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(投稿:by 僻地の産科医)
大学院生の処遇改善に一歩前進か
M3.com 橋本編集長 2008/08/07
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「大学院生が診療に従事する場合は、労働災害保険の適用が可能になる雇用契約を締結するなど、適切な対応が必要」
文部科学省は、全国の大学医学部、医科大学にこのような通知を出しました。6月末のことでやや古い話ですが、大変重要な通知ですので、ご紹介させていただきます。
医学部の場合、大学院生といっても、基礎系に専念するケースは少なく、臨床研究の一環、あるいは「勤務医」と同等の扱いで診療に従事することが少なくありません。大学院生なので、授業料を払う立場ながら、無償の労働力として使われているケースもあるわけです。しかも、雇用契約がないので、何か診療中に事故に遭った場合、労災の適用は受けないなど、様々な問題が生じていました。
今回の通知はその是正を求めるものです。文科省はこうした実態を2006年から調査しています。その結果が表1です。ここで言う「保険加入者」とは、「学生教育研究災害障害保険」あるいはそれに類似した保険の加入者数です。
2007年10月の時点でも、診療に従事しても「雇用関係にない」大学院生の割合は約6割、うち「保険加入者」は約7割にとどまります。実態を把握しながら、文科省は黙認していたとも見ることができます。今、この時期に通知を出した理由などについて、同省高等教育局医学教育課では、こう説明しています。
「診療に従事する大学院生の雇用について、大学に対して通知するのは今回が初めて。これまでも実態を把握していたが、改善がなかなか進まないので通知を出した。特に臨床研究の一環で診療に従事する医師において、雇用契約が結ばれていないのが問題。せめて、医師の安全性を確保するための保険には入ってほしい」
この「せめて」ですが、雇用契約を結ぶと、賃金の支払いをはじめ、病院側の負担増を考慮しての発言です。 とはいえ、本来、診療に従事するなら、雇用契約を結ぶのは当然のことではないでしょうか。賃金の支払いだけでなく、労災保険、医賠責保険、社会保険などの対象にすべきでしょう。今年10月にも表1の項目について調査する予定だそうです。同時に看護師との業務分担のあり方なども調査するため、集計には時間がかかるようです。通知が出た以上、大学側にはその順守が求められるところですが、文科省としては「調査結果を踏まえ、今後の対応を検討する」と述べるにとどまっています。
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