分娩取りやめ105病院 昨春以降 自治体、対策急ぐ ぽち→
朝日新聞 2007年3月25日朝刊一面
朝日新聞 2007年3月25日朝刊一面
慢性的な産科医不足の中、この一年間にお産の取り扱いを休止したり、休止する方針を決めたりした病院が全国で105ヵ所に上ることが、朝日新聞の全国調査でわかった。分娩を扱っている病院の約8%にあたり、過酷な勤務状況などから、勤務医の産科離れがさらに 進んでいる実態が鮮明になった。深刻な事態を受けて、医学生・研修医の優遇策や離職した女性医師の復帰支援を打ち出す自治体も急増している。
全都道府県の担当者に分娩の休止病院や医師確保策を尋ねるアンケートを送付。回答を基に電話取材して集計した。
06年4月以降、お産の取り扱いをやめたのは77病院で、3月末で休止するのは22病院。ほかに6病院が新年度中にお産をやめる。05年12月時点でお産を扱っていた1273病院(日本産科婦人科学会調べ)の8.2%がさらに減ることになる。
内訳は自治体立が45ヵ所で最も多く、民間27、日本赤十字、労災など公的病院25、国立病院機構7、大学付属1の順。都道府県別では北海道の9ヵ所が最多で、神奈川・兵庫の7ヶ所、千葉の6ヶ所、福島・新潟・山梨の5ヶ所と続く。
主な休止理由としては、人員不足に陥った大学の医局による引き揚げ▽開業や定年で退職した医師の後任が不在▽医師1人で分娩を扱うリスクの回避などが目立った。
「産科危機」が広がる中、厚生労働省は、医師の負担軽減のため、近隣病院の産科医を1カ所に集める「集約化」計画を年度内に策定するよう都道府県に求めている。だが、医師の退職が相次ぐほか、産科がなくなる地域の反発もあり、大半の自治体で具体的な計画づくりが進んでいない。「必要なし」「不可能」と結論づけた県もある。
その一方で、当面の医師確保策に知恵を絞る自治体が増加。15府県が新年度予算で、医学生や研修医に学費などを貸しつけ、地元で一定期間勤務すれば返済を免除する修学資金貸付事業や奨学金制度を新設・拡充しており、同様の制度は計33府県に広がる。うち19府県が産科や小児科など医師不足に悩む診療科に制度の対象を限定したり、金額を上乗せしたりする。
産科や小児科に多いとされる女性医師に狙いを絞り、子育てなどで離職した医師向けの職場復帰研修を開催したり、短時間労働を促進する制度を導入した病院に補助金を出したりする施策も19府県で新年度から開始され、計26府県に増える。助産師が病院で正常産を扱う「院内助産院」のモデル事業や、妊産婦の相談に乗る助産師外来の開設など、助産師の活用策についても、9県が4月から始める見通しだ。
さらに、近隣に出産できる病院がなくなった妊婦や家族向けの待機宿泊施設の運営事業(青森県)▽産科医の負担軽減のために事務を補助する「医療クラーク」の雇用助成事業(静岡県)▽医師不足が深刻な県立病院の勤務医の手当増額(三重県)▽2年以上公立病院に勤めた医師の海外研修費負担(兵庫県)、などの独自策を講じる例も増えている。
お産空白地 広がる一方
朝日新聞 2007年3月25日朝刊32面
お産を扱う病院の減少が一向に止まらない。厚生労働省や関係学会は、妊婦の急変に備えて帝王切開を30分以内に行えるよう、医療施設同士の連携を求めている。だが地方では、通院・搬送に片道2時間かかる地域が増えている。
三重・和歌山・奈良県にまたがる紀伊半島南部。ここに「分娩施設の空白地」が広がりつつある。年400件のお産を扱う和歌山県新宮市の市立医療センターが2月、分娩を10月に休止すると発表した。
「えっ、じゃあ、どうしたらいいの」
奈良県十津川村に住む妊娠4ヵ月の女性(25)は同センターでの健診の際、転院を勧められて絶句した。今でも通院に車で1時間強かかる。
主治医が示した選択肢は三つ。
車で2時間の三重県御浜町・紀南病院(←この病院名間違ってないかな?まぁいいや)。2時間半の奈良県橿原市・県立医大病院。峠道だが約1時間半の和歌山県田辺市・社会保険紀南病院。
