(関連目次)→法規制が必要かもしれない医療問題 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
ちゃんとまとめたいと思っているうちに、
時間がたってしまいました(>▽<)!!!!
もう先月のニュースになってますけれど、
大事だと思うのでのっけさせてくださいませ♪
延命治療中止の是非について。きちんと考えていくべき問題だと思います。
延命治療中止 事例検証し、議論深めたい
西日本新聞 2009年3月5日
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/81131
福岡大学病院救命救急センターが、回復の見込みがなく死期が差し迫った患者の延命治療を日本救急医学会の「終末期医療に関する提言(指針)」の手順に基づいて中止したことを先週、日本集中治療医学会で報告した。
1年半前に延命治療中止の基準や手続きを示した救急医学会の指針が策定されて、医療現場で実際に適用された初めての実例公表である。延命治療中止については、本人や家族の希望があれば応じるべきだとする容認論の一方で、命の安易な切り捨てにつながる恐れがあるとの慎重論も根強い。
そんな中での勇気ある実例報告だ。医療現場からの問題提起と受け止め、延命治療の在り方を医療界だけでなく社会全体で考えるきっかけにしたい。救急医学会の指針は、2006年に医師が殺人容疑で書類送検(不起訴)された富山県・射水市民病院の呼吸器取り外し問題などを受けて策定された。
指針は「終末期」を「脳死状態と診断」され「生命を人工的な装置に依存」し「移植などの代替手段もなく」治療を継続しても「数日以内の死亡」が予測される状態と定義し、患者の事前意思や家族の同意があれば延命治療を中止できるとして、その手続きを示している。その際、医師の独断やトラブルを防ぐため、主治医だけでなく複数の医師や看護師による医療チームで対応し、経緯を診療録に記載するよう提言している。
福岡大病院の場合、救命救急センター長を含む医師、看護師ら二十数人のチームで中止の是非を検討し、家族全員に検討結果を説明して同意書を書いてもらった。詳細な記録も残している。指針に沿った妥当な対応といえる。ただ、学会で経緯を報告した担当医師は「指針の存在」を評価する一方で、解決しなければならない課題として「法的な問題」を挙げた。
指針に沿って延命治療を中止しても、現在の法体系では医師が殺人罪などに問われる可能性は残る。どんな条件を満たせば刑事責任を問われないのか。医療現場が最も不安を感じている問題であり、法整備を求める理由でもある。だからといって、法を整備すれば問題が解決するものではなかろう。人間の尊厳にかかわる「死の迎え方」だ。一人一人の死生観が絡む。法で一律に線引きされることに拒否感を持つ人は多い。
とはいえ、国民の多くが納得できるルールづくりは必要だ。救急医学会の指針はその議論の土台になるものだろう。そのためにも今回、福岡大病院が報告したように、医療現場が指針に基づいた事例を積極的に公表することを求めたい。そこでは患者や家族の意思は尊重されていたか、医療側の判断や対応は適切だったか。そうした検証を積み重ねたい。それが終末期医療に対する国民的な合意の形成に少しでも近づく道だろう。
【社説】延命治療中止 最期のあり方考えたい
北海道新聞 2009/03/02
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/150255.html
福岡大学病院の救命救急センターで昨年、死期が迫った六十代の男性に対し、延命治療が中止され、男性が死亡していたことが分かった。延命治療中止の手続きを示した日本救急医学会の終末期医療に関する指針に基づいて行われた。一昨年十月に指針が策定されて以来、延命治療の中止が明らかになったのは初めてだが、ほかにも数多くの中止例があるとみられる。救急医学会は実施例を集約し、患者本人や家族の意思が十分に尊重されていたかなどを、しっかり検証してほしい。
男性は肺炎による急性呼吸不全に陥り病院に運ばれた。すでに意識はなく、人工呼吸器に加え、心臓と肺の機能を一時的に代行する人工心肺装置も付けられた。男性は以前から、無理な延命はしないよう、家族に伝えていたという。家族も治療の中止を希望した。余命は長くても数日とみられていた。医療チームは家族の同意のうえで、心肺装置を停止させ、約十分後に男性は死亡した。
救急医学会の指針は、治療を尽くしても死が間近に迫っている状態に限って、患者の意思に従って延命治療を中止できるとした。そのうえで、治療中止に至るまでの手続きの透明化を求めている。福岡大の場合、センター長や医師、看護師ら二十人以上のチームで中止の是非を検討した。家族全員に検討結果を説明し、同意書も得た。一連の経過をカルテに詳細に記録していたという。 指針に合致した手順を踏んでいる。妥当な対応だったと言えよう。
延命治療の中止をめぐっては、留萌管内の道立羽幌病院や富山県の射水市民病院の例など、刑事事件になることも少なくない。これらのケースでは、家族から治療中止の同意を得ていても、院内の組織的な検討を経ずに、担当医らの独断で中止を決めていた。判断が密室のなかで行われるならば、国民の理解は得られまい。
