センターの常勤医は、産科が694人、小児科が394人。厚労省は96年に通知した整備指針で「24時間体制で産科医の複数確保」を求めているが、49施設が常勤10人以下、15施設が5人以下と、不足がまん延している。墨東病院より少ない常勤2人の病院も1施設あった。
受け入れ人数との関係では、母体・胎児集中治療室(MFICU)のベッド数より常勤医数が少ない病院は、墨東病院も含め26施設だった。指針で1人以上の24時間体制を求めている小児科は、38施設が常勤5人以下で、1人が4施設あった。ただ、大阪大病院のように常勤医が3人しかいなくても、非常勤医が7人いるなどのケースもあるほか、非常勤医の人数を報告していない病院も多い。厚労省は「当直体制なども併せて早急に再調査し、勤務状況を把握したい」としている。
6施設が常勤3人以下=周産期センター、4月時点-厚労省調査
時事通信 2008年10月25日
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008102500068
東京都内で救急搬送された妊婦が8病院に受け入れを拒否され死亡した問題で、厚生労働省は25日までに、今年4月時点では、全国の総合周産期母子医療センターのうち都立墨東病院を含め6施設が、産科の常勤医が3人以下だったとする調査結果を公表した。うち1施設は産科の常勤医が2人だった。
同センターに関する国の指針は、複数の産科医で24時間対応するのが望ましいとしているが、3人以下の医師でこれを順守するのは困難とみられ、産科医不足の実態が改めて浮かび上がった。
全国の施設で当直医師不足
NHK 2008年10月24日
http://www3.nhk.or.jp/news/t10014928861000.html
脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題で、NHKが全国の「総合周産期母子医療センター」を調べたところ、3分の1以上に当たる26施設で、医師不足などが原因で当直の医師が1人になるケースのあることがわかりました。
この問題で、受け入れを断った東京都内の8つの病院の中には、お産前後の周産期にリスクの高い医療に対応する「総合周産期母子医療センター」が3施設含まれていました。このため、NHKは全国に74ある「総合周産期母子医療センター」を対象に患者の受け入れ態勢を調査し、71施設から回答が寄せられました。この中で、夜間、何人の医師が当直しているか尋ねたところ、全体の37%にあたる26施設が、医師が1人で当直することがあると答えています。厚生労働省の指針は、夜間も産科を担当する医師が2人以上勤務していることが望ましいとしていますが、ほとんどの病院では、医師不足で配置できないとか、緊急のときには呼び出しで対応すると答えています。問題の再発を防ぐため何が必要か尋ねたところ、26施設が「医師不足の解消」をあげました。このほかには、救急の患者を必ず受け入れる病院を地域ごとに設けるべきだという意見や、産科が脳神経外科などほかの診療科と連携して母親の病気に対応するべきだという意見が多くなっています。
ネット検索、機能せず73% 妊婦と赤ちゃんの搬送先
47NEWS 2008年10月25日
http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008102501000140.html
緊急処置の必要な妊婦や赤ちゃんの搬送先をインターネットで検索する全国のシステムのうち、73%について現場の医師が「十分機能していない」と感じていることが25日までに、各地の総合周産期母子医療センターなどでつくる「全国周産期医療連絡協議会」の実態調査で分かった。東京都内の妊婦が8カ所の病院に受け入れを断られ、脳内出血で死亡した問題でもこのシステムが最新情報を反映せず、役立たなかった。
システムは都道府県単位で整備、運用。調査は昨年9月、協議会に参加する周産期医療施設にメールで依頼し、各都道府県ごとに1施設以上から回答を得て、それぞれの地元の現状を分析した。調査結果によると、空きベッド情報を検索するインターネットシステムがあるのは37自治体。うち27(73%)に関する評価は「十分機能していない」だった。
理由は「情報更新がうまくいかない」(11)が最多。「電話の方が確実」(8)、「ほとんど満床なので意味がない」(3)などが続いた。「必要性が感じられない」(2)もあった。「こうしたシステムは存在しない」は6。ほかに電話やファクスで対応する地域もあった。
医師会 2月に都に改善要望
NHK 2008年10月25日
http://www3.nhk.or.jp/news/k10014957291000.html
妊娠中の女性が東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題で、最初に受け入れを断った都立病院の産科医不足を解消するよう地元の3つの医師会が、ことし2月の時点で東京都に文書で要望していたことがわかりました。この問題は、東京の妊娠中の女性が今月4日、脳内出血を起こし8つの病院から受け入れを断られたあと3日後に死亡したものです。
このうち受け入れを最初に断った都立墨東病院は、緊急の治療が必要な妊娠中の女性を受け入れる医療機関に都から指定されていますが、常勤の医師が5年前から定員割れとなり、ことし7月からは産科の当直の医師が1人だけという事態になっていました。こうした状況に危機感を抱いた地元の墨田区や江東区、それに江戸川区の3つの医師会が、墨東病院の産科医不足を解消するよう、ことし2月の時点で東京都に文書で要望していたことがわかりました。要望では産科医が減り続けている原因を明らかにしたうえで、大学病院からの医師の受け入れ方法を再検討するよう求めていました。都は「要望はしんしに受け止め、実現に向けて協議をしているところだ」としていますが、これまでのところ明確な回答はしていないということです。要望書を出したうち江戸川区医師会の徳永文雄会長は「都から回答がないことは疑問に思うが、都だけで簡単に解決できる問題ではなく、国を含めて産科医の解消に努めてほしい」と話しています。
産科救急、広島県内も窮迫 妊婦受け入れ拒否
中国新聞 2008年10月24日
http://www.chugoku-np.co.jp/Health/An200810240068.html
▽現場「人ごとでない」 医師確保や搬送対策急務
東京都内の妊婦が都立病院などに受け入れを断られ、脳内出血を起こして死亡した問題で、慢性的な産科医不足に悩む県内の病院は「人ごとではない」と受け止める。高度な医療が可能な「総合周産期母子医療センター」などの医師の勤務は過酷で、専門医の確保や搬送を円滑化する対策が急務だ。
母体・胎児集中治療管理室がある「総合周産期母子医療センター」は、都道府県が指定する。県内は県立広島病院(広島市南区)と広島市民病院(中区)。両病院とも複数の医師が二十四時間態勢で交代勤務し、当直医一人だった都立病院より医師数は多い。
ただ、広島市民病院の「総合センター」主任部長の林谷道子医師は「このまま医師が増えない実態が続けば、広島でもいつ同様の惨事が起こるか分からない」と危機感を示す。センターのベッド数は六十六床。昨年度は妊婦と新生児を合わせ計千六百五十一人を受け入れた。うち三百五十九人は三次、東広島など市外を含む他の産院から、妊婦または新生児が緊急搬送されたケースだった。受け入れられなかったケースは昨年七件。いずれもベッド数が満床だったためだ。
診察に当たる医師は十六人。夜間は新生児担当二人、産科医一人が当直する。林谷医師は「特に新生児担当の勤務実態はきつい。経験年数が六年以下の三人を含めて六人しかいないため、宿直は三日に一度の頻度。一人でも倒れたら回らなくなる」と明かす。「総合」に準ずる高度医療を担う「地域周産期母子医療センター」は県内に七カ所ある。JA尾道総合病院(尾道市)の黒田義則院長も「産科医の絶対数が足りない。がけっぷちで踏みとどまっている」と訴える。
