産婦人科医を増やす、3本柱のうちひとつ、研修医さんをいかにひっぱりこむか
(産婦人科の場合、他科からの転科はほとんどないものですから!)
みんなで考えるコーナーです..。*♡ とはいっても最後の欄、ムリですよ~!!がああ!(涙ぐましいと笑ってやってください)ではいきます!
研修医の意識調査 (アンケート調査より)
(日本産婦人科医会報 第59巻第1号No.682 p14-17)
昨今の産婦人科医の減少・高齢化は、全国各地で出産を取り扱う施設の減少をきたし、さらには、地域の中核的病院からの産婦人科医の引き揚げという状況を生み出している。その結果、住民は大きな不便を余儀なくされている。
厳しい労働環境や医療訴訟の増加が若手医師から産婦人科専攻を敬遠される大きな原因と思われるが、助産師不足がさらに悪影響を与え、出産を扱う施設の減少に拍車をかけた。
そのような中、平成16年度より新医師研修制度が発足し、臨床に従事する医師は臨床研修指定病院での2年間の臨床研修が義務付けられた。18年4月、初期研修を終えた医師が2年ぶりに大学病院等の産婦人科に勤務することとなったが、本年度、全国の大学付属病院の産婦人科に入局した医師は250名を割り込み、2年前と比較して、約100名の減少となった。そのような状況では満足できる産婦人科診療や研究ができず、さらには教育や地域医療へも悪影響を及ぼすことは明白である。
そこで、医療対策委員会では、研修中の初期研修医を対象に、産婦人科を研修しての感想や、産婦人科診療に対する意識等についてアンケート調査を実施し、若手の産婦人科医の増員を図る一助となるべく、考察を加えた。
アンケート結果
調査概要
調査は平成17年12月~18年3月の間、全国の臨床研修指定病院の指導責任者にアンケート用紙を送付し、研修医に記入していただき、日本産婦人科医会に直接返送してもらった。1211名の研修医より回答が得られた。
回答者の属性(表1,2)
日赤、済生会病院等の公的病院での研修医からの回答が最も多く600名、49.5%と半数を占め、大学の付属病院、私立病院の研修医からの回答が夫々22%程度であった。
男性が718名、59.3%、女性が386名、31.9%であった。年齢は24歳~48歳まで幅広いが、26~28歳が大部分を占めた。174名、14.4%の研修医が既婚者であった。
産婦人科を研修しての感想
「産婦人科を研修してためになりましたか」の問いに対して、50.5%の研修医は大いにためになったと回答し、少しためになった人が40%、あまりためにならなかった人は5%であった。(表3)
産婦人科を研修してどのように思いましたか」の問いに対しては、314名、25.9%の研修医が大変興味を持ったと答え、661名、54.6%の研修医が少し興味を持ったと答え、双方で約80%の研修医が産婦人科医療に興味を感じていた。(表4)
「産婦人科で興味を感じた分野はどんなことでしたか(複数回答)」に対しては、周産期に興味を感じた人が最も多く、68%であり、以下、腫瘍、新生児、内分泌の順であった。(図1)
「研修の前後で産婦人科に対する意識が変わりましたか」の問いに対して、57.5%の人は研修前より興味が増したと答え、興味が薄れた人は5.6%であった。(図2)
産婦人科専攻希望の有無について
研修2年目の産婦人科研修を終えた時点で、約89%の研修医では専攻科が決まっていた。未定は10.7%に過ぎなかった。10.9%、132名が産婦人科専攻を希望し、迷っている人が77名、6.4%であった。(表5)専攻したいと思った人の割合は、公的病院、大学病院、私立病院の順に多かった。
―男女別産婦人科専攻希望の状況― (表6)
産婦人科専攻を希望した人の割合を男女別にみると、男性の6.3%が専攻を希望したのに対し、女性では20.5%もの人が専攻を希望した。このことから考えても、産婦人科女性医師に対して、育児や家庭との両立などの対策が今後ますます重要になることと思われる。
―研修前後の意識の変化と産婦人科専攻との関係―(表7)
産婦人科研修前後の意識の変化と産婦人科専攻の希望との関係をみると、研修前より興味が増した人では、その16.2%が産婦人科専攻を希望したが、研修前と同じ人では3.9%、研修前より興味が薄れた人では2.9%であった。当然のことながら、研修においては、産婦人科に興味を抱かせることが重要である。
―産婦人科専攻を迷っている人の理由―(表8)
