(関連文献→) 妊婦さんのスクリーニング検査
以前、HIVについて ぽち→
HIVとともに産み育てる(2)「陽性」、実は「陰性」9割超
2007年5月16日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070516ik03.htm
の記事がありましたが、最後の部分の
> 「こんな思いをする人を二度と出さないでほしい」と話している。
がお約束で医療不信をあおっているようにしかみえずに
ぎぃぎぃ怒っていたのですけれど ..。*♡
ま、怒っていても仕方ないから、HIVスクリーニング検査について
日本産婦人科医会の黄色い紙をひいてみましたo(^-^)o ..。*♡
ちなみに最後の部分に読売の記事のアドレス並べておきます。念のため。
では、どうぞ!
妊婦HlVスクリーニング検査における偽陽性の発生率とその対応
金沢大学医学部産婦人科 山田里佳
(日本産婦人科医会 平成17年8月1日号 p10-11)
はじめに
わが国のHIV感染者数は、妊婦感染者も含め増加傾向にあります。また、妊婦のHIV罹患率は約O.01%ですが、今後さらに増加する危険性が指摘されています。HIV感染妊婦に母子感染予防のための措置がとられなければ、約25~30%の児にHIVが感染すると言われております。幸いわが国では、妊娠中から予防措置を施行することが可能であり、HIV母子感染率は約1%もしくはそれ以下と低率です。妊娠初期より対策を講じるためには、妊娠初期検査の一環としてHIVスクリーニング検査を行うことが極めて重要です。HIVのみならず他の多くのスクリーニング検査でも偽陰性や偽陽性が発生しますが、特にHIVではたとえスクリーニング検査といえども、陽性と報告された妊婦の精神的重圧感は計り知れません。
問 HIVスクリーニング検査はどのような種類がありますか?
答 スクリーニング検査には、主に抗体検査が用いられています。抗体検査としては、酵素抗体法(ELISA)、粒子凝集法(PA)、免疫クロマトグラフィー法(IC)、即日検査法であるイムノクロマト法があります。最近では、ウインドウ期間(後述)の短縮を目的に、抗体抗原同時検査法を使用している施設も増えてきました。
問 検査のウインドウ期間とは何ですか?
答 HIV感染の初期で、血液中のウイルス量や抗体の量が少ないため、感染していても検査結果が陰性となる期間のことです。現在の抗体検査では通常数週間で抗体が検出されますが、確実性を重視し2ヵ月間と考えられています(表1)。
問 スクリーニング検査偽陽性とは?
答 実際はHIVに感染していないのに、HIV抗体検査で陽性の結果になることです。HIV抗体検査キットの感度はほぼ100%です。HIVに感染しているのに抗体検査で陰性の結果になることは、ウインドウ期間を除いてまずありません。これに対し特異度は99~99.8%程度と若干低いため、本来陰性なのに検査の結果が陽性となることがあります。
問 妊婦HlVスクリーニング検査における偽陽性の頻度は?
答 検査方法(問1参照)によって頻度が異なります。現在繁用されている抗体検査ではO.3%程度、迅速検査では、血清や血漿を用いた場合で約1%、全血で約O.5%の偽陽性が発生します。また抗体・抗原同時検査法の偽陽性の頻度は、抗体検査よりもやや高いと言われています。
昨年度厚労省エイズ対策研究事業「HIV感染妊婦の早期診断と治療および母子感染予防に関する臨床的・疫学的研究」班は、125施設のエイズ拠点病院と22施設の一般病院を対象に、妊婦HIVスクリーニング検査の偽陽性に関するアンケート調査を行いました。
2003年1年間の対象施設におけるスクリーニング検査総実施数82,290件中、スクリーニング検査陽性例は84件でした。うち確認検査も陽性の感染例(=真の陽性)は7件のみで、残りの77件は確認検査陰性の偽陽性例でした。したがって、妊婦HIVスクリーニング検査における偽陽性の発生率は約O.1%(77/82,290)となり、一般被検者を対象とした結果とほぼ同等の結果でした。
問 陽性的中率とは?
答 スクリーニング検査の結果が陽性の集団のなかで、真の陽性者(=感染者)の占める割合をいいます。スクリーニング検査の的中率は、その検査の感度と特異度および被検者集団における検査対象疾患の有病率によって変化します。例えば表2に示しますように、1,OOO人の集団に対し特異度99.8%の検査法を用いてスクリーニングを行った場合、O.2%すなわち2例の偽陽性(False Positive)が発生します。もし、この集団のHIV罹患率(HIV Prevalence)が10%であれば100人の感染者が陽性(True Positive)となり、この集団における検査法の陽性的中率(Positive Predictive Value)は98%[100/(100+2)]となります。同様に罹患率が1%であれば10人の感染者が陽性となり陽性的中率は83%[10/(10+2)]となります。また罹患率が0.1%であれば、感染者の陽性例は1人のみであるのに対し偽陽性は2例で、陽性的中率は33%[1/(1+2)]まで低下します。
問 妊婦HlVスクリーニングで陽性的中率はどれぐらいですか?