過疎地の実情は厳しい。年間約五百人の分娩(ぶんべん)を受け持つ三次市立三次中央病院の大谷清事務部長は「断ったら患者は行くところがない。どんな状況でも受け入れざるを得ない。絶対的な使命」と強調した。
中核病院にコーディネーターを置く制度を望む声もある。連絡窓口となって病状を的確に把握し、搬送先の病院を指示するのが役割。大阪府が昨年、千葉県が今年に設けた。中国労災病院(呉市)は「明確な要請があれば受け入れ準備の態勢を取りやすい」と県に設置を求めている。
妊婦受け入れ 指定病院、道内3カ所 医師不足で空白圏域も
北海道新聞 2008年10月24日
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/125116.html
東京都内で七病院に受け入れを断られた妊婦が死亡した問題で、いったん受け入れ拒否した都立墨東病院と同じく産婦人科医が二十四時間常駐する「総合周産期母子医療センター」指定病院が、道内は札幌、釧路、函館の三カ所にとどまっている。国の指針では道内は六圏域で整備が必要だが、当直要件を満たせず三圏域が空白。産婦人科医不足が主因で、リスクが高い出産の「最後の砦(とりで)」整備のめどは立っていない。
国の指針は、指定病院を「三次医療圏に一カ所整備」としており、道内だと道央、道南など六区域に分けられる。しかし国の要件を満たすのは釧路赤十字、市立札幌、函館中央の三病院のみ。道は、空白圏域で指定病院に準ずる体制を持つ旭川厚生病院、北見赤十字病院、帯広厚生病院を「認定病院」とし、医師の重点配置などで指定病院昇格を目指すが、壁は指定要件のうち「二十四時間体制での複数勤務(自宅待機一人含む)」。 指定病院がない道北圏の旭川厚生病院の場合、常勤医は六人いるが「医師が一人、二人増えたとしても当直は厳しい」と話す。
周辺市町村を含め、産婦人科医の減少や高齢化で出産を扱う医療機関が減少。同病院の出産件数は二〇〇六年度の五百七十六件が、〇八年度見込みで八百五十件超と急増、医師の負担は限界という。 産婦人科医は〇六年までの十年で全国で11%、道内は18%も減少しており「現体制の維持が精いっぱい」(道医療政策課)だ。
ただ、指定病院になった函館中央病院は「東京と異なり、受け入れ拒否はあり得ない」という。他に搬送できる病院がないため「当直、自宅待機以外の医師を呼び出してでも対応せざるを得ない」という。道も「墨東病院のケースは近くに他の指定病院がある大都会だからこそ起きた面もある」と推測する。
一方、市立札幌病院では、〇七年度に受け入れ要請を五十七回断らざるを得なかった。道央圏人口の多さから新生児集中治療管理室などに空きがなかったためだ。 道央圏には受け入れ可能な他の産婦人科病院があるが、何度も受け入れを断られたケースもある。道も道央圏での指定病院の追加を目指すが、具体像は見えていない。
妊婦救急搬送、県内も深刻 たらい回し全国平均上回る/茨城
東京新聞 2008年10月24日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20081024/CK2008102402000160.html
東京都で妊婦が医療機関から相次いで受け入れを拒否され出産後死亡した問題で、県内では昨年一年間に、妊婦などの救急搬送の際、消防署が医療機関に問い合わせた回数が四回以上に上ったケースが三十五件あり、こうした“たらい回し状態”が全国を上回る頻度で起きていることが二十三日、消防庁の調査で分かった。
照会回数は一回が四百四十七件で最も多く、続いて二回三十八件、三回二十五件、四回十件などとなっている。最多は十四回で一件あった。四回以上が全体の6・4%を占め、全国平均の4・8%を上回った。
受け入れ先医療機関が決まるまでの時間は三十分未満が四百四十件と大半を占めたが、三十分以上二十二件、一時間以上二件、一時間半以上二件と長時間におよぶケースもあった。
医療機関が受け入れを拒否した理由は、「専門外」が八十五件で最も多く、ほかに「手術中もしくは患者対応中」「処置困難」「医師不在」などとなっており、県消防防災課は今後の方策として、「周産期母子医療センターなど医療機関の受け入れ態勢の充実や、夜間、休日の輪番制導入などが考えられる」としている。
医師不足、現場は激務 徳大病院・周産期母子センター
徳島新聞 2008年10月24日
http://www.topics.or.jp/contents.html?m1=2&m2=&NB=CORENEWS&GI=Kennai&G=&ns=news_1224813983&v=&vm=1
東京都内の妊婦(36)が二十四時間対応の「総合周産期母子医療センター」を含む都内の八病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、妊婦や新生児の救急治療に当たるセンターの在り方が問われている。徳島県では唯一のセンターとして二〇〇五年に指定された徳島大学病院(徳島市蔵本町二)を拠点に緊急搬送に対応し、これまで受け入れができなかった事例はない。宿直体制の基準も満たしているが、医師からは人手不足を嘆く声が聞かれ、必ずしも盤石な態勢とはいえない。
厚生労働省の指針によると、危険度の高い妊婦を受け入れる母体・胎児集中治療管理室が七床以上あるセンターでは、当直医の複数態勢が求められている。だが、今回の問題で最初に受け入れを断ったセンター指定の都立病院は九床あるにもかかわらず、研修医一人しか当直していなかった。
これに対し、徳島大学病院は三床で、産婦人科の当直医が一人いるほか、いつでも駆け付けられる医師一人が待機。小児科医一人も当直し、新生児集中治療室の対応に当たっている。また、死亡した妊婦は脳内出血が原因で、搬送元のかかりつけ医と受け入れ先の病院との正確な情報共有に大きな課題を残した。
本県では昨年秋に円滑な情報伝達のため、県健康増進課を中心にさまざまな事例を想定したマニュアルを整備。今回のケースを参考に、さらなる充実を図る考えだ。同課は「東京には九つのセンターがあり、病院側にどこかが受け入れてくれるとの気持ちが働いたのかもしれない。徳島で都内のような事例は起こりにくいと考えているが、きめ細やかな態勢の整備に努めたい」としている。
しかし、産科や小児科の医師不足の実情は都市も地方も変わらない。徳島大学病院の態勢は産科医二十一人と小児科医四人。産科医は診療時間内に一日平均約百人の外来患者と向き合うほか、センターの業務として月四、五回のペースで宿直が当たる。県によると、〇七年度に徳島大学病院が受け入れた危険度の高い妊婦は八十一人。センターの機能を補完する徳島市民病院(徳島市北常三島町二)も四十六人に対応した。全国と比べてまだ深刻な事態ではないものの、医師不足は徳島のセンターの行く末にも暗い影を落としている。センターの男性産科医(46)は「実際は、今の倍近い医師が必要。維持できているのは、皆が頑張っているからとしか言いようがない」と漏らした。
産科救急、県内でも病院探し難航 NICU満床など年50日・・・/群馬
読売新聞 2008年10月24日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20081024-OYT8T00043.htm
脳出血を起こして緊急搬送先を探していた東京都内の妊婦(36)が、何度も受け入れを拒否され、出産後に死亡した問題。県内でも、新生児集中治療室(NICU)が満床になるなどして、そうした高度な設備があるどの病院も受け入れられない状態が年間50日前後に達している。
県保健予防課によると、県は、リスクの高い出産を扱う「地域周産期母子医療センター」に5病院を指定し、さらに高度な医療を必要とする患者を扱い、地域センターとの患者受け入れの調整も行う「総合周産期母子医療センター」に、県立小児医療センター(渋川市)を指定。これに準ずる6病院などを加え、2006年度に空きベッドの状況がわかる「県周産期医療情報システム」を導入し、一般の産科医院などが閲覧できるようにした。ただ、1日1回は情報を更新することになっているものの、更新後に患者が運ばれたり、医師が分娩に入って対応できなかったりして、実際の状況と違う場合が多いという。また、NICUが満床になるなどして、どの病院も1000グラム未満の新生児を受けられない日が、06年度は55日間、07年度も44日間に上った。
