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(投稿:by 僻地の産科医)
日本の分娩にかかわる地域医療格差
第21回記者懇談会
日本記者クラブ 21 ・4 ・8
(日本産婦人科医会報 2009年05月号 No.709 p5-6)
今回は「日本の分娩にかかわる地域医療格差」と題して、わが国の周産期医療は世界最高の安全性を示しているが、各都道府県ごとにみると格差が大きくなっていることを竹村秀雄副会長が解説した。
寺尾俊彦会長が常々指摘されているように地方自治体立病院の分娩取り扱い中止が増え、診療所分娩の重要性が増しているところから、都道府県ごとの診療所における出生割合と妊産婦死亡率・周産期死亡率などとの関係について報告したものである。
1.出生の場所別出生割合
病院と診療所における出生数の割合は1990年には病院55.8%、診療所43.0%であったが、2007年にはそれぞれ50.8%、48.0%となり、病院出生が5%減り、診療所出生が5%増えている。
特に郡部では近年診療所出生の方が多くなり、病院でも医師が1~2名の施設が34.4%もあるので、小規模施設での出生の多いのがわが国の特徴である。分娩施設数は1993年には病院1,796、診療所2,490だったが、2008年にはそれぞれ1,137(-37%)、1,651(-34%)と病院の減少率の方が大きい。ちなみにこの間の出生数の減少は8%なので、結果的には1施設当たりの出生数が増加しているが、最多の神奈川県の年間609件と最少の宮崎県の207件では3倍の差がある。
2.診療所での出生割合と妊産婦死亡率(図1)
都道府県ごとの診療所での出生割合は最多の佐賀県の73.6%から最少の香川県の26.7%まで大きな差があるが、これと妊産婦死亡率との関連をみると一定の傾向を認めない。診療所出生割合の低い県や人口の多い都道府県では妊産婦死亡率が全国平均に近い傾向があり、診療所出生割合の高い県では妊産婦死亡率の高い県(出産10万対12.3)と低い県(同0)の差が大きい。この傾向は1施設当たりの出生数と妊産婦死亡率(図2)についてみると、より明らかであった。
3.診療所での出生割合と周産期死亡率(図3)
周産期死亡率が3.0と最も低い山梨県と最も高い7.0の県では2.3倍の差がみられるが、診療所での出生割合との間には妊産婦死亡率同様に一定の傾向を認めなかった。
4.妊産婦死亡率と周産期死亡率(図4)
母児の安全性を示すこれらの指標間にも一定の傾向を認めないが、人口においても医療施設数においても最大の東京が両指標とも全国平均値を示しているのに対し、人口の少ない地方の県では両指標が大きくバラついている。都道府県ごとに人口や県民所得、医療提供体制をはじめ地勢や交通事情、県民性等々さまざまに複雑な要因があることと思われる。それぞれの地域に応じて医療関係者と行政とが真剣に話し合い、さらに広域的な視野も加えて地域の実情に則した周産期医療体制を構築し、病診連携を進めていくことが望まれている。
(当日配布した39枚の図表は日産婦医会HPに掲載しています。)
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