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(投稿:by suzan)
これは医学的な宣伝・募集です。
対象は、Rh(-)の血液型で、過去に妊娠したことがある女性。
それ以外の方々には関係のない内容ですが、
学問的な興味があれば、お読みください。
Rh(-)の血液型で、過去に妊娠したことがある女性の方々!!
Rh(-)妊婦さんから生まれる赤ちゃんを救うために、あなたの血液が必要です。
どうぞ、お近くの病院に申し出てください。
Rh(-)の日本人は全体の1%しかいません。
この割合は国(人種、民族)によって差があります。
たとえば、ヨーロッパ民族のバスク人は85%がRh(-)です。
Rh(-)の「マイナス」とは何のことでしょうか。
これは、D抗原というアミノ酸(グロブリン)を持っていない、という意味です。
赤血球の表面にはいろいろなアミノ酸がくっついていますが、
D抗原はそういうアミノ酸の一種です。
ABOの血液型と同じく、血球の種類わけに、このD抗原のあるなしが使われます。
それが「Rh式血液型表記」というやつです。
言い換えれば、日本人の赤血球にはたいていD抗原があるということです。
D抗原のない赤血球を持っている人がとても少ない、ということです。
D抗原のある赤血球を万が一にも、D抗原のないRh(-)の人に輸血してしまったら?
Rh(-)の人の体の中では、初めて見た「D抗原」というものに対して反応が起きます。
それは、D抗原に対する抗体「抗D抗体」を作るという反応です。
この抗体は、この次にD抗原をもつ赤血球が体に入ってきたときに
抗原にびっしりとくっついて、D抗原を持つ赤血球を破壊します。
「溶血」という反応です。
異物排除の働きですね。
普通は、血液型が違うどうしの輸血は行いません。
ですが、妊娠のとき、輸血に近いことが起こる場合があります。
お母さんの子宮内にあって、赤ちゃんのへそにつながっている胎盤で、です。
胎盤の中では、お母さんからの血管と赤ちゃんからのからの血管が
ごく近くに寄り添って、お互いの中身を交換しています。
お母さんからは栄養や酸素、赤ちゃんからは不要な代謝物や二酸化炭素、などです。
薄い血管の壁を通して物質交換が起きるので、普通は血液は混ざり合いません。
だからお母さんと赤ちゃんの血液型が違っても、大丈夫。
ところがごくまれに、この胎盤で血液が混じってしまうことがあります。
そんなとき、もしお母さんがRh(-)だったら?
もしも赤ちゃんも同じRh(-)なら、何も問題はありません。
もし、赤ちゃんがRh(+)なら?
お母さんの血液に少しでも赤ちゃんのRh(+)血液が入れば、
お母さんの血液内にはさっき言った「抗D抗体」が形成されます。
この抗D抗体は血管の壁を通って簡単に胎盤から赤ちゃんの体内にまで入ります。
すると、胎盤でも赤ちゃんの体内でも、D抗原を持った赤ちゃん自身の赤血球が
お母さんからきた抗D抗体によって溶血を起こし、赤ちゃんはひどい貧血になります。
場合によってはこの貧血が原因で、子宮内で赤ちゃんが亡くなってしまいます。
そういうことがないように、Rh(-)の女性が妊娠した場合には
産婦人科医は定期的に「間接クームス試験」という血液検査を行って
お母さんとなる女性の体内に抗D抗体ができていないか調べるのです。
万が一、妊娠途中で抗D抗体ができているとわかっても、
抗体量が少ない場合には赤ちゃんにめったに異常は起きません。
注意深く検査をしながら妊娠経過をみていきます。
無事に妊娠が終了した場合、お産のあとでRh(-)のお母さんに
「抗Dヒト免疫グロブリン」という注射をします。
これは、抗D抗体と同じものです。
お産のときには、赤ちゃんとお母さんの体が「こすれあう」のですから
