(関連目次)→予定日超過妊娠 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
妊娠予定日を過ぎた過期妊娠の妊婦さんを、
どう扱っていくかということはなかなか難しい問題です。
アメリカなどでは42週までほっておいていい、
と言う論文も散見されますが、
アメリカの実際の産婦人科医寮を知る身としては、
妊娠初期に超音波もせず、ちゃんと予定日を決めもせず、
そんな大雑把なことが言えちゃうのは、
やっぱり、緊急時の人的資材に恵まれた環境だからとしか
考えられませんし、36時間連続勤務とかが日常の我々では、
予定で出来れば何事もなく穏便に「緊急帝王切開」を
少なくしないとという気持ちは皆が持っています。
いざって時に間に合わないからです。
母子衛生の抄録の方を先に提示して、
その後伊東先生の論文を取り上げてみますねo(^-^)o..。*♡
産婦の陣痛促進剤使用についての意思決定までの体験
母性衛生 52(3): 145-145, 2011
有澤良子1 森恵美2
1高知県・高知市病院企業団 高知医療センター
2千葉大学大学院看護学研究科
産婦の陣痛促進剤使用についての意思決定までの体験を明らかにし看護援助の示唆を得ることを目的に、褥婦13名を対象に半構成的面接法で収集したデータを質的・帰納的に分析した。なお、本研究は千葉大学大学院看護学研究科の倫理審査委員会の承認を受けてから開始し、計画書どおりに倫理的配慮を行った。その結果、陣痛促進剤使用についての意思決定までの体験は、《陣痛促進剤使用についての不安や期待、心構え》《病院の方針、医師、助産師への信頼》《経膣分娩への期待やこだわりと帝王切開への志向性》《陣痛促進剤使用による、現状からの解放への期待》《早く元気なわが子に会いたいという願い》《わが子の健康状態への安堵》《陣痛促進剤の効果や副作用について知りたいが聞けないという余裕のなさやためらい》《現実とかけ離れた認知をしていたことに気づいてのショックや戸惑い、焦燥感、いらっき、パニック》等の13カテゴリーに集約された。これらを考察した結果、
妊娠期の準備状態と分娩様式への志向性の反映
先がみえない自分の出産や生まれないわが子への心理的反応
陣痛促進剤使用の受け入れと自己決定
自分で産むという主体性の反映
という特徴が認められた。以上の特徴に対応し、妊娠期の予期的準備の必要性、分娩期の早い段階での助産診断による分娩促進ケアの提供等の4つの看護の方向性が導き出された。
過期妊娠における子宮頸管熟化と分娩誘発
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター産婦人科
伊東 宏晃
産婦人科治療 96(増刊号): 720-726, 2008.
予定日を超過した低リスクの妊婦に対して分娩誘発を行うか否か,その適応や時期は必ずしも統一した見解が得られていない.とりわけ子宮頸管熟化が不良な場合は誘発分娩の成功率が低い.わが国で子宮頸管の熟化を促す方法として,子宮頸管の物理的拡張,DHA-S製剤の膣剤・静脈投与あるいはプロスタグランジンE2製剤の経口投与などが行われている.また,点滴静注による子宮収縮薬としてオキシトシン製剤やプロスタグランジンF2a製剤が用いられている.本稿ではこれらの薬剤の特色を紹介するとともに,生理的な分娩と誘発分娩の相違点という視点から,具体的な症例を提示しながら合併症を防ぐための留意点を述べる.
■はじめに
妊娠42週を超過したいわゆる過期妊娠の児は,周産期死亡率が高く,羊水過少症や胎便吸引症候群の頻度が高いことが報告され,このような児のリスクを下げる目的で分娩誘発が行われている.1)児の予後を改善することを目的として分娩誘発が行われている一方で,分娩誘発に関連する医療訴訟が少なからず生じているわが国の現況は看過しがたい2).したがって,分娩誘発の適応ならびにその管理においてより慎重な対応が望まれる.
本稿では分娩誘発の適応,ならびにその理論と留意点について子宮頸管熟化と子宮収縮剤という視点から概説する.
■予定日を過ぎた妊婦における分娩誘発の適応
予定日を過ぎた妊婦を管理する場合,最終月経,基礎体温,超音波所見などをもとに分娩予定日の再確認を行う謙虚さが望ましい.
