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(投稿:by 僻地の産科医)
というわけで、特集記事を拾ってきていますo(^-^)o ..。*♡
「事故報告書は再発防止が目的、法的意味なし」
大野病院事件に対する県の5つの主張を読み解く
橋本佳子 m3.com編集長
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080821_3.html
福島県立大野病院事件は、2005年3月に「県立大野病院医療事故調査委員会」がまとめた事故が発端になっている。この報告書の記載が警察捜査の端緒となったとされる。8月20日の県病院事業管理者の茂田士郎氏の記者会見、21日の県病院局病院経営改革課長の緑川茂樹氏への取材を通じて、県の判決の受け止め方、主張をまとめた。
その1●「事故報告書はあくまで再発防止のために作成した」
報告書には、「出血は子宮摘出に進むべきところを、癒着胎盤を剥離し止血に進んだためである。胎盤剥離操作は十分な血液の到着を待ってから行うべきであった」と記載されている。
この点が今回の判決と大きく食い違う部分だが、茂田氏は記者会見の席上、以下のように語った。「調査委員会では、大野病院以外の産婦人科医に入ってもらい検討した。報告書をまとめたのは、再発防止のため、医療安全を図ることが目的であり、(刑事責任を問う)法的な意味はないと思っている。また報告書は約3カ月間でまとめたが、公判の審議の過程ではさらに細かい検討が行われており、今回の判決の方が正確性があると思っている」。
判決後、県庁で記者会見する、福島県病院事業管理者の茂田士郎氏。
しかし、加藤医師は、「報告書に違和感を持ったが、『患者への補償のため』と説明され、何も言えなくなった」と語っている(「加藤医師が公判後、記者会見で心境を語る」を参照)。この点についても、県は「あくまで再発防止のため」とコメントしている。
なお、福島の県立病院において、医療事故を個別に検証する「医療事故調査委員会」は、大野病院事件後、一度も設置されていない。「委員会設置のルールは定めていない。事案の重大性などを総合的に検討し、設置の必要性を判断している」(緑川氏)。
その2●「再発防止のための取り組みを行っている」
緑川氏は、「従来も医療安全には取り組んできたが、事件後も医療事故の再発防止のために幾つかの取り組みを行っている」と話す。
例えば、6つの県立病院の副院長を中心に組織する「医療安全対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、事故防止対策を県立病院全体で実施する体制を整えたり、各病院に医療安全対策の担当者を原則専従で置くことなどが挙げられる。この担当者は、臨床的な視点から取り組むため、看護師としている。
また、県立病院のマニュアルでは、2004年12月の事件当時、「異状死」については、「院長が届け出る」とされていた。医師法21条では、「死体を検案した医師が届け出る」となっている。「国でもいろいろ議論されている折、当面の措置として、例えば担当医と院長など『複数の眼で見る』体制にした」(緑川氏)。従来も運用面では担当医個人の判断で行うことはなかったが、複数体制にすることを明文化した。「両者の意見が一致した場合は問題ないが、二人の意見が食い違う場合、つまり一人が届け出の必要性を指摘した場合は、届け出ることにしている」(緑川氏)。
その3●「加藤医師の処遇は、判決の確定後に検討する」
加藤医師は「県立大野病院医療事故調査委員会」の報告書後の2005年6月、1カ月間の減給(10分の1減額)という処分を受けている。「処分の際には、この報告書を参考にした」(緑川氏)。つまり、前述の茂田氏の「報告書には法的な意味はない」とは、刑事処分の意味で、加藤医師が地方公務員として処分される際には、同報告書が関係している。また、逮捕・起訴後の2006年4月18日からは「休職」の扱いとなっている。
加藤医師の今後の処遇について、茂田氏は、「判決が確定した時点で、本人の意向を踏まえて復職などを検討する。また、重大な事実誤認があった場合には、処分を取り消すことができるとなっている」と語っている。
その4●「事件の前から医師不足に陥っていた」
「この事件が契機とは思わないが、県内の医師が減少しているのは確かである」(茂田氏)。