お互いの血液が交じり合う可能性も高いですよね。
もし少しでも交じり合えば、お母さんの血液内には抗D抗体ができてしまう。
次の妊娠でRh(+)の赤ちゃんができたら、早期に流産してしまうかも知れません。
だから、抗D抗体そのものである「抗ヒト免疫グロブリン」を投与して、
体内にあるかも知れない赤ちゃんのD抗原(赤血球)を排除するわけです。
父親もRh(-)なら赤ちゃんも必ずRh(-)ですからグロブリンは不要です。
赤ちゃんの血液型を検査して、Rh(-)と分かった場合も不要です。
妊娠が流産に終わっても、たとえ人工妊娠中絶を受けたとしても、
Rh(-)の女性は妊娠終了後には抗Dヒト免疫グロブリンの注射を受けるべきです。
夫(子供の父親)がRh(-)であるとはっきりわかっているとき以外は、
お腹の赤ちゃんの血液型がRh(+)である可能性のほうが高いのですから。
Rh(-)のお母さんの妊娠を守るには欠かせない、抗Dヒト免疫グロブリンは
Rh(-)のヒト血液から抗D抗体を取り出して作ります。
これまでは、Rh(-)の人間がたくさんいるヨーロッパから輸入していました。
ところが、最近、輸入された血液製剤からのエイズや肝炎感染が問題になりましたよね。
日本では用心のため、なるべく輸入血液でなく、
国内の献血から血液製剤を作ろうとしているのですが、
Rh(-)の割合が少ない日本では、抗Dヒト免疫グロブリン作成がとても難しいのです。
そこで、北九州市にある産業医大小児科の、白幡聡教授が中心となって
日本人のRh(-)の方のご協力をお願いすることになりました。
Rh(-)女性が万が一、グロブリン投与を受けずに次回妊娠をすれば、
流産しなかったとしても、赤ちゃんは出生後にひどい黄疸になりますので、
小児科のお医者も無関心ではいられないのです。
対象は、冒頭で申し上げた通り、Rh(-)で過去に妊娠したことのある女性です。
普通ならお産のあとで当然グロブリン投与を受けているはずなのですが、
中にはうっかりグロブリンを受けなかった、もしくは受けたけれども
その後たまたま抗D抗体ができてしまった、というお方がいる可能性があります。
まず血液検査をして、抗D抗体があるか、あるならば量はどれくらいか調べます。
かなり大量に抗体がないと、抗Dヒト免疫グロブリンは作れないのです。
もし、大量の抗D抗体を持っているお方が見つかれば、
献血をしていただいた血液から「抗Dヒト免疫グロブリン」を作ることができます。
日本人にはRh(-)が少ないので、大量の抗D抗体を持つヒトも少ないはずですが、
逆にそういう大量の抗D抗体を持つお方が10人見つかれば、
日本国内で使う「抗Dヒト免疫グロブリン」は十分に間に合う量を作れます。
ご協力いただける場合には、病院で抗D抗体の検査を受けてください。
検査費用は産業医大小児科が出すので、無料になるはずです。
献血施設のある病院、赤十字系の病院に問い合わせると話が早いかも知れません。
「献血」の形で血漿を提供していただくことになりますのでお礼はできません。
採血は最寄の日赤血液センターで行います。
RH(-)では、第二子の時に、母体で産生されたIgG抗体が胎盤を通じで胎児に移行し、危険になるという事は授業で習いましたが・・・
抗D抗体を海外から輸入していたというのは知りませんでした。
身近にいれば、検査を勧めるようにします。
投稿情報: MATCH | 2008年1 月28日 (月) 22:37
私はB型のRHマイナスです。
ちなみに叔母も同じマイナスです。
学生時代は輸血センターから電話で呼び出しがかかり重宝されていました。
4回の妊娠をして、出産しています。
免疫グロブリンは4回しています。
抗体が出来ないように注射するわけですから、あたしはお役には立てないのですよね??
