以下、suzan先生からですo(^-^)o..。*♡ ありがとうございます。
MMJに載っていた「はしか流行」に関する文章です。
いい内容です。本当はもっと「柔らかい読みやすい」文章にして、多くの人、たとえば小さい子供を持つ方とか、これから妊娠出産を考えている若い方に読んでほしい!!
「麻疹の流行をめぐって」
本誌編集委員 松尾宣武・国立育成医療センター名誉総長
The Mainichi Medeical Journal,July 2007 Vol.3 no.7 p584
The mainichi Medeical journal Infomation
首都圏を中心に麻疹の流行が続いている。10代、20代の罹患者が多く、多くの大学が全学休講に追い込まれ、また地域の一般病院には、成人の麻疹患者が連日のように来院する異常事態となっている。わが国のメディアも逐次流行の動向を報道しているが、いずれもstereotypedで、問題の本質に言及した議論も、メディア自身が今回の事態を招いた責任の一端を負うという内省の議論も見当たらない。
今回の麻疹流行から、学ぶことは多い。第1に、予防接種は公衆衛(public health)の要であるということを国民各層が再認識する必要がある。公衆衛生という言葉は、今や死語になりつつあるが、公衆衛生は、国民の選択に委ねられる保健指針(ガイドライン)ではない。国民が等しく従うべき義務的行為である。多用な価値観を許容する米国社会においても、麻疹ワクチンなど重要な予防接種は国民の義務である。これらの証明書なしには、50州すべての州において、保育園、幼稚園、小学校への児童の入園・学は許可されない。わが国の麻疹の流行は、予防接種という公衆衛生の要を国民の選択に委ねた結果であることを直視しなければならない。
第2に、今回提起された問題は麻疹に限らない。各種予防接種を国民の選択に委ねた結果、麻疹と同様に、水痘、流行性耳下腺炎、風疹、百日咳等々、伝統的には子どもの流行病(childhood infectious diseases)とされた病気が乳児から成人まで、広い年齢層に全国規模で流行するリスクを予期する必要がある。麻疹単独の問題としてではなく、これら子どもの流行病のすべてに共通する問題として、予防接種率の向上に取り組む必要がある。
第3に、若い生殖年齢の夫婦の相当数は、麻疹免疫能を獲得していない、と考える必要がある。理論的に、この問題の最大の被害者は、幼弱乳児である。麻疹免疫能を欠如する母親から出生した乳児は、当然麻疹免疫能を持たない。乳幼児集団保育の普及によって、保育施設において低年齢で麻疹に曝露され、発症するリスクを持つ。また、大規模分娩施設では、麻疹潜伏期にある妊婦を介して、新生児麻疹が多発する可能性がある、いずれも重症麻疹の相対的リスクが高い。
第4に、麻疹ワクチン投与法や投与時期の問題がある。米国は、世界に先駆けて麻疹制圧に成功した国である。米国の麻疹対策の成功は、1989年に導入された2回ワクチン投与法によるところが大きいと考えられている。2回投与は、1回のワクチン接種者の5~10%に起こる免疫獲得の不成功(primary vaccine failure)例を対象とするものであり、米国モデルの導入に深くかかわった、Duke大学小児科、Samuel Katz名誉教授によれば、2回目のワクチン投与により、これら5~10%の不成功例の大半は免疫を獲得するという。また、ワクチン投与により獲得される免疫能は長期間継続するという(麻疹ワクチンは1963年に米国で導入された。したがって、初期接種者は40歳を越えているが、麻疹ワクチンによる免疫が生涯継続するか否かが明らかにされるには、さらに数十年の観察が必要である)。わが国は、国際的批判の高まりを受け、麻疹ワクチン2回投与法を、米国に18年遅れ、ようやく本年4月に導入した。政令改正により、投与は1回目1歳、2回目5~7歳と定められている。しかし、この規定はわが国の現状にふさわしいものであろうか。特に2回目の投与時期について、より柔軟なtimetableが求められるのではないか。低年齢で集団保育される子どもにとって、2回目の麻疹ワクチン投与時期を5~7歳まで先延ばしすることに合理的根拠は見いだし難いと思われる。
麻疹潜伏期にある旅行者が大型旅客機で世界を駆けめぐる可能性が高い現在、麻疹対策はもはや国内問題ではない。米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)やAAP(American Academy of Pediatrics)などの関係機関から麻疹の輸出国と名指しされ、麻疹対策の見直しを求められながら抜本的対策が遅れ、今回のように大きな流行をみたことは、わが国の公衆衛生の後進性を改めて世界に発信する結果となった。きわめて残念なことである。しかし、問題は麻疹にとどまらない。わが国の公衆衛生全般、さらにはリスクマネジメント全体の脆弱性を示す出来事が相次いでおり、しかも責任者が不在である。
筆者は、日本政府が、国際的水準のepidemiologyの素養を持つリスクマネジメントの真の意味の専門家の養成を誠実にはかることを提案したい。
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