(関連目次)→厚労省の問題点 目次 ワクチンの問題 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
日本産婦人科医会発刊
「ワクチンのすべて」
平成23年10月号から..。*♡
前回2回に渡りご紹介しました、
「ワクチンのすべて」!!!
最後に扱っているこの章ですが、
とても大事なことに言及しています。
最近、感染症に対するワクチンに関する関心が高まり、
以前より行政・国民の理解も深まってきていますが、
まだまだ問題点は多いようです。
どのような点が問題なのか?
わかりやすくまとまっているように感じられたので
ご紹介します。
ワクチンの将来
ワクチンのすべて
日本産婦人科医会 平成23年10月p94-96
わが国の実際の現場でのワクチン接種における現状の問題点と,それに対する実現可能な改良策を具体的に言及する.
1.日本で導入が必要とされているワクチン
●日本に導入されていないワクチンは,
①不活化ポリオワクチン
②MMR(麻しん,おたふくかぜ,風しん)ワクチン
③髄膜炎菌ワクチンの3種類である.
重大なものは不活化ポリオワクチンとMMRワクチンである(米国:0~6歳児への推奨).
●不活化ポリオワクチン
・日本では,弱毒生ワクチンの継続投与によって,ワクチンウイルス原因のポリオが,未だに発生している.
・先進国で生ワクチンを未だに使用している国は,日本のみである.
・来年くらいには不活化ワクチンが導入される可能性があるが,現状は個人輸入が行われている.
・先進国では,不活化ポリオワクチン単独接種は効率が悪いので,DPTiP(ジフテリア・百日咳・破傷風の3混ワクチンに不活化ポリオワクチン(iP)を加えた4混ワクチン)として接種している.
●MMRワクチン
・国産MMRワクチン接種によって,おたふくかぜワクチンが原因となる髄膜炎の発生があり,中断したままになっている.
・野生株おたふくかぜウイルス感染による髄膜炎の発生頻度よりも,ワクチンによる髄膜炎の発生頻度のほうがはるかに低い.
・髄膜炎発生頻度が十分に低いおたふくかぜワクチンは,メルク社が使用しているJeryl-Lynn株かそのクローンウイルスしかない.日本もこの株を導入して使用できるようにすることが強く望まれている.
・日本のMR(麻しん・風しん)ワクチンは,安全性も有効性も高いので,問題となるのはおたふくかぜワクチンのみである.
●DPTiPの場合と同様,小児用の生ワクチンは多くを混ぜる方向に進んでいる.米国ではMMRV(Vは水痘ワクチン)が, MMRに取って代わっている.
●水痘ワクチン
・成人後の帯状庖疹の予防にもなるので,推奨されている.
・水痘ワクチンは日本で開発された岡株しかない.ワクチンが開発された日本での高い接種率とMMRV4混ワクチンの実用化が望まれている.
2.行政上の諸問題
(ワクチン担当組織の一本化とACIPの導入)
●2007年の成人麻疹の流行, 2009年新型インフルエンザ出現以来,予防対策としてのワクチンの重要性認識が深まりつつある.
●ワクチンに対する不安感を科学的に払拭するか,最小化するには,国民の信頼を得るシステムが必要である.それは,認可,接種方式(年齢,回数など).安全性の確認,副反応の補償制度,モニタリング,費用対効果の説明などで国民を納得させるものでなくてはならない.
●現在は,厚生労働省内でワクチン全体を統括する組織が存在しないうえ,行政方針が明確には,国民にみえない.国としての権威と信頼|生のある統一したワクチン担当組織の実現が望まれる.
●すぐれた例として米国のACTP(Advisory Committee on Immunization Practices,予防接種諮問委員会)がある. ACIPは,政府外の独立した諮問委員会で,科学的根拠に基づいた指針の提示,予防接種政策の評価と改定,ワクチンの品質・安全性のモニタリングなどを行い,CDCやHHS(保健福祉省)に対し助言を行っている.「政府からの独立」と「情報公開」の2つが確立しており,米国民は政府のワクチン政策に信頼をおいている.
3.接種方式の改良
1)定期接種と任意接種
●定期接種は,集団防衛をめざし費用も公的援助を受け,副反応への補償制度も手厚いのに対して,任意接種は,個人防衛的な位置づけになっており,個人負担である.副反応の補償制度は定期接種とは異なる.
●任意接種の費用は高く,接種率が上からないため流行抑制の効果は少ない.感染症は個人防衛以上に集団防衛が重要であり,副反応を補償するうえにも現在,任意接種のワクチンを定期接種と同様にする必要がある.
2)集団接種の必要性
●問診を重視するという理由で集団接種がなくなり,個別接種に代ったが,医療機関受診が必要になり,接種率の大幅な低下をもたらした.
●学校や教育委具会などは,予防接種を自らの業務ではなくなったと他人事としているふしもある.
●ワクチンの副作用の原因を,問診の軽視であるという短絡的な誤った判断を修正し被接種者の健康状態に十分な注意をはらいつつ,集団接種を行うことが必要である.
4.副作用・副反応の因果関係の科学的分析とモニタリングの充実
●副作用・副反応は,接種を担当した医師・医療機関からの報告によるが,その科学的因果関係の立証はきわめて難しい.
●ワクチン接種のモニタリングを充実し,かつ,副作用・副反応事例においては,抗体やウィルスなどの検査・検出を含めて可能な限りのデータをそろえて,議論判断することが必要である.
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