投稿情報: 名無し | 2008年1 月29日 (火) 09:28
名無しさんへ
グロブリンを打っていても、抗体ができている場合がありえます。
可能性としてゼロではない、ということなので、確率は低いのですが。
もしもお時間の余裕ありましたら、抗体検査を受けていただけたら、と思います。
投稿情報: suzan | 2008年1 月29日 (火) 13:00
つい最近中学生になる娘の血液型がRh-であることが分かりました。昔の赤ちゃんの血液交換のイメージがあって心配しましたが、最近の医療の発達で、安全な出産が出来ることを知り、大変安堵いたしました。ガンマグロブリンは血液製剤なので、ウィルス等の安全性はどうなのかと気になっておりました所、このような温かいお声がけを拝見しまして、少しでもお力になれたらと思いました。知り合いに、40年前に血液不適合で、お気の毒な事に何度も死産をされた方がいらっしゃいますのでこのお話をお伝えしたいと思います。
投稿情報: Rh-少女の母 | 2008年4 月 8日 (火) 01:59
Rh-少女の母さん、コメントありがとうございます。
かなり前に書いた記事でしたが、お目にとまることができてよかったです。
娘さんにも、Rh(-)の女性の妊娠について教えてさしあげてくださいね。
自分の体を守るために、知識は大事で協力な武器になります。
われわれ医者は、患者さんたちが自分の体を守るお手伝い、をするのが仕事です。
投稿情報: suzan | 2008年4 月 9日 (水) 12:50
RH+の2歳の子供がいるRH-の母です。
出産時に抗d抗体ができてしまい、グロブリン注射はできませんでした。
抗体は当時はかなりの高い価が出ていましたが、現在1まで下がっています。
この価ではお役には立てないのかな?
今は二人目を考えていますが、
それぞれどのくらいの確立で流産、黄疸が出るのがとても心配です。
抗体がある以上、必ず感作するのでしょうか?本文とはずれてすみません。
投稿情報: 一児の母 | 2008年7 月18日 (金) 01:03
RH-Oの2児の母です。ボランティアに目覚め、献血でも?と思ったところ、第1子の時にグロブリンを接種しているので献血をしていいものか?と調べていたところにこのサイトを見つけました。
献血を拒否されるどころか、受け入れられる事を知り嬉しいです。
ただ、第2子出産時にはグロブリンを接種した記憶がなく、何故しなかったのか、第3子を望んではないものの、もしも、授かったら大丈夫なのか…と今までモヤモヤしてた事をどこに聞いていいやら?献血センターでは教えてくれないですよね?
第2子出産から5年経ちますが、出産した病院で当時のカルテは残っているものなんでしょうか?
投稿情報: かん | 2009年9 月18日 (金) 00:36
かんさま。
第三子を望まれるのであれば、産婦人科でそのように申出ていただいて現在の抗体価をはかってもらうという手があります。グロブリンをうったかどうかを調べるよりも簡便な方法ですし、うってもらったかどうかには関係なく、抗体のありなしを知っておくのは重要なことですのでいずれにせよ必要な検査です。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2009年9 月18日 (金) 23:20
母がRhーで私もRhーです。
3月に流産したときは、グロブリンを接種しましたが今月中旬に出血をして月経だと思っていたのですが、出血が続いており気になって妊娠検査したところ陽性反応が出ました。昨日受診したところ流産後だろうといわれ、血液検査をしましたがまだグロブリンは接種していません。
流産手術をしたわけでもないので、保険適応ではなく高額だし、72時間以上たっているかもしれないし、でも受けておいたほうがいいのか本当に悩んでいます。
投稿情報: まな | 2009年9 月29日 (火) 10:25
どうぞグロブリン注射を受けてください。
効果がないかもしれない、値段が高いかも知れないけど
抗体ががっちりできてしまってからでは遅いです。
流産手術をしようとしまいと、
妊娠終了(流産も含め)したらグロブリン、です。
投稿情報: suzan | 2009年9 月30日 (水) 08:50
私は若いころお恥ずかしい話ですが、3度の人口中絶経験があります。当時このようなことは一切知識もなく、その後24歳で息子を出産しました。確か妊娠中に1度、出産後にもう一回注射を打ちました。
息子は生まれてすぐ黄疸が出てしばらく保育器で光線治療を受けました。
今では元気に高校3年生になります。
もう出産の予定はありませんが、今年41になります。何かお役に立てればと思います。
投稿情報: tomokomoko | 2010年2 月12日 (金) 21:31