平成15年の日本産婦人科医会の研修ノートではCochrane Databaseから,妊娠41週以降は分娩誘発したほうが児の予後が良いとの報告を紹介し,わが国では妊娠41週で分娩誘発を行うという施設が多いと記載している3〕.実際,日本産科婦人科学会の周産期委員会による全国19施設のアンケート調査では,68.4%の施設が妊娠41週に,21.1%の施設が妊娠42週に分娩誘発を行っている4).このような背景から,本邦では1990年の過期産率は1.7%であったが,2005年には0.6%にまで減少している5).一方,米国のAmerican College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)のガイドラインでは,妊娠42週を超えて過期妊娠になり初めて介入するとしている1).子宮頸管が熟化していれば分娩誘発し,子宮頸管が熟化していない場合には自然待期と分娩誘発のいずれを選択しても,児の長期予後に差はないとしている1).もっとも,米国では必ずしもわが国ほど厳密に分娩予定日を算定しない傾向があることが,妊娠42週というクリティカルポイントに対して比較的寛容であることに関与しているとの意見もある.
ACOG会員のアンケート調査を行ったところ,42週を超えて自然待期する例は少数であるとの報告もある6).同じ北米でもカナダのBritish Columbia Reproductive Care Programでは妊娠41週に達したならば分娩誘発を推奨し,妊婦が自然待期を希望した場合も妊娠42週に入れば分娩誘発を行うことで,2002年の過期産は0.08%まで減少したとしている7).
このように予定日を超えたローリスク妊婦に対する分娩誘発の適応は必ずしも統一した見解を得ていない.
■ 子宮頸管熟化と分娩誘発
妊娠中,子宮体部は弛緩,拡大するが子宮頸部は閉鎖し,成長する胎児や胎盤などを収納する.分娩において,強力な子宮体部の収縮と軌を一にして子宮頸管が軟化,開序すなわち熟化し短時間で児を娩出する.したがって,分娩誘発の完遂には子宮頸管の熟化が重要である.子宮頸管熟化の指標として内診所見をもとにしたBishopスコアが用いられている8).Bishopスコアが8点以上の場合,分娩誘発の完遂率は自然陣痛による分娩と同程度であると報告されている9).カナダSociety of Obstetricians and Gynaecologists of Canada(SOGC)のガイドラインではBishopスコアが6点以下の症例に分娩誘発を行う場合,まず薬剤か機械的拡張により頸管の熟化を図る必要があるとしている10).海外では薬剤による頸管熟化方法としてプロスタグランジン製剤の経膣投与が行われているが1)7)9)10),わが国では認められていない.本邦ではプロスタグランジンE2製剤(ジノプロストン:プロスタルモンE⑬)の経口投与,あるいはDHA-S製剤(マイリス⑭)の膣剤あるいは静注製剤が用いられている.
プロスタグランジンE2製剤は子宮体部の収縮も同時に誘発する.機械的拡張による頸管熟化方法として,卵膜剥離,ラミナリア桿,メトロイリンテル,フォーリーカテーテルなどがある.機械的拡張を行った場合には脱落膜周辺における内因性のプロスタグランジンF2、などの産生を促すことから,子宮体部の収縮をも促進する.カナダのBritish Columbia Reproductive Care Programでは,機械的拡張の禁忌として低位胎盤,比較的禁忌として前期破水や頸管炎を挙げ,このような場合には慎重に使用するとしている7).また合併症として感染,出血,破水を指摘している6).
■症例から学ぶ機械的方法による
頸管熟化のピットフォール
【症例1】30歳,0経妊0経産
【家族歴,既往歴】:特記すべきことなし
【現病歴】:妊娠41週3日 分娩誘発目的にて某医Aに入院.
妊娠41週4日
9時:DHA-S(200mg)静脈注射
10~15時:ジノプロストン(PGE)1時間ごとに合計6錠内服
19~22時:オキシトシン点滴静注,20時に前期破水
22時10分:オキシトシン中止し,ミニメトロイリンテル挿入(Bishopスコア2点).
夜間は分娩監視装置を外し,ドプラーにて児心音の聴取を2回行った.
妊娠41週5日
5時20分:トイレにてミニメトロイリンテル脱出.
6時00分:分娩監視装置を装着したところ児心拍数は60bpm,体位変換にて回復せず(図1A).
6時30分:塩酸リトドリンの投与により児心拍数は100bpmに回復(図1B).
7時20分:総合病院Bへ緊急搬送.non-reassuring CTG(図1C),biophysical profile scoring(BPS)2点(粗胎動のみ),羊水はほとんど計測できず.緊急帝王切開術を施行するも重度の低酸素性脳障害をきたした.
