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(投稿:by 僻地の産科医)
HAART導入後の10年間で
先進国のHIV感染者では平均余命が大きく延長
Medical Tribune 2008年8月7日(VOL.41 NO.32) p.55
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欧州と北米で行われた多国籍共同研究により,多剤併用抗レトロウイルス療法(HAART)が導入された1996年からの10年間で,先進国ではHIV感染者の平均余命が13年延長したことが明らかになった。結果はLancetの7月26日号に発表された。
この共同研究では,HAARTを受けている16歳以上のHIV感染者の死亡率と平均余命を1996〜99年,2000〜02年,2003〜05年の期間で比較した。また,性,登録時のCD4細胞数,静注薬物使用歴により層別化し,平均余命の比較を行った。
HAARTを開始したHIV感染者は1996〜99年が1万8,587例,2000〜02年が1万3,914例,2003〜05年が1万854例。研究期間中の死亡は2,056例(4.7%)で,1,000人年当たりの粗死亡率は1996〜99年の16.3から2003〜05年には10.0に低下した。同様に,1,000人年当たりの生命喪失年数も366年から189年へとほぼ半減していた。
20歳時点の平均余命は1996〜99年の36.1年に対し,2003〜05年には49.4年と13年以上延びていた。女性は男性よりも平均余命が長かった。静注薬物の使用による感染と考えられる患者は,他の感染群と比べて平均余命が短かった(2003〜05年の平均余命32.6年対44.7年)。また,登録時のCD4細胞数が100/μL未満と少なかった患者は,200/μL以上の患者よりも平均余命が短かった(同32.4年対50.4年)。
この結果について,共同研究グループは「HAARTを受けているHIV感染者の平均余命は延びているが,20歳時の平均余命は研究に参加した国の一般人口の3分の2程度である」と指摘している。
Antiretroviral Therapy Cohort Collaboration. Lancet 2008; 372: 293-299.
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