裁判の無罪判決例が報告されていましたo(^-^)o ..。*♡ ぽち→
とてもわかりやすい内容でしたので、あげさせていただきます!
みなさまが診療を行ううえで参考になればと存じます!(最下段に新聞記事)
裁判例情報 「無罪報告」 多くの会員の皆様もご存知の事かと思いますが、平成19年2月にある医療事故の裁判が結審いたしました。この事故は、現在問題になっております医療事故における司法の介入に対し、多くの教訓を与えてくれたものと思っております。 「無罪報告」 後藤・太田・立岡法律事務所弁護士 中村勝己 1.はじめに 2.正式裁判を請求した経緯 3.行政処分 4.正式裁判の経過 5.beyond reasonable doubt 6.民事事件 7.最後に 【参考記事】 医療事故:過失認めず産婦人科医に無罪 名古屋地裁 裁判では死因となった子宮頸(けい)管裂傷の有無が争点となったが、伊藤新一郎裁判長は判決で、「証人の医師の『裂傷の存在が分からなかった』という証言もあり、裂傷が生じていたと認めるには疑いがある」と指摘。大量出血後、高度の医療機関へ転送しなかった点については「転送したとしても確実に救命出来たとは言えず、刑法上の注意義務を怠った過失は認められない」と述べた。 桑山被告は00年8月31日、福田さんが男児を出産する際、子宮頚管に裂傷を負ったことを見落とし、さらに設備の整った病院に搬送しなかった過失から、同日夜に出血性ショックで死亡させたとして起訴された。同被告は01年11月に書類送検され、名古屋区検は03年8月、略式起訴としたが、同被告は略式命令を不服として、正式裁判を請求していた。一方、福田さんの遺族が桑山被告らに損害賠償を求めた民事訴訟で、名古屋地裁は昨年9月、子宮頚管裂傷は認められないとしたが、高度医療機関への転送義務を怠ったなどとして、桑山被告に約7700万円の支払いを命じ、被告側が控訴している。 ▽桑山被告の話 主張が認められ、ほっとしている。医療の不確実性を裁判所に理解してもらった判決だと思う。 ▽名古屋地検の津熊寅雄次席検事の話 主張が認められず残念。判決内容を詳細に検討した上、適切に対応したい。 産婦人科医に無罪判決 出産直後の死亡事故で名古屋地裁 判決によると、主婦は00年8月31日午前、同医院に入院。男児を出産した直後に大量に出血し、同日夜に出血性ショックで死亡した。公判では、子宮の出口にある子宮頸管(けいかん)が裂けていたのが原因で 出血性ショックに陥ったのかどうか▽施設や人員が整った大病院への搬送を 怠ったと言えるか――が主な争点だった。
(愛知医報 平成19年7月1日 第1809号p16-17)
結果責任だけを問われれば医療現場は混乱します。無過失でも事故は起こり得ます。医療には不確実性がある事を、ある程度認めていただいた判例かと思います。司法に対し安易な妥協は、今後の医療事故に対する問違った方向性を示すものと考えます。
今回の事件を無罪に導いて下さいました愛知県医師会顧問弁護士の中村勝己先生に事件の経過をまとめていただきました。医療事故に対する我々会員の心構えの参考になればと思いますのでご一読ください。中村弁護士の多大なご尽力に対し、県医帥会医療安全対策委員会を代表して、深くお礼を申し上げます。
平成12年8月、名古屋市内の産婦人科医院で発生した分娩後出血による母体死亡で、産科医が業務上過失致死罪に問われていた刑事事作について、平成19年2月27日、名古屋地方裁判所で無罪判決が言渡されました。検察官から控訴されることなく、無罪が確定しました。
事案は、分娩後2時間弱が経過した頃から多量の出血が始まり、ショック状態に陥り、治療のかいなく、死亡に至ったというものです。捜査機関は、司法解剖に基づき頚管裂傷が出血原因であるとの前提で捜査を進めていました。そして、罰金刑を前提として略式起訴し、一旦は、罰金50万円の略式命令が出されました。
しかし、出血経過からみて、頚管裂傷の症状とは一致しません。分娩後2時間弱が経過してから急激な病態の変化に陥っていることとも別の原因を想定させます。そこで、略式手続の記録を取り寄せて検討しました。愛知県産婦人科医会の先生方のご意見を伺い、医学的に争う余地があると考えました。