●症例1から学ぶこと
機械的拡張を行っている際の破水,とりわけメトロイリンテルなどの自然脱出に伴う破水などにおいて,まれではあるが子宮体部の収縮を伴った急速な羊水の減少あるいは膀帯の下垂などが原因で,突発的に下帯因子による胎児低酸素状態に陥ることがあることから慎重な可児の観察が望まれる.
日本産科婦人科学会の周産期委員会によるアンケート調査では,50%の施設で分娩誘発の前日から機会的方法により頸管熟化を図っている4).このような取り扱いを行う場合,施設によっては夜間に子宮体部の収縮,胎児心拍数あるいは母体の感染兆候などが必ずしも入念にモニターされていない可能性が危惧される.
子宮頸管熟化の促進を開始した場合には,分娩誘発を開始し継続していると考え,慎重に母体の観察と胎児のモニタリングに心がけることが大切である.
■子宮収縮剤と分娩誘発
分娩において子宮体部の収縮と子宮頸管の熟化により児を娩出する.このプロセスにおいてオキシトシン,プロスタグランジンF2α,プロスタグランジンE2などの生理活性物質が重要な役割を果たすことから,それぞれオキシトシン(アトニン⑪),ジノプロスト(プロスタルモンF⑬),ジノプロストン(プロスタルモンE⑭)として分娩誘発に用いられる(表1).すべて子宮体部の収縮を促進するが,直接的な子宮頸部熟化作用が明らかとなっているのはプロスタグランジンE2のみである(表1).著者らはプロスタグランジンF2は,ヒト子宮頸部由来の繊維芽細胞からコラーゲン分解酵素の分泌を促すことを報告し,熟化に寄与する可能性を報告しているが11),現時点での製薬会社の見解としてプロスタグランジンF2、は熟化に寄与しないとしている.
■症例から学ぶオキシトシンによる
分娩誘発のピットフォール
オキシトシンは脳下垂体後葉から産生され,血中濃度の上昇を介して子宮体部を収縮させる.図2に示すように正常分娩では子宮口が全開した後の分娩第二期に急速に血中濃度が上昇する12).一方,分娩誘発目的によるオキシトシン投与は子宮口全開大前に施行されることから,非生理的なオキシトシン血中濃度の上昇を引き起こす(図2).さらに,オキシトシンには直接的な子宮頸管熟化作用はない(表1).すなわち,分娩誘発でオキシトシンを使用することは非生理的であるとの認識をもって慎重に分娩誘発を管理することが重要である.
【症例2】33歳,1経妊1経産
【家族歴,既往歴】:31歳:妊娠41週に成熟男児を誘発分娩産
【現病歴】:妊娠41週2日
分娩誘発目的にて某医Cに入院.ネオメトロイリンテル挿入.
妊娠41週3日
10時:硬膜外麻酔チューブを挿入し,人工破膜したのち内測法にてモニタリングしつつオキシトシンの点滴静注を開始.
17時40分:吸引3回,クリステル圧出術3回にて3,445g女児を分娩した.分娩直後に激しい腹痛を認めたため,ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン⑭)座薬50mgを投与した.
18時40分:血圧60/30mmHg,脈拍115/分となり,母体搬送を決定.
19時30分:総合病院Dへ緊急入院,子宮破裂の診断で子宮摘出術を施行.摘出標本を図3Bに示した.
●症例2から学ぶこと
正常分娩では子宮口全開後に血中オキシトシン濃度が上昇し,子宮体部が強力に収縮し,子宮峡部の伸展によって形成された産道を介して分娩が進行する.一方,分娩誘発によって切迫子宮破裂状態となった場合,子宮口が十分に開大していない状態で強力に子宮体部が収縮し,図3Aのシェーマのように子宮峡部は過伸展をきたしていると考えられている.臨床所見としては,上昇した収縮輪の触知あるいは視診が可能となる.このように子宮峡部が過伸展している場合,とりわけ吸引分娩やクリステル胎児圧出法などの人工的な操作によって分娩を強行すると,子宮峡部の組織が損傷することがある.症例2では子宮峡部が全層破綻をきたして子宮破裂をきたしたと考えられる(図3A, B).子宮峡部に裂傷をきたした場合にはいわゆる深部頸管裂傷となり,大量の出血をきたし,その制御に苦慮することが多い.
