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(投稿:by 僻地の産科医)
メディカル朝日12月号からo(^-^)o..。*♡
特集は「東日本大震災と医療」です。
なかなか興味深い特集だったと思います。
JMATの話とか、東南海地震に備えて病院船とか。
↑発送が面白いですよね!
と言うわけで、こちらの記事をどうぞ!!!
放射線影響
がん死を出さないための小児の健康フォローアップ
細矢光亮
福島県立医科大学 小児科学講座 教授
(Medical ASAHI 2011 December p26-27)
放射線被曝は生命に様々な影響を及ぼす。 DNAを切断するため、修復不能な高度の被曝では細胞死を招く。より低線量の場合、突然変異による発がんや遺伝子異常などの生物学的影響を及ぼす。今般の東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染は比較的低線量であり健康被害が生じないと信じたいが、子どもの健康に与える影響を懸念する意見もある。福島県は、低線量放射線被曝による健康被害が起こらないことを示すため、また万が一がん発生が増加した場合にもがん死を防ぐために、「県民健康管理調査」を福島県立医科大学に委託した。
原爆
15年後からがん・白血病の過剰発生
原爆被爆者の疫学調査から、放射線被曝はがん・白血病の発生増加につながることが明らかになっている(図1)。被曝後2~3年から白血病の増加が見られ、6~8年後にピークに達している。この白血病のリスクは、放射線被曝量が750ミリシーベルト(mSv)以上から増加する。これに対し、がん(悪性腫瘍)は、被曝後15年ころから過剰発症が見られ、その後は年齢とともに増加する。発がんリスクは線量によって変わり、1Sv(1000mSv)で50%増加、100mSvで5%増加するとされている。
100mSv未満の低線量被曝における健康影響については、閥値のない直線モデルが提唱されており、それに基づけば、被曝線量は低ければ低いほど良いことになる。
チェルノブイリ
数年経って小児甲状腺がん増加
1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発4号炉の事故では、水蒸気と水素の2度の爆発により原子炉上部の蓋が破壊され、放射性物質が大気中に放出された。放出量は、放射性希ガスが650万テラべクレル(TBq)、放射性ヨウ素131は176万TBq、放射性セシウムが8万5000TBq程度とされている。
避難住民や周辺汚染地域住民において、事故後数年を経てから小児甲状腺がんの発生増加が報告された。一方、白血病の増加は明らかではなかった。また、死産や異常妊娠・異常分娩の増加、生殖能力低下も認められていない。
この違いは、被曝の特徴の違いに基づくと考えられる。すなわち、原爆による健康被害は主に外部被曝であったのに対し、原発事故では内部被曝の影響が大きいと見られる。地面に落下した放射性物質は植物の表面や地表に付着し、汚染した野菜類や水を直接に摂取する、あるいは二次汚染した魚や動物を摂取することにより体内に取り込まれたこと、元々ヨウ素摂取量の少ないこの地域においては放射性ヨウ素が甲状腺内に選択的に取り込まれたことにより、小児の甲状腺がんが増加したものと推定されている。
福島
かつてない低線量長期被曝は未知数
福島第一原発は、2011年3月11日の東日本大震災において地震およびそれに伴う津波の被害によりすべての外部電源を喪失し、冷却水の供給が絶たれ、圧力容器内の水位が下がり、燃料棒が水面から露出して炉心溶融を起こした。放射性物質の放出量は、放射性ヨウ素131は15万TBq、放射性セシウムが1.2万TBqと推定され(4月12日、原子力安全委員会発表)、チェルノブイリと比較すると総放出量は10分の1程度と考えられている。
原発20km圏内(避難地域)に居住していた多くの住民は、事故発生後短期間のうちに避難している。また、避難地域外にあるが、3月15日から16日にかけての放射性プルームの飛来により比較的高線量地域となった浪江町、飯舘村、川俣町山木屋地区などの住民においても、事故後外出や汚染食物摂取を自主的に控えていた。すなわち、放出された放射線量、食物や水から摂取した放射線量、日本人のヨウ素摂取状況などを勘案すると、チェルノブイリのような小児甲状腺がんの多発はないと思われる。しかしながら、これまで低線量長期被曝の経験はなく、甲状腺がん等の発生増加が全くないと断言することはできない。
健康を守るための健康管理調査を継続
福島原発事故は、自然災害等による全外部電源喪失の可能性が以前から指摘されておりながら、その対策を怠ってきたための「人災」であり、その責任は、当事者である東京電力と原発を国策として推進してきた国にあるのは明白である。しかしながら、政府の対応は迅速性を欠き、県民の不信と放射線による健康被害に対する不安は深い。県はこれに対処するため「県民健康管理調査」の実施を本学に委託した。
調査は、基本調査と詳細調査の二本立てで行われる(図2)。基本調査は、3月11日以降の居住地や行動から外部被曝線量を、飲食物の摂取状況等から内部被曝線量を推定し、積算被曝線量を推計するもので、県民の健康を管理し、健康被害を調査するうえで基本になるものである。
詳細調査は、①甲状腺エコー検査、②健康診査、③こころの健康度・生活習慣調査、④妊産婦調査よりなる。甲状腺エコー検査は、健康被害として万一甲状腺がんの発症者があっても治癒が望めるため、早期発見してがん死を防ぐことを目的とし、災害時18歳以下の全県民を対象とする。
放射線の直接影響の評価のみならず、長期の避難生活などのストレスが健康に与える影響を調査し、疾患の予防や早期発見・早期治療につなげるための「健康診査」、地震や津波による心的外傷、長期の避難所生活のストレス、原発事故による放射線に対する不安など、様々なストレスがこころや生活習慣に与える影響を調査する「こころの健康度・生活習慣調査」、災害発生時に妊娠している方々などを対象とした「妊産婦調査」も実施予定である。
◇
福島原発の事故は、県全域に重大な放射能汚染をもたらした。放射線量は、原爆やチェルノブイリ原発事故に比較すると少ないが、決して看過できるものではない。特に放射線に感受性の高い小児の健康被害に対する県民の不安は強い。すべての県民が安心して県内で生活できるよう、そして放射線被曝による子どものがん死を絶対に出さないよう、除染などの環境整備の徹底とともに、県民の健康を守るシステムの構築が必要である。
ずっと更新されず残念に思っていました。いつの間にか新しくなっていました。大変だとは思いますが、またよろしくお願いいたします。
。
投稿情報: 一産婦人科医 | 2011年12 月14日 (水) 10:16
ありがとうございます(>▽<)!
日常は浮いたり沈んだり。
なかなか忙しかったりして、書き溜めするつもりの日にスキャナー忘れたりとか、面倒くさかったりとか色々です。
ぼちぼちやっていきたいと思っております。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2011年12 月15日 (木) 12:47