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(投稿:by 僻地の産科医)
M3からも出ていました!
医学教育カリキュラム検討会
医師不足を機に医学教育も見直しへ◆Vol.1
文科省が検討会を設置
「地域医療を担う人材育成」狙う
2009年2月3日 橋本佳子(m3.com編集部)
http://www.m3.com/iryoIshin/article/91001/
文部科学省の「医学教育カリキュラム検討会」の第1回会議が2月2日開催された。本検討会は、文科省と厚生労働省主催の「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」で臨床研修の見直しの一環で、医学教育の改善・充実が打ち出されたことから設置された。
文科省は、
(1)基本的な診療能力を医学教育で学べるようにするには何をすべきか
(2)医師不足の折、地域に必要な医師確保のために医学教育上で何か必要か
という2つの問題意識を提起、その上で基本的な論点として以下の4点を挙げた。2010年度からの医学教育に対応できるよう、この4月をメドに一定の中間取りまとめを行う予定だ。
同じく2月2日に開催された「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」で公表された「まとめの骨子(たたき台)」では、「プライマリ・ケアを意識した臨床実習を充実させるなど、医学教育のカリキュラムの見直しを行う」などが打ち出されている(「大学重視」がキーワード、見直し案公表」を参照)。検討会の発足経緯を踏まえると、医学生の医行為の扱いを検討し、臨床実習を充実させるとともに、地域医療を担う人材育成を行う。次なるステップとして、臨床研修制度を短縮化し、地域医療に従事する医師を増やす――。そんなシナリオを描くことが可能だ。
委員は17人で、座長には荒川正昭・新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター長、副座長には福田康一郎・医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長がそれぞれ選任された。
【医学教育カリキュラムの見直しに関する論点メモ】
1. 臨床研修の見直しを踏まえた医学教育の改善・充実方策
2. 医師として必要な臨床能力の確実な習得を確保する方策
3. 地域や診療科に必要な医師を養成・確保するための方策
4. 医学教育カリキュラム等の見直しの論点
委員は計17人、うち「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」の委員も務めるのは4人。
「全国一律という議論ではない」と釘を刺す
この日は、フリーディスカッションの形で進められた。医師不足の観点からの見直しの是非のほか、臨床実習の充実策、さらには国家試験のあり方や教育を支える大学教員の現状まで、話題は非常に多岐にわたった。医師不足、“医療崩壊”の現状を踏まえて医学教育を見直す必要性を指摘した一人が、札幌医科大学長の今井浩三氏。「今、問題になっているのは地域医療であり、多くの地域が同様だと思う。地域医療の崩壊の阻止につながる、医学教育や卒後臨床研修の見直しでなければならないと考えている」と述べ、地域医療に従事する医師養成の重要性を指摘した。
全国医学部長病院長会議で、岩手医科大学学長の小川彰氏も、「モデル・コア・カリキュラム、共用試験、臨床実習、国家試験、臨床研修、生涯研修、すべてをラディカルに改革しなければ、日本の医学教育は良くならず、医療崩壊も止まらない。従来の議論にとらわれず、今の医療崩壊の現状を踏まえ、根幹からの見直しが必要」とコメントした。
これに対し、東京大学医学教育国際協力研究センター教授の北村聖氏は、「全国80の大学がすべて同じカリキュラムで実施する必要はない。地域に根ざした大学、世界に伍して戦う大学など様々な大学があっていい。大学の特色をなくす話ではない。この検討会は、『医学教育カリキュラム検討会』だが、『コアのカリキュラム』を検討する場であるべき」と釘を刺した。
「一番に実施すべきは、大学教員の負担軽減」
医学教育における臨床実習では、診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)の導入が徐々に進められている。しかし、福田氏によると、クリニカル・クラークシップの実施は、昨年夏ごろの時点で全国80大学のうち45%にとどまるという。クリニカル・クラークシップの実施に当たっては、医学生による医行為が問題になる。現在、一定の条件下で医行為が認められているものの、患者側の理解が得られにくいことがネックの一つだ。
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の辻本好子氏は、「研修医による診療の場合でも、初めは抵抗を示す患者がいるが、指導医がバックにいることを説明すると、納得する。言い換えれば、そうした説明がなされていないケースがある。医療不信もある中で、患者に理解し、安心してもらうためには、説明が重要」と強調した。そのほか、倫理教育の充実など、様々な観点から医学教育の改善・充実を求める声が上がったが、いずれも大学教員の負担が増える話でもある。九州大学医療系統合教育研究センター教授の吉田素文氏は、「モデル・コア・カリキュラム、臨床研修の必修化、大学院の重点化など、大学についてはここ約10年で様々な改革が行われた。臨床系の教員がかなり擦り切れているのが現状。『これ以上、何を変えればいいのか』というのが現場の正直なところではないか。一番即座に実施すべきことは、現場の負担を軽減することではないか」と、教員の充実を求めた。
モデル・コア・カリキュラム、臨床実習、国家試験、卒後臨床研修制度、専門医育成のための研修、生涯研修は連動するものであり、一部分のみの改革では、どこかでひずみが生じかねない。今回の議論は、4月までに中間報告というスケジュールを考えると、医師不足対策に関連した改革にとどまりそうだが、医師の生涯のキャリアパス全体を踏まえた上での議論が必要だ。
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