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(投稿:by 僻地の産科医)
こんな事いうと、一生懸命、
方策を練ってくださっている方々に悪いんですけれど、
周産期関係に関してはもう臨界点を超えたと思っています。
産婦人科医会のメーリングリストでは、
茨城県日立製作所病院の勤務募集メールが緊急で流れていました。
こんなことは初めてのことです。(私の知る限り)
どうしようも手立てが見つからないのでしょう。
それぞれの党が案を立てたとしても、
それが運用されるのはいつのことでしょうか?
その頃には、すでに外科崩壊がすっかり完了
“虫垂炎で人が亡くなる時代”
に突入していると思うんですよね(>▽<)!!!!
厚労省案Vs民主党案―周産期救急改善案
熊田梨恵
キャリアブレイン 2008年1月7日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19967.html
国内で相次いだ妊婦の救急受け入れ不能の問題を受け、それぞれに改善策を検討してきた厚生労働省と民主党の案が昨年末に出そろった。改善策自体に違いはあるものの、決定的な違いは、両案で示された改善策に対する財源の付き方だ。厚労省案の財源は、今年夏の2010年度予算概算要求時に明らかになるが、社会保障費2200億円の削減があるため、先行きは不透明だ。一方の民主党側は、政権交代後の公約として医療費1.9兆円を増額することを決めており、このうち2500億-2600億円を周産期医療の改善に充てるとしている。今年必ず行われる衆院選を控え、今後の周産期医療改善策の設計図が打ち出された。どちらの方策が実行されるかは、国民の選択に懸かっている。
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両報告書の概要は以下の表を参照。
■大規模な受け入れ可能施設を整備―厚労省案
厚労省案は、12月18日に開かれた「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」(座長=岡井崇・昭和大医学部産婦人科学教室主任教授)に示された。委員から内容に関する意見が相次いだため、取りまとめは1月に持ち越されたが、内容については大筋で了承される見通しだ。
厚労省案は、周産期救急医療の問題点として、産科医や新生児担当医などの医師不足や、各救急医療施設の規模が小さいために周産期救急医療に必要な複数科での診療体制が困難になっていること、周産期情報システムの不備などを指摘。その上で改善策として、厚労省内の周産期医療と救急医療担当部局との連携強化や、NICUを現行の1.5倍程度に増床することをはじめとした周産期医療対策の見直し、財政支援、救急医療情報システムの整備などを挙げた。
母体の受け入れ体制を強化するため、総合周産期母子医療センターと救命救急センターの機能を合わせた、すべての救急患者に対応できる設備や人員を備えた大規模施設を整備。この施設で24時間体制で患者を受け入れられるよう、財政支援や診療報酬上の措置などを検討するとしている。その上で、周産期母子医療センターの指定基準の見直しや機能分類の明確化の必要性も示した。さらに、周産期救急医療に携わる医師へのドクターフィーの在り方、救急医療機関が妊産婦を受け入れられるような財政支援や診療報酬上の措置を検討するなどとし、診療実績に応じた評価を提案。これらの詳細については、研究班を設けて別途協議するとしている。また、NICUの後方病床の整備の必要性も指摘した。
このほか、医療計画の救急医療分野の中に周産期救急を盛り込む方向性を示し、医療計画の基本方針を改正することが望ましいとしている。
ただ、これは急きょ立ち上がった懇談会の報告書案であるため、予算の裏付けがない。多くの項目に「検討」と記載され、詳細は研究班の検討に委ねられているなど、歯切れが悪い部分が目立つ。厚労省の担当者は、「報告書案に書かれている改善内容は、既に来年度予算案に盛り込まれているものもある。新規のものについては、10年度以降の予算編成や診療報酬改定になる」と話している。
来年度予算案では、分娩を扱っていたり、後期研修医が産科を選べるような支援を考えていたりする医療機関に対する財政支援など、産科医療を担う医師への支援として28億3500万円を計上している。また、出生数の少ない地域で経営していたり、働きやすい職場環境を整備したりする産科医療機関への財政支援として21億9200万円、総合周産期母子医療センターへの母体搬送コーディネーターの配置、地域周産期母子医療センターの運営などへの財政支援として12億5200万円を充てている。
■医療費全体を増額し、地域医療提供体制を底上げ―民主党案
民主党は11月から9回にわたる周産期医療ワーキングチーム(座長=鈴木寛参院議員)を開催しており、12月17日に報告書を公表した。
民主党のマニフェストは出ていないが、鈴木議員は政権交代後に医療費を1.9兆円増額し(介護費含む)、政権交代後4年間で対GDP(国内総生産)比をOECD(経済協力開発機構)平均にまで引き上げると明言している。特に財政基盤として、診療報酬を医療機関の収入ベースで現状の1割増しになるように改定し、病院を新設・増設することで、現状で不十分な医療提供体制を強化するとしている。民主党案は2500億-2600億円を周産期改善策に充てるとしている。報告書の内容は、次期総選挙で公約になるものだ。
民主党案は、▽NICUを現在の1.5倍に増床▽現行の出産一時金に加えて出産1 人当たり20 万円の出産時助成金を交付▽三六協定の在り方の抜本的な見直しなど労働基準法の順守▽周産期救急を含めた医療計画自体の抜本的見直し▽周産期母子医療センターの機能の明確化・再分類・整備拡充▽都道府県の責任で周産期情報システム、搬送先照会システム改善のための人的体制整備▽周産期医療従事者へのインセンティブ確保、スキルミックスの促進▽国公立大学病院運営費交付金、私学助成金等の抜本的拡充―の8つが柱で、それぞれに予算額が示されている。
NICUを現状の1.5倍に増床することに伴い、現在閉鎖されているNICUなどの現状調査、公立病院の定員の在り方の改善、増床と医師増のタイムラグを解消するよう看護師の活用も行うとした。また、NICUの後方病床支援として、長期入院児についての全国的な実態調査をした上で、重症心身障害児の定員増や、在宅医療の充実などの方策の具体化を考えていくとしている。加えて、NICUとGCUの中間タイプ病床を新設することも提案している。
周産期医療従事者へのインセンティブとしては、勤務実態に応じた正当な評価で職員に報酬を支払っている医療機関に対し、搬送の受け入れ実績や症例数に応じて補助金を上乗せすることや、母体救命に関連した教育を地域のネットワークで実施できるように補助金などで支援すること、新生児科を標榜できるようにすることなどを挙げた。また、現在の診療報酬体系では、一度周産期母子医療センターで受け入れて入院した患者の場合、救命救急センターに搬送され、治療されても、救命救急入院料の算定対象にならないため、診療報酬改定で対応するとした。
妊婦が自己負担なしで出産できるよう、1人当たり20万円の出産時助成金を本人に交付。現行の出産育児一時金は医療機関に直接渡すようにして未収金の解消につなげるとした。
また、民主党が提案する死因究明制度を踏まえた妊産婦死亡評価システムの構築や、周産期の患者登録なども提案。このほか、昨年秋に東京都内で起こった妊婦の受け入れ不能などの問題は、地域の実情に応じた医療体制が整備されてこなかったために起こったものと指摘し、各都道府県に地域の医療需要予測を見極めた上で医療計画を再策定するよう求めている。
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