県立小児医療センターの高木剛産科部長は、「受け入れ先が見つからない場合は、受け入れ不可の病院にも電話をかけまくっているのが実情。産科医や小児科医、NICUが不足していることに問題がある」と話している。
周産期センター指定 県立医大も医師不足/福島
読売新聞 2008年10月25日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukushima/news/20081025-OYT8T00067.htm
東京都内で今月上旬、脳出血を起こして緊急搬送先を探していた妊婦(36)が八つの医療機関に受け入れを拒否され、出産後に死亡したが、受け入れをいったん拒否した都立墨東病院(墨田区)は、妊婦や胎児の緊急医療に対応する「総合周産期母子医療センター」に指定されており、その役割が問題視されている。本県では県立医大付属病院(福島市)が唯一センターの指定を受け、「最後の砦」となっているが、県立医大も医師不足の厳しい状況にある。同センターは切迫早産などの危険性の高い妊婦に対し、24時間体制で高度な医療を行うことができる施設。県立医大のセンターには、母体・胎児と新生児の病床計23床がある。
墨東病院では当時、当直医が1人しかおらず、受け入れを断ったが、医大によると、医大のセンターには当直医が2人おり、救急搬送は原則としてすべて受け入れているという。23床の病床が満床になる時もあるが、安定した症状の患者は一時的に別の病棟に移すなどしてやりくりしている。また、今回の事例では妊婦が脳出血を起こしていたが、医大では異変を感じた場合は、院内で当直している脳神経外科の医師に診てもらって対応しているという。
だが、医師確保については、医大も苦労している。医大全体の産科婦人科の医師数は計14人で、2年前の17人から3人減った。医大では当直や大学の授業などもあるうえ、県内各地からリスクの高いお産が集まる。同大産科婦人科講座の佐藤章教授は「常に緊張を強いられ、現場の医師は疲弊している。医師不足で、いつ崩壊するかわからないぐらい危機感がある」と話す。
県内では医大のほか、比較的高度な医療を行う「地域周産期母子医療センター」が5病院、「周産期医療協力施設」が4病院ある。これらの病院が参加した昨年10月の県周産期医療協議会専門部会では、原則として受け入れを断らず、受け入れられない場合はその病院が別の病院を探すことを改めて確認している。だが、総務省消防庁の昨年1年間の調査では、妊婦の救急搬送でいわき市で8回拒否された事例があり、深刻な医師不足は県内各病院で解消されないままとなっている。
周産期医療センターに施設増築へ 磐田市立総合病院
静岡新聞 2008年10月25日
http://www.shizushin.com/news/local/west/20081025000000000037
磐田市立総合病院(同市大久保、北村宏病院長)は、分娩前後の母子の受け入れ体制を拡充する。産科と新生児特定集中治療室(NICU)を連携させた「地域周産期母子医療センター」の新施設を敷地内に建設。スタッフを増員し、NICUは5床増、個室も現在の12床から20床に増やす。新しい建物の安全祈願祭を25日に行う。
新施設は現在のリハビリ庭園に建設する。鉄筋コンクリート3階建てで、延べ床面積は約4600平方メートル。総事業費は約15億円。平成21年度中の完成を予定し、中遠地域の周産期医療の拠点病院を目指す。
中遠地域では分娩ができる医療機関が減少し、磐田市立総合病院の平成19年の分娩数は約1200件と、10年前の約2倍となっている。同病院産婦人科は昨年、県から「地域周産期母子医療センター」の指定を受けたが、実情にあった診療には現在の施設では手狭だったという。重い症状の新生児にも対応できるよう、スペースだけでなく機器や専門スタッフ確保に努める。
北村病院長は「産科、小児科医と助産師の数と体制を充実させ、より高度な周産期医療を行っていきたい」と話した。
産婦人科また閉科へ 清水厚生病院から4医師撤収/静岡
読売新聞 2008年10月25日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shizuoka/news/20081024-OYT8T00707.htm
静岡市清水区庵原町の清水厚生病院(363床)で、常勤の産婦人科医が派遣元の浜松医大(浜松市東区)に引き揚げられることなどから、来年3月末で産婦人科が閉科になることが24日、わかった。人口約24万人の同区で危険性の高い出産に対応できる医療機関は静岡市立清水病院だけという事態になりそうだ。
清水厚生病院によると、今月上旬、浜松医大から「産婦人科医4人全員の派遣を中止したい」との連絡があった。この4人のうち1人は来春以降、同区内で産科医院を開業予定だという。
清水厚生病院では年間600~700件の出産を扱い、今年上半期の外来患者は1日平均82人。新規開業予定の産婦人科医は年300~400件前後の出産を扱う意向だというが、同病院は残る数百件について、市立清水病院や県立総合病院(静岡市葵区)などを中心に、市内での受け入れを要請するという。
妊産婦100%受け入れ 橋本市民病院、24時間体制で
1日平均28人誕生 昨年度2倍に 県立医科大など協力/和歌山
読売新聞 2008年10月25日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/wakayama/news/20081024-OYT8T00848.htm
橋本市民病院には、生まれたばかりの赤ちゃんの写真が張り出されている 橋本市立橋本市民病院の産婦人科で、2007年度の一日平均の出産数が28人と、06年度(15人)の2倍近くになった。24時間の診療体制で、妊産婦の100%受け入れを維持。周辺の病院で産婦人科がなくなるなか、橋本・伊都地方だけでなく、奈良県南部からの利用も相次いでいる。同病院は2004年12月、現在の橋本市小峰台に移転してから、患者数が年々増加。05年度、産婦人科の患者は、外来6884人、入院4920人だったが、07年度には、外来は1・82倍の1万2563人、入院は1・36倍の6724人となった。そうしたなか、外来患者は、100%の受け入れを続ける。
産婦人科医は、県立医科大の協力で常勤2人、非常勤2人を確保。副院長でもある古川健一医師ら常勤医は、月に7~8度の宿直をこなし、非常勤の派遣医も3日に1度は宿直勤務をする。今年7月からは、産婦人科の経験がある乳腺外科医が外来診療に協力し、24時間体制を維持している。京奈和自動車道の整備が進んで便利になったことで、奈良県南部の妊婦が受診するケースも増加。ナースステーションの前には、生後2時間以内に撮影した赤ちゃんの写真がずらりと張り出され、見舞いに来た家族らの笑顔が絶えない。
搬送先を探していた東京都内の妊婦が8か所の病院で受け入れを拒否され、出産後に死亡するなど、産科医療の充実が課題となるなか、石井敏明・同市民病院管理者は「受け皿としての期待を感じる。県立医科大の協力と医師らの頑張りのお陰です」といい、山本勝廣院長は「紀北の拠点病院として安心して出産できる現体制を維持したい」と話している。
姫路でも妊婦14院拒否 救急搬送 腹痛収容まで1時間/神戸
読売新聞 2008年10月25日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hyogo/news/20081025-OYT8T00004.htm
姫路市で先月25日未明、腹痛を訴えた同市飾磨区の妊婦(20)が14病院に受け入れを拒否され、15番目の病院に収容されるまで1時間かかっていたことがわかった。妊婦、胎児とも無事だったという。救急関係者は「医師不足で、夜間は特に搬送先を見つけるのが難しくなっている」と説明し、対応に頭を悩ませている。