罰金50万円なので、これを払って早く事件を終了させてしまうという選択肢もあるのかもしれません。しかし、罰金50万円であっても、業務上過失致死として有罪が確定すれば、おそらく業務停止などの行政処分を受けることになります。当時の同種事案の処分例から見て、軽くて6ヶ月、重ければ2年程度の業務停止が科されることを予測しました。業務停止を受ければ、診療を行うことはもとより、診療所の開設者になることもできません。勤務医を雇用して、診療所を続けることもできません。診療所の開設者を変更するか、診療所を一時的に閉鎖するよりありません。開業医の先生にとって、長期の医業停止を受けることは、診療所の閉鎖に繋がりかねない重大な問題でもあります。そのため、争うべき事件は、きちんと争っておくことも必要ではないかと思います。
さらに、医療機関側弁護士の立場から言えば、医療は少なからず人体への侵襲を伴うものですし、常に危険を伴うものですので、医療行為に対して安易に刑事司法が関与することには疑問があります。萎縮診療や保守的医療に繋がりかねません。仮に、捜査機関が医療事故の問題に介入するとしても、相応の医学知識を獲得し、かつ医療現場の実情を認識した上で介入すべきではないかと考えています。安易な刑事司法の介入に対する警鐘を嶋らす意味でも、争うべき事件は争っていく必要があると思います。
裁判では、
1)頚管裂傷を見落とした過失
2)適切な輸液・輸血を怠った過失
3)止血ができないと判明した段階で高次医療機関に搬送しなかった過失
が争点として争われました。
裁判では、1.2.3の過失について、医学文献の提出、鑑定意見書の提出、証人尋問等の証拠調べが行われました。特に2・3については、分娩後2時間弱経過してからの急激な病態変化について、羊水塞栓症、DICショック、silent rupture等様々な可能性が
考えられるところであり、速やかに輸血を開始したとしても、あるいは高次医療機関に搬送したとしても、救命が確実であるとは言えない旨を主張してきました。
判決では、1ないし3の過失がいずれも否定されました。刑事裁判では、合理的な疑いを差し挟む余地がないほど救命が確実であったと評価される場合でなければ(beyond reasonable doubt)、有罪として処断することはできません。今回の判決は、この刑事裁判の大原則を、厳密に適用し、無罪の判断に至ったものです。
刑事の正式裁判が始まった後に、民事の損害賠償請求の裁判が提起されました。刑事裁判で提出された証拠を、民事裁判に流用する方法で審理が進められました。
民事では、刑事の判決に先立って、産科医の過失を認め、7,700万円余りの損害賠償を認める判決が言渡されました。結果として、民事と刑事で判決内容に齟齬が生じていることになります。
民事の判決では、DIC等を起こしていたか否かについて医療機関側による証明が不十分であり、医師は、血圧低下の報告を受けた時点で、自ら診察することなく直ちに高次医療機関に搬送すべきであり、この時点で搬送すれば救命できたと認定しています。民事事件は現在、控訴して争っています。
当事者の先生には、我々の弁護活動に理解を示していただき、忍耐強く見守っていただきました。また、本事件で弁護活動を行う上では、愛知県産婦人科医会の先生方に多大なご協力をいただいただけでなく、産科や救急の分野の大学教授、名誉教授の先生方に鑑定書を作成していただき、また、法廷でご証言いただくなど、多くの先生方にご協力をいただきました。これらのご協力がなければ、到底、無罪を勝ち取ることは困難だったでしょう。
この紙面をお惜りして、改めて御礼を申し上げたいと思います。
毎日新聞 2007年2月28日
http://megalodon.jp/?url=http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070228k0000m040157000c.html&date=20070228230031
出産時の処置ミスで名古屋市中川区の主婦、福田紋子さん(当時31歳)を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた同市港区の医師、桑山知之被告(48)に対し、名古屋地裁は27日、無罪(求刑・罰金50万円)を言い渡した。
asahi.com 2007年02月27日
http://www.asahi.com/national/update/0227/TKY200702270293.html
名古屋市港区の産婦人科医院で00年、出産直後の主婦(当時31)が死亡した事故で、医療ミスがあったとして業務上過失致死の罪に問われた医師桑山知之被告(48)の判決公判が27日、名古屋地裁であり、伊藤新一郎裁判長は無罪(求刑罰金50万円)を言い渡した。
【参考】
コメント