産婦人科専攻を迷っている人に「どのような状況であれば産婦人科を専攻したいと思いますか」との問いに対しては、「育児や家庭生活と両立できれば」が最も多く50.6%を占め、以下「仕事がきつくなければ」「安定した収入が得られれば」の順であった。迷っている人が女性に多い結果と思われる。これを男女別にみると、男性では「安定した収入が得られれば」が60.5%と最も多い理由であるが、女性では「育児や家庭生活と両立できれば」が60.5%と断然多かった。以下「仕事がきつくなければ」「安定した収入が得られれば」であった。
迷っている人のその他の代表的な意見は、産婦人科診療の特殊性に関するもの、指導体制に関するもの、他科との比較、医療訴訟に関するものなどが見られた。
―産婦人科を専攻したいと思わない理由―(表9)
産婦人科を専攻したいと思わない理由についての問いに対しては、「他にやりたい科がある」が90%と最も多いのは当然としても、二番目に多いのは「医療訴訟が多い」の23.8%であった。無過失保障制度など、この問題への対応も早急に必要と思われる。
産婦人科専攻を希望しないその他の代表的な意見は、「お産があるから」「人工妊娠中絶」など産婦人科診療そのものに関すること、「産婦人科は女性のほうが向いている」など性に関すること、勤務体制・指導体制に関すること、訴訟に関することなどであった。
産婦人科専攻希望者の今後の予定(図3)
産婦人科専攻を希望した132名中、大学の医局に入局を希望した人は53%に過ぎず、その他は大学以外の研修病院での後期研修を希望している。大学病院での研修医からの回答が少なかった結果とも思われるが、初期研修を終えて、産婦人科を専攻した多くの医師が、後期研修と称して各地の病院へ散らばっている状況がうかがわれる。このことは産婦人科医師の集約化を考える上で今後大きな問題となりそうである。
「指導医の仕事の状況を見てどのように思いましたか」の問いに対しては、「大変素晴らしいと思い魅力を感じた」「白分も少しでも戦力になりたいと思った」と、指導医に対して好意的に感じた人が各々40%程度であった。「相当仕事がきつそうに見えた」人が34%程度見られ、特に私立病院では40%近くの研修医がそのような感想を抱いている。また、「あまりに忙しそうなので、いろいろ聞くのに遠慮がちになった」と答えた人が10%程度おり、今後検討が必要である。その他の指導医に対する感想としては、「やりがいを感じて仕事をしている」「患者思いの姿勢」「忙しくても生き生きとしている」など肯定的な意見が見られた一方、「指導が不十分」「体力的にも精神的にも余裕がない」など否定的な意見も見られた。
―指導医への感想と産婦人科専攻希望との関係―(表11)
「指導医に魅力を感じた」人では、その17.8%が産婦人科専攻を希望したが、「相当仕事がきつそうに見えた」人では9.7%、「あまりに忙しそうなので遠慮勝ちになった」人では6.6%であり、指導医のあり方が研修医の産婦人科専攻に影響を与えていることが窺えた。
若手産婦人科医を増やすために
以上のアンケート調査の結果を踏まえて、今後産婦人科医を増やすための方策を考えると、まず組織的な対応としては、
1.女性の産婦人科専攻希望者が多いことを考慮し、育児や家庭生活と両立できる体制の早急な整備
2.医療訴訟の増加が産婦人科専攻を避ける理由に挙げた研修医も多く、無過失保障制度の設立や、訴訟が起きた際の紛争処理機関の設立
3.充分な研修ができなかったとの意見もあり、初期研修制度が発足して初めて研修修了者が出た本年、研修の内容や、指導体制についても検討が必要
4.産婦人科研修終了時には大部分の研修医が専攻科を決定している現実をみると、産婦人科の研修を一年目にするのも一方
次いで研修指導医の心がけとしては
1.忙しくても研修医の面倒は十分に見ること
2.仕事がきつい、寝不足、収入が少ないなどnegativeなことを言わない
3.自慢しない、他科をさげすむようなことは禁忌
4.疲れていても生き生きとした姿を見せ、大変なことよりやりがいを強調する
5.患者さんは男性医師を嫌っているわけではない。患者さんの訴えを良く聞き、本人の身になって診療に当たってくれる医師を望んでいることを指導する
6.産婦人科の魅力を教える
以上、全国の初期研修医に対して行ったアンケート調査の結果から、研修のあり方、若手産婦人科医を増やすための方策について検討した。
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