2004年12月の事件当時、県立の医療機関は、9病院1診療所だった(現在は町・民間への移譲や廃止などで6病院)。このうち、4病院が分娩を休止している。会津総合病院、南会津病院、大野病院、三春病院(2007年3月に町に移譲)だ。緑川氏は、「事件の前から県全体で、産科や小児科を中心に医師不足だった。県立病院も例外ではなかった」とする。医師不足に加えて、「地域のニーズが産科医療の集約化の方向にあった」点も、分娩休止の理由だという。
確かに会津総合病院のある会津若松市など、他に民間の基幹となる病院がある地域では、集約化で対応可能だろう。しかし、南会津病院は、2次医療圏(南会津地域保健医療圏)で唯一の病院。ただ、現時点では分娩再開のメドは立っていないという。
その5●「遺族とは、今後の裁判の動向を踏まえながら話し合いをさせていただく」
茂田氏は、遺族への補償問題について、「女性の死亡後、加藤医師はもちろん、院長、事務長が誠意を尽くして謝罪、説明などを行った。その後についてはプライベートのことなので、具体的な話は差し控えさせていただきたい」とコメントした。刑事訴訟に発展したため、補償の話などは進めず、経過を見守ってきたという。
今後について、「(現時点では判決が確定していないため)今後の裁判の動向を踏まえながら、遺族とお話をさせていただきたい」と緑川氏は語る。「刑事で無罪判決が出た影響がないということはないが」とも緑川氏は述べ、無罪判決が確定しても、補償の有無は別途検討していくことを示唆した。
「ほっとしたが、なぜ逮捕されたか疑念は晴れず」
佐藤章・福島県立医大産婦人科教授が判決直後の真情を吐露
橋本佳子 m3.com編集長
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080822_1.html
加藤克彦医師の所属医局は、福島県立医科大学産婦人科。その教授である佐藤章氏は、事件直後から、2006年の逮捕・起訴、そして8月20日の判決に至るまで、担当教授として事件にかかわってきた。また、佐藤氏は自ら一般傍聴券を求めて並び、計15回にわたった判決をすべて傍聴してきた。果たして、今回の判決をどう受け止めたのだろうか。判決直後の思いを聞いた(2008年8月21日にインタビュー)。
――逮捕・起訴から約2年半。昨日、判決を聞いた率直な感想をお聞かせください。
「ほっとした」というのが正直なところです。「勝った」「負けた」といった話ではありません。逮捕・起訴自体はそもそも「余分」なことだったので、無罪になったことは「前に戻った」だけにすぎないからです。またこの間、時間も労力もかかっていましたので。
――警察・検察に思うところはありますか。
ノーコメントですね。何を言っても、「逮捕された」事実は消えることはないので。
――加藤先生は40歳前後という非常に活躍できる時期に、2年半臨床に携わることができなかったわけです。
それは本当に痛かった。彼にとっても、またわれわれにとっても大きな戦力を2年半失ったことになりますから。ただでさえ、周産期医療に携わる医師が少ない中で、「産科が好きだ」と言っていた加藤医師が抜けることは本当に痛手でした。
――加藤先生は記者会見で、「地域医療に戻りたい」とおっしゃっていました。
来週辺り相談しようかと思っていたのですが、判決が確定するまでは、加藤先生は、大野病院事件の関係者と接触してはいけないことになっているので、確定後に相談します。2年半のブランクがあるので、すぐに実践に出るのは、本人も心配だろうし、またわれわれも心配ですので、大学で研究生といった形で少しずつ実践に慣れてもらうのが、私はいいと思っています。いずれにせよ、本人と相談します。
――「心配」というのは、手術などをやるには「慣れ」が必要だからでしょうか。
私が以前、1年間の留学後、戻ってきて手術した際には、やはり手が震えました。それと同じです。それ以上に大きいのは、精神的な面でしょうね。
――次に判決の内容についてお聞きします。
われわれが主張していたこと、臨床の現実を認めてくれたわけですから、裁判官はよく勉強し、医学的なことを理解してくれたと思っています。感謝しています。 一番の争点は、「胎盤剥離を中止して、子宮摘出術に移行すべきだったか」ですが、今回それが否定された。控訴審で判決を覆すためには、そうした臨床例を検察側が提示する必要があるわけです。
