(投稿:by 僻地の産科医)
昨日の続きですo(^-^)o ..。*♡
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犠牲者は患者だ! 「医療レベル」は世界最高なのに「医療環境」はサイテー 週刊朝日
週刊朝日 2008年5月30日号
表紙:ジャック・ニコルソン
発売日:2008年5月20日
2008年5月30日号
ではどうぞ♪
国民の命を守れなくなったとき、国家が崩壊する
尾辻秀久
現在、国には800兆円を超える借金があります。このため、毎分2千万円近くもの利息を払わねばなりません。
「この借金地獄から立ち直るためには支出を減らすしかない』という小泉改革の考え方の下で、内開府に設置された経済財政諮問会議は、社会保障費を2002年からの5年間で1兆1千億円削減するよう求めてきました。厚生労働大臣だった私も、ちょうど医療制度や介護保険の見直し時期にあたっていたので、何とか頑張って予算を削りました。
ところが、当時の経済財政諮問会議のメンバーは、「さらに5年間削れ」と要求してきたのです。約20兆円の社会保障費のうち、彼らがターゲットにしているのは伸び率が大きい「医療費』でした。彼らは問答無用に『決めた分を総額でバサッと削れ』と要求するのです。私は『命にかかわることを頭から削るのは無理だ。削れるところを必死に見つけるから、それを積み上げさせてくれ』と反論しました。それで、大もめにもめたのです。
彼らは、大臣である私を呼び出し、万人で被告人席に座らせるようにして、「国をつぶす気か」と責めました。私は辞表をポケットに忍ばせながら、「あなた方は『国にカネがなくなったから、国民は病気になったら死んでくれ』と言うのか』と抵抗しました。なぜ国民から選ばれたわけでもない民間議員(財界人や学者)が、大臣より強い立場にあるのか、私には理解できません。
「財政危機で国家が崩壊する」と言いますが、私は、「国民の命を守れなくなったとき、国家が崩壊する」と言いたいです。
もっと社会保障にお金をつかうべきですが、そのためには目的税として消費税を3%程度上乗せしなければならない時期にきています。道路特定財源から回したり、他の予算のムダを見直したりするぐらいでは足りません。
来年度から、基礎年金の国の負担率を3分の1から・2分の1に引き上げることが決まっていますが、これだけでも消費税を1%分(約2兆5千億円)上乗せしなければ、もうどこにもお金がありません。それを説明することが、与党として国を背負ってきたわが党の責任だと思います。
○おつじ・ひでひさ
1940年、鹿児島県生まれ。参議院自由民主党議員会長。
医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟会長。
04年9月~05年10月まで厚生労働大を務めた。
『みな高給取り』は誤解 願いは労働環境の改善
木下博勝
最近、知り合いの医師から「テレビで医師のしんどさを訴えて」と言われることが多くなりました。医師不足の影響で、みんな疲労が限界に達しています。
たまらないのは、まじめな医師ほど仕事を多く抱えて、過酷な労働環境を強いられることです。できることなら患者さんと接する時間を増やしたい。だけど増やせない。
医師について誤解を解いておきたいのは、みな高給取りだと思われていることです。何千万円も稼いでいるのはほんの一部の医師で、大半はそれほど給料が高いわけではありません。
私自身、車も持っていませんし、毎日1時間半かけて電車通勤をしています。奥さんからは、「医者と結婚したらお金持ちになれると思ったのに、全然違うじゃない」と責められることもありますけど。(笑い)
ただ、お金が割に合わないといって不満を言う医師はあまりいません。やはり声を出して訴えたいのは、国が医療費を増やすなどして、医療の質を落とさない程度に労働環境を整えてほしいということです。
仕事で英国の病院を訪れることがあるのですが、日本との違いに驚きます。