市消防局によると、同日午前3時頃、この妊婦が腹痛を訴えて119番。駆けつけた救急隊員は周辺の病院に順次、受け入れを打診したが、「医師が不在」「ベッドがない」「治療中」などと相次いで断られた。このあと、隣接する高砂市や加古川市の病院にも要請したが同様に拒否され、一度あきらめた姫路市の病院に改めて要請して搬送した。病院到着は、午前4時頃だった。
市によると、日曜や祝日の日中は12病院の産婦人科が交代(輪番)で診療に当たっているが、夜間は平日、休日とも担当する病院がないため、今回のようなケースがあると近くの医療機関へ要請し、受け入れを求めているという。
妊婦かどうかは不明だが、4月にも下半身から出血した市内の女性(45)が11病院に拒否されたり、腹痛を訴えた別の市内の女性(24)が6病院に断られたりしており、いずれも、119番から到着まで約1時間かかっていた。市消防局の担当者は「かかりつけ医をつくり、普段から体調管理に努めてもらうことも大切」と話している。
◇内科と外科輪番減少◇
休日・夜間の重症患者を交代で診療する姫路市の輪番病院のうち、内科1病院と外科1病院が今月、撤退し、輪番に加わる両科の病院が内科4、外科2に減ったことがわかった。当直医を確保できなくなったのが理由としており、市の救急医療体制はさらに脆弱(ぜいじゃく)となった。4月にも内科が6から5に、外科が7から4に減っていた。市保健福祉推進室の平岡護室長は「踏みとどまっている病院・医師の負担がますます増え、さらなる撤退を招かないよう、待遇改善や医師の確保に全力を挙げたい」と話している。
妊婦死亡 墨東病院のみ当直医不足 都内の9センター
朝日新聞 2008年10月25日
(1)http://www.asahi.com/national/update/1024/TKY200810240304.html
(2)http://www.asahi.com/national/update/1024/TKY200810240304_01.html
脳出血をおこした東京都内の妊婦が八つの病院に受け入れを断られ、その後死亡した問題で、最初に受け入れを断った都立墨東病院(墨田区)だけが、都内9カ所ある総合周産期母子医療センターのうち、最低2人とされている当直態勢を確保できていなかったことが分かった。7月以降、当直が1人の土、日曜日、祝日の急患受け入れは原則断ってきており、「センターの機能を果たせていない」との声が出ていた。
総合周産期母子医療センターとは、危険性が高い出産や母胎管理のための地域の砦(とりで)的存在の医療機関。都の指定基準によると、24時間体制で産科を担当する「複数の医師」が勤務していることが望ましい、とされている。都によると、墨東病院では6月に産科の非常勤医が辞めた後は2人での当直が維持できなくなり、7月以降は土、日曜日と祝日に限って1人で当直を担当していた。
このため、土、日、祝日の妊婦の急患受け入れは原則断り、平日でも2人の当直医のうち上席の医師が外部からの非常勤医の場合は「ハイリスク分娩(ぶんべん)の受け入れが困難なことがある」と地元の墨田区・江東区・江戸川区の産婦人科医会会員に伝えていた。地元の医師たちは「医師不足のなかで、墨東病院も頑張っていた」としながらも、最近の状況については「センターとして機能しないのは異常」との声が出ていた。 しかし、墨東以外の8病院に朝日新聞が取材した結果、全病院で2人以上の医師を当直に配置。最大4人の当直を置く病院もあった。
都立病院の医師不足について、都病院経営本部は24日に開かれた都議会委員会で「都立病院は給与水準も低く、敬遠される傾向にあった」と説明。都によると、05年度の都立病院医師の平均給与は、47都道府県と14政令指定市の公立病院のなかで最下位だった。今年度から産科医については年収で200万~300万円上積みしたが、それでも中位程度とみられるという。
日本赤十字社医療センター(東京・渋谷)の杉本充弘・産科部長は「かつて都立病院医師の給与は平均的な在京病院より高かった。待遇が悪くて人がいなくなり、仕事がきつくなり、さらに人が来なくなっている」として、「こうした状況を招いた都の責任は大きい」と話した。 都は当直の基準を満たせていない墨東病院を総合周産期母子医療センターに指定し続けていることについて、「望ましくない状況にある」との認識を示しつつ、「大学などに依頼し、一日も早く元に戻したい」としている。
都内の周産期医療センター 綱渡り救命体制
東京新聞 2008年10月24日
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008102490070752.html
妊娠九カ月の東京都内の女性(36)が、相次いで病院に受け入れを断られ、脳内出血で死亡した問題は、二十四時間態勢の「周産期母子医療センター」制度が十分に機能していない実態を浮き彫りにした。慢性的な医師不足や集中治療室(ICU)の満床に加え、当直を挟んで四十八時間勤務という過酷労働の医師もいる。センターに指定されている各病院では「現場の医師の負担が重過ぎる」と訴えている。
同センターは一九九六年、緊急や重症の妊産婦と新生児を救うために制度化され、全国でスタートした。都内には新生児集中治療室(NICU)と母体集中治療室を備えた総合センターが九施設、NICUだけの地域センターは十三施設ある。今回、女性の受け入れを拒否した八病院のうち、どちらかに指定されている病院は、当初拒否した都立墨東病院など六つあった。
女性が脳内出血を起こした今月四日夜、順天堂医院には当直医が二人いたが、それぞれお産に対応。産科だけでなく、婦人科のベッドも満床だったため、「受け入れ不能」と回答した。病院関係者は「年間八百件以上のお産を扱い、分娩(ぶんべん)室、陣痛室にも妊産婦を入れて何とか対応している。慢性的な医師不足が元凶だ」と訴える。
日赤医療センターも「六床ある母体集中治療室が満床で、当直医三人は他の妊婦の搬送に対応していた」と説明。担当者は「NICUは常時いっぱい。産科ベッドが空いていても、NICUが満床だと、周産期医療では受け入れられないことになっている」と言う。
東京慈恵会医科大病院は「産科は当直の常勤医が二人いて受け入れは可能だったが、九つのNICUのベッドに空きがなかった」(広報課)。担当者は「できるだけのことをしたい気持ちはあるが万全な体制が整っていない中で適切な処置ができるかという不安もある」と話す。やはり十二床あるNICUが満床で断ったのは日大板橋病院。常勤医三人がセンターの当直を行い、足りなければ自宅待機の医師を呼び出す体制になっているものの、担当者は「新生児の容体が良くなっても、受け入れ先の病院が見つからない。長期間いる新生児が多くなり、空いても次の子が入るので満床が続いてしまう」と打ち明けた。
◆要請なかった病院でも…状況同じ、不安の声
妊婦の受け入れ要請を拒否した八病院以外の周産期母子医療センターでも、医師不足や新生児集中治療室(NICU)の慢性的な満床などで、特に当直時間帯の受け入れには慎重な意見が多かった。
愛育病院は「常勤医は十一人いるが、お産件数は昨年が千八百件超。医師が十分足りているとはいえない」と説明。今春から同じ港区内の東京都済生会中央病院がお産の取り扱いを休止。産科医が逮捕され、無罪となった福島県立大野病院事件の影響もあって、「この一-二年ほど、開業医も産科を休止するところが相次ぎ、妊産婦が集中している」といい、NICUは常に満床状態という。
杏林大病院の岩下光利教授は「多摩地区では都内のお産の30%以上が行われるが、センターは杏林しかなくパンク状態。医師の四十八時間勤務もあり、過労死も出かねない。医師は一・五倍から二倍は欲しい」。昭和大病院の大槻克文産婦人科医局長も「センターの医師は十二人だが、大いに不足している。集中治療室も産科ベッドも週の半分以上は満床」と訴える。
東邦大医療センター大森病院では三、四人の医師が当直に当たるが、担当者は「全員が熟練した医師とは限らず、研修医もいる。医療ミスをすると訴訟になる現状で、研修医がハイリスクな患者に対応できるのかという問題もある」と話す。
墨東病院のみ今後も「当直1人」
MSN産経ニュース 2008年10月25日
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081025/crm0810250020001-n1.htm
