(関連目次)→大野事件
(投稿:by 僻地の産科医)
名古屋医療センター 野村麻実先生からの投稿です(>▽<)!!!!
どうぞ ..。*♡
大野事件の判決日、福島に集まりましょう!!!
8月20日、大野事件の判決が出ます。
はじめは加藤先生の応援のために、
福島に集まって応援したらどうだろう?
と考えていました。産婦人科関係の方と会ってはならないという
保釈条件は判決が出るまでの話ですし、どんな判決が出るにしろ
よく頑張ったねって声をかけてあげたい人がたくさん全国に
いるはずだと思ったからです。
でも、いろいろと当時からのことを振り返って
勉強していくうちに、考え方が変わってきました。
福島大野事件は多くの教訓を残しているからです。
例えば、この事件があるまで、産婦人科は
あまり周産期死亡や母体死亡の話をしてこなかった。
どれくらいの数の妊婦さんを医療が救っているのか、
それでも亡くなる難しい病気があるって事、
あんまりきちんと公表してきませんでした。
学会や医会はそういったことを反省して、
さまざまな調査を行い、そして73人の重症患者さんのうち
頑張って力を尽くして、72人までの妊婦さんを助けている
という調査結果も出しました。それでも亡くなる方が出る。
頑張ってもやっぱりゼロには出来ないんです!
っていえるようになってきました。
それから、医師の労働条件が必ずしも患者さんにとってよくない
ことも認めるようになりました。一人しか産婦人科医のいない
病院で外科の先生にお手伝いしてもらって手術をしている状態では、
やっぱり危ない時に危険かもしれません。
そこで反省を含めて集約化を始めるようになりました。
(ただこの加藤先生のケースでは、術中エコーもし、
胎盤のない部分の子宮体部をU字型に切りこむという
かなり注意深い術式を用いており、
一人医長であったにもかかわらず、
よく勉強されて最新の手法を用いていらっしゃいます。)
厚労省も慌てました。反省し、このようなことが
二度と起こらないようにと、一生懸命システムを構築しようとしています。
(方向性が間違っているので、私は反対ですが。)
国民の方も「分娩は安全ではない」ことを知り、
妊娠中の生活態度の見直しなども始まっています。
そして報道も段々と変わってきました。
しかし、警察と検察はどうなのでしょうか?
県立病院は補償のためミスを認めようとしていたのです。
というのは、自動車事故で保険にお世話になった方なら
分かる話ですが、保険会社はお金を出し渋るのです。
たしかに誰が見ても“責任ある”事故であれば、
文句なくお金をトトンと出してくれますが、
灰色の、あるいはミスのなさそうな、
“そもそも死んでもおかしくない病気じゃないの?”
という病気となるとしつこくミスを認めない限り出してくれません。
ですから亡くなった方の御遺族のために報告書まで作って、
(賠償金を落とすために)ミスを認め、すでに謝罪し、
主治医の加藤先生は減給処分にまでなった。
でも納得してもらえるならいいと思っていたのでしょう。
それが。突然の(ご遺族も頼んでいない)
警察の介入によって保険金支払いは
裁判の最終結果が出るまで延期になってしまいました。
それから1年経って突然の逮捕!!!!
もう証拠は全部押さえられてるのだし、
事故調査報告書を作られた時点で
口裏あわせなんてしようがないし、
そもそもそこまで調査して書かないと保険会社だって
素直に賠償金を出してくれないような病気。
毎日、きちんと病院に出勤していた産科医を
逮捕する理由なんて何一つないのです。
逮捕→裁判となれば誰だって闘います。
そうしないと犯罪者にされてしまうから。医師免許もなくなっちゃう!
ご遺族の方も豹変振りにびっくりされたでしょう。
そして傷つかれたはずです。
その2年半の間に、産科の崩壊が加速度的に進み、
地方は荒れ、救急医療は萎縮し、影響は全国に及びました。
ヘリコプター搬送なんて映画の話だったのに、
いまや現実のものとなっています。
福島県の南会津地方には分娩可能な施設は
ひとつもなくなりました。
今回の裁判は注目されていたのでさまざまな情報を
入手することが出来ました。有志で毎回傍聴券の難関を
潜り抜け、傍聴録をアップしてくださっている方々もいました。
ですからどんな判決でも、私たち産婦人科医は
自分たちの判断で無実だと思うだけの話なんです。
(それでもショックで辞める方は続出するでしょうが。)
ただ警察はこの介入によって、何を得ようとしたのでしょう?
いたづらに患者さんを傷つけ、
求刑はよりにもよって「禁固1年と10万円」。
「警察・検察は一体、何を反省したのだろうか?」
「不勉強なまま医療を立件することが、
どれだけ患者さん御遺族の心を傷つけただろうか?」
「全国に広がってしまった産科砂漠について、
どう考えているのだろうか?」
このまま控訴、あるいは控訴されて、
証拠や書類を集めて高裁に送るだけと考えているなら
それはあまりにも無責任すぎやしないでしょうか?