――それ以外の点はどうでしょうか。
例えば、胎盤の癒着の範囲も、われわれは子宮前壁にはないと主張し、裁判官はその主張を認めてくれました。加藤医師は帝王切開手術時、開腹後にエコーを行い、前壁に癒着がないことを確認し、胎盤のあるところを避けて子宮を切開しています。それほど慎重に手術をしていました。
裁判官は、「病理学的には癒着があると言っても、数人の証人が『胎盤が容易に剥離できたということは、臨床的には癒着胎盤ではない』としているので、前壁には癒着はない」と判断しています。なおかつ、「病理鑑定の際には、臨床的な情報を集めるべきだった」となどと指摘しています。非常によく勉強していると思います。
ただ、医学的、専門的なことを刑事裁判で議論するのは限界があると思っています。医学には素人の警察が捜査する上、裁判官も医学の専門家ではありません。
――検察も、公判での尋問を聞いていると、勉強不足という面が感じられました。
その通りです。でも検察官もかなり勉強したとは聞いています。公判前整理手続の際は、複数の、少なくても3~4カ所の大学に話は聞きにいったようです。 とはいえ、検察は、専門の医師への証人尋問を経ても、「前壁に癒着がある」などといった主張を変えることはありませんでした。
――クーパーの使用については検察の主張が変わりました、というか、話が出なくなりました。
加藤医師に逮捕前、「おまえ、クーパーで切ったのか」と聞いたんです。当然ですが、加藤医師は「そんなことするわけないじゃないですか」と(実際はクーパーを「そぐ」ように使い、胎盤を剥離)。警察にもそう説明したようですが、調書には「クーパーを使った」とだけ書かれる。「クーパーを使った」と聞くと、皆、はさみだから「切った」と思ってしまう。その誤解が初めはありました。でも、検察は証人の話を聞いたためか、途中から「クーパーで切る」という話はしなくなった。
――その一方で、裁判官はよく勉強されていたと。
そうだと思います。しかし、裁判官が参考にするのは「証拠」のみなので、判決が出るまでは非常に心配だったんです。5割以上の確率で有罪になると思っていました。やはり勉強していても医学の専門家ではない、また医師などに個人的に意見を聞くことはしないわけですから。
――私は公判をすべて傍聴していて、検察側に不利な状況だと思っていたのですが。
そうです。私も、圧倒的に弁護側が有利だと思っていました。しかし、先ほども言ったように、裁判官は医学の専門家ではないので、どう判断するのか不安だったわけです。でも結果的には、裁判官は非常によく勉強していた。臨床の実践を理解してくれたわけですから。
だから、やはり専門家の間で、医療事故を検証する場を作った方がいいと思います。ただ、今の「医療安全調査委員会」の議論には、厚生労働省に委員会を設置するなど、問題はありますが。
また死因究明に関して言えば、今回の場合、「解剖をしておけば」という思いはあります。加藤医師は遺族に解剖を申し出たのですが、断られたそうです。死因は失血死とされましたが、私はまだ羊水塞栓などの可能性があると思っています。
――医療事故の調査と言えば、「県立大野病院医療事故調査委員会」がまとめた報告書が発端になっています。以前、先生に、「加藤医師の過失と受け取られかねない部分があるので、訂正を求めた」とお聞きしました。
はい。ここ(佐藤先生の教授室)に院長と県の病院局長が来て、「もうこれで認めてください」と言うから、「ダメだ」と言ったんです。
――それは遺族への補償に使うからですか。
そうです。「先生、これはこういう風に書かないと、保険会社が保険金を払ってくれない」と言ったんです。
――でも、県はそれを否定しています。
絶対にそんなことはありません。医療事故調査委員会の委員の先生方も、そう(補償に使う)と聞いているそうです。
――事故調査報告書が刑事訴追に使われることは想定されていなかった。
私が「最後までダメだ」と言い張ればよかったのですが。
今回のように刑事訴追に使われる可能性を考えると、事故調査報告書をどう書けばいいか、難しいですね。厚生労働省が考える「医療安全調査委員会」も、うまく機能するのか。だから私が思うのは、行政ではなく、医師同士、専門家同士が調査して、「これはお前、ダメだ」などと自浄作用を働かせる仕組みの必要性です。そうでないと、国民は納得しないと思います。
