(関連目次)→ADRと第三者機関 目次 各学会の反応
(投稿:by 僻地の産科医)
鈴木真 先生
亀田メディカルセンター 周産期母子医療センター長
から下記のようなメールを頂きました!!!
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皆様へ
平素より大変お世話になっております。
ご存知のように「第3試案」が出されています。
かなり改善されてよくなっているという認識をしておりますが、
まだ完全ではなく、このままでの賛成はとても危険だと感じています。
学会宛てに皆様の意見、どんな些細なことでも構いませんので
とにかくたくさん送ってください。
宜しくお願いいたします。
日本産科婦人科学会 [email protected]
日本産婦人科医会 [email protected]
問題となっている点は以下のようなところです。
1)警察・検察への通知(P9)
最大の問題点はやはり警察・検察等への通知の問題だと思います。「故意」、「診療録の改ざんなどの隠蔽行為」については異論がないと思いますが、「重大な過失」については、「死亡という結果の重大性に着目したものでなく」とされている点は評価しますが、「標準的医療行為から著しく逸脱した医療であると、地方委員会がみとめるもの」としており、その内容が流動的であり、不透明である点が問題であると考えます。基本的に医療を行っていて著しく逸脱した医療を施行することは皆無であるので、医療行為そのものによる事例については以前の主張のように通知しないことを主張すべきだと思います。
2)「行政処分」について(P11)
システムエラーの観点から処分を「個人」ではなく、「医療機関」へと対象を移行させていることは評価されるべきです。しかし元来厚生労働省は「システムエラー」が発生しないような医療システムを施してきたはずである。であるからこの「システムエラー」により処分されるべきは厚生労働省そのものであり、医療機関を対象とすることさえ矛盾を感じる。であるから行政処分はあくまでも「改善命令」による改善計画立案とその実行である。またこのために施設の改築や機器購入などが必要であれば、それは国が補助をして行うべきものであり、病院の負担とすべきものではないと考える。さらに、「個人の注意義務違反」が個人に対する処分として挙げられているが、いまのような劣悪な労働環境におかれている産婦人科医がどんなに頑張っても十分な注意を払うことは不可能であり、この環境が改善されていないことの原因もまた、国、厚生労働省にある。これをわれわれに課すことは納得のできることではない。国が医師、看護師、助産師をきちんと増やして、適切な医療環境を整備することを補償しなければ、この制度に納得はできないことも強く主張すべきであろう。
3)調査機関の設置場所について 4)構成メンバーについて 5)黙秘権と免責について 6)法的判断と構成メンバーについて 7)その他 最後にこの議論の中で「大野病院事件」のようなまれな合併症の結果で起きたものと、点滴内に消毒液を誤って注入した事例が同列で議論されているに強い違和感を覚えます。 合併症も医療ミスとされるような世の中では医療はできないと若い先生方は感じると思います。 **********************************
調査機関と処分機関が同一機関もしくは利害関係のある機関であることは、処罰に何らかの影響を与える可能性があるので、別機関とすべきである。つまり調査機関(第3者委員会)は行政処分機関である厚生労働省とは利害関係のない異なった政府機関(省庁)、もしくは外郭団体でなければならない。
調査は「医学的な真実の追究」が目的であるので医学に精通しているもので構成されるべきである。ただし、医師に限るものではないが、「医学的な真実の追究」を妨げるものは含めるべきではない。
つまり純粋に「医学的な真実の追究」をすべきである。しかし、一方で関係者が真実を語らなければこの目的は達せられない。関係者が真実を語るためには「話した内容により法的に不利な立場にならないこと」が担保されていることが最低条件である。日本国憲法第38条第1項に「自己に不利益な供述を強要されない権利、すなわち、自己に刑罰(またはより重い刑罰)が科される根拠となりうる事実に関する供述を拒否できる権利」は定められているからである。この権利を放棄して「真実を述べようとするもの」に対して「免責」は当然のことと考えられる。
法的な判断はその「医学的な真実の追究」の結果(報告書)をみて判断すればよいことであり、この委員会において判断まですべきかどうかは再考の余地がある。その観点から考えるに弁護士がこの委員会の構成メンバーである必要はないと考えられる。
この委員会は「医学的な真実の追求」が目的であるので、医学、医療とはまったくかけ離れた事象により、事故が起こったことが明らかとなった場合には速やかに、それを公表すべきである。
細心の注意、準備を払ったにもかかわらず、不幸な転機をとることはゼロにはならない。そのここと不注意なのか、知識がないのかわかりませんが、医療行為とはとてもいえないようなことで起こったことの大きな違いを我々の中できちんを分けた議論(届け先や調査機関)をしないと、国民はこの2つを「まったく別のものである」と認識することは不可能、つまり「同一」と認識する可能性が極めて高いと感じています。
鈴木 真
亀田メディカルセンター
産婦人科 産科部長
周産期母子医療センター長
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