とにかく医師の数が多い。それに医師をサポートするスタッフも多い。たとえば、日本の医師は診断書を書くことに手間がかかるのですが、英国の病院では医師がテープレコーダーに吹き込んだ内容を、別のスタッフが聞いて診断書を作るのです。医師は診断書を書かない分、診療や手術に時間を作ることができます。もちろん患者さん一人ひとりと向き合う時間も多い。こうした環境で働けるのは素晴らしいと思います。
医師と患者さんの両方が満足できるよう、日本でもこうした仕組みをぜひつくってほしいですね。
○きのした・ひろかつ 1968年、北海道生まれ。
東京大学大学院博士課程修了。所沢胃腸病院副院長。
妻は女子プロレスラーのジャガー横田さんで、テレビなどで活躍中
産婦人科医を追い込む国が
少子化をますます加速させる
堀口貞夫
ある調査によれば、お産は、全体のうち65%は出産が終わるまで何の異常もなく済みます。逆に言えば、35%は妊娠の初期から出産までの段階で母子に何らかのリスクが生じる。いつ起こるかわからないリスクと向き合う現場の医師は、昼夜関係なく休みを返上することも多いのです。
皮肉なことに、医療の進歩や高度化も医師の負担を増やしました。最近は、超音波検査で胎児の先天性の心臓疾患を診断することができますが、日本のどこででもそうした専門的な技術を提供できるようにするには、なかなか大変です。
現実には、大半の病院や診療所では人手不足に悩んでいます。日本産科婦人科学会の05年の調査では、分娩施設の約84%で産婦人科医が3人以下しかいないという結果が出ています。3人だと、単純計算で週に56時間、1人での勤務を強いられることになります。
日本の産婦人科医の数は96年から06年までの10年間に約12%減りました。一方出生数は10年間で9%減。出生の減少よりも産婦人科医の減少のほうが進んでいるのです。
そうした状況の中で起きたのが、04年に起きた福島県立大野病院での事件でした。この事件では帝王切開を受けた妊婦が亡くなり、06年に産婦人科医が業務上過失致死などで逮捕された。産婦人科医に限らず、特に外科系の医師にとっては、難しい症例の手術の結果を問われるという意味で「ひとごとではない」衝撃でした。この痛ましい事件を機に、医師の産科離れが加速したのは間違いないでしょう。
いつリスクが発生するかわからない産科診療の安全を担保するには、中核病院の充実が不可欠です。しかし産科医の減少によって、中核病院で24時間態勢が組めなくなる事態が続出しています。厚労省の通達を遵守して、現場の人員問題に対応するには、産婦人科医、助産師、看護師の力を結集する以外ない。その人たちの技術を高める責任は、この事態をもたらした行政にあるでしょう。
産科では異常がない限り自費診療なので直接は無関係ですが、国は4月から、5分以上診察すれば加算料金を請求できる「5分間ルール」を定めました。「3分診療」と言われる現状を変えるためでしょうが、産婦人科では患者さんとの会話が大切で、そもそも5分間では不十分。せめて15分は必要です。産婦人科医にとってはナンセンスなルールで、国が現場を理解していない表れだと思います。
このまま産婦人科医の減少が進めば、子どもを産むことも大変になります。少子化か進むにもかかわらず、産婦人科医を過酷な環境に追いやっている国の責任は大きいと思います。
○ほりぐち・さだお 1933年神奈川県生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒。
東京の築地産院や愛育病院で主に妊娠・分娩の仕事に携わる。
現在は主婦会館クリニック・からだと心の診療室所長。
心も体も疲れ果てていた夫
犠牲的精神では解決できない
中厚のり子
1999年8月16日の朝、小児科医だった夫の中原利郎は真新しい白衣に着替えて、勤めていた病院の屋上から身を投げました。44歳でした。
