(投稿:by suzan)
Medeical Tribune vol.41,No2
出生前のアルコール曝露で問題行動
引き続き妊婦の飲酒予防対策を
[米インディアナ州ブルーミントン]インディアナ大学ブルーミントン校心理学・脳科学のBrian M. D'Onofrio助教授らは、近年疑問視されている出生前のアルコール曝露と小児の問題行動との因果関係を示すきわめて有力な知見が得られたとArchives of General Psychiatry(2007;64;1296-1304)に発表した。
破壊行動やいじめなど
今回の研究は母親4912例とその小児8621例を対象とした全米調査で、母親が妊娠中に中程度の飲酒をしていた小児では、問題行動を起こす傾向が強いことが示された。問題行動は意図的な破壊行動、いじめ、カンニング、うそをつくなどであった。また、母親が妊娠中にアルコールを摂取した日が1週間に平均1日増えるごとに、小児の問題行動が増加することも示された。
D'Onofrio助教授は「この研究の対象は母親1人につき、複数の小児の調査が可能であった。妊娠によっては、母親はアルコールを摂取したり、しなかったりしたため、出生前のアルコール曝露の環境が異なる同胞を観察することができた。したがって、問題行動に関する他の多くの説明を除外することができた」と述べている。また、、「研究の結果、妊娠中に頻繁にアルコールに曝露されていた小児は、曝露の頻度が少なかった小児に比べ、より問題行動を起こす傾向が強いことが明らかとなった」と報告し、妊婦の飲酒を予防する対策は引き続き必要であると指摘している。
注意力・衝動性にも問題
D'Onofrio助教授は「もっとも懸念されるのは、妊娠可能な多くの女性が妊娠していることを知らずに飲酒してしまうことである」と警告している。
同助教授らは、米国の全国青年縦断調査に登録している母親のデータを1979~94年は年1回、その後2004年までは年2回分析した。母親は妊娠ごとの薬物使用について回答した。また、1986年から同調査に参加している母親の小児のデータ「全国青年縦断調査の小児」についても合わせて分析を開始した。対象小児は4~11歳で、問題行動について年2回の分析が行われた。
同助教授らは問題行動を調査した上で、出生前のアルコール曝露と注意力・衝動性との関係についても評価した。
その結果、妊娠中にアルコールを摂取していた母親の小児には、注意力・衝動性の問題が多いことがわかった。一方、母親が妊娠中に摂取したアルコール量による同胞間の差は認められなかった。胎児期のアルコール曝露量に関わらず、同胞はいずれも注意力と衝動性について同程度の問題を抱えていた。
今回の研究は米国立精神保健研究所(NIMH)の助成を受けた。
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