ある患者側のご高名な弁護士さんがおっしゃられていました。
「あれだけ、高名なその道の専門医が揃っちゃうとねぇ。。。。」
騒がれない民事訴訟であったならば患者さん側にも
勝訴の見込みはあったかもしれません。でもこの裁判の後で
患者さん側の鑑定医をつとめる人間がいるとも思えません。
医療不信を植え付けたまま、
患者さんの希望をもぺしゃんこに踏みにじっています。
ある意味、この事件は冤罪に近いものがあります。
しかも被害は甚大で、産科崩壊も福島の医療崩壊も
風評被害を蒙っています。
まずこの刑事立件によってどんな弊害が医療界で起きたのか、
そして直接市民のみなさまにどのように影響しているのか。
この逮捕が正しかったのかどうか。
警察と検察が考えないのであれば、
評価するのは国民のみなさまです。
各地でどのようなことが起こりつつあるのか、
刑事立件は事故再発の役に立つのか?
この事件によって何が起こり何を得たのか。
みなさんで考えていきましょうo(^-^)o ..。*♡
8月20日、福島でお会いできることを願って。
なお、参加できない方のために新小児科医のつぶやき
Yosyan先生が何か企画を考えてくださるそうですから、
そちらもよろしくお願いいたします。
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大野事件の意味を考えるシンポ開催
キャリアブレイン 2008年8月5日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/17501.html
シンポジウム「福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える」が8月20日の午後1時から、福島市の福島グリーンパレスで開かれる。「福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える会実行委員会」の主催。
産婦人科医が帝王切開手術中の女性を大量出血で失血死させたとして、業務上過失致死などの罪に問われ、2006年に逮捕・起訴された「福島県立大野病院事件」の判決が同日に言い渡されることを受けたもの。
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シンポジウム呼び掛け人の野村麻実医師は、「このシンポジウムを通し、医療者も患者も困っているということを皆で共有したい。この裁判をきっかけに、福島の地域医療が崩壊し、委縮医療を招いた。医療崩壊は産科から外科などにも広がっている。われわれ医療側もこうした事件が起こらなければ、世間に対してなかなか動かないという反省がある。ただ、地域医療を守るには、医療者だけでなく住民の参加が必須。シンポジウムには、地域の人や妊婦さんたちの会などにも来てもらい、一緒にこの問題や、今後の地域医療について考えていきたい」と話している。
パネリストは以下の通り。
山崎輝行・(長野県)飯田市立病院産婦人科部長▽野村麻実・国立病院機構名古屋医療センター産婦人科医師▽岸和史・和歌山県立医科大放射線医学講座准教授▽佐藤一樹・綾瀬循環器病院心臓血管外科医師▽川口恭・ロハスメディア代表取締役▽加治一毅弁護士▽上昌広・東大東大医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門特任准教授
参加費は1000円で、当日参加も可能。名前と所属を記入の上、Eメールで[email protected]まで申し込む。
詳細はホームページ http://oono-obs.umin.jp/
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本田宏の「勤務医よ、闘え!」
8月20日、大野事件判決の日、福島に集まりましょう!
日経メディカルオンライン 2008. 8. 4
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/honda/200808/507443.html
医療崩壊が加速する日本で起きた象徴的な出来事、それが福島県立大野病院の産科医逮捕でした。この事件直後から、産科の医療崩壊を阻止しようと、懸命の試みを続けている、名古屋医療センター産婦人科の野村麻実さんから先日、メールをいただきました。
「本田先生、いつもお世話になっております。8月20日に予定されていたシンポジウムの内容が、ようやく形になってきました。申し訳ないのですが、先生の影響力は絶大ですので、ブログでの紹介をお願いしても宜しいでしょうか。よろしくお願いいたします」と書かれていました。
私は、講演会や超党派議連のシンポジウムで野村さんと何度かお会いしていますが、産科の激務をこなしながら、現場から一生懸命、情報発信に努めている野村さんを、心から尊敬しています。野村さんの活動にぜひ協力したいので、ここで紹介させていただきます。
メールには、以下のようなお知らせ内容が書かれていました。
2006年2月18日に福島・大野病院の産婦人科医が癒着胎盤による母体死亡で逮捕されてから、約2年半の歳月が過ぎました。まるで殺人者のように手錠を掛けられて連行される画像がテレビで放映されたのも、もう昔のことのようです。
しかし、この事件の及ぼした社会的影響は大きく、一人医長問題の見直しと集約化、萎縮医療による二次医療機関の実質一次医療機関化、産婦人科医の不安、離脱などが起こり、地域や基幹病院産婦人科が次々となくなりました。また問題は産婦人科のみではありません。侵襲的治療・検査にかかわる外科・内科分野や、一刻一秒を争う救急分野でも同様のことが社会問題化しています。
8月20日、ついに大野事件の判決が出ます。
2年半にわたった刑事裁判によって、誰が、何を得ることができたのでしょうか?事件によって提起された、様々な問題点は解決できたのでしょうか?
