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(投稿:by 僻地の産科医)
4月2日に行われた海堂先生の講演の模様です(>▽<)!!!!
海堂尊氏語る
「Aiセンターは21世紀の日本に必須のシステム」
橋本佳子編集長
m3.com 2009年04月09日
http://mrkun.m3.com/mrq/top.htm
作家・海堂尊氏と言えば、今、上映中の映画 『ジェネラル・ルージュの凱旋』原作者。『チーム・バチスタの栄光 』や『ナイチンゲールの沈黙』など、医療現場が舞台だけに、海堂氏の著書を読み、“白鳥・田口コンビ”のやり取りを楽しまれた方も多いのではないでしょう か。
海堂氏の本業は病理医。最近は、Ai(Autopsy imaging ;オートプシーイメージング)関連での講演も多数手がけています。4月2日に開催された自民党国会議員による「異状死死因究明制度の確立を目指す議員連盟」の第4回勉強 会では、「Aiセンターは21世紀の日本に必須のシステムである」というテーマでお話されました。
Aiとは、遺体に対する画像診断。X線CTが一般的ですが、MRIによるものもあります。
海堂氏の主張は明快です。日本の解剖率は例えば2007年では2.7 %と低い、「死因不明社会」(同名の『死因不明社会』(ブルー・バックス)が上 梓されています)。死因の究明は重要だが、解剖数を大幅に拡大するのは難しい。まずは死亡後にAi を実施する。死因が同定できればそれで終わるが、不明な場合に解剖を行う。つまり、死因究明のために、「死体の検案→Ai→解剖」という流れを作るべきという提言です。
「海外の事例を学ぶのではなく、日本に合った死因究明システムを知恵を絞って独自に作るべき。日本のCT保有数は約1万5000台、全世界の50 %強が日本にある。これを利用しない手はない。世界に類を見ない、Aiを使った日本独自のシステムを作ることが可能」と海堂氏。
Aiの主なメリットを上げると…
・ 医療事故が起こった場合、医師にとっても「何があったのか、死因は何なのか、即座には分からない」状態で遺族と話さなければならない。その結果、感情論になり、紛争に発展しやすい。Ai による客観的データがあれば、医療者は遺族とのコミュニケーションを取りやすくなり、医療紛争は 今よりも軽減するのではないか。また解剖への承諾を得るのは容易ではないが、画像を見せて解剖が必要な理由を説明すれば、承諾を得やすくなる。
・ 「Ai→解剖」という流れは、臨床で一般的に行われている「CTで検査し、病巣などを同 定した後に手術」という流れ、「非侵襲的(CT)→侵襲的(解剖)」という流れと同じであり、 医療者に受け入れられやすい。
・ 解剖と比べて安価(日本病理学会の試算では病理解剖は一体25万円。Aiは仮に1体2万円とし て、年間の死亡者数約100万人全例にAiを実施した場合でも、年間2000億円。一体4万円であっても病理解剖より安価)。
Ai実施のイメージとしては…
・ Ai は法医学者ではなく、「画像診断の専門家である放射線医」が行う(放射線科 医の間では準備も進んでいる)。
・ したがって、Aiは医療の現場で行う、つまり医療のエンドポイントにAiを置く(放射線科医 は現在、医療の現場にいる。日本法医学会が提唱する「死因究明医療センター」などでAiを行うのは非現実的)。
・ ただし、Ai の費用は、「医療費以外」の財源から、必ず実施施設に支払う(医療費の枠組みで支払うと、「生きている患者と死者とどちらが大切か」という議論になり、患者が優先され、Aiの費用が確保しにくくなる)
Ai普及の条件は…
・ 国家がAi の必要性を説き、国民的コンセンサスを得るようにする。
・ (前述と重複するが)Ai の費用を保障する。
「Aiには見落としがあるので、やはり解剖が重要」との批判に対しては…
・ 解剖の重要性は否定していない(ただ数的に限界がある)。
・ 果たして放射線科医が診断した結果として「見落としがある」としているのか(画像診断の専門家医ではない法医学者などがAiを実施した結果ではないのか)。
日本医師会が4月1日に公表した「死亡時画像病理診断(Ai=Autopsy imaging)活用に関する検討委員会(プロジェクト)第二次答申につ いて」(PDF:424KB)によると、全国の医療機関6150 施設に対する調査(有効回答数 2450 施設、有効回答率39.8%)では、「患者死亡時または死亡後、あるいは警察からの依頼により何らかの画像を撮影したことがある」と回答した医療機関は35.8% (876 施設)。既に制度化を待たずに、医療現場Aiが普及しつつあることが分かります。
Aiの詳細は、前述の『死因不明社会』などをお読みください。
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