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(投稿:by 僻地の産科医)
【参考ブログ】
どうなる移植医療?
うろうろドクター 2009/2/6
http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/27926429.html
海外渡航による臓器移植は今後困難に
WHOの決議案で各国の“自給自足”求める
MTpro 記事 2009年2月4日
篠原 伸治郎
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0902/090203.html
第42回日本臨床腎移植学会(1月28~30日,東京)が開催され,最終日の30日に日本臨床腎移植学会と日本移植学会が合同で記者会見を開いた。
今年(2009年)1月26日,世界保健機関(WHO)の定例会で,世界の臓器移植における臓器は各国が自給自足すべき,という決議案がまとまった。今年5月に開催されるWHO総会(WHA)では,新たな移植ガイドラインとともに上記の決議案も採択される可能性が高い。
海外渡航を行っての臓器移植も道を閉ざされる方向にあり,現在,臓器提供が進まない国内の状況を打開するため,出席者たちはWHAにおける決議案本採択の前に国内の臓器移植法を改正する必要性を訴えた。
臓器移植法改正が必須との見解示す
WHO委員を務める日本移植学会幹事の篠崎尚史氏によれば「昨年(2008年)には国際移植学会により『イスタンブール宣言』も公表されている。どの国でも移植臓器不足状況にあり,(同宣言も今回の決議案も)臓器移植は自国内でまかなうという類似した内容であり世界的な状況がそうした方向に固まりつつある」という。
小児の心臓移植などでは,国内の臓器移植法で15歳未満の臓器提供意思表示が認められていないため,海外で臓器提供と手術を行っている現状がある。法的拘束力はないものの,海外渡航による臓器移植を続けることは倫理的に問題があるという国際的な共通認識が持たれる以上,日本でもそうした移植医療を継続することは困難になる。
第42回日本臨床腎移植学会会長の相川厚氏(東邦大学腎臓学教室教授)は「(臓器提供の議論では)日本人は日本国内で助けるべきということも指摘されており,臓器移植法の改正は必須だ」と述べた。
ドナー対象の要件でA案とB案に差
「脳死」を含めるか,年齢条件はどうするか
現在,臓器移植法の改正案の議論では,A案,B案の2案が示されている(2006年3月31日上程:日本移植学会ホームページ参照 下記)。
B案は人の死の定義は現在と変えないが,臓器提供意思表示や親族者による事前の承諾を取るというドナー対象者の条件を12歳以上まで拡大するものであるが,A案は脳死も人の死に含め年齢に関係なく家族の同意があればドナー対象にしており,相川氏は「イスタンブール宣言やWHOの決議案の流れにおいて,この2案のなかではA案しか打開策となりえない」と述べた。
この記者会見に出席した衆議院議員・河野太郎氏(自由民主党)は父・洋平氏(衆議院議長)の肝疾患悪化に対し生体肝移植のドナーとなったことが知られている。
同氏は「国会で改正案が議論されないというのは行政の不作為としか言えない。WHAが開催される5月をターゲットに国会で審議を進める必要がある」との見解を示した。そのうえで「現在,厚生労働委員会のなかの小委員会で審議を行う場が設定されており,一定の期日内に衆議員・参議院の両院で議論をすすめ一定の結論を出すことになると思う」と述べた。
今後,日本移植学会では北海道,広島県,熊本県,宮城県など全国各地で一般市民公開講座を開催する。最後の開催は4月5日の砂防会館(東京)が予定されており,広く国民の理解を求める方針だ。
出席者
司会 湯沢 賢治氏 日本移植学会広報委員
相川 厚氏 第42回日本臨床腎移植学会 会長
大久保 通方氏 NPO法人日本移植者協議会 理事長
河野 太郎氏 衆議院議員(自由民主党脳死・生命倫理及び臓器移植調査会会長)
寺岡 慧氏 日本移植学会理事長
吉田 克法氏 日本移植学会広報委員
篠崎 尚史氏 日本移植学会幹事,WHO委員
福蔦 教偉氏 日本移植学会幹事
町野 朔氏 上智大学大学院法学研究科 教授
「臓器移植に関する法律」の改正案の比較
http://www.asas.or.jp/jst/pdf/20080212/kaiseian_hikaku.pdf
まず、現行法と2006 年3 月31 日に上程された改正案2案(A、B 案)の比較を示す。B 案は意思表示年齢を12 歳まで下げたこと以外、本質的に現行法と差はない。しかし、A 案は、提供者の年齢制限を撤廃し、本人の生前の書面による意思表示がない場合に家族の同意で臓器提供が認められる点で大きく異なっている。
上記に加え、A,B 案共に、運転免許証や健康保険証等に臓器提供意思記入欄を設けて普及啓発活動を強化と、親族への優先提供(偶者と親子間に限る)の認可の条項がある。
以上より、移植を必要とする国民を救うためにも、また脳死後に臓器提供をしても良いという意思を反映するためにも、改正法A 案しかしかないものと考える。
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