小児科部長室の机の上には、「少子化と経営効率のはざまで」という遺書が残されていました。国の医療費抑制政策の下で、採算のとれない小児科が優先して切り捨てられ、医師に過重な労働が強いられている惨状を訴えたものです。
6人いた医師が3人に減ったこともあって、亡くなる直前、夫は月に8回当直し、完全な休日は2日しかありませんでした。管理職になって採算のことも考えねばならず、精神的にも肉体的にも疲れきった様子でした。
夫の死から2年後、私は労災保険法による遺族補償給付を申請しました。ところが、新宿労働基準監督署は「自殺は業務上の事由によるものとは認められない」として、不支給としました。つまり、「医師の当直は労働時間と認めない」というのです。
私たちはこれを不服として、行政訴訟を起こしました。東京地裁は昨年3月、夫の死が過重労働であることを認め、国に不支給決定を取り消すよう命じる判決を言い渡しました。国は控訴せず、勝訴が確定しました。ただし、国は正式に医師の当直を「労働」と認めたわけではありません。
裁判の証拠とするため、全国の小児科医に協力を仰ぎ、当直勤務が心身に与える影響についてアンケートを集めました。その回答を読むと、たくさんの医師が多すぎる当直勤務にストレスや不安を感じており、診断や治療にも悪影響を及ぼしかねないと訴えています。医師の過重労働は、夫だけの問題ではないのです。
医学の進歩によって重症の患者さんが救えるようになった反面、かなり手厚い医療が必要になりました。すでに医師の犠牲的精神で乗り越えられる限界を超えています。医師が人間らしく働ける労働環境をつくってほしい。夫の残したメッセージを伝えるのが、私の役目だと思っています。
○なかはら・のりこ 1956年神奈川県生まれ。
「小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会」
とともにシンポジウムを開催するなど、
医師の労働環境を改善する活動を行っている。
医師不足ではなく『医師偏在』女佳医師の活用を
おおたわ史絵
私が大学医局にいた20年前には「女医はいらない」と平然と言うような偏見がある医師も多かったですね。当時は女性医師の数も新人医師全体の1割程度でした。
しかし、現在は新人医師の3割以上を女性が占めていて、大学病院や総合病院への進出も進んでいます。
ただ、女性医師が仕事を続けるには、結婚や妊娠出産、子育てとの両立が喫緊の課題となりますが、勤め先に迷惑をかけないようにあえて婚期を遅らせている方も多くいます。
友人は夫婦ともに勤務医なんですが、不規則な勤務体系のため、月々のベビーシッター代が30万円も必要になるそうで、「ベビーシッター代で月給が飛んでいく。何のために働いているのかわからない」と嘆いていました。
病院が託児所を完備してくれれば、子供を持つ女性医師も楽になるんですが、そんな設備が整った病院はほとんどないと言っても過言ではありません。医療界の子育て支援は遅れているんです。
比較的、女性医師が多かった産科や小児科では、不規則な勤務に加え、激務が重なり病院を退職するケースも多くなっています。
そもそも、女性だけでなく男性の若い医師も、当直回数が少なくて、医療事故で訴えられるリスクが低い皮膚科や眼科、美容などの職場を希望するケースが増えています。
医局の人事制度が崩壊し、自由に勤務先を選べるようになり、女性医師も「ローリスク・ハイリターン」の職場を志向しています。
女性医師の数は増えているのに、本当に必要とされる職場にはいない。そんな皮肉な現象が医療機関を悩ませています。実際には医師不足ではなく、女性医師が適材適所にいない「医師偏在」が全国で起こってしまっているのです。医療機関は女性医師の活用をもっと考えなければならないと思います。
○おおたわ・ふみえ 東京都生まれ。
東京女子医科大学卒業後
大学病院などを経て開業医の道を選ぶ。
著書に自叙伝エッセー『女医の花道!』(朝日文庫)など。
医師側は本当の被害者まで「クレーマー」扱いするな!