東京の妊婦死亡問題で、切迫流産などリスクの高い妊婦を受け入れる総合周産期母子医療センター設置の都内の医療機関のうち、問題が発生した都立墨東病院(墨田区)だけが土日、今後も1人当直体制をとり続けることが24日、わかった。墨東病院は7月から週末の当直が1人態勢になり、基本的に搬送を受け入れていなかった。
都から総合周産期母子医療センターの認定を受けているのは全9施設。産経新聞が土日の当直体制について聞いたところ、8施設から回答があった。このうち、墨東病院は問題発生後も土日1人当直体制を続行。問題発覚後初めての土曜となる25日は、問題発生時の当直医と同じ現場研修年数を積んだ別の当直医1人が入る。
他の7施設は、杏林大医学部付属病院(三鷹市)が2~3人、東京女子医科大病院(新宿区)が2~3人、日赤医療センター(渋谷区)が3人、東邦大医療センター大森病院(大田区)が3~4人、昭和大病院(品川区)が2人、日大医学部付属板橋病院(板橋区)が4人、愛育病院(港区)が2人で、いずれも複数の当直体制を取ると回答した。
墨東病院は「人手不足はすぐに解決できない。2人体制を目指したいが、それができないのが現実」としている。
たらい回しで妊婦死亡 “最後の砦”に問題点山積
MSN産経ニュース 2008年10月24日
(1)http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081024/crm0810242322032-n1.htm
(2)http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081024/crm0810242322032-n2.htm
(3)http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081024/crm0810242322032-n3.htm
(4)http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081024/crm0810242322032-n4.htm
多くの病院が集まる東京で起きた脳内出血を起こした妊婦(36)の救急搬送をめぐる悲劇。妊婦を取り巻く医療環境を検証すると、都会の母子を救うための「最後のとりで」にはさまざまな問題が浮かび上がる。舛添要一厚生労働相は24日、都立墨東病院に出向き、大臣自らが聞き取りする異例の調査を行った。厚労省は全国に74カ所ある総合周産期母子医療センターも現状を調査し、改善を検討する考えだ。
●医師不足
「一番の問題は医師不足」。舛添厚労相は24日、都立墨東病院での異例の視察を終え、そう語った。医師不足の中でも、とりわけ産科医や救急医の不足は顕著だ。産科医はこの10年間で1割の減。勤務時間が不規則で、事故の際の訴訟リスクが高いことが原因と言われている。
墨東病院規模の病院で、望ましいとされている常勤産科医の定数は9人だが、同病院では、5年前から産科医が定数の9人を満たしていなかったという。都が同日、都議会で明らかにした。現在は4人。研修医も含めて2人で回していた当直は、土日に限って7月から1人にし、原則的に救急搬送も遠慮していた。妊婦が脳内出血を起こした今月4日は土曜日だった。
行政も手をこまねいているだけではない。基幹病院には重点的な産科医の配置を始めた。高度医療を提供する「総合周産期母子医療センター」の指定病院も拡充中。救急現場と医療現場のパイプ役となる「専門コーディネーター」制度を作ったり、関係機関がインターネットの画面を見るだけで「空床の有無」「手術受け入れの可否」が分かる周産期医療情報を共有するシステムも整備してきた。しかし、今回、それらが機能した形跡はない。舛添厚労相は「周産期医療問題の解決に力を入れてきたのに、このようなことが起きたのは羊頭狗肉(見かけ倒し)だ。非常にショック、重く受け止める」と話した。
●満杯の施設
受け入れを断った8病院のうち墨東病院と日本赤十字社医療センター、日大板橋病院の3病院は「総合周産期母子医療センター」の指定を受けていた。指定病院は、国から補助金が出る代わりに、切迫流産などリスクの高い出産に対応できる設備を備えなくてはならない。他の5つの病院も、名の通った大規模病院だ。
しかし、日赤医療センターは「母胎児集中治療室が満床だった」。慶応大も「産科の個室が埋まっていた」。東京慈恵会医科大付属病院では「前日に体重約600グラムの超未熟児の双子の出産があり、空き施設がなかった」と説明している。なぜ、どこもかしこも施設が埋まっているのか。お産問題に詳しい聖路加看護大学の堀内成子教授は「都会の病院が、地方で対応できない難しいお産なども受け入れている現実がある」と解説する。
都心の病院を頼るのは、ハイリスク出産の可能性がある妊婦だけではない。産科医不足が原因で、首都圏でも埼玉、千葉、神奈川など産科の休止は後を絶たない。首都圏の「お産難民」が、都心の高度な施設を持った病院へと、なだれ込んでいる現実もある。
全国周産期医療連絡協議会の北里大学、海野信也教授(産婦人科学)は「北里大もセンターの指定を受けているが妊婦の7割は受け入れを断っているのが現状」と苦境を明かす。今回の問題では、センターの指定制度の不備も明るみになっている。墨東病院は、休日の当直医が1人しかいないなど、センターとしての機能は低下していた。国や都道府県がセンターの指定をしたあと、その機能の点検などのフォローには力を割いてこなかったことが、機能低下を招いた可能性もある。
●困難な診断
妊婦が当初、駆け込んだかかりつけ医は22日に開いた会見で、「尋常ではない頭痛を訴えていた」と話し、受け入れ要請先である墨東病院に緊急性を訴えたと力説した。しかし、墨東病院は「脳内出血の認識はなかった」と食い違った説明をしている。もし、墨東病院側がかかりつけ医の要請を漫然と受け止めていたなら、過失にも問われかねないが、専門家からは、急病の妊婦の場合、外見の症状だけで「脳の血管に障害がある」と判断を下す難しさを指摘する声が強い。
昭和大の岡井崇教授(産婦人科)は「頭痛や吐き気があるといった症状があれば妊婦特有の子癇(しかん)発作を疑ったりする。その後、ベテランなら脳内出血という判断にたどり着くかもしれないが、経験のない医師だと判断は難しいだろう」。対応した墨東病院の医師は、まだ現場経験5年目だった。妊婦の脳内出血を、「100万人の妊婦で、数例ある程度の珍しい症状」という医師もいる。
日本医科大学の中井章人教授(女性診療科・産科)は「今回のようなケースで、産科医だけの判断で妊婦の症状を判断するのは難しい」と強調。脳外科の専門医に診せ、CT(コンピューター断層撮影)などで診断をしないと脳の血管に障害があるかどうかはわからないと指摘する。
●複数の診療科目
今回のケースで妊婦は妊娠9カ月。脳内出血で入院する場合に、病院側はどういう体勢を取るか。墨東病院のスタッフは「万全の体勢を作るのであれば産科医、小児科医、脳神経外科医、それに麻酔科医が必要ということになる」という。医師1人と看護師、手術設備がそろっていたからといって、即受け入れ可能というわけにはいかないのが現実だ。
東大病院は、脳外科医などの体制面では受け入れ可能だが、新生児の集中治療室(NICU)が満室という、産科の体制が整わないことが理由となって、受け入れを断った。厚労省内には「今回の事例では、複数の診療科にまたがる救急対応の難しさが象徴的に出たケースともいえる」という声もある。
今回のケースでは大規模な病院に搬送依頼がされ、それが断られているが、多くの救急患者の受け入れ先は、より小規模な病院。そこでは各科の医師で順番に救急医療の当番を回しているところも多い。救急の現場では、外科の医師が、内科の症状の患者を診ざるを得ないという現実も日常的にあるという。
■東京の妊婦死亡問題 体調不良を訴えた妊婦(36)が4日、都立墨東病院など8病院に診療を拒否され、最終的に搬送された墨東病院で出産後、脳内出血の手術を受け、3日後に死亡した。赤ちゃんは無事。墨東病院は都指定の総合周産期母子医療センターだが、4日の当直は研修医の1人態勢だった。同病院と都は「当初は脳内出血と分からなかった。判断は妥当」と主張。受け入れを依頼した医院は「頭痛を訴えていると伝えた」と説明、頭部疾患をめぐる認識が食い違っている。
