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(投稿:by 僻地の産科医)
診療行為に関連した死亡の死因究明等の
あり方に関する講演会
於 愛知県 愛知県医師会館
2008年2月9日 14:00 - 16:00
講演 参加してくださったお友達から情報です(>▽<)!!! ========================================== 愛知県医師会での講演会に行って参りました。 西島英利参院議員、木下勝之日医常任理事、最後に大村秀晃衆院議員も登場して、盛大に盛り上げていました。フロアサイドからも安城厚生病院や名古屋第一赤十字病院など、大手の病院からびしばし厳しい質問が飛んでおりました。しかし何となくかわされたような・・・ 大まかな内容:西島議員も木下氏も、「医師法第21条の拡大解釈が問題」というのが大前提の認識で、それを本来の意味であった「殺人・虐待などの証拠保全」というところに押し戻そうというのが「医療安全調査委員会」の使命であるそうです。 自民党案では 1)「医療者の責任追及を目的としたものではない」と明記しているのが厚労省試案と違う。 木下氏からの説明 質疑応答
「医療紛争処理のあり方検討会について」
参議院議員 西島英利
「医療事故に対する刑事訴追からの不安を取り除くための日本医師会の取り組み」
日本医師会常任理事 木下勝之
それから、末尾に今日の読売の院内ADRの記事があります!
ぜひぜひ読んでみてください。
西島氏からは「猛烈なメールが届きまして・・・」とメル凸が結構効いたような話が出ました。
2)「21条との重複を避ける」というのは「委員会に届けたものは21条届け出をしなくてよい」という担保を取っている。
3)「患者・遺族の立場を代表する」というのは一般市民と思ってくれればよい
という説明。
4)「調査報告書は、刑事手続きに使用することを妨げない」といっても、報告書のみで一次資料を公開するわけではないし、委員会で「これは重過失だ、または故意だ」とするものだけ警察に通知するのだ。限られた事例のみとする担保は取れた。
5)届け出義務に違反したらペナルティというのは刑事罰ではなく、戒告などの行政罰。隠蔽と認められたら当然刑事罰。
1)医療事故届け出件数は増えており(2004年がピークだが、前年度でも190研くらい)、そのうち半分近く立件。うち略式起訴も含めれば30件前後起訴になってる。
2)医療者と法曹との共通認識として「医療に関連した死亡例のみを特別視はできず、すべてを刑事免責にすることは不可能」「業務上過失致死傷罪で個人を罰することは真の原因究明にならず、医療事故への刑事訴追は医療の特殊性を考えると少数の例外を除いてなじまない」
3)基本的に届け出範囲は「医療機関において判断した場合とする」質疑応答の際の回答で、「遺族が警察に訴えても、まず医療安全調査委員会に行くように言われる、そういうシステムにしていく」といっていました。また西島氏も「警察からの鑑定依頼がまず医療安全調査委員会に来る仕組みを作る」といっていました。
4)捜査機関に通知する必要がある事故は「医療安全調査委員会が故意や重過失と判断した場合、いわゆるリピーター的医療機関、カルテ改ざんなど社会的に見ても悪質・不誠実という事案」に限る。
1)顧問弁護士より:再発防止と責任追及は全然別物。この法案も航空事故調同様妥協の産物と思うが、最初から民事・刑事に使えると明記するのはどうか?再発防止目的なら医療水準を超えるようなことでも「こういう点を改善すれば」と要求せねばならない。これをそのまま裁判に使えば、80点の医療ができていても残り20点が足りないとその分の有責を認めるだろう。
西島回答ーADRへの誘導を想定している。「責任追及」は考えていない。弁護士氏の言うような事態にならぬようシステム構築が必要。
木下回答ーとにかく「刑事」にしない、というのが目的。残り20点の過失云々は民事でやってくれ。
2)安城厚生ー21条は今警察が非常に謙抑的に対応しているので、届け出は怖くない。しかし報告書を利用されることになれば、訴訟頻発すると思う。またリスクマネージメントとして考えれば、インシデントレポートのハイムリッヒの法則を考えてもわかるが、死亡例だけではシステムエラー究明に役立たないし、個人責任を追及しないようにせねばエラー究明はできない。(直接的な回答はなし、以下に連続)
3)日赤血管外科ー本当に謙抑的に運用されるならよいが。自分が名大ラパロ事故の時レスキューに入ったのだが、事故調委員会で「あのとき末梢血管側でも止血していれば」と何気なく言った一言が報告書にはいかにもミスしましたみたいにでかでか書かれていて、二度とこういう場でうかつなことは言うまいと思った。
常滑市民病院ー関連して、医師側と司法の「過失判断」にはギャップが大きい。民事にはノータッチな法案なので、民事に証拠として使われるのは困る。21条は死文化しても、業務上過失致死傷は残るし、患者が刑事で訴えたら。
西島回答ー確かに業務上過失致死傷は残る。
木下補足ーしかし今と異なり、医療安全委員会が過失の有無を判断することになる。それで訴追対象となるものだけ、警察に通知する。
大村回答ー(ここから参加)患者が警察に行っても「医療安全調査委員会にまず行きなさい」というシステムにしていく。国会で法務省の者にそう証言させる。法務省でもそれは承知している。原因解明と、刑事訴追を押さえることが一番の目的だが、第三者としての医療判断が入ることになるので、むしろ民事でも有利になると考える。議論は急ぎたいし深めたい。医療に対する要求は増えることはあっても経ることはないし、法曹年間3000人増という時代からも、医療者が身を守る機関が必要。
4)安城厚生ーいったんできた法は一人歩きする。大村議員の言うのはもっともだが、処罰と切り離した法が必要と考える。
