(関連目次)連載 弁護士が語る医療の法律処方箋
(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ2008年12月号からですo(^-^)o ..。*♡
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実は、お正月中に、ようやく
「チームバチスタの栄光」映画版をみました(>▽<)!!!
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本当は映画館で見たかったのですけれど、
映画館とプールほど臨床医と相性の悪い場所はなく、
・呼ばれた時点ですぐに駆けつけられない
・同行者をどうするかに困る(嫌な想いさせるし)
・かといって、自分ひとりで見に行くくらいなら諦める。
だって呼ばれたらむなしさ倍増 (´・ω・`)
ということで、もう次の
「ジェネラルルージュ」の撮影に入っているんですね!
私の大好きな堺雅人さんがでます(>▽<)きゃっ!
(ちなみに撮影は岐阜大学病院のようです)
では、どうぞ ..。*♡
イノセント・ゲリラの祝祭
司法と医療の分離をめざして
井上 清成 弁護士
(MMJ December 2008 Vol.4 No12 p1020-1021)
海堂尊の新作
「チーム・バチスタの栄光」などで有名なベストセラー作家の医師、海堂尊氏の新著「イノセント・ゲリラの祝祭」が、2008年11月に宝島社より発売された。いつもの田口医師と白鳥厚生労働省調査官のコンビか活躍するフィクションの小説ではあるが、今回の舞台は、厚労省の医療事故調査委員会の創設検討会である。敵役の筆頭はハ神医療安全啓発室課長であり、田島と日野の両検討会委員(いずれも法学部教授)の設定であるといってよい。そして、実質的な主役は、右翼・左翼ならぬ医翼主義者(Medical Wing)の彦根医師の設定である。同医師は、検討会委員ではなく、むしろフィクサー的な役どころで、司法と医療の分離をめざして、厚生労働省主導の医療事故調査委員会構想を破壊しようと立ち向かう。
イノセント・ゲリラ?
クライマックスで、彦根医師は、検討会委員の両法律学者に真っ向から議論を挑む。その場で、「われわれ医師につける形容詞なら、イノセントなんてどうかなあ、遵法精神から導き出した結論が国家を破壊するのなら、その国家のかたちこそが違法でしょうし、それに闘いを挑む医師か現れるのなら、彼らはまさしくイノセント・ゲリラという呼び名にふさわしい存在ですからね」
「医療を成立させるために、国のかたちを変えることは当然だ。そう考えるのか医翼主義者であり、その世界の実現をめざし闘うのが医師である、イノセント・ゲリラなのです」とイノセント・ゲリラの意味を明らかにする。
その彦根医師の目標は、解体された社会保険庁の跡地に「医療庁」を創設することらしい。そして、「その「医療庁」は医師自身の手で運営される」ようにしたいのであった。
解剖中心だと暗礁に
彦根医師は、解剖中心の医療事故調だと暗礁に乗り上げてしまうと断言する。「死亡事例を扱う上で重要なのは死亡時医学検索情報ですが、日本の社会制度では、解剖しかありません。ところが、解剖の実施率は2%台。事実上、ほぼ崩壊しているんです。そして今新たに、官僚が英知を結集して作ろうとしている、医療事故調なる建物は、手抜き工事の土台の上に建築される不良建築です。土台が崩れていれば、その上に建物の建設なんてできませんよね」
その上で、死体の画像診断であるオートプシー・イメージング(Ai)を中心にすべきであると主張する。もともとAiと解剖は併存できるし、協調したほうがよりよい制度になるらしい。つまり、Aiは、解剖の判断に迷う症例や、解剖をしないと決めた症例に適用するのである。
Aiは医療の手に
重要なことは、Aiを中心にしたとしても、それを医療の手にとどめておかねばならない。彦根医師によると、「Aiセンターがあれば、「医療と司法の完全分離」が可能になる。これまで体表検案だけで解剖の適否を決めていた。検案は解剖の上流に位置する。そこを画像検索による仕分けに変える。この部分は司法の手に渡してはならない。すると司法は肥大し、独裁化し、暴走する」とのことであった。
白鳥厚労省調査官によれば、彦根医師の考えを討議するには厚労省下の検討会では足りない。新たなる死因究明制度の確立のためには、内閣府が主導し、関連全省庁の参加による横断的合同検討会が必要であろう。「横断会議は、医療分野における死亡時医学検索、および初期捜査段階における検視・司法解剖連関などを論理統一するため、内閣府が主導し警察庁、法務省、財務省、文部科学省、そしてわが厚生労働省の担当官が新制度の構築をめざし参画する」べきなのである。
医療と司法の完全分離
以上、小説「イノセント・グリラの祝祭」より、その主張のいくつかを抜粋した。主張の前提となっている法律および司法の分析は、的確であると思う。司法は、本来は医療への適用を想定していなかった法律の条文を、近時、強引に拡大適用している。
たとえば、自動車事故への適用を典型モデルとしていた業務上過失政死傷罪(刑法211条1項前段)を、同じ「事故」だというので医療事故にも適用した。身元不明の行き倒れなどを典型モデルとする異状死届け出(医師法21条)を、異状の定義か不詳だったのに乗じて、医療過誤にも拡大適用している。売買・賃貸信一請負などの私的取引を典型モデルとしていた契約違反(債務不履行)を、同じ「契約」だというので無留保に診療契約として、公的医療にも拡大してしまった。医療の「過誤」も同じ「過失」だというので、一般不法行為(民法709条)で扱っている。その他、枚挙にいとまがない。
これら法律をそのまま司法作用として形式的、機械的に医療に適用し続けることは、確かに、あまりに不整合なことである。医療が司法からの完全分離を図るか、少なくとも、その趣旨の実質的な実現のため立法によって医療固有の法律を整備していくべきであると思う。イノセント・ゲリラの方々の縦横無尽の活躍を期待するゆえんである。
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