多くの時間と人的労力をかけたこの裁判の求刑は、懲役よりも軽い禁固1年と医師法21条違反の10万円。そして、どのような結果が出たとしても、控訴するかどうかを決定する権限は検察にあります。ご遺族にとっても、かかわった医療関係者にも、苦しみの連続だったのではないでしょうか。そして市民も、地域医療の崩壊に苦しんできたはずです。
逮捕に始まる一連の騒動によって、かろうじて保たれていた地域産科医療は既に全国的に崩壊の真っただ中にいます。
大野事件とはなんだったのか。あの逮捕劇はなんだったのか。あなたの街でもすぐに起こることかもしれません。医療関係者の方々も、忙しい日々の医療から手を離して、いま一度、福島の地で、医療事故刑事裁判とはなにか、いま地域の医療崩壊はどうなっているのか、行政や市民の方々と共に真剣に考えてみませんか?
ご参加をお待ちしております。
名古屋医療センター 産婦人科 野村麻実
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【シンポジウムのお知らせ】
大野事件の判決の日、福島に集まりましょう!
日時:2008年8月20日
福島県地方裁判所 開廷10:00
シンポジウム(会場は福島グリーンパレス)13:00~15:00
福島グリーンパレス http://www.fukushimagp.com/
〒960-8068 福島市大田町13番53号(福島駅西口より徒歩2分)
TEL 024-533-1171 FAX 024-533-1198
参加のお申し込み:
お名前とご所属を、[email protected]までメールでお送りください
参加費:1000円
ホームページ:http://oono-obs.umin.jp/
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野村さんの「多くの時間と人的労力をかけたこの裁判の求刑は、懲役よりも軽い禁固1年と医師法21条違反の10万円。そして、どのような結果が出たとしても、控訴するかどうかを決定する権限は検察にあります。ご遺族にとっても、かかわった医療関係者にも、苦しみの連続だったのではないでしょうか。そして市民も、地域医療の崩壊に苦しんできたはずです」という指摘が、医療者としてこの問題を考える上で、大変に重要な視点だと感じました。
極端な低医療費とマンパワー不足によって、労働基準法を無視した過重労働を強いられている医療現場。日本の医療が置かれた状況を俯瞰的に把握せず、そしてその問題点を前向きに解決する努力なしに、誰かを罰すれば医療事故が減少して患者さんが満足すると期待するのは、世界では非常識な問題解決法です。
航空など他の分野と同様に、医療で事故をゼロにすることは不可能ですが、その発生を限りなくゼロに近付けるためには、より安全な医療を提供できる医療体制の再構築が必要最低条件であり、喫緊の課題だと私は思います。
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福島・大野病院事件考えよう 20日シンポ
河北新報 2008年8月6日
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/08/20080806t63030.htm
帝王切開中に判断の誤りから患者を死亡させたとして福島県立大野病院(大熊町)の産婦人科医が業務上過失致死罪などに問われた事件について考えようと、福島地裁で産婦人科医の判決公判が開かれる20日、全国の医師らが福島市でシンポジウムを開催する。実行委は「地元のお母さんたちや行政関係者も参加し、意見を語ってほしい」と呼び掛けている。
大野病院事件では、逮捕時から医学界で立件に反対する声明が相次いだ。当日は医師や弁護士らがパネリストになり、事件と判決が周産期医療だけでなく医療界全体に及ぼす影響を探る。全国から40―50人の医師が参加する見込みという。
実行委メンバーでパネリストを務める名古屋市の産婦人科医野村麻実さん(34)は「事件の影響で産科医不足に拍車が掛かり、地域の周産期医療は崩壊寸前だ。事件が及ぼしたものを地元福島で考えたい」と話す。判決公判は20日午前10時開廷で、シンポジウムは午後1時から福島市太田町の福島グリーンパレスで開く。定員約400人。参加費1000円で当日参加も受け付ける。連絡先は実行委080(7031)3032。
>ある意味、この事件は冤罪に近いものがあります。
冤罪そのものだと思っています。
また同時に、司法に対する信頼感が決定的になくなりました。
杜撰な逮捕劇を繰り広げる警察や検察、トンでも判決を量産する裁判所。
この2年間で大変勉強になりました。というか、今までが医療のことで手いっぱいで世間知らずだったと思います。
医師達が社会的に常識的になることが、医療崩壊の本質であると考えています。何とも皮肉な状況になってきました。
投稿情報: 岡山の内科医 | 2008年8 月 6日 (水) 23:31