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(投稿:by 僻地の産科医)
新たに47例のHIV感染妊婦症例
(平成18年度HIV母子感染全国調査 p26-29)
産婦人科病院二次調査は、病院一次調査でHIV感染妊婦の診療経験有りとの報告を得た35施設中34施設(回答率97.1%)より回答を得た。うち一次調査の回答ミスなどの無効回答だった4施設を除くと30施設(有効回答率96.8%)であった。症例数は、一次調査で平成17年10月以降の新規報告症例47例、平成17年10月以前の追加報告症例10例でのべ57例を得た。二次調査で新たに追加された5例を加え、一次調査の回答ミスや未回収など8例を削除し、合計57例中54例(94.7%)の有効回答を得た。このうち、平成17年度までに報告されている既報告例7例を除くと、平成18年度報告症例数は47例となった。 平成18年の傾向 一全国、日本人、帝王切開、HAART - 近年の傾向をみるため、平成18年妊娠転帰のHIV感染妊婦46例について解析した。都道府県別症例数は、関東甲信越ブロックで24例(52.2%)、その他全ての地方ブロックにおいて報告があった(表20)。 母子感染率が0.5%に HIV感染妊婦の年次別妊娠転帰と母子感染について検討したが、妊娠数に対する分娩数いわゆる分娩率は48.5~81.5%、平均63.6%であった。平成18年も63.O%とほぼ平均通りの分娩率であった。分娩数の90%前後が選択的帝王切開となり、近年においては緊急帝王切開、経膣分娩については年に1、2例報告される程度である。母子感染については、小児科からの報告で平成17年の選択的帝王切開による感染例が報告されたが、産科からの報告では平成12年の経膣分娩による感染側以降は報告されていない(表24)。 母子感染率は、選択的帝王切開では194例中1側(0.5%)、緊急帝王切開17例中1例(5.9%)、経膣分娩24個中5例(20.8%)(ただし、児の異常による受診を契機に母親のHIV感染と母子感染が判明した7例を除く)となり、全ての分娩様式について平成17年度までの感染率(選択的帝王切開0.6%、緊急帝王切開7.1%、経膣分娩22.7%)よりさらに低下した(表25)。 分娩様式別の分娩時妊娠週数は、選択的帝王切開は平均36.2週で35~37週に集中している。緊急帝王切開は平均35.4週で36週が最も多いものの、概ね30週~40週に分散している。経膣は平均37.9週で39週が最も多い。中絶は平均12.9週であったが初期中絶、中期中絶ともに一様に分散していた(図16)。 HAARTが主流 しかし組合せは多彩(略)
平成18年度産婦人科病院二次調査にて得られた47例の妊娠転帰は、選択的帝王切開26例、緊急帝王切開(陣痛発来により施行)1例、経膣分娩(助産院にて分娩)1例、中絶13例、妊娠中・不明が6例で、新規症例は43例、追加報告例は3例であった(表18)。
上記の18年度報告症例47例を前年度までの産科・データベースで378例に追加し、平成17年度調査時は妊娠中であったが平成18年度に妊娠転帰を報告された症例を更新し、最終的に選択的帝王切開219例、緊急帝王切開17例、経膣分娩35例、中絶103例、妊娠中・不明52例の計426例が、産科データベースとして新たに集積された(表19)。
HIV感染妊婦数の妊娠転帰別・年次別変動については、平成9年以降毎年30例前後が報告されてきたが、平成18年は46例と非常に多くの報告があった。近年は選択的帝王切開が半数以上を占めているが、緊急帝王切開、経膣分娩も数例ではあるがばぼ継続して報告されている(図15)。
妊婦の国籍は、日本23例(50.0%)、次いでブラジル6例(13.0%)、タイ5例(10.9%)と産科・小児科統合解析でも見られる近年の傾向通り、日本人の割合が非常に高く、平成17年と同様に半数を占めた。その他ラオス、ナイジェリア、ホンジュラスなど新たに報告された国もみられた(表21)。
分娩様式は、選択的帝王切開が27例と分娩例の大半を占め、緊急帝王切開(陣痛発来のため施行)1例、経膣分娩(助産院にて分娩)1例、中絶9例、不明8例となった。いずれの分娩様式についても母子感染例は報告されず、非感染および不明の報告のみであった(表22)。
抗ウイルス薬のレジメンでは薬剤について記載があった34例中、AZT単剤投与が1例報告されたほかは、全て3剤以上を用いるHAARTが行われていた。 レジメン別ではAZT十3TC十NFVが20例(43.5%)と主流で、次いでAZT+3TC+LPV/RTVが5例(10.9%)であった,その他のレジメンも7種類が報告されており、平成18年妊娠転帰の症例においてもレジメンは多岐にわたっていた(表23)。
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