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(投稿:by 僻地の産科医)
脳のセロトニン系に性差
Medical Tribune 2008年8月14日(VOL.41 NO.33) p.76
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〔スウェーデン・ストックホルム〕 カロリンスカ研究所(ストックホルム)のAnna-Lena Nordström准教授らは,脳のセロトニン系に性差が存在することが明らかになったとNeuroImage(2008; 39: 1408-1419)に発表した。今回の知見は,うつ病と慢性不安が男性よりも女性に多いという理由の解明に役立つと考えられる。
抗うつ薬の開発は性差を考慮
セロトニンは,うつ病と慢性不安の発症と治療に重要な役割を果たしている脳の神経伝達物質である。うつ病や慢性不安が発症する理由は明らかではないが,男性よりも女性に多く見られる。
筆頭研究者のNordström准教授らは,陽電子放出断層撮影(PET)スキャンを使用して,男性と女性では,脳の特定領域におけるセロトニンの結合部位の数が異なっていることを突き止めた。
この結果は,Hristina Jovanovic氏の博士論文として発表される予定であるが,女性では最も一般的なセロトニン受容体の数が男性よりも多いことを示している。さらに女性では,セロトニンを分泌する神経細胞にセロトニンを再運搬する蛋白質の濃度が男性よりも低いことがわかった。一般的な抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は,この蛋白質を阻害する作用を持っている。
同准教授は「この結果の意味するところは正確にはわからないが,今回の知見はうつ病の発症率に性差がある理由と,男性と女性では抗うつ薬投与に対する反応が異なる理由の解明に役立つだろう」と述べている。
女性間にも差が
さらに今回の研究から,健康な女性のセロトニン系は,月経前に深刻な精神症状を呈する女性のセロトニン系と異なっていることがわかった。この結果から,このような症状を呈する女性のセロトニン系は,無症状の女性と比べて,月経周期のホルモン変動に柔軟に対応していないことが示唆される。
Nordström准教授は「これらの知見から,抗うつ薬や抗不安薬を開発する場合,有効性を男女別々に評価するとともに,閉経前後の有効性も評価すべきであることが示された」と述べている。
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