答 私どもの厚労省研究班で行いました調査によれば、スクリーニング検査における陽性例は84件で、うち7件が真の陽性(感染例)でした。したがって妊婦集団を対象としたHIVスクリーニング検査の陽性的中率は、わずか83%(7/84)と低い値になります。すなわち、妊婦HIVスクリーニング検査で10人が陽性となっても、真の陽性者(感染者)は1人以下ということです。
問 スクリーニング検査で陰性であれぱ感染していないと言えますか?
答 抗体検査の感度はほぼ100%ですので、感染のリスク(性行為)から2ヵ月以上経過し、ウインドウ期を過ぎて陰性であれば感染していないと言えます。
現在の抗体検査法では通常感染後1ヵ月程度(2ヵ月でほぼ全例)で抗体が検出されます。妊婦は妊娠判明後(性交後約3~4週間以降)に来院することが多いので、その時点での抗体検査が陰性であれば感染の可能性は極めて少ないと考えられます。しかし2ヵ月以内に感染のリスク(他のパートナーとの性行為など)があった場合には、ウインドウ期を過ぎた後での再検査も必要と考えられます。
問 スクリーニング検査が陰性だった場合、結果を説明する上での留意点は?
答 HIV抗体が検出されず、2ヵ月前までの時点ではHIVに感染していなかったと言えることを説明します。2ヵ月以内に感染のリスクがあった場合は、2ヵ月以上経ってから再度検査を勧めます。夫またはパートナーがHIV陽性の可能性がある場合には、パートナーの感染有無を確認し、陽性の場合には再度検査を受けるよう勧めます。一般妊婦の場合、初期検査でHIV陰性であれば特に問題はないと言えます。
問 スクリーニング検査で陽性の場合、結果を説明する上での留意点は?
答 スクリーニング検査の結果が陽性であったこと、偽陽性(HIVに感染していない)の可能性が高いこと、正確な診断のためには確認検査が必要であることを説明します。具体的な数字を用いて説明することで、確認検査の必要性が十分に伝わると思われます。
〔スクリーニング検査でHIV陽性となった100人の妊婦さんがいるとします。そのうち確認検査をして、本当に陽性である妊婦さんは1O人以下です。検査の精度は高いのですが、日本ではまだ妊婦でのHIV罹患率がとても低いためこのようなことが起こります。〕
スクリーニング検査陽性だった場合、確認検査の必要性を十分理解していただくために、時間をかけ確認検査の必要性を説明し、妊婦の心理的負担を軽減するよう心がけます。確認検査の結果が陽性であれば、HIV感染者と診断できます。また、以下は日本エイズ学会から推奨されない方法ですが、スクリーニング陽性妊婦の心理的負担の軽減にはとても有効と思われます。すなわち妊婦に結果の説明をする前に、スクリーニング検査で使用したHIV陽性の血液検体を用い、あらかじめ確認検査を行うことです。
多くの産科施設で妊娠初期検査の結果を伝えるのは3~4週間後です。スクリーニング検査陽性例に対し、この間に検査センターに残っている血液検体を用い、確認検査を依頼し結果を得ることが可能です。しかし、日本エイズ学会では、確認検査に際しスクリーニング検査とは異なる検体を用いるように推奨しているので、この方法で確認検査が陽性であった場合には、確認検査が再度必要になります。またHIV陽性である可能性が高いので、エイズ拠点病院への紹介も考慮した方が良いでしょう。
問 確認検査はどのように行えばよいですか?
答 確認検査として、抗体価精密検査(ウエスタンブロット法)と核酸増幅検査(RT-PCR法)を施行している施設が多いようです。通常2週間以内に結果が判明します。
【読売新聞の特集】
HIVとともに産み育てる
(1)「陽性」妊婦健診で衝撃
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070515ik06.htm
(2)「陽性」、実は「陰性」9割超
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070516ik03.htm
(3)感染児の支援 病院中心
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070517ik0c.htm
(4)陽性女性の会で情報交換
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070518ik0a.htm
(5)恋愛、結婚あきらめない
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070521ik10.htm
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