(関連目次)性感染症と中絶について考える
(投稿:by 僻地の産科医)
社会実情データ図録 2008年11月25日
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/index.html
内閣府の少子化に関する国際意識調査の中で、日本、韓国、米国、フランス、スウェーデンについて、避妊や中絶に対する考え方の国際比較が行われている。
結論からいうと、日韓と欧米では、避妊にせよ中絶にせよ、リプロダクティブヘルスの分野で、女性の主体性を認めるか否かの点でまったく正反対の意識となっている。
避妊については、日韓は男性が主体的に避妊するものだという意識が多くを占めているのに対して、米国、フランス、スウェーデンでは女性が主体的に避妊するものだという意識が大半を占めている。
望まない妊娠への対処としては、欧米、特にヨーロッパでは、そもそも女性の権利として中絶が認められるべきとの考えが圧倒しているが、日韓では、母体に害なら認められるという「あるべき」論を回避したプラグマティックな考え方が中心となっている。
米国の場合、ヨーロッパと同様、中絶を女性の権利と考える者が多い一方で、「妊娠した以上生むべきである」という中絶反対の意見も3割程度と比較した5カ国の中では目立って多くなっており、両者がイデオロギー的に対立している様子がうかがえる。
タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」のリメーク版「ソラリス」(2002年米国映画)を見たら、ソラリスにより再生する妻の自殺の原因は主人公である夫に告げずに中絶したことをめぐる夫婦の葛藤と不和であった。米国では葛藤となるものが欧州ではそうはならない可能性があるのかもしれない。
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