平成18年に日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会から出された「子宮収縮薬による陣痛誘発・陣痛促進に際しての留意点」には,「陣痛促進剤の投与中あるいは投与後の周期的な子宮収縮が認められる間は胎児心拍数陣痛計(分娩監視装置)を用いて子宮収縮を原則として持続モニターする.(一中略一)子宮収縮の観察は外測法あるいは内測法で行う.また直接腹部を触診し,発作・間激を定期的に観察することも重要である」と記載されている13).本症例では,内測法による持続モニタリングを行っていたにもかかわらず分娩時に子宮破裂をきたした.訴訟対策という側面からも子宮収縮剤を用いる場合に持続モニタリングを行う重要性は論を待たない.しかしながら,図3Cの概念図に示すように,分娩監視装置で検出される子宮収縮薬による過剰な子宮収縮は過強陣痛として定義されている14}.過強陣痛をきたした場合の臨床所見としては,臍帯の物理的な圧迫などによる胎児の低酸素症状をきたすことが多く,子宮峡部の過伸展による切迫子宮破裂症状を呈することは必ずしも多くない.逆に,モニタリング上過強陣痛などの異常所見を示さなくとも,慎重な視診・触診により収縮輪の上昇をきたしていることが判明する場合も多い.分娩誘発の原点に立ち返って,頻回に妊婦の腹部を触診,視診する慎重さをもって分娩誘発にあたることが重要である.
■プロスタグランジンによる
分娩誘発のピットフォール
分娩時にプロスタグランジンF2α,プロスタグランジンE2は,それぞれ脱落膜や羊膜など妊娠子宮筋の近傍で主に産生される(表1).すなわち,プロスタグランジンは局所濃度が上昇し,子宮体部を収縮させ子宮頸管の熟化を促す(表1).羊水中のプロスタグランジン濃度は子宮口が全開大する以前の分娩第一期から上昇することから12),分娩誘発目的によるプロスタグランジン製剤の投与時期は,自然分娩による変化に比較的近い時期である.一方,正常分娩ではプロスタグランジンは子宮局所の濃度が上昇し,全身への影響は比較的少ない.これに対して,わが国において分娩誘発では点滴静注あるいは内服薬として用いられ(表1),まず血中濃度が上昇し,その一部が子宮に作用する.したがって,分娩誘発目的で投与されたプロスタグランジン製剤の作用は全身に及ぶ.実際,副作用としては過強陣痛などのほかに血圧上昇などの循環器症状,悪心・嘔吐などの消化器症状などがある.
著者らは分娩誘発目的でジノプロストン(プロスタルモンE)を内服中に悪心・嘔吐をきたしたが,副作用と判断してとくに血圧などのバイタルサインを測定しないまま,突然の意識障害をきたした母体搬送症例を取り扱った経験を報告している15).同症例では診断されていなかった脳動静脈奇形が破裂し,頭蓋内出血をきたしていたが,分娩誘発中血圧上昇などの循環動態の急激な変化が起きて脳動静脈奇形の破裂を誘発した可能性が強く示唆された.
プロスタグランジンを分娩誘発目的で経口あるいは点滴静注する場合,非生理的な母体血中濃度の上昇をきたすことから,胎児のモニタリングのみならずより慎重な母体バイタルサインの観察が必要である.
平成18年に日本産科婦人学会,日本産婦人科医会より出された「子宮収縮剤による陣痛誘発・陣痛促進に際しての留意点」では,「母体の観察,バイタルサインチェックを適宜(1時間ごと程度)行い,変化が認められる場合は慎重に評価を行うことが望ましい(陣痛促進薬使用時は血圧が上昇することがある)」と記載され,母体バイタルサインチェックを頻回に行う重要性を指摘している13).
一方,欧米では分娩誘発目的でプロスタグランジン製剤の経膣投与が行われている.経口投与や点滴静注に比べて血中濃度よりも妊娠子宮局所の濃度が上昇すると考えられることから,より自然な分娩発来に近い投与法である.しかしながら本邦では適応外使用となるため,万が一医療訴訟となった場合間題となる.また最も重篤な合併症である過強陣痛に対して,緊急帝王切開を含めて迅速な対応が必要となるが,わが国では必ずしも迅速対応が可能ではない分娩施設も多い.したがって,著者は現時点では本邦でプロスタグランジン製剤の経膣投与を行うべきではないと考えている.
■京都大学医学部附属病院産科分娩部の取り扱い
平成11年から平成18年までに京都大学医学部附属病院産科分娩部で行った,予定日を過ぎた妊婦の管理方法について紹介する.