総合センター核に連携 「受け入れ拒否、基本的にない」/長野
読売新聞 2008年10月24日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagano/news/20081023-OYT8T00811.htm
東京都内で脳出血を起こした出産間近の妊婦(36)が、病院から受け入れを拒否され、出産後に死亡した問題では、「総合周産期母子医療センター」が機能していなかった。県内では、「総合センター」を中核に、計19病院で連携をとる態勢が組まれており、医療関係者は「妊産婦の緊急搬送の受け入れ拒否は起こりえない」と話している。県内では2000年9月に、県立こども病院(安曇野市豊科)が、最重症の妊産婦や新生児の救命にあたる「総合センター」に指定された。病床数は163床で、スタッフは産科医6人、新生児を専門に診る小児科医8人、研修医4人。当直は、産科医1人、小児科医2人、麻酔科医1人に加え、医師2人が15分以内にかけつけられる態勢だ。
こども病院が年間に扱う約200件の分娩(ぶんべん)のうち、約130件は、他の医療機関からの緊急搬送。中村友彦センター長は「基本的に患者の受け入れを拒否することはない」と話す。
周産期救急には、母体救急、胎児救急、新生児救急の3分野があり、こども病院が担当するのは、胎児救急と新生児救急。今回のように、母親が脳出血を起こすなど、母体への治療が必要な場合は、信州大病院(松本市)に搬送する。
また、県内5地域に、それぞれ「地域周産期母子医療センター」が置かれており、比較的高度な治療を担当している。非常に危険な場合は、こども病院に搬送することになっており、2時間以内での搬送が可能という。そのほか、帝王切開の必要な異常分娩に対応出来る13の「高度周産期医療機関」が「地域センター」に準ずる形で設置されており、計19病院で、正常分娩を扱う一般の病院や診療所からの緊急搬送を受け入れている。事情があって緊急搬送を受け入れられない時は、責任をもって別の受け入れ先を探すことを申し合わせている。「病院が横のつながりを持って、リスクを分散させることが大切」(中村センター長)という。一方、危険な状態だった母子の容体が安定した場合は、こども病院から他の18病院に転院してもらうことになっている。
ただ、県内でも、産科医の絶対数の不足や、分娩を扱う医療機関の減少などの問題は深刻だ。県健康づくり支援課は「現時点では各医療機関の連携がうまく機能していると思うが、今後、お産を取り巻く環境が変わる中で、今のシステムを維持していけるかが課題だ」としている。
本県は産科医が連携して受け入れる体制/新潟
読売新聞 2008年10月24日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/niigata/news/20081023-OYT8T00899.htm
東京都内の妊婦が七つの医療機関から受け入れを断られて出産後に死亡した問題は、お産を巡る医師不足、連携不備を浮き彫りにした。県内の医療関係者らは、同様の事例は県内では起きないとみるが、産婦人科医が厳しい勤務環境の中にあることに変わりはない。
今回の問題は、緊急対応が必要な妊婦を受け入れる周産期母子医療センターが相次いで受け入れを断ったことにある。県健康対策課によると、妊婦の受け入れを最初に断った都立墨東病院と同様の「総合周産期母子医療センター」は、県内に新潟市民(常勤の産婦人科医6人)と長岡赤十字(同6人)の2か所あり、産婦人科医が原則24時間体制で待機している。
比較的高度な医療に当たる「地域周産期母子医療センター」は、県立新発田(同3人)、県立中央(同3人)、済生会新潟第二(同6人)、長岡中央綜合(同4人)の4か所で、新大病院が協力病院として一部患者を受け入れている。同課によると、県内で妊婦が救急搬送中に、この7医療機関から受け入れを断られたのは昨年1年間で81件あったが、妊婦が死亡したり、死産したりするケースはなく、長時間受け入れ先が見つからなかった例もほとんどなかったという。
一方で、県内の産婦人科医の数は1998年の185人から2006年に150人に減少し、人口10万人あたりの医師数は全国平均(7・9)を下回る6・2。
新潟市民病院の新田幸寿副院長は、「新潟では受け入れられる機関が少なく、『自分たちがやるしかない』という意識があり、ほかに搬送先がなければ医師を呼び出してでも受け入れる。今回のようなケースは起きない」と話す。新潟大学医学部産科婦人科学教室の田中憲一教授は、今回の問題を「都市部の東京は(医師数も病院も)多いので、患者に対する無関心もあったのでは」とした上で、「新潟は、医師同士が知り合いで、連携が取れずに受け入れ手が見つからないケースはないはず。医師が少ない中で全員が協力して何とか維持している」と話した。
舛添厚労相と石原知事が火花 妊婦死亡責任めぐり応酬
朝日新聞 2008年10月24日
http://www.asahi.com/health/news/TKY200810240251.html
舛添厚生労働相が「東京都に任せられない」と言えば、石原慎太郎都知事は「医者が足りないのは国の責任」と反発。妊婦が8病院に受け入れを断られて死亡した問題で、大臣と知事が24日、責任のなすりつけ合いを演じた。
舛添厚労相は閣議後の会見で、「週末に1人しか当直医がいなくて総合周産期母子医療センターと言えるのか」と批判。「事故の情報も都から上がってこない。とてもじゃないけど任せられない」と声を張り上げた。
これに対し、石原知事は定例会見で、年金問題への舛添厚労相の対応を踏まえて「あの人は大見えきったつもりでいつも空振りする」とし、「医師不足にしたのは誰だ。東京に任せられないじゃなく、国に任せられない。厚労省の医療行政が間違って、こういう体たらくになった」と言い返した。
救急隊の過半数が「利用してない」-救急医療情報システム
キャリアブレイン 2008年10月24日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/18831.html
民主党の厚生労働部門会議が10月24日に開かれ、東京都内で妊娠中に脳内出血を起こした女性が7医療機関から受け入れを断られた後に死亡したとされる問題で、23日に引き続いて厚生労働省と消防庁からヒアリングを行った。
【関連記事】
妊婦死亡問題めぐり議論―民主
「医療政策」でシンポ―自民、民主
医療政策のマニフェスト原案を紹介―民主
後期医療、「天引きで負担増」と批判―民主党
「国保を都道府県ごとに再編」で民主が追及
消防庁は、「救急医療情報システム」に関するアンケート調査について説明した。全国の救急隊のうち、約53%が同システムを「ほとんど利用していない」または「全く利用していない」と回答。利用しない理由については、27.4%が「リアルタイムの情報ではない・情報の信ぴょう性が低い」、25.8%が「当番制、輪番制が確立されているから今の体制で十分」、13.2%が「独自で情報収集している」と答えた。今年2月の医療機関を対象にした情報更新の頻度調査では、一日の更新回数が「2回」と答えた医療機関が25%、「1回」が29%で、「リアルタイムで更新している」と答えた医療機関は11%にとどまった。
同党の議員らは「情報の信ぴょう性が低く、リアルタイムの情報ではないから利用していないという救急隊が27%もいるとは信じ難い」と驚きを隠さなかった。厚労省は、今年4月時点での総合周産期母子医療センターに関する調査について説明した。同調査によると、都立墨東病院の産婦人科の常勤医師は3人だった。
この数字について、同党の議員らは「(常勤が)3人だったら二十四時間体制を取ることができないことぐらい分かるだろう」「なぜこの数字を見て指定施設から外さなかったのか」「他の都道府県(の総合周産期母子医療センター)と比べても明らかに少ない」などと厳しく批判した。