――そうした意味では、この事件を機に、医療事故調査のあり方について議論が進んだ意義は大きいと思います。世間の医療への関心も高まったように思います。
そうですね。ただ私にとって、また加藤医師にとってもそうでしょうが、はっきり言って貴重な時間が取られてしまったという思いはあります。社会的にはいろいろ勉強になりましたが、本来、医師ですから、臨床をやるのが仕事なわけですから。
また医療への関心ですが、マスコミの方の関心は高まったものの、一般の方の関心はそれほど高まってはいないと私自身は思っています。
――「社会的に勉強になる」とは具体的にはどんな意味でしょうか。
例えば、「司法というのは、すごい権力である」ということです。それに比べて、行政には力がない。例えば、医師法21条にしても、厚労省は「施設長が異状死を届け出る」といったマニュアルを作成しています。しかし、裁判官はあくまで法にのっとって判断する。また、警察、検察の力も恐ろしい。
私はこの間、「くれぐれも交通事故を起こさないように」などと注意されていました。何かあると問題視される。そうなると、「医師は…」と言われ、証人の医師の信用性にも関係しかねない。
――あまり論理的な話ではない気がします。確かに、今回の公判では、検察は最後は情に訴えていたように感じました。
私もそう思います。だから私は最後まで心配だったんです。そうした公判でのやり取りが「証拠」として残り、それを基に裁判官が判断するわけですから。
――では、控訴の可能性についてどうお考えですか。
先ほども触れましたが、控訴した場合、検察側は「胎盤剥離を中止して子宮摘出術に移行する」という臨床例を提示する必要があるわけです。しかし、実際にはこうした臨床例は今のところありません。 福島地検の検察官だけで判断するのではなく、上級庁と相談して決めるようです。その際、これまで事件にかかわってきた検察官が意見を言うようですが、上級庁がどう判断するのか。
正直、どうなるかは分かりません。多くの方が、「判決要旨を読むと、全面的に(弁護側の)主張が通っている。控訴をしないのでは」と言ってくれますが、気休めにはなりませんね。この事件が始まって、人間が信用できなくなったので。ただ、刑事事件の場合、一審と二審で判決が変わることは99%以上ないと聞いています。だから仮に控訴されても、「無罪」になると信じています。
――なぜ人間を信用できなくなったんですか。
一生懸命に診療をやっていて、逮捕されるわけですから。それも事故があってから1年以上が経過した後のことですから。いまだに「なぜこれが刑事事件になったんだ、逮捕されたんだ」という疑念は晴れません。「逮捕」されたのは、「証拠隠滅や関係者と口裏合わせをする恐れがあるから」ということですが、手術はチームでやるもの。何かを隠すことはできませんし、そもそも何も隠すものはありません。
それとさすがにこの2年半、疲れました。
――どのくらいこの裁判に時間をかけていたのですか。
最初のころは、弁護士の先生に癒着胎盤の説明をしたり、論文をお渡しするなど、月2回くらいは東京に行っていました。あとは月1回くらいでしょうか。四六時中、裁判のことをやっていたわけではないのですが、やはり精神的に負担でした。物事に集中できない。手術をやっている時だけは裁判のことを忘れられました。でもそれ以外、勉強している時などには、ふと裁判のことが頭をよぎっていました。加藤医師の逮捕時、60kgあった体重が53kgまで減りました。今は戻りましたが。
――最後にお聞きします。今回の件で各種団体や医師など、全国各地から加藤医師を支援する動きがありました。
それは非常にありがたかったですね。支援団体の活動が盛んになり、マスコミが取り上げるほど、裁判官もまた検察も、「この裁判は簡単にはいかないぞ」という意識を持ったのではないでしょうか。そうした意味では、大きかったですね。今回の件では、本当にいろいろな意味で勉強になりました。
「大野病院」無罪判決と「双方納得」までの距離
J-CASTニュース 2008年8月21日
http://www.j-cast.com/tv/2008/08/21025477.html
大野病院医療事故:捜査見直し発言も 無罪判決に反響 /福島
毎日新聞 2008年8月22日
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20080822ddlk07040146000c.html
