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(投稿:by 僻地の産科医)
高齢者医療制度検討会報告書
複数案併記し、方向性示さず
「後期高齢者」の名称見直しを提言
(日本医事新報 N0.4430(2009年3月21日)p6-7)
厚労省の「高齢者医療制度に関する検討会」(塩川正十郎座長)は17日の会合で、同省が作成した報告書案を概ね了承した。「後期高齢者」などの名称見直しを提言したものの、最大の争点だった年齢区分や運営主体は複数案を併記するにとどめ、一定の方向性を示すには至らなかった。
会合では冒頭、挨捗に立った舛添要一厚労相が、与党・高齢者医療制度に関するプロジェクトチーム(PT)が現在、並行して検討を行っていることを説明し、検討会報告書と合わせて政府・与党案を早急に取りまとめる考えを示した。
事務局からは、「高齢者医療制度の見直しに関する議論の整理」と題された報告書案(次頁に要旨)が提示。その中では、
(1)高齢者の尊厳への配慮
(2)年齢で区分すること、制度の建て方
(3)世代間の納得と共感が得られる財源のあり方
(4)運営主体
(5)保険料の算定方法、支払方法等
(6)医療サービス
―の六つの論点について記述している。
このうち、(1)では「後期高齢者」「終末期相談支援料」などの名称について、「高齢者の尊厳を損なう」として見直しを提言。別の章では「高齢者の意見を聞く場」の設置も求めた。
年齢区分しない場合 負担調整など課題に
一方、(2)~(5)では、舛添厚労相が昨年9月に示した私案(「国保と統合し、都道府県が運営」「前期高齢者に限らず被用者保険からの財政調整を行う」「後期高齢者の一部を被用者保険に残す」)を含む複数案を併記するにとどめ、一定の方向性を示すには至らなかった。
最大の争点となった②の年齢区分では、
①年齢で区分せず、全年齢で財政調整を行う
②回収で区分する
③75歳以上の被用者保険本人は被用者保険に残す
④一元化
―の4案を併記。
大臣私案に沿って見ると、①の年齢で区分しない場合では、「保険者の努力では回避できない年齢構成の相違による負担の不均衡を是正できる」などのメリットがあるとする一方「所得形態・所得捕捉が異なる被用者保険、国保の負担調整の仕組みをどう考えるか」との課題も提示。③の75歳以上の被用者保険本人を被用者保険に残す場合では、「被扶養者の扱いをどうするか」などと指摘している。
(4)では、都道府県を運営主体とする案のほか、現行の広域連合の保険各機能を強化する案も併記した。
報酬体系見直し必要
また、(6)の医療サービスでは、「高齢者担当医をはじめ多様できめ細かな訪問医療などの新しいサービスを普及・定着することが必要」とし、「75歳以上に限定された診療報酬体系は見直す必要がある」などの意見があったことも紹介した。
半年での終了に委員から不満も
検討会はこの報告書案を概ね了承した。ただ、「(昨年9月のスタート時には)1年かけて議論すると言われたが、3月で終わる。(制度は)何も変わらないのではと不安を感じる」(川渕孝一委員)など、方向性を示さずに検討を終えることへの不満も上がった。
これに対し、塩川座長は「半年間で高度な意見が十分開陳され、『大体こんなことでええんやないか』というものは出せた」と報告書を評価し、理解を求めた。
吉岡てつを保険局高齢者医療課長も検討会終了後、記者団に対し「(検討会の設置期限は)未定だったが、議論が出尽くし自然とこうなった。利害関係のない学識経験者が論点整理したことは意味がある」と説明。与党PTの見直し案なども踏まえ、今後省内でさらに議論を深めていくとした。また、報告書が提言した「高齢者の意見を聞く場」を早急に設置する考えも示した。
後期医療 導入1年 実態は
負担重く“病院行けない”
しんぶん赤旗 2009年3月29日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-03-29/2009032903_01_0.html
後期高齢者医療制度が始まって四月で一年。政府・与党は、「見直しを検討する」(麻生太郎首相)と言いながら、その方向すら示せません。「制度への理解は浸透しつつある」というのが厚労省の認識です。本当にそうか。導入一年の実態をみます。
急増する“孤独死”
昨年十二月、東京都杉並区で、高血圧と心臓病を患う一人暮らしの女性(79)が自宅アパートで亡くなっているのが、死後二週間ほどたって発見されました。発見者の看護師は「毎月きちんと診療に来ていたのに十一月は来なかった。不安がよぎり、訪問したのです。大家さんにカギを開けてもらうと、室内であおむけに倒れていて…」と語ります。
主治医で、高齢者の在宅医療に力を入れている同区・天沼(あまぬま)診療所長の竹崎三立(みたて)医師は、「この方は一カ月ごとの薬の処方でした。二週間に一度だったら、もっと早く気付けたのでは」と悔やみます。通院回数を減らすために「一カ月分」「五十日分」とまとめて薬を出すことを希望する患者が増えていることに、竹崎医師は心配を募らせています。
