(関連文献→) 妊産婦死亡 目次 妊娠経過中の脳出血 目次
脳出血合併妊娠症例の報告 今年(2007年)の新生児学会抄録より
ポスターセッションから2つo(^-^)o 。
両症例とも救命した症例であったようですね。
ただ前者の症例では意識が戻らなかったようですし、後者でも後遺症が残ったようです。
P-340 妊娠中に脳内出血を発症した1例
呉医療センター産婦人科
○熊谷正俊,秋本由美子,花岡美生,水之江知哉
【緒言】
妊婦に合併する頭蓋内出血は妊婦10000例に対して1~5例と稀であるが,非常に重篤な合併症のひとつで,母体と児の救命が求められ集学的治療を必要とする.今回,妊娠中期に脳内出血を発症した症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は26歳女性,1経産(3年前に正常経膣分娩),既往歴なし.発症までの妊娠経過に異常なく,妊娠20週4日に突然の頭痛と意識レベルの低下のため救急車にて当院救急外来に搬入された.来院時の意識レベルはJCSIII-100で刺激にわずかに反応する程度であった.血圧は正常であったが,瞳孔径に左右差認めることから脳血管障害が疑われた.
経腹超音波にて19週相当の胎児の生存を確認.頭部CT検査にて右前頭葉にhigh density area認め脳出血と診断した.出血は脳室内に穿破しており,更に側脳室の拡大を認め水頭症を生じていた.全身麻酔下に緊急開頭手術を施行.脳動静脈奇形による脳内出血と診断し血腫除去術を施行したが,母体の意識は改善しなかった.妊娠期間を通じて,医療スタッフ(脳外科医,産科医,小児科医,看護師)と家族が頻回に合い病状説明と治療方針の確認を行った.母体優先の治療を行いながら妊娠を継続し,胎児発育,血流,BPS,頸管長に問題なく順調に経過したが,下肢の開排制限が出現したため経膣分娩は困難と判断した.37週6日に選択的帝王切開を施行し,2584gの女児をアプガースコア9点で分娩.児に外表奇形や母体疾患および治療薬の影響を認めなかった.術後経過は良好であったが,意識障害が改善されることなく,遷延性意識障害のままリハビリ目的に術後113日目に転院した.
【考察】
妊娠20週に脳動静脈奇形破裂による脳内出血を発症し,搬送時JCSIII-1OOと重い意識障害をきたしていた症例を経験した.妊娠全期間を通じて母体優先の検査・治療を行ったが,出生児に母体疾患,母体投与薬剤の影響を認めなかった.妊娠中の頭蓋内出血に対しては,妊娠時期にかかわらず母体救命のため積極的に造影検査も含めた検索を行い,母体優先の治療を行うことが重要である.
P-341産褥期脳内出血の1症例
住友別子病院
○多賀茂樹,松尾環
妊娠中,産褥期に痙撃・意識障害を認めた場合,まず子癇発作が疑われるが,頭蓋内出血を始めとする脳血管障害の鑑別が重要である.今回われわれは産褥期に脳内出血を発症し,緊急開頭術を行なった症例を経験したので報告する.
症例1は31歳.O妊O産.近医で健診を受けていた.妊娠35週より浮腫が見られ妊娠40週で尿蛋白(++)であった.血圧は正常であった.妊娠40週1日で自然陣痛があり入院となった.翌日メトロイリンテル挿入し,妊娠40週3日で3500gの男児をApgar score8/10点で経膣分娩した.
分娩1時間28分後,子癇発作と思われる痙攣発作があり,嘔吐および鼻出血がみられた.ジアゼパム10mg筋注,硫酸マグネシウム10ml/h持続点滴を施行したが,約1時間たってもおさまらないため,当院に搬送となった.入院時の血圧110/71㎜Hg,脈拍71/分,体温39.0℃,SP0298%で,自発呼吸はあるが呼びかけに反応なく対光反射もみられなかった.気管内挿管し,胃管を挿入したところ,多量のairと暗赤色の排液があった.頭部CTを施行したところ3×6cm大の右脳内出血がみられ,右前頭葉出血の診断で開頭手術を行なった.脳表より3cmのところに血腫がありその前頭葉側に易出血性の組織塊を認め,焼灼後に摘出し,病理組織検査で脳動静脈奇形の破裂と診断した.術後のリハビリで状態は改善し,会話は普通にでき,右手で歯磨きなどできるが,左片まひは残存し,左手は拘縮があり,歩行は丁字杖が必要であり,入浴,排泄は要介助の状態である.
やはり救命できても、かなり後遺症が残るわけですね。しかも両方とも「分娩誘発剤」も使っていないようですね。とにかく、周産期に脳出血というのは本当マレではあるが、CTが撮ることができて、しっかりと治療を受けられても…こういう後遺症を残すというのはわかっていなかっただけに、ありがとうございました。
投稿情報: skyteam | 2007年7 月16日 (月) 13:32
通常AVMの出血症例は若年者では初回出血で致死的になることは少ないのですが、妊娠期は特別と考えないといけませんね。
私は出産時に脊髄AVMからの出血を経験しました。帝王切開後、すぐに体位を変換後に手術と考えましたが、帝切後MRIを撮りそれから術場へ。結局下肢の麻痺、膀胱直腸障害も改善し事なきを得ましたが、脳外科医なら何度か経験があると思います。血管撮影は落ち着いてからです。脊髄の場合、対麻痺ですと手術が先になります。脳AVMの場合は脳ヘルニアを来たしていなければ血管撮影後、手術でしょう。
妊娠期、産褥期の脳疾患は必ず経験しますし、訴訟になる確立が高いので産科、小児科、脳外科、麻酔科、放射線科、NICUと密接に連絡を取り合い、チームワークですね!
投稿情報: Taichan | 2007年7 月16日 (月) 14:24