県立大野病院(大熊町)の医療事故を巡る公判で、福島地裁が20日に無罪判決を出したことを受け、21日も吉村博人・警察庁長官が今後の医療事故の捜査に慎重姿勢を打ち出すなど反響が広がった。
福島地裁は判決で検察側の立証の甘さを指摘し、被告の加藤克彦医師(40)に無罪を言い渡した。吉村長官は21日の会見で、「判決を踏まえながら医療事故の捜査について慎重かつ適切に対応していく必要がある」と述べた。
今回の事故では、手術での医療判断に刑事責任が問われ、医師の身柄が拘束されたことに医療界が強く反発した。捜査当局は「証拠がほとんどなく関係者の証言が頼りで、口裏合わせの可能性もあった」と逮捕の理由を語っていたが、元長崎地検次席検事の郷原信郎・桐蔭横浜大法科大学院教授(経済刑法)は「いつでも身柄を取れるというのは捜査機関の独善的な考え方。医師は患者を抱えており、明白な過失がないなら身柄を拘束すべきでない。今回のケースは捜査機関の介入自体に無理があったのではないか」と指摘した。
医療界からは、日本産科婦人科学会が20日に「重篤な疾患を扱う実地医療の困難さに理解を示した妥当な判決。医療現場の混乱を一日も早く収束するよう、検察が控訴しないことを強く要請する」との声明を出した。全国保険医団体連合会も同日、「無罪判決に敬意を表する。医療事故の被害を速やかに救済するため、第三者機関の設立と無過失補償制度の創設を改めて要望する」とコメントを発表した。
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■解説
◇「医療の責任追及」に影響
地方の産科という医師不足が最も著しい現場で起きた大野病院事件は、「医療崩壊」の象徴として、医療界からかつてない注目を集めてきた。福島地裁は、争点になった胎盤はく離継続の判断に過失はなかったと結論付けたが、リスクを抱えた手術に取り組む多くの医師にとっては、逮捕、起訴自体が衝撃的だった。今回の無罪で警察・検察の捜査への批判も強まるとみられ、医療事故の真相解明と責任追及の在り方を巡る議論に大きな影響を与えそうだ。
産科医が減り続けている原因は、勤務の過酷さに加え、訴訟リスクの高さにあると言われる。大野病院には加藤医師以外の産科医がおらず、しかも事件になったのは非常にまれな症例だ。医師側が「通常の医療行為で患者が死亡しても刑事責任を問われるなら、医療は成り立たない」と危機感を持ったのは当然とも言える。一方、患者としては、病院側の対応に納得がいかなければ、真相解明を司法に頼るしかない。「代替手段がない以上、医療事故に捜査当局の介入も必要だ」と被害者側は訴え、当局もそれに応えざるを得ない。
医療行為の責任追及については、警察・検察内部にも「本来は専門家が判断すべきだ」との声がある。国は事件を契機に、医療の専門家を中心とした死因究明の第三者機関「医療安全調査委員会」の設置をめぐる議論を進めた。刑事訴追が医療の萎縮(いしゅく)や医師不足を招くのは、医師と患者双方にとって不幸だ。互いが納得できる制度の整備が急がれる。
福島県立大野病院事件判決に関する緊急アンケート 24時間後集計
MTpro 記事 2008年8月21日掲載
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0808/080824.html
MTproでは判決直後の昨日(8月20日)12時から,会員医師に対する緊急アンケートを実施している。24時間後の今日(21日)12時現在,1,085人の回答が集まったほか,多くの意見も寄せられており,本事件が医療関係者に与えた衝撃の大きさが改めて伺えた。
医療関係者らの声が判決に影響
まず,「今回の無罪判決に納得できるか」との問いに対しては96.9%の医師が「納得できる」と回答(図1)。自由回答にも「無罪判決は当然」との意見が多数見られた。
また,加藤氏の逮捕・起訴をきっかけに医学界全体から同氏の医療行為の正当性に関する声明や,同行為に刑事罰を適用することに対する反発の声が多数発表されたことも,今回の事件で特筆すべき現象だったと言えるが,「今回の判決にはそうした医療関係者の反発が影響したと思うか」との問いに対しては60%強が「思う」と答えている(図2)。
判決の医療崩壊抑止の意義については否定的な見方も