大村回答ー「責任追及をするものではない」と法文に明記する。厚労省におくことを憂慮する医療者が非常に多いので、内閣府におくことになった。厚労省には通知済み。
5)安城厚生ーいきなり第三者に丸投げでは自分たちの反省にならないので医学・医療の進歩につながらない、患者との信頼醸成にも問題がある。
大村回答ーその通りで、まず病院内で解決できれば一番よい。(西島同意)
木下ーとにかく原因をはっきりさせるための解剖が前提。医師が不足なのは承知だが、何とかして行きたい。
西島ー言葉は悪いが今医療問題は旬である。このときを逃すと、このような法案を通すことはできなくなる。
とまあ取り急ぎ報告のみ。
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↓ 今日のニュースから
注目してもいい内容なのではないかと思われます。
院内調停8割が「納得」
医療版「裁判外紛争解決」 市立豊中病院取り組み
2008年2月10日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20080210-OYT8T00065.htm
メディエーション(院内調停)の模擬風景。右から3人目が仲介役の水摩室長(市立豊中病院提供) 豊中市立豊中病院が、医療ADR(裁判外紛争解決手続き)に取り組んでいる。医療訴訟が増える中、病院として患者側に誠実に対応することで、双方に負担が大きい裁判を避ける狙いだ。導入した2005年4月以降、苦情を訴えた患者側の8割が納得し、訴訟になったケースはないという。現場ではどんな話し合いが行われているのか。
吹田市の女性(43)の義父(79)は昨年1月、病気のため同病院に入院した。副腎皮質ホルモン剤を投与した副作用で口の中が荒れ、食事を取りにくくなった。義父は医師に「何を食べても苦く感じる」と訴えたが、何の処置もしてもらえず、3か月後、歯茎から出血があってようやく、口腔(こうくう)外科で治療を受けた。
義父は5月に死亡。「薬の量が多すぎたのでは」「本当に入院する必要があったのか」。不信感が募り、義母はショックで体調を崩しがちになった。病院に相談したところ、紹介されたのが医療ADRを担当する医療安全管理室だった。
8月下旬、医師との院内調停が行われた。水摩明美・医療安全管理室長が仲介役となり、病院側からは副院長、担当医ら3人が出席した。
「先生、カタカナを使わんと、わかりやすい言葉でゆっくりと話してあげてください」。専門用語を使い、早口で経緯を説明する医師に対し、水摩室長が注意した。水摩室長は同病院で30年以上、看護師として働いた経験があるが、院内調停では中立の立場を守る。
「患者が苦しんでいるのに、なぜすぐに対応してくれなかったのか」。義母は手紙を読み上げて訴えた。病院側は「副作用があっても、薬の投与を優先するという治療方針は間違っていなかった」と主張。一方、「口の中が苦いとの訴えにすぐに対処しなかったことは申し訳ない」と謝罪し、再発防止を約束した。話し合いは約1時間半に及んだ。
「患者側は『物を食べられないと元気にならない』と不安になっているのに、医師は『点滴で栄養は取れる』との基本的な説明をできていなかった」と水摩室長。担当医は「ちゃんと説明したつもりだったが、患者には伝わっていなかったと実感した」と話したという。
女性は「完全に納得できた訳ではないが、義母は少し前向きになれた。患者と医師の両方の立場を理解する人が仲介してくれたからこそだった」と振り返る。
◎ 同病院によると、今月7日までに行った院内調停40件のうち、患者側が「納得」または「一応納得」したのは32件を占め、「納得できない」は8件だった。
最高裁のまとめでは、1年間に起こされる医療訴訟は1997年は597件だったが、06年は913件と1・5倍に増加している。島野高志院長は「治療自体に問題はなくても、医療者側の態度や言葉遣いなどに不信感を持たれ、裁判になるケースもある。医療ADRは、医師が患者とのコミュニケーションを学ぶ教育的効果もあり、医療の質を高めることにつながる」と強調する。
◎ 小学1年生の時、盲腸で手術をした。その場で倒れ込むほどの大きな痛みだったが、手術台で「大丈夫」と言ってくれた医師の笑顔にほっとし、信頼を感じたことを今も覚えている。
水摩室長によると、医療ADRを行っている病院は全国でもまだ数か所。病院全体の協力が不可欠で負担も大きく、公正さがどこまで確保できるかといった問題もあるが、患者との信頼関係の構築は病院にとって最も大切なものの一つだろう。その一環となる医療ADRが医療現場でどう浸透していくか、追い続けたい。
医療ADR 医療事故などの際、第三者や第三者的な立場の人が患者側と医師の仲介役を務め、メディエーション(院内調停)などで双方が納得できるよう導く制度。昨年4月に施行されたADR法では、消費者トラブルなど民事上の紛争全般を想定している。
昨日暇してました。そんな面白いものが地元名古屋であったとは・・・。行きたかった(T_T)
しかし演者も雪でスケジュール大変でしたでしょうね。
今度市内の某病院で病理の先生がこの法案議論について講演するそうなのでそちらには行こうと思っています。
投稿情報: お弟子 | 2008年2 月10日 (日) 11:31
昨日は、太平洋側すごい大雪でしたね(>▽<)!!!
>今度市内の某病院で病理の先生がこの法案議論について講演
差し支えない程度で、
結果教えてくださいませ!!!
おねがいします~。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年2 月10日 (日) 17:56
あいあい~、了解。
こまかいレポート期待しないでね~(* ̄▽ ̄)ノ~~
投稿情報: お弟子 | 2008年2 月10日 (日) 18:26
は~いっ(>▽<)!!!
お願いいたします!!!
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年2 月10日 (日) 18:33