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(投稿:by 僻地の産科医)
子宮頸がん検診の普及に各国間で格差
Medical Tribune 2008年8月14日(VOL.41 NO.33) p.05
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41330052&year=2008
〔ワシントン〕ワシントン大学(UW,ワシントン州シアトル)のEmmanuela Gakidou准教授らは,発展途上国では子宮頸がん検診が有効に機能しておらず,最も発症リスクの高い女性が最も検診を受けていないとする知見をPLoS Medicine(2008; 5: e132)に発表した。また,子宮頸がん検診の利用については国により差が大きく,同一国内でも著しい格差が存在することも明らかになった。
必要な女性ほど受けていない
世界中で子宮頸がんは女性の2番目に多いがんで,がん死での死因の第1位である。1970年代以降,先進国では子宮頸がんの年間新規発症数が減少し,同疾患による死亡率も低下している。この公衆衛生上の成功は,検診プログラムの普及によるものであると言われている。大部分の子宮頸がんは,発展途上国において発症しているにもかかわらず,検診の実施率に関する情報は不足している。
この情報の不足に取り組み,検診サービスの利用に関する格差の程度を評価するためGakidou准教授らは,幅広い経済発展レベルの57か国を対象としたWHOの調査結果を解析した。そして,過去3年間において対象女性のうち内診とPapスメア検査の両方を受けた女性の割合を示す有効検査率と,時期に関係なく内診のみを受けた女性の割合を示す粗検査率を算出した。いずれの指標によっても子宮頸がん受検率に関して大きな差が見られ,有効検査率は先進国の63%と比べて発展途上国では19%にすぎなかった。
また,最も有効な検診プログラムを行っている国とほとんど行われていない国の間で大きな差が見られた。例えば,オーストラリアでは80%超の女性が有効な検診を受けていたが,エチオピアとバングラデシュでは1%以下だった。調査した57か国中16か国では,大部分の女性が内診を受けたことがなく,エチオピア,マラウイ,バングラデシュでは90%以上の女性がこれに該当した。
喫煙,危険な性行為などの危険因子への曝露が大きく,貧困層の女性では有効な検診を受けない傾向が認められた。発展途上国では全体的に検診の実施率が加齢とともに低下するが,子宮頸がんでは高齢なほど発症率が高まることが知られている。
同准教授は「子宮頸がん予防を改善する戦略は各国の必要性に合わせて設定されるべきである。検診の拡大は十分な社会基盤や保健システムが確立した地域では実現可能な選択肢であるが,その他の地域では新たな戦略を考える必要がある」と結論付けている。
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