一方,「今回の判決が医療崩壊を食い止める契機になると思うか」という質問に対しては「思う」が20%であったのに対し,「思わない」,「どちらともいえない」がそれぞれおよそ40%と多数を占めた(図3)。
アンケートは来週月曜日(8月25日)まで引き続き実施。近日中に最終結果と医師たちの声を紹介する。
「真実を知りたい」-被害者遺族が会見
キャリアブレイン 2008年8月21日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/17754.html
福島県立大野病院事件の無罪判決を受け、8月20日午後、死亡した女性患者=当時(29)=の父親、渡辺好男さん(58)が福島県庁で記者会見した。渡辺さんは時折うつむき、あるいは報道陣をしっかりと見据えながら、落ち着いた口調で質問に答えた。「本日の判決は、被害者の父としては、残念な結果」と語り、「真実を知りたい」と繰り返した。医療界に対しては「今後に不安を感じる。再発を防止するためにも、原因追究して対策を立ててほしい。患者は変わることができない。医療側が変わってほしい」と求めた。
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傍聴には多くの医師の姿-大野病院事件判決
控訴しないことを強く要請-産科婦人科学会
無罪に対し何をすべきか-日病・山本会長
「大野病院事件」をめぐる動き
渡辺さんは、これまで公式の場で発言することはなかったが、「やはり顔を出して発言しないと(遺族の思いを)主張できない」として、今回初めて記者会見した。判決直前の心境を「転んだまま、起き上がれない状態」「これ以上の(原因)解明は難しいのかな、と自問自答していた」と振り返った。
無罪判決を受けて、「(裁判になったことで)知り得たこともたくさんあった。そういう意味では成果はあった」としたものの、「これからも機会があれば、一生かけて真相を追究していきたい」「加藤医師だけでなく、スタッフの話も聞きたい」などと語った。加藤医師に対しては、「病院で何があったのか、真実を十分に説明してほしい」と求めた。民事訴訟については「現在は考えていない」という。
渡辺さんによると、病院側は死亡した女性患者の子宮を保存していたという。その点について、「なぜ(娘の)子宮を保存していたのか、病院からも説明がなかった。公判でも一言も説明がなかった」と不信感をあらわにした。
加藤医師の逮捕後、全国の医師や関係団体が相次いで加藤医師を擁護する声明を出したことについては、「悔しかった。(遺族側には病院から)説明が何もないにもかかわらず、どういう情報を得ていたのか」と批判した。
また、医療界から捜査に対する批判が続出する中、「政治家、警察に相談した」などとうわさされたことについては、全面的に否定した。医療界に対しては「原因を追究してほしい」「変わってほしい」と、事故の再発防止を強く訴えた。
院内調査報告書でも、院外調査報告書でも、現在論議されている医療事故調の報告書でも、大切なことは、報告書を公表する前に「当事者」に意見を述べさせることです。当時者の同意を得ていない調査報告書は廃棄されるべきです。
「立ち去らない医師からの提言。医療事故の院内調査は病院組織による責任所在の決め付けの側面がある。客観性・中立性は担保されない。捜査機関に対する内部告発・鑑定書になる。外部専門家が存在しない院内調査は死因究明・責任追及過程が意図的に行われる可能性がある。先日発表された医療安全調査委員会設置法案大綱に関して、私は全面的に支持する立場にはないが、『医療事故調査を終える前に、原因に関係ありと認められる者に対し、意見を述べる機会を与えるべきである』との記載内容に関しては、今後絶対に重視させるべきであろうと考える」
http://lohasmedical.jp/blog/2008/07/post_1270.php#more
ロハスメディカルの上記のページに、私が日本心血管インターベンション学会で述べたこと、スライドになったことが報告されています。
投稿情報: 紫色の顔の友達を助けたい | 2008年8 月24日 (日) 02:42
あ!インターベンション学会特集、
ロハスの記事が集まってからと思ったら忘れていましたo(^-^)o!!!
ぜひぜひ今度特集させていただきます!
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年8 月24日 (日) 22:48