「どこも遠すぎる。不安です」
センターのお産休止は、産科医2人のうち1人が3月末に異動することがきっかけだ。9月までは代診でしのぐが、後任は決まらない。石丸将之・産婦人科部長は「できれば1人でも分娩を続けたいが、安全な医療が確保できない以上、やむを得ない」と打ち明ける。
「集約化」、ベッド減った
「自宅から病院まで123㌔、車で2時間。臨月の毎週健診は本当につらかった」。今月3日、北海道根室市で開かれた集会。釧路市の病院で昨秋、次女を出産した女性(33)が訴えた。健診の送り迎えや長女(3)の世話のため、夫も長く仕事を休んだ。
市立根室病院が昨年9月に分娩をやめ、市内に産科はなくなった。主な引受先の釧路市でも産科の減少が進む。今月末に釧路労災病院(分娩年500件)、4月に足立医院(同250件)が相次いでお産業務を休止。中核病院の釧路赤十字病院が労災病院などから産科医3人を受け入れ、新年度から9人体制で従来の1・7倍、年間1600件を担う。
ただ産婦人科のベッド数は46床で変わらない。産後健診で労災病院を訪れた市内の主婦(36)は「集約化されて態勢が整備されるかと思ったが、全体では医師もベッドも減る。病院で妊婦が待たされる時間も増えるだけ」と漏らす。
綱渡りの「連携」
「緊急避難的な連携で、かろうじて持ちこたえている状態」。東京都内で21日に開かれた産科婦人科学会の医療提供体制検討委員会。信州大産婦人科の金井誠講師が長野県南部のお産状況を報告した。
長野県内で分娩を扱っている病院・診療所は昨年12月現在で51施設。5年間で25%減った。今年に入ってさらに1病院が分娩を休止。3病院で分娩の受け付け制限が予定されている。産婦人科医の数も5年で27人減り、162人になった。
県南部では、6施設で年1800件のお産を扱っていたが、05年夏から1年間で3施設が分娩を中止。宙に浮いた年850件に対処するため、残りの病院と診療所が連携せざるを得なくなった。
金井講師は訴えた。
「今後2年間に県内の女性医師26人の半数が、育児などのためフルタイム勤務が不可能になる。早急に医療体制の再構築を進めねばならない」
(contaさまからの情報で、違うバージョンがあるらしいです!以下contaさま版です..。*♡)
広がるお産空白区 通院片道2時間 市挙げ医師募集
お産を扱う病院の減少が一向に止まらない。厚生労働省や関係学会は、妊婦の急変に備えて帝王切開を30分以内に行えるよう、医療施設同士の連携を求めているが、北海道老部などのお産「空白」地域では、片道2時間の通院、搬送が常態化する。母子の安全をどこまで担保できるのか。産科医療の立て直しに猶予はない。
「勤務産婦人科医に新しいライフスタイルをお楽しみ下さい!」
大分県の中津市民病院は昨年から、ホームページ(HP)にこんなうたい文句を載せ、産科医を募っている。同病院は県北の中核病院。九州大学医学部の派遣も受けて、産科医は3人確保していた。しかし、このうち2人は昨年12月末と今年2月末に病院を去った。今月末で産科医はゼロに。やむなく新貝正勝師長は1日の市議会で、産科を4月から休診すると説明した。
病院側も手をこまねいていたわけではない。その工夫の一つがHP。画像付きで、クルージング、農業体験、観光名所をふんだんに紹介。立山秀雄事務長は「働きやすい環境をPRしたくて。イメージアップですよ」という。
九州大のほか、九州の医学部がある大学にも声をかけた。4月からは、病院の敷地内に保育所を開設するなど、あの手この手で医師を探す。が、これだけしても呼びかけに応じる声はまだない。
市は4月から地域医長対策局を新設する。市を挙げて産科医の確保にとりくむつもりだ。
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