1.妊娠41週中頃まで外来で管理する
週2回,羊水量の評価とNSTを行い,適宜必要に応じて卵膜剥離を行う.
2.妊娠41週後半に入院し分娩誘発する
1)子宮頸管が熟化している場合は連続モニタリングを行いつつ,オキシトシン点滴静注によって分娩誘発する.
2)子宮頸管が未熟化であっても,原則として機械的方法による頸管熟化は行わない.
(1)連続モニタリングのもと,ジノプロストン(プロスタルモンE)の内服を行う(そのまま分娩に至る場合もある).
(2)上記により,子宮頸管熟化後に連続モニタリングを行いつつオキシトシン点滴静注によって分娩誘発.
(3)オキシトシンにより有効な陣痛が得られない場合,日を改めて連続モニタリングを行いつつ,ジノプロスト(プロスタルモンF2α)を点滴静注する.
上記の取り扱いにより,7年間の正期産1,596例中,過期産は11例.trail of laborのなかに占める分娩誘発率は,妊娠41週で32%,妊娠42週で100%.緊急帝王切開率は,妊娠41週が15%,妊娠42週が36%と比較的高値であったが,平均の臍帯動脈血pHおよび5分後のアプガースコアーは妊娠38週から40週と同程度であり,児の予後は良好であった.
■おわりに
児の予後を改善することを目的として,予定日を過ぎたローリスク妊婦に対して,妊娠41週から妊娠42週にかけて分娩誘発を行う施設が大半であるが,その適応ならびに方法は必ずしも見解の一致をみていない.分娩誘発の完遂には子宮頸管の熟化が重要であり,子宮頸管熟化の促進を開始した場合は分娩誘発を開始し継続していると考え慎重に管理する.子宮収縮剤の投与は非生理的な母体血中濃度の上昇をきたすことに留意しつつ,慎重に胎児をモニタリングするのみならず,母体のバイタルサインを観察する必要がある.
文 献
1)ACOG Practice Bulletin No. 55, Management of postterm pregnancy, 2004.
2)堀 大蔵,永山祥代,野々下晃子:陣痛誘発・促/医療事故の実際とリスクマネージメント/産婦人科診療とリスクマネージメント.臨床婦人科産科58:188-191, 2004.
3)社団法人日本産婦人科黒八:分娩管理一よりよいお産
のために一.平成15年研修ノートNo.68, p81.
4)平成9,10年度周産期委員会報告,日産婦誌51:243-245, 1999.
5)平成18年母子保健の主なる統計,母子保健事業団,P49頁,2006.
6) Cleary-Goldman J, Bettes B, Robinson JN, et al: Postterm pregnancy : practice patterns of contemprary obstetricians and gynecologists. Am J Perinatol 23: 15-20, 2006.
7) British Columbia Reproductive Care Program: Guideline(http://www.rcp.gov.bc.ca/guidelines.htm)
8) Bishop EH : Pelvic scoring for elective induction.Obstet Gynecol 24 : 266-268, 1964.
9 ) ACOG Practice Bulletin No. 10, lnduction of labor,1999.
10) SOGC Clinical Practice Guideline : lnduction of labor at term. J Obstet Gynaecol Can 107:1-12, 2001.
11) Yoshida M, Sagawa N, ltoh H, et al:Prostaglandin F (2alpha), cytokines and cyclic mechanical stretch augment matrix metalloproteinase-1 secretion from cultured human uterine cervical fibroblast cells. Mol Hum Reprod 8 : 681-687, 2002.
12) Parturition. ln : Cunningham FG, MacDonald PC, Gant NF, et al, eds : Williams Obstetrics 19th Edition. pp297-369, Appleton & Lange, East Norwalk,1997.
13)日本産科婦人科学会:平成18年子宮収縮薬による陣痛誘発・陣痛促進に際しての留意点.日本産婦人科医会 p2, 2006.
14)吉里俊幸,瓦林達比古:過強陣痛・微弱陣痛/女性診療科における主要症候群・疾患の薬物療法/特集女性診療科における薬物療法のタイミングーいつ始めるか.いつ打ち切るか一.産婦実際51:1869-1874,2002.
15)伊東宏晃,近藤英治,佐川典正:周産期の外科的手術一頭蓋内出血/特集周産期の手術一私はこうしている:トラブル脱出法,周産期医学29:601-604,1999.
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