(関連目次)→妊娠したら気をつけること 目次 産科一般
(投稿:by 僻地の産科医)
今日は突発的に、喘息と妊娠のお勉強です(>▽<)!!
実は結構、喘息って怖い病気だったりするんですが、
えー、今日なぜ喘息かって言うと、
…私の体調が悪いからですw。(要するにストック)
いやーインフル疲れる...
昨日のクロ現はすごい反響だったみたいですね!!!
なんだか放送直後から昨日のブログ
(紹介ブログで感想とか何にも書いていないにもかかわらず)
「卵子」「老化」などでググッてこられる方がやたらに
相次ぎまして、なんだかブログとか細々やっているのって、
意味あんのかいな??と反響の大きさにビックリしましたw。
以前だしたこちらもどうぞ。
では、喘息いってみましょう!!
妊娠後の喘息のコントロールとは?
岩手医科大学第三内科 井上洋西
(「Q&Aでわかるアレルギー疾患」Vol.3 No.2007 p168-170)
1.妊娠中の喘息管理
健康な新生児を出産するうえで,妊娠中の喘息管理は極めて重要です.なぜなら,母親の喘息がコントロールされていないと,周産期死亡,子癇前症,早産,ならびに低出生体重児のリスクが増大するからです.このリスクは母親の喘息が重症度であるほど増大します.妊娠によって,それまでの喘息が悪化する人,むしろ軽快する人,変わらない人が約1/3ずつといわれています.これにはホルモンの影響、胎児による肺の圧迫の影響,薬剤の中断の影響などさまざまです。そのような,妊娠によって喘息のコントロールが悪化した患者さんでも,最近の喘息治療の進歩のおかげでほとんど100%コントロールできるようになりました.薬剤の調整にもかかわらず,喘息のコントロールが得られないのは,喘息を悪化させる要因が潜んでいることが少なくありません.これらを見直すなかでさらにコントロールが改善しない場合は,早めに専門医に相談することをお勧めします.日本アレルギー学会(東京本郷)あるいは日本アレルギー協会(東京九段)でも,地域の喘息専門医を教えてくれます.
2.喘息のコントロールとは
・日中または夜間の慢性症状がほとんどない,またはない.
・増悪(ぞうあく)がほとんどない,またはない.
・活動に対する制限がない.学校の欠席,仕事の欠勤がない.
・肺機能がほぼ正常,あるいは常に正常,短時間作用型吸入β2刺激薬の使用がわずか,あるいはない,薬物による有害作用がわずか,あるいはない.
3.妊婦の喘息のコントロールを悪化させる要因とその改善
喘息治療中の妊婦が“喘息のコントロール”が悪化した場合に,”かかりつけ医”に相談したにもかかわらず,その改善が認められないときには,その要因は以下のいすれかによることが少なくありません.あるいは要因が重なっていることもあります.思い当たる点があれば改善し,なければ早めに喘息専門医に相談し,その改善をはかりましょう,このような要因が難治性喘息の原因であることも少なくありません.
a.気道感染の予防
風邪は,喘息のコントロール悪化の重要な要因です.インフルエンザの予防注射を行い,定期検診などで病院に行く,あるいは雑踏の中を歩く際には,マスクなどして気道ウイルス感染の機会を減らすことが大切です.
b.環境改善
妊娠のため家庭にいる機会が増えるとハウスダスト等の吸入の機会も増えるので,家庭環境の改善に努めましょう.一度,皮膚テスト,あるいは特異的lgEの検査を受けて,増悪因子となる抗原を同定しておくことが望まれます.また猫や犬,愛玩用のネズミなどの飼育はやめましょう.喫煙は,喘息の重要な増悪因子なのでこれもやめましょう.これらの外的因子を改善せずに,薬剤によってのみ喘息のコントロールをはかる方法は,喘息のコントロールを悪化させ,長い目でみても喘息の難治化,重症化をもたらします.
c.その他の増悪因子除去
慢性副鼻腔炎,慢性アレルギー性鼻炎,花粉症などがあると喘息が増悪することが知られています.妊娠に先立って,あるいは妊娠の早い時期に治療しておくことが望まれます.