同調査によると、全国73の総合周産期母子医療センターのうち、50施設が常勤医10人以下、15施設が5人以下だった。
厚労省は今後の対応として、▽全国の周産期医療センターへの緊急アンケート調査▽必要な施策の検討と予算の確保▽周産期救急情報システムの利用検討▽救急医療と産科・周産期医療の連携▽産科医の確保-などを検討中と説明した。
また、今回の問題で機能しなかった「救急医療情報システム」の改善と、妊婦の受け入れができなかった医療機関への事実関係の調査も始めるという。会議の最後に、山田正彦衆院議員は「ベッドが空いてない、医師がいないなどの理由で安易に受け入れを断らないでほしい。緊急対応策をぜひ考えてほしい」と訴えた。
妊婦の死亡 救急体制が貧弱すぎる
北海道新聞 2008年10月24日
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/125153.html
脳内出血に陥った東京の妊婦が、医療機関への受け入れを七回も断られた末、やっと収容された病院で死亡した。日本の医療現場が抱えている大きな問題は、産科を中心にした医師不足と、それに伴う救急体制の不備だ。この二つが相まって起きた悲劇だ。医師の絶対数が圧倒的に多く、大規模病院が集中する東京で起きたことに、問題の深刻さが表れていると言えないか。
体調不良を訴えた女性は、救急車でかかりつけ医に運ばれた。容体の重大さに医師は総合周産期母子医療センターに指定されている都立墨東病院に受け入れを要請した。しかし、墨東病院にはこの日、産科医が当直の一人しかいなく、受け入れは断られた。大学病院などにも当たったが、いずれも拒否されてしまった。女性は結局、墨東病院に運ばれ、無事出産できたが、本人が三日後に亡くなった。
総合周産期母子医療センターは、妊婦や新生児に高度な救急医療を行う施設だ。 それにもかかわらず、墨東病院では退職者が相次いで産科医不足に陥っていた。この夏から当直を一人体制にし、原則急患の受け入れをやめた。周産期医療の最後の「とりで」としてはあまりにも貧弱な体制だ。
産科医不足は、道内ではさらに深刻だ。
二〇〇六年末の道内の産科医は約三百六十人で、二年前より約一割も減った。札幌や旭川など六カ所にある総合周産期センターのうち、複数の医師による二十四時間体制をとっているのは三施設だけだ。 札幌市産婦人科医会が救急体制の在り方をめぐって札幌市と対立、九月末で二次救急の輪番制をやめたことも記憶に新しい。これも、もとはと言えば産科医が減少し、輪番制をそのまま維持するには医師の負担が大きすぎると判断したためだ。
産科医が全国的に減少しているのは、昼夜を問わない激務なうえ、医療過誤として訴えられるケースが他の診療科と比べて多いからだ。退職したり、分娩(ぶんべん)の扱いをやめたりする医師が増えた。産科を志望する医学生も少なくなったという。
医師不足の解消は容易でない。厚生労働省は来年から大学医学部の定員を増やすが、医師の養成には十年かかる。産科をどれだけの学生が希望するかもわからない。 まずは、診療報酬などで激務に見合った評価を行うことが必要でないか。いったん退職した医師が、フルタイム以外でも復職できる環境づくりも欠かせない。
妊婦たらい回し 産科医療の抜本見直しを
琉球新報 2008年10月24日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-137424-storytopic-11.html
妊婦死亡 お産の危機がここまでとは
愛媛新聞 2008年10月24日
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017200810247601.html
脳内出血を起こした妊婦が八カ所の病院に受け入れを断られ、出産後に亡くなった。繰り返されるいたましい事態は産科現場からの重い警鐘だろう。検証を急ぎ、対策に生かさねばならない。
妊婦が救急搬送されたかかりつけの産婦人科医院は異常を認め、都立墨東病院へ連絡した。妊婦や新生児に関する高度な設備をそなえた都指定の総合周産期母子医療センターで、石原慎太郎知事の肝いりで創設した「東京ER」の一つでもある。本来なら頼れる最後のとりでだ。
だが欠員のため、当直医一人態勢となる週末は基本的に搬送を断っていた。専用端末上では受け入れ可能となっていたほかの病院も、満床などを理由に拒否した。
地方では出産できる施設すらない市町村が不気味に広がっている。一方、大病院のひしめく東京でも、ひと皮むくと存立基盤がなんと心もとないことか。驚くばかりだ。
ほかでも診てもらえるという意識があるのだろうか。ただ、どの病院も綱渡りのはずで、それだけ苦悩は深い。
身近なかかりつけ医と高度な専門医療機関の連携がスムーズに行かなかった点も、大きな課題を残した。
病院にかかったことのない妊婦がいきなり救急搬送を要請し、受け入れ先探しに困難をきわめた事例もあり、かかりつけ医がいれば万一のとき安心と思うのが患者心理だろう。それが今回うまく機能しなかった要因に、意思疎通の不十分さがあるようだ。
妊婦のかかりつけ医は頭部の異常を伝えたという。奈良県で妊婦が十八病院に受け入れを断られ、脳内出血で死亡したように、妊娠末期などはもともと要注意とされる。
ところが、墨東病院側は第一報段階では頭部疾患がわからなかったという認識だ。
検証は今後の作業にゆだねられるが、切迫した局面でのすれちがいが致命的になることは重い教訓として残った。複数の診療科にまたがる救急対応の難しさも浮かぶ。
問題の根本に産科医の絶対数不足があるのはまちがいない。国は医学部定員の増加へかじを切ったが、養成には長い年月がかかる。産科など医師不足の著しい部門へ人材が集まる保証もなく、政策的誘導が欠かせない。
そのなかで注目される取り組みに、県医師会の進める、医療紛争を話し合いで解決に導く人材の育成がある。訴訟リスクの大きさは産科医不足の一因とされる。期待を込めて成果を見守りたい。
二十-三十代の産科医の多くを女性が占める。出産などを機に辞めた人材の活用もますます待ったなしとなる。
検証を当面の対策に反映させつつ、背景にある医師不足対策に手を尽くしたい。
妊婦死亡 急を要す安心医療体制
東京新聞 2008年10月25日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008102502000123.html
出産を控え、具合が悪くなった女性(36)が八つの病院に受け入れを断られ、脳内出血で死亡した。大都市東京での出来事だ。悲劇を繰り返さないよう、安心できる医療体制を築かなくてはならない。女性はかかりつけの産婦人科医院に救急車で搬送された。かかりつけ医は脳内出血の疑いがあるとみて受け入れ先を探した。最初に連絡を入れた都立墨東病院は当直の産科医が一人しかおらず、断られたという。
その後、東大病院や慶応大病院、日赤医療センターなどからも断られ、最終的に女性が運ばれたのは最初に連絡した墨東病院だった。赤ちゃんは生まれたが、女性は三日後に亡くなった。思い出すのは、昨年夏、奈良県の妊婦が九つの病院に受け入れてもらえず、見つかった大阪府高槻市の病院に向かう途中、救急車内で破水し、死産したケースだ。
このときはリスクの大きい妊婦と新生児に対応する「総合周産期母子医療センター」が奈良県に設置されておらず、女性も産科にかかっていなかった状況だった。しかし、墨東病院は都内に九カ所ある総合周産期母子医療センターの一つであり、二十四時間態勢で急患を受け入れる「ER」(救急救命室)にも指定されている。そんな病院が受け入れを断るというのは医療の危機ではないか。
根本的な問題として医師不足がある。墨東病院も産科医が減ったため、週末や休日は当直医を二人から一人にした。女性が運ばれたのは土曜日で、病院は当直医以外の医師を呼び出して帝王切開し、その後に頭の手術を行った。勤務医は宿直に日勤が続くことがあり、過酷な労働だ。とりわけ産科医は医療過誤訴訟で当事者になりやすく、敬遠される。待遇を改善するなど、医師を増やす手だてを考えなくてはならない。