尊厳死の是非に関する法律が整備されていない現状では、学会の指針に沿って延命治療を中止しても、医師が殺人容疑で刑事責任を問われる可能性は残る。医師を中心に立法化を求める声があるのはそのためだ。一方で、それを望まない国民は六割に達する。生死の問題まで法律で縛られることに拒否感を持つのだろう。
死はだれにも訪れる。時には身近な人たちと、最期のあり方を話し合う機会があってもいい。自らの人生の終末をどう迎えたいか、考えるきっかけにしたい。
「延命中止」、数十例か 救急医学会調査
日本経済新聞 2009年2月27日
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090227AT1G2700U27022009.html
日本救急医学会が2007年11月に作成した終末期医療ガイドラインを、約90人の医師が実際の患者に適用していたことが27日、同学会のアンケートで分かった。うち数十例は実際に延命治療を中止したとみられる。回復の見込みがない終末期の患者の扱いについて国が明確な指針を示せずにいる中、医療現場で徐々に延命中止に踏み切る動きが広がりつつある実態が明らかになった。
同学会の指針は終末期医療について、本人の事前の意思表示や家族の意思を尊重しつつ、医療チームや倫理委員会などの協議を経ることなどを延命治療中止の条件と規定。中止方法として呼吸器取り外しや栄養補給の中止などを挙げている。
センター長「延命中止、公表進めるべき」
日刊スポーツ 2009年2月27日
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20090227-465588.html
延命治療の中止手続きを明記した日本救急医学会の終末期医療指針に基づき、昨年、死期が迫った60代男性患者の人工心肺装置を停止させた福岡大病院救命救急センター(福岡市)の石倉宏恭センター長が26日記者会見し、延命中止事例について「事後の検証のため(個々の病院が)公表を進めるべきだ」と話した。
同センターによると、心肺装置を停止させたケースがあったのは昨年夏。入院から4、5日後に男性の容体が厳しくなって以降、家族から「あとどれぐらいもつんですか」と聞かれるようになり、入院から約3週間後に「これ以上の治療はやめてほしい」と要望があった。センター側は救急医学会指針を適用し、心肺装置を停止。13分後に死亡が確認された。一連の経過は福岡大病院副院長にも報告、了承を得ていたという。石倉センター長は、延命中止で医師が刑事責任を追及される懸念がある現状について「法整備を進めてほしい」と話した。
延命中止 本人の意思、尊重すべきだ
琉球新報 2009年2月27日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-141152-storytopic-11.html
福岡大病院救命救急センターは、日本救急医学会の終末期医療に関するガイドライン(指針)を適用し、回復の見込みがなく死期が差し迫った60代男性患者の延命治療を、家族の希望を受けて中止していたことを明らかにした。
最近は、終末期に際し苦痛を感じることなく、安らかに死を迎えたいと考える人が増えつつある。
快方に向かう可能性が皆無で死が間近に迫っている状況下で、本人や家族が望んでもいないのに延命治療を施すことは、むしろ人間の尊厳を冒しかねない―という見方もある。
福岡大病院は、指針を踏まえ、医療チームで慎重に検討を加え、延命中止の妥当性を検証できるように詳細な診療記録も作成した。患者側の意思を最優先した判断は妥当だったのではないか。
指針は(1)脳死と診断されている(2)生命が人工的な装置に依存し、移植などの代替手段もない(3)治療を継続しても数日以内の死亡が予測される―などの場合を終末期と定義付けている。
もちろん、延命治療を中止するには、患者自身の明確な意思表示と家族の同意が大前提だ。
今回の男性患者は昨年、肺炎による急性呼吸不全で入院。搬送時から意識がなく、重い低酸素状態にあり、人工呼吸器と人工心肺装置を装着していた。
入院してから約3週間たって、以前に患者自身が「無理な延命はしないでほしい」と話していたとして、家族が治療中止を希望した。
医療チームは、この段階で余命数日以内と判断していたという。家族の同意書を得て人工心肺装置を停止させた。患者は、家族にみとられ、13分後に死亡している。
学会の指針はあっても、現行法制度下では、人工呼吸器を取り外して患者を死亡させれば医師が殺人罪に問われる恐れがある。
どんなに家族が希望しても、延命中止には躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ないのが医療現場の実情だろう。
治療を継続することが患者の苦痛を長引かせるだけだとすれば、患者本人や家族にとって不幸なことだ。
一方で、人工呼吸器や人工心肺装置の停止に対しては「生命の切り捨てにつながりかねない」との批判があり、慎重論も根強い。
政府は、国民的議論を踏まえつつ、延命中止の法的課題、医師の免責基準などを整理し、国としての指針を策定すべきだ。
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