平柳利明
医療訴訟が増えたことが医療崩壊の一因であるかのように言う医師がいます。しかし、医療崩壊による質の低下が先にあるからこそ、医療過誤や訴訟が起こるのであって、本末転倒ではないでしょうか。
私たちは、東京女子医大附属日本心臓血圧研究所(心研)で手術を受け、亡くなったり重い障害を負ったりした子どもの親同士で連絡を取り合い、病院側に真相究明を求めました。大学側も私たちの求めに応じ、多くの時間と労力を費やして調査してくれました。その結果、8組の家族が和解に至ったのです。
カルテの記載や管理がずさんだったことも含め、すべてをさらけ出してくれたおかげで、私たちも「人手が足りない状態で大変だった」と思えるようになりました。医師だって人間ですので、絶対ミスを犯さないとは言えません。当時、日本最高レベルと言われた心研でさえ被害者を出したのです。
医療事故を減らすためには、医師や看護師を増やし、ミスを犯しにくいシステムをつくる必要があります。それにはお金がかかるのですが、国は「皆保険制度を守る」という美名の下、医療費をあまりに低く抑えています。国は医療安全を低く見すぎているのではないでしょうか。
当然のように医療を受けすぎている患者側にも問題があります。薬を何種類も飲んだり、手術を受けたりすると、それだけ医原病(医療行為を原因とする病気や障害)のリスクが高まります。患者側も医療を受けるときにはリスクが伴うという覚悟が必要です。
医師側は事故が起きたとき、あまりにもウソや隠蔽が多すぎます。ちゃんとした事故調査もしていないのに、本当の被害者までクレーマー扱いして非難する。日本人は「話せばわかる」民族なのですから、医師は患者をもっと信じて、ともに歩んでほしいですね。
○ひらやなぎ・としあき 1950年群馬県生まれ。
2001年、東京女子医大で受けた心臓手術の医療事故で、
娘の明香ちゃん(当時12歳)を亡くした。
医療安全を求める講演活動などを行っている。
先進国で最低レベルの医療費
防衛費、道路建設費から回せ
桜井充
日本の医療費の対国内総生産(GDP)比は約8%で、世界の先進国の中でも低いランクに位置しています。G7諸国並みの10%まで上げるためには、約10兆円が必要な計算になります。
では、その10兆円をどこから捻出するか。政府はカネがないと言っていますが、予算のムダ遣いにメスを入れればよいのです。
まずは防衛予算です。先頃、国が商社から防衛装備品を購入する際の「過大請求」が問題になりましたが、そもそも約4兆8千億円にものぼる予算額が本当に必要なのでしょうか。予算をしっかり見直し、ムダに使っている分を医療費に回すようにします。
道路建設をはじめとする公共事業費も削れるでしょう。特に8・2兆円という日本の道路予算は、国土の広さからすれば世界の中でも突出して大きい額です。道路建設推進派の中には、
「道路を造るのは、数少ない病院にアクセスしやすいようにするためだ」
と主張する人もいますが、それは筋が違います。せっかく道路を使って病院に行っても、医師不足が起きていれば根本的な問題解決にはなりません。
一方で、公共事業費を削ると雇用が減ってしまうという意見もあります。しかし考えてみてください。医療費が増えれば、医師や看護師だけでなく、医療秘書や患者搬送などのサポートをする人材も必要になります。英国ではブレア政権下で大幅な医療費増額を行い、実際に新たな雇用が生まれました。
高齢化が進んで医療費が増大することを考えれば、歳出を見直すとともに、新たな財源確保策を考えていかねばなりません。そこで医療保険と介護保険をまとめて、所得に比例した直接税方式の「社会保障税」を新たにつくります。
後期高齢者医療制度で弱者に負担を強いながら、悲鳴を上げている医者もほったらかしです。ムダに税金を垂れ流す政府に、国民の命を託すことは到底できません。
○さくらい・みつる 1956年宮城県生まれ。
東北大学大学院医学研究科博士課程修了。
東北大学病院などで勤務後、98年の参院選で初当選。
現在2期目。現在も心療内科医として活動する。
尾辻議員の話を読むと、やはり、現在の医療崩壊を引き起こしたA級戦犯は、経済財政諮問会議ですね。欲深い彼らを権力の座から引き摺り下ろさない限り、社会保障費を削ろうとしてくるのでしょうね。
投稿情報: ドラゴン桜 | 2008年5 月28日 (水) 10:28