助産所の安全性確保についての議論 ぽち→
ある産婦人科医のひとりごと 2007/03/15
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2007/03/post_d6f6_7.html
助産所ガイドラインですが、第7回「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」の中の資料にあります。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/07/dl/s0714-7b.pdf
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/07/s0714-7.html
このブログの2006/07/13助産所業務ガイドライン
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/07/post_d6f6_3.html
にもまとめがあります。
ところで院内助産院というと
AllAbout
http://allabout.co.jp/children/birth/closeup/CU20031231a/
山本詩子助産師さん、、、記事の横浜ふれあいホスピタルHPを久しぶりにみたら、産婦人科医がふたりいなくなって、白髪の産婦人科医になっていました。
医療の素人ですが、コメントをお許しいただきたいと存じます。
>そこでWHOの提言が出てくるわけで、助産師主導での同じ条件のグループの方が、安全であることが確認された、というやつですね。
ご紹介のサイトにある、WHO勧告には、そのような記載は見当たらないのですが。
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Joint Interregional Conference on Appropriate Technology for Birth (1985: Fortaleza, Brazil)
http://whqlibdoc.who.int/hq/1985-86/ICP_MCH_102_m02(s).pdf
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その提言の原題、発行年がわかりますと、以下で検索できるかと思います。
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Library database (WHOLIS)
http://www.who.int/publications/en/
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>繰り返しますが、日本の産科は、ほぼ崩壊しています。
そこまでは、いくらなんでも、と思います。例えば、以下のような状態ではないでしょう。
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Many mothers do not have access to modern health care services. It is estimated that 60-80% of births in developing countries occur outside modern health care facilities.
Traditional birth attendants : a joint WHO/UNFPA/UNICEF statement
World Health Organization.
http://whqlibdoc.who.int/publications/1992/9241561505.pdf
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WHOのいう、「助産師の活用」というのは、結局、産科医師の促成栽培のようにも思えますね。
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妊産婦の死亡は,費用のかからない簡単な方法で防止できるだけに,なおさら悲劇的である。感染症,失血,危険な妊娠中絶が死因の大部分を占める。これらはすべて,助産の技術を持つヘルスケアワーカーならば誰でも対処できる範囲内にある。感染症やショック,失血,痙攣などへの対処や,帝王切開といった外科的措置は,高度の医療技術や高価な医薬品を必要とするわけではない。
妊産婦死亡率:母親の命を救う:OECD Observer 日本語版
http://www.oecdtokyo.org/tokyo/observer/223/223-12.html
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>ここは「ローリスクの場合は助産師主導の方が、同等か安全」ということで話を進めます。
>話はそれますが、よく見かける「病院で産まないなら、搬送されるな。勝手に死ね」という意見は、病院という役割を放棄した幼稚な意見です。
>できる限り「自然に産みたい」「必要な時は病院で治療してもらいたい」というのは人間として当然の感情です。
「助産師の方が安全」なのに「搬送を受けろ」というのは...
産科医師の先生方は、助産院が病院に「紹介」することについては、特に反発はされていないかと思います。あくまで「搬送」はやめてくれ、というご意見でしょう。ローリスクであるなら、「搬送」は必要ないのではないでしょうか。
看護師が1年間助産師学校に通い、分娩10件の介助の実習をして、助産師国家試験に合格すれば助産師の資格が得られます。(※1下記、関連記事)
現在は、4年制の看護学部の中に数ヶ月間の助産実習が含まれていて、看護師国家試験と同時に助産師国家試験も受験できます。
ですから、助産師免許を取得した時点では、通常の看護師とほとんど変わりがありません。
五年、十年と実地でいろいろな経験を積んで、やっと一人前の助産師になれると思います。
しかし、中には、免許を取ってすぐに開業するような無謀な人もいるかもしれません。そうなると、何の経験もない全くの素人も同然で開業ということになってしまいます。
こんにちは。助産所のレベルのひとつのケースとしてこういう事例があるそうなので、こちらに参考にと紹介させていただきます。
http://d.hatena.ne.jp/guri/20070315/1173971272
さて、今日は県内の周産期救急に関しての集まりに顔を出してきました。
その中で助産所からの搬送例についての症例が出てきました。
41週破水後分娩停止。本人は母体搬送を希望したが「帝王切開されたら脳性麻痺になる」と説得されそのままクリステレルにて圧出分娩。
新生児仮死にて搬送されるが児は死亡。母体は産褥に発熱し、CRP32と子宮内感染が認められた。また会陰切開を行われており、創部離解。
我々からみれば、もはや犯罪的行為です。
全部が全部とは言いませんが、このレベルの助産所は少ない訳ではありません。
これで嘱託医を引き受けて欲しいと言われても、腰が引けてしまいます。
医療施設勤務の助産師にはもっとできる人もいるわけですから、もう少し開業助産師のレベルの底上げはできないものでしょうか。
これはCochrane(EBM=根拠に基づいた医療、の考えに厳格に基づこうとする文献データベースとして、コクラン・ライブラリは世界最大規模のもの)のReviewsにあります。
http://www.cochrane.org/reviews/en/ab000012.html
この研究はコクラン妊娠・出産グループ研究登録と8雑誌から検索したもの、2つの出版された会議録から検索した無作為化比較試験で方法論が吟味された、6研究(8677人)をまとめたものです。
(Plain language summary)
Home-like institutional birth settings reduce the chances of medical interventions and increase maternal satisfaction, but it is important to watch for signs of complications
Home-like birth settings are intended for women who prefer to avoid medical intervention during labour and birth, but who either do not wish or cannot have a home birth. The results of six trials suggest modest benefits, including decreased medical intervention and higher rates of spontaneous vaginal birth, breastfeeding, and maternal satisfaction. However, there may be an added risk of perinatal mortality.
