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(投稿:by 僻地の産科医)
医療左右する国民の選択
熊本労災病院長
小川道雄
熊本日日新聞 2009年3月22日
http://kumanichi.com/feature/kataru/ogawa/20090322001.shtml
急性期病院で医師の過重労働が続いている。たとえ五十歳を過ぎても、状況は同じだ。
熊本大学第二外科に在籍中、研修医のための早朝講義でも、医師の過重労働、過労死を取り上げた。そして長時間労働を強制するつもりはないが、それをしなくてはならない時もある、と話してきた。「医療チームを引っ張るのは医師。君たちは士官である。士官は危険な場でも先頭で責任を取り、逃げない。そうして初めて、下の者がついてくる」「長時間労働、休日出勤、深夜労働という条件は変わらないだろう。それが君たちが選んだ職業だ」と。
延岡に勤めてから、その考えを百八十度変えなければ、と思った。第一は勤務医の労働量の急激な増加。医療の進歩で行う治療が複雑になり、量も増えた。事務書類の処理も極端に多くなっている。さらに、国民の権利意識が変化し、高まっている。一方で、同じ国民でもあるはずの医師、医療従事者は、修道士、修道女のごとくあらゆる艱難に耐え、清貧に甘んずべし、という昔からの考えは変わらない。
志ある者も、過重労働が続ければ疲弊する。それでも、わずかでも敬意を払われるなら、何とか気持ちを奮い立たせる。逆に潰[つぶ]されるような場面ばかりが続けば、逃げ出さざるを得ない。
延岡病院の麻酔科医が三人にまで増え、何とか手術数も元のレベルに戻ったころ、「麻酔科医不足にどう対応するか」というシンポジウムに招かれ、医師不足の現状を話した。それが好評で、医療問題についても発言する機会を与えられ、市民講座でも講演することが多くなった。
講演の後の質問で、「医者が当直の翌日に診察や手術をしているなんて知らなかった」「病院にはたくさんの医者が泊まり、急患は何人でも受け付けてくれると思っていた」などと言われる。これには医師の過重労働問題の現状について、医師側からの発信がなかったことも影響している。平成十八年に行った市民講座の内容を、「医療崩壊か再生か-問われる国民の選択」という本にまとめ、二十年にNHK出版から出した。幸い好評で、今年に入って増刷している。三年前の講演が今でも新鮮であることは、この間、状況が全く変わっていないことを示している。
小川先生のように
>その考えを百八十度変え
ない、変えるような事態を体験する機会のない偉い先生もいっぱいまだ(主に都会・大学病院に)いるんでしょうね・・・
投稿情報: 匿名 | 2009年3 月22日 (日) 14:03