(関連目次)→海外での医療事情
(投稿:by 僻地の産科医)
久しぶりに海外医療事情です(>▽<)!!!
フランスはわりとうまくいっているんですね。
知らなかったです。
フランスの医療事情
矢沢珪二郎
ハワイ大学医学部産婦人科
(産科と婦人科・第75巻・3号 p366-377(p106-107))
フランスの医療事情は大体うまくいっているらしい.Lancet誌によれば,患者,医学者,専門科目の医療者の三者とも現行のままで結構,と考えているとのことである.しかし通常の医師(一般医)およびフランス政府は(赤字解消のためには)さらなる改革が必要と主張している.その理由は,現行の医療制度が60億ユーロの赤字を抱えているからである.フランス国民保険のチーフであるRoekegrem氏は,赤字削減策として,薬剤処方量の抑制,職場における病欠期間の短縮化,また,一般医からの紹介なしに,自分で最初から専門医にかかる患者に対する医療費補助の削減,などを提案している.
何しろ,フランスの医者は大量の薬剤を処方するらしい.2004年のデータであるが、1人の一般医が1年間に処方する薬剤量は,金額にして26万ユーロOユーロ160円として、4,160万円)に達する,日本の医師は,1人で1年間にどのくらいの量(価格)の処方,または販売をするのであろうか? 現在,手元にテータのないのが残念である.
なお,米国では医師加薬を売ることはなく,すべて薬局が処方籐に従って薬を販売している.薬剤を処方する人と,薬剤を販売する人が同-人であれば,処方の乱用は目に見えているのではないか.このような状況はconfjict of interest(利害の衝突)とよばれる.
新しく大統領になったサルコジ氏は,医療費の赤字を軽減するために,もっと患者の自己負担を増加させようとしている.氏は,「患者の自己責任」を高めなければならない、と(まるで自民党の政治家のようなことを)提案しているのである.
この傾向はサルコジ氏が大統領に就任する以前からあり,たとえば,2005年からは専門医のコンサルティションに,患者は毎回1ユーロを負担している.また2006年9月からは,91ユーロ以上の医療費に対して,18ユーロの負担をすることが導入された.しかしこのような自己負担は低所得階級にとって最も重荷であるとの反対があり,その結束,貧困者に対しては,この自己負担分は免除されることになった.この提案に対しては,現在オンラインで4万人の反対署名が集まっている.このような自己負担は社会的に正当化されず,経済的には効率が悪く,国民の健康にとって危険である,というのが反対派の主張である.フランスには300万人の失業者がおり,低所得階層は700万人にのぼる.
サルコジ氏はまた,勤務医が現行の週35時間労働に加えて,さらに超過勤務を増大する提案をしている.これに対して,勤務医は,もう十分に超過勤務をやっている,として反対している.
フランスの看護師は高校卒業後,2年間の専門教育で資格が取れる.看護師たちは,自分たちの給料は低く,勤務時間は変則であると訴えている.フランスでは,看護師の平均勤続年数は12年という短さである.そのため,1人の看護師につき3人の看護師を養成する必要があるという.看護師たちはまた,看護学校を現行の2年制から3年制にして,もっと専門性を高めたいという,それに伴って給料の増加も見込んでいる.
サルコジ大統領は選挙時に以下のような公約を発表している.
*病院の効率を高め,より軽症の患者は早く退院させる.
*病院の急患室での待ち時間を短縮する.
*公立病院と私立病院,そして独立開業医のより緊密なネットワークを構築する.
*終末期の緩和医療を充実させる.
人□あたりの緩和医療ベッド数は,英国とカナダのケベックではフランスの2倍あるという.「緩和医療は贅沢ではなく,権利,つまり尊厳さに対する国民の権利なのだ,これは私の5年間の任期中での最優先事項である」と氏は述べている.
なお,現在,フランスには公立病院が1,029あり,そのうち31ヵ所は地域の中心的病院,あるいは大学病院である.さらに558の病院,92ヵ所の専門科目の病院,348の地域病院かある.
Source.Lancet 2007;370:209.
Lancet 原文では累積赤字は60億ユーロとなっています。6000億ユーロは余りに大きすぎると思いました。フランスの総医療費はCECDヘルスデータではGDP比11.1%と高く、一人あたり医療費も日本より4割ほど多いのですが、医師数が多いため、医師一人あたりの薬剤処方費はそれほど高くないように思えるのですが、どうでしょうか?
投稿情報: 医師の一分 | 2008年5 月 9日 (金) 00:02
きゃ~(>▽<)!!!
医師の一分さまだ~っ!!!
コメントありがとうございます!!!!
いつも良質なブログのファンです ..。*♡
「産科と婦人科」には6000億ユーロとありますけれど、原点がLancetですので、きっと60億なのでしょう!
人数あたりにするとそんなに多いわけでもないのかもしれませんけれど、どうなんでしょうね~。日本の院外処方は余計にお金がかかっている気がします。
(あれはなんだったんでしょう?)
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年5 月 9日 (金) 00:08
はじめまして。フランスの医療と言う事で
患者側からです。
薬は日本の力量が通常処方で出ます。かつ、箱単位の受領なので、量としては、うわっこんなに・・という感想ですね。
1錠の単位が多いです。日本で200ミリとか250ミリの抗生物質は、500ミリが1錠となってますので、1日2回、1回2錠なんて処方が大人の平均です。
そう思うと、薬の単価は判りませんが一人当たりの一回の量の多さが、薬の消費の多さに繋がってるのではないでしょうか・・・。
参考までですが、子宮筋腫が原因で経血量が多い場合。止血剤の処方で経口のアンプル(トランサミさん)が出ることもあります。
投稿情報: TOSHI | 2009年5 月27日 (水) 04:02