医師不足の問題とは別に、東京の都心部で医療機関が患者の受け入れを相次いで断った事態は、病院相互の連携がとれていない実態も浮き彫りにした。加えて、ほかの病院が受け入れるだろうという思いは医療機関側になかっただろうか。空き病床の情報を正確に管理するネットワークの整備や、受け入れ先病院を調整する組織の設置などは検討すべき事柄だ。墨東級の病院であれば周産期センターとERの連携も確立してほしい。
システム見直しや連携強化は急ぎ取り組む課題であり、東京だけでなく、全国的に行うべきだ。
妊婦受け入れ拒否 緊急時の備え大丈夫か
中国新聞 2008年10月25日
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200810250161.html
また妊婦の命が失われた。医療施設の充実している東京都内で、八カ所の病院に救急の受け入れを断られた末である。原因を徹底的に調べて、こうした悲劇を二度と繰り返さないようにしなければいけない。妊婦は吐き気などを訴え、かかりつけの医院を訪れた。対応できず、複数の大病院に受け入れを求めたが、断られた。いったん拒否された都立墨東病院に受け入れられた時は既に一時間ほど過ぎていた。出産後、脳内出血の手術を受けたが、三日後に亡くなった。
墨東病院は、都の「総合周産期母子医療センター」に指定されている。スタッフをそろえて高度な医療で妊婦や新生児の命を守る「最後のとりで」のはずだった。しかし、九人いるべき産科医師は四人。研修医ら非常勤の十一人を含めて当直をこなしていた。その日は週末で、当直は一人態勢。基本的に急患は受け入れていなかった。とても「総合センター」として十分な態勢とは言えまい。期待された役割と現実との間に大きなギャップがあった。
病院内部の連携にも疑問が残る。緊急手術や救命措置など専任の医師が二十四時間態勢で対応する「ER(救急診療室)」の機能を持つだけに、もし横の連絡があれば、もっと早く受け入れることができたのではないか。妊婦の死亡は、おととし奈良県でも起きた。意識不明になり、二十近い病院に受け入れを断られた後だった。医師も病院も不足しがちな地方の悲劇とみた人もいただろう。それだけに大都市東京で同じことが起きた衝撃は大きい。
気になるのは、医療機関が情報を共有できていたかである。「頭痛で七転八倒と伝えた」とかかりつけ医側は話すが、受け入れ側は最初は脳内出血と認識していなかったという。意思疎通が不十分だったことは間違いなさそうだ。
急を要するかどうか、どういう専門医が診るべきか。情報を整理してスムーズに判断できる「司令塔」的な機能が欠けていたのではないか。拠点となる病院か消防か、どこかに持たせる必要がある。大阪府の例が参考になりそうだ。リスクのある妊婦をどこに緊急搬送するか、調整する医師を中核病院に置いている。構造的な問題もある。医師の絶対数が不足していることだ。特に産科は、他の診療科に比べ、過酷な勤務を強いられ、訴訟のリスクも高いため、志望する医学生が減っている。国は、ようやく医学部の定員を増やす方針に転じた。実効性ある施策を講じてほしい。
広島県でも、産科医師は慢性的に不足している。県が指定した二カ所の「総合センター」など拠点病院では、昼夜を問わず仕事に追われ、ギリギリの人数で何とかしのいでいる実態もある。このままでは先行きが心もとない。専門医を長期的にどう確保するか、対策が欠かせない。緊急時の病院間連携についても、あらゆるケースを想定して、日ごろからチェックしておきたい。
産科医不足の悲劇 /埼玉
毎日新聞 2008年10月25日
http://mainichi.jp/area/saitama/nikki/20081025ddlk11070174000c.html
身につまされる問題が東京都で起きた。妊娠中に脳内出血を起こした36歳の女性が複数の病院に受け入れを断られ、手術3日後に死亡したことだ。私の妻も妊娠中で、現在9カ月。さいたま市内の病院で診察を受けているが、もし何かあって転院になれば、県内の大病院はちゃんと対応してくれるのか不安になる。
この問題の背景に産科医不足が挙げられる。産科医を取材したことがあるが、緊急のお産や手術もあり帰宅は遅く、宿直も多かった。「お産は成功して当たり前と思われ、何かあれば訴訟になる」と嘆く。これは体力、気力面からも過酷な仕事だと思った。産科を選ぶ若い医師が少なくても不思議ではない。
しかし、この状況が続いていいわけがない。特別に報酬を補助したり、医療設備を整えるなど、国は産科医を増やすための対策を急ぐべきだ。奈良で妊婦が長時間転送されず死亡したのは06年。同じ問題が何年も繰り返されるようなら、行政に対し訴訟を起こしたい気持ちだ。
妊婦の死亡 母子守る仕組みを強めよ
西日本新聞 2008年10月25日
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/55702
人口が集中する大都市ほど、高度な医療に対応可能な医療機関や救急救命システムが整っており、いつ、どんな急病になっても速やかに治療を受けることができる-。一般にこうした認識、または幻想が私たちにはある。それだけに、東京で起きた悲劇の衝撃は大きかった。東京でさえこうしたことが起きるのなら、私たちの地域で同じことがあれば、どうなるのか、という不安である。
東京都内で、出産間近に脳内出血を起こした女性が、7つの病院に相次いで受け入れを断られた。女性は約1時間後、最初に断られた都立墨東病院に搬送され、赤ちゃんは無事生まれた。だが、女性は出産後に脳外科で手術を受け、赤ちゃんの顔を見ないまま3日後に亡くなってしまった。
墨東病院は都から、重い妊娠中毒症や切迫早産など危険性の高い妊娠に24時間対応できる「総合周産期母子医療センター」に指定されている。このセンターは、国の基準で「24時間体制で複数の産科医が勤務することが望ましい」とされている。ところが、墨東病院では最近、産科医がやめるなどして、7月からは週末の当直医が1人態勢になり、基本的に搬送を受け入れていなかったという。亡くなった女性が墨東病院に搬送された日も今月最初の週末で、当日の当直は研修医1人だった。一番注意が必要な産前産後の母子にとって頼りになるべき「とりで」が、週末になるたびに救急搬送に対応できなくなるという頼りない事情を抱え込んでいたのである。形を整えても中身が伴っていなければ「総合センター」の名には値しない。もし、他地域のセンターも似た現状にあれば、同じような出来事が繰り返される恐れがある。
産科医は、勤務のきつさや訴訟になった場合の負担の大きさなどから近年なり手が少なくなり、慢性的な不足が深刻化している。今回のような悲劇の再発を防ぐためには、根本的には産科医不足を解消する取り組みが欠かせない。しかし、産科医不足を嘆いているだけでは、周産期の母子にとって不安な現実は何1つ解消しない。当面急ぎたいのは、病院間のネットワークをもっと機能的なものにすることだ。
今回の悲劇はもちろん、墨東病院だけの問題ではない。7病院が救急搬送の受け入れを断った理由と背景を詳しく調べ、病院の連携を妨げた要因を突き止める必要がある。2年前には奈良県内で、出産時に脳内出血のため意識不明になった女性が約20の病院から受け入れを断られた後に死亡する出来事も起きている。知恵を絞って病院間の連携を強めることができれば、母子の命を守る仕組みがより良いものになるはずだ。
石原語録:知事会見から 妊婦死亡問題/コンビニの深夜営業自粛 /東京
毎日新聞 2008年10月25日
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20081025ddlk13010238000c.html
「産科医不足」はここまで来た 東京でも土日祝日は「無医村状態」
J-CASTニュース 2008年10月25日
http://www.j-cast.com/2008/10/25029249.html
妊婦搬送拒否 実態踏まえた見直し必要
山陽新聞 2008年8月24日
http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2008/10/24/2008102409223918007.html
コメント