d.薬剤のコンプライアンスの改善
妊娠が確定した際に,多くの妊婦は胎児の健康を心配し自らの喘息治療薬の投与を中止する場合が少なくありません.これは当然喘息悪化の要因となります.喘息治療薬の中には,これまでの永年の経験から投与を継続しても胎児の安全性,催奇性にまったく異常が認められないものと,最近開発されたためにそのヒト妊娠時期の投与の安全性,催奇性に確信が得られていないものとがあります,妊娠をする可能性のあるものと妊娠が確定したものでは,後者の薬剤は避けることが望まれます.薬剤の添付文書をみてもそのように指導されています.しかし,後者のものであっても,薬剤承認の段階で基本的に動物実験から得たデータでは催奇性の問題は基本的には解決されており,また実際に何らかの理由により妊娠当初から出産まで投与したいくつかの症例についての報告が当該製薬会社にも副作用情報センターにも蓄積されています.
その報告の多くは胎児に対する危険が明らかなものはほとんどありません.まったく何も薬剤を投与しない妊婦の場合でも,1、00人に2~3人の新生児の割合で何らかの異常を持って出生する事実も踏まえて,抗喘息薬においてもヒトによる胎児の安全性が確認されていない場合でも,当該薬を妊娠初期に投与していただけで,出産をあきらめる必要はまったくありません.
e.妊娠に適した治療薬の選定
抗喘息薬の代表的なものは,吸入ステロイド薬,長時間作用型吸入β2刺激薬,そして抗ロコトリエン薬ですが,この中で前2者は吸入投与薬,後者は経口薬です.吸入薬は,妊婦や胎児の血中濃度を上げずに妊婦の気管支に重点的に薬剤を投与する極めて優れた方法です,この意味で,妊婦の喘息患者に治療薬を投与するには,吸入薬の組み合わせを優先することが望まれます.テオフィリンについては,数十年にわたる使用経験を通じて,妊娠中の安全性が確認されています.しかし,テオフィリンは中毒症状を呈しやすく,これを回避するには,テオフィリンの血中濃度を定期的にモニターしなければなりません.
g.定期的な喘息専門医への受診と個々のケースに即した治療
"かかりつけ医"が特に喘息の専門医でなければ,近くの基幹病院の喘息専門医と連携した治療を行う必要があります.喘息には,風邪を契機に喘息の急性増悪をきたすことも少なくなく,この際の入院先を決めておくことも安全確保のうえでも必要です.可能であれば喘息ケア医と産科ケア医とを統合したグループ医療が行われることが理想です.妊婦の喘息治療の指針を示すものとして,米国のNHIから「妊娠中の喘息管理;薬物療法ガイド」があり邦訳され出版されています.これは世界のゴールデン・スタンダードとして推奨されます,多少注意すべきことがあるとすれば,治療上は大きな問題にはなりませんが,規定された薬剤の使用量が国によりわずかですが異なる場合があり,また,国により現時点では未発売の薬剤も一部掲載されています.その意味でわが国で市販されている薬剤に合わせた,わが国独自の生活環境に合わせた「妊婦の喘息治療ガイドライン」の作成が要請されています.
KEY WORD
コンプライアンス:
患者さんによる薬剤の受け入れ状況を示す言葉.処方に基づいて薬剤が確実に投与されている場合をコンプライアンスが高い,逆をコンプライアンスが低いと表現します.
急性増悪(きゅうせいぞうあく):
風邪や抗原曝露などを契機に喘息が急激に悪化した場合をいいます,喘息が増悪すると胎児に重篤な問題を招く恐れがあります.母体のPaO2〈60Torr もしくはヘモグロビン酸素飽和度く90%では,胎児が低酸素血症になります,母体への酸素投与や,短時間作用型吸入β2刺激剤の投与により一過性に回避できますが,投与中止で悪化するため根源的な治療・管理が必要です.
ADVICE;
気管支喘息は今や治療によりコントロールができる病気となりました,妊娠中の喘息治療は,基本的には吸入ステロイドを中心とした胎児に影響のない薬剤を使います.ときには妊娠によりステップアップした治療を必要とする場合もありますが,これによってもコントロールがつかない場合は,喘息を悪化させる要因が周囲にないか検討し,専門医に相談することが望まれます.大切なのは薬剤のリスクを考えるあまり適切な治療を怠れば,喘息を悪化させ,胎児の成長を妨げ,ときには死に至らしめる可能性があり,また出産に際しても母体の健康が危ぶまれるということです,
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