(要約)
Home-like institutional birth setting(助産院という訳でよろしいでしょうか、以下助産院と訳します。)は、医療の介入の頻度を減らし、満足度が高いが、合併症への注意が必要である。
助産院は医療介入を分娩時に避けたいが自宅では産みたくないもしくは産めないという女性のためのものである。6個の研究の結果は医療介入を減らし、自然な経膣分娩の率を高める、母乳育児、母親の満足度などに関しやや利点(modest benefits)を示した。しかしながら周産期死亡の上昇の可能性がある。
(Main results)
Six trials involving 8677 women were included. No trials of freestanding birth centres were found. Between 29% and 67% of women allocated to home-like settings were transferred to standard care before or during labour. Allocation to a home-like setting significantly increased the likelihood of: no intrapartum analgesia/anaesthesia (four trials; n = 6703; relative risk (RR) 1.19, 95% confidence interval (CI) 1.01 to 1.40), spontaneous vaginal birth (five trials; n = 8529; RR 1.03, 95% CI 1.01 to 1.06), vaginal/perineal tears (four trials; n = 8415; RR 1.08, 95% CI 1.03 to 1.13), preference for the same setting the next time (one trial; n = 1230; RR 1.81, 95% CI 1.65 to 1.98), satisfaction with intrapartum care (one trial; n = 2844; RR 1.14, 95% CI 1.07 to 1.21), and breastfeeding initiation (two trials; n = 1431; RR 1.05, 95% CI 1.02 to 1.09) and continuation to six to eight weeks (two trials; n = 1431; RR 1.06, 95% CI 1.02 to 1.10). Allocation to a home-like setting decreased the likelihood of episiotomy (five trials; n = 8529; RR 0.85, 95% CI 0.74 to 0.99). There was a trend towards higher perinatal mortality in the home-like setting (five trials; n = 8529; RR 1.83, 95% CI 0.99 to 3.38). No firm conclusions could be drawn regarding the effects of staffing or organizational models.
(主な結果)
8677人の女性が関与した。どの研究も(医療機関から)独立した助産院は含まれていない。29%~67%の助産院に割り付けられた女性が分娩開始以前又は分娩中に標準的なケアを行う施設(今後産科と訳します)に搬送された。
助産院に割り付けられたものは以下のものに有意な増加がみられた。分娩時の無鎮痛・無麻酔(4研究;n=6703 相対険度(RR) 1.19 95%信頼区間(CI) 1.01~1.40)、自然な経膣分娩(5研究;n=8529 RR:1.03 CI:1.01~1.06)、膣や会陰の裂傷(4研究;n=8415 RR:1.08 CI:1.03~1.13)、次回同じ施設を選ぶ傾向(1研究;n=1230 RR:1.81 CI:1.65~1.98)、分娩時のケアへの満足度(1研究;n=2844 RR:1.14 CI:1.07~1.21)、母乳育児の開始(2研究;n=1431 RR:1.06 CI 1.02~1.10).
また助産院への割付られたものは以下のものに減少が見られた。会陰切開(5研究;n=8529 RR:0.85 CI 0.74~0.99).
助産院では周産期死亡率が高い傾向がみられた。(5研究;n=8529 RR:1.83, CI:0.99~3.38).
スタッフや組織の効果に関する確固たる結論は導き出せなかった。
(Authors' conclusions)
When compared to conventional institutional settings, home-like settings for childbirth are associated with modest benefits, including reduced medical interventions and increased maternal satisfaction. Caregivers and clients should be vigilant for signs of complications.
(著者の結論)
助産院と産科を比較すると、助産院は医療の介入を減らし、母親の満足度を高めるという点で、やや利点がある。医療関係者と患者は合併症に注意を払う必要がある。
この研究で興味深いのは、対象となっている全ての助産院が独立した助産院ではないことです。また29%~67%が分娩開始前もしくは分娩中に産科に転送になっています。
そして統計的有意差がぎりぎりないとはいえ、産科に併設された助産院でも約2倍の周産期死亡率であるということです。
やはり統計上も少なくとも助産院が産科より安全ということはないのではないでしょうか。
間違いがありましたら、申し訳ありませんが訂正してください。
VBACに関してですが、平成16年10月『助産所業務ガイドライン』で、産婦人科医が管理する分娩になっています。
平成17年11月1日から、助産所賠償責任保険にてん補しない損害として下記の3項目が追加されました。但し緊急時の対応に関してはこの限りではありません。
1.骨盤位、横位、双胎、早産
2.分娩誘発・促進目的の薬剤の使用
3.帝王切開の既往
上記3項目に関し、社団法人日本助産師会として、助産師独自の対応は、違法としています。
http://www.midwife.or.jp/03_news/03_01_honbu/03_01_12.html
ってことで、日本助産師会が違法と言っていますので・・・。でも、VBACなんてやる助産師は年配の産婆さんで、ガイドラインなんて言葉もしらないんじゃないですかね・・・