東京二十三区内での一人暮らしの高齢者の“孤独死”は、五年ほど前から急増。二〇〇七年には千七百九十八人と、二〇〇〇年の倍以上に上ります(東京都監察医務院の統計から)。東京の区部だけで毎日四―五人の後期高齢者が、誰にもみとられずに亡くなっている勘定です。中央社会保障推進協議会の山田稔事務局長は、「ただでさえ低年金で生活が大変なところに、強制的な保険料の天引きです。年金以外に収入はない。大変な不安です。保険料を無理して払い、保険証はあるが、お金がなくて病院に行けない。そんな人が大勢います」と告発します。全日本民主医療機関連合会(民医連)の昨年九月の調査では、後期高齢者の外来通院日数が前年同期比で8・47%ものマイナスでした。〇二年に高齢者の窓口負担が定額制から一割負担へと改悪された際の受診抑制(前年同期比4・4%減)を超えています。
小手先手直しで矛盾
舛添要一厚労相がつくった「高齢者医療制度に関する検討会」に招かれた全国老人クラブ連合会の役員は、「制度への理解は進んできた」とする厚労省の見方に、「実態と違うと思う。今は軽減措置があるが、将来的に保険料は高くなるのだし」と指摘しました。
後期高齢者医療の保険料は二年ごとに改定されます。七十五歳以上の人口や高齢者の医療費が増えると自動的に値上げされ、際限なく増えます。
年金からの保険料天引きへの反発を受けて、政府・与党は、四月から、希望者は口座振替を選べるようにしました。一方で、保険料負担が重いため、滞納が増える恐れが指摘されています。滞納の増加は制度の基盤を揺るがす上に、七十五歳以上の高齢者からの保険証取り上げという深刻な社会問題を引き起こします。小手先の手直しが新たな矛盾を生んでいます。
制度の廃止しかない
民医連の湯浅健夫事務局次長は「軽減措置も、いずれ期限切れを迎えます。総選挙が終われば負担増が一気に来る。制度そのものをなくさない限り、矛盾はなくならない」と語ります。
中央社保協の山田事務局長は「社会保障は削減のターゲットでした。でも、ここを拡充しなければ内需拡大などありえないことは、いまや誰の目にも明らかです。福祉にお金を回し、高齢者を含め日本の医療のあり方を再構築すべきです」と強調します。この一年、党派を超えて高まった、後期高齢者医療制度廃止を求める声。誰もが年齢や所得によって差別されることなく、安心して受けられる医療の確立を目指し、たたかいは広がっています。
そっぽ向かれた「診療料」
後期高齢者医療の“目玉”として導入された「後期高齢者診療料」ですが、利用を届け出ているのは、全国の診療所の一割弱の約九千五百です。そのうち、実際に患者の同意を得て診療料を算定した機関は10%程度とみられます。(中央社会保険医療協議会調べ、昨年十一月)
同「診療料」は、高齢者を診療する医師を一人の主治医に限定し、報酬を月額六千円の包括払いとする制度です。六千円を超えた検査や処置をすると医療機関の損失となります。高齢者が受けられる医療を制限し、医療費を抑制する狙いです。しかし一年たっても算定は進まず、「後期高齢者医療の『柱』揺らぐ」(「産経」十九日付)と書かれています。
自民党 後期高齢者医療制度の見直し案、厚労省案を反映
Risfax【2009年4月1日】
自民党の社会保障制度調査会医療委員会は31日、後期高齢者医療制度の見直しについて、これまで議論した内容を基に論点を整理した。前回25日の会合では、有識者を中心に見直し案を作成した厚生労働省の「高齢者医療制度に関する検討会」の報告書の説明を受けており、概ね見直しの論点は一致していた。ただ、検討会の報告書よりも「中期的な課題」と「短期的な課題」の区別を明確にし、一歩踏み込んだ。最終的には、4月上旬~中旬を目処に与党PTで取りまとめる予定。
見直す項目のうち、具体的に中期的と短期的な課題に振り分けたのは、「費用負担」「年齢区分」「運営主体」の3分野。費用負担は、速やかに対応可能な短期的な課題として、財政状況の厳しい健保組合の負担軽減に向けて、拠出金の分担方法の見直しや財政支援の拡大を挙げた。税制改正とあわせて見直しが必要な中期的な課題には、前期高齢者医療への公費投入、高齢者の保険料負担を維持するための公費の追加投入を盛り込んだ。
年齢区分の短期的な課題には、被用者保険の被保険者をそのまま残すことなどを明記。中期的な課題は、年齢区分を65歳に見直すことを費用負担と合わせて検討するとした。運営主体では、広域連合の保険者機能の強化を短期的な課題に据えた。中期的な課題は、同地域の国民健康保険との運営主体のあり方を検討することを盛り込み、広域連合と国保を一元化する「舛添私案」も含めた格好だ。
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