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(投稿:by 僻地の産科医)
産婦人科医、山崎先生よりの投稿ですo(^-^)o..。*♡
私は、重過失罪のみを残し、業務上過失致死罪(一般のものも含め、医療だけに関わらず)が時代遅れになってさらに拡大解釈されているので、そういったものをなくしていけるといいのかな?と思います。
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【参考ブログ】
筍ENTの呟き
http://takenoko-ent.blog.so-net.ne.jp/
大野病院事件の教訓と今後の課題
島原市医師会 山崎 裕充
産科医無罪の判決が出た翌日の朝日新聞に医療と法の関係に詳しい樋口範雄・東大大学院教授(英米法)は「判決は検察側の完敗だ。だが、有罪か無罪かより重要なのは、医療事故の真相究明に裁判がそぐわないことがはっきりしたことだろう」とコメントされていました。医療行為の結果が悪ければ犯罪として裁かれる刑事訴追制度は明らかに不合理です。
現行の刑事裁判は個人の責任を追及するだけで、真相究明にならないことも周知のことです。だからといって、刑事訴追制度はそのままにして、真相究明のための医療安全調を作るのは、裁判の二重化になるだけで問題の解決にはなりません。
私達、医療側の願いは、「医療事故を刑事裁判と切り離す」ことと同時に「医療安全調を刑事裁判と切り離し」、その上で真相究明や再発防止を検討することです。
「厚労省案も民主党案も大野事件のような医師の不当逮捕を防止できないのは明白です。検察・警察が犯罪捜査を行い、業務上過失致死罪という犯罪が存続する限り、21条をどう変えようが大野事件の再発の可能性は残ります」と諌早市医師会の満岡渉先生は述べています。
医療行為の結果から業務上過失致死罪という犯罪を除外することは、現行の法制度からは極めて困難であり、医療だけを刑事免責にすることは社会が認めてくれないとする考え方も多くあります。しかし、ここを乗り越えないと、いつまでたっても医療安全調のいろいろな問題が克服できないばかりか、刑事罰に怯えながら医療を行わなくてはなりません。
これらの難問を解く鍵は「犯罪」にあると思われます。「医療事故死における業務上過失致死罪の適用を除外する」という現実困難な道よりも「医療での過失は少なくとも犯罪ではない」と国民に訴える道がより現実的ではないでしょうか。
憲法31条、39条に規定されている罪刑法定主義の内容は「国民の権利・行動の自由を守るために、犯罪は前もって成文法により明示されなければならない。しかも、いかなる行為が犯罪であるかは国民自身がその代表を通じて決定しなければならない」とあります。
原因究明のための中立的な第三者機関の制度創設の立法化の際に、「医療行為における過失は犯罪の対象としない」と国会で附帯決議すれば、「医療過失は犯罪ではないから警察では扱わない」、「警察はこれまで通り犯罪を扱う」、「医療過失は別の枠組みで扱う」となり、業務上過失致死罪に手を加えることなく、そして医療事故は少なくとも犯罪ではないという国民にも受け入れやすいものとなるのではないでしょうか。
医療事故は犯罪ではないのですから、遺族の告訴する権利(つまり犯罪として申し立てる権利)を何ら制限することなく、刑事とは切り離した形で医療安全調への窓口を1本化することも可能になります。
医療安全調では医学の専門家によって原因究明を行って、再発防止や改善計画は医療安全調とは分離して、現在の医療機能評価機構が行えば良いと思われます。遺族は医療安全調の説明に対して納得できなければ、(仮称)医療過失評価機構という行政処分や金銭賠償を決定する機関へ訴えることもできるようにします。医療安全調から捜査機関へ通知する事例も、「標準的医療水準からの逸脱の程度」ではなく故意や悪意などの犯罪性の有無によって決められることになります。
罪刑法定主義という選択肢も含めて、医療を犯罪と切り離したうえで、国民も納得できるように別枠の(仮称)医療過失評価機構というような、過失があったときの処分や責任のとり方を検討する機関について充分に議論することこそがこれからの重要な課題と思われます。
山崎先生つながり(別人ですが)
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朝日新聞2008年9月5日17面 声
誤解に基づくモルヒネ発言
医師山崎章郎 (東京都小平市60)
民主党の山岡賢次国対委員長が8月31日、政府・与党の総合経済対策に
ついて「選挙回当てのばらまきだ。がん患者にモルヒネを打つような話で、一時的にはいい気持ちになるが、長期的に見ると体をむしばむ」と批判したと一部メディアで報じられた。
長く我が国での緩和ケア定着を願い、がん患者のケアや支援に取り組んできた者として、怒りと悲しみを込め発言に抗議し訂正謝罪を求めたい。
この発言はモルヒネヘの誤解と迷信に基づいている。そうした誤解が長らく医療用麻薬モルヒネの使用をためらわせ、多くのがん患者を激痛の中に放置してきたのだ。
86年、世界保健機関(WHO)がモルヒネの適切な使用法を示した。ここで提唱された「がんの痛みからの解放」は「WHO方式」と呼ばれ、今やがん性疼痛の世界標準的な治療法だ。適切に使用すれば中毒も体をむしばむこともないのは常識である。
我が国のがん患者の現状を考えれば、公党の責任ある立場にある方の発言としてはお祖末すぎる。猛省を促すものだ。
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投稿情報: 匿名